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俺の隣は。。。 (13)

※高瀬視点※

その週の水曜の9時少し前、いつも通りに高瀬は社長室へ行く。
今日のスケジュール確認をする為だ。
なぜか他2人の社長秘書がオタオタと焦っているので声を掛けると、揃ってハモッて返してくる。
 「社長が若者と喧嘩してる」と。

え、誰が社長と喧嘩してるんだ?
コンコン…と、ドアをノックして入る。
 「失礼し……」

大声が飛び交ってる。
 「何言ってるのっ!」
 「それはこっちの台詞だっ!」

俺は、思わず口にしていた。
 「な、なんでここに居るんだ…」
その声に反応したのか、若者は振り向いてくる。
 「あ、高瀬」
すると、2人が重ねて言ってきた。
 「丁度良い所に。あのクソ爺を説得させて」
 「ああ、丁度良い所に来たな。こいつを説得させろ」

似たような言葉を掛けられ、俺は困っていた。
いきなり言われても話が見えない。
 「あの…」

すると、俺を無視して親子喧嘩は再度始まった。
 「お前、経済だっただろっ!」
 「だからって、俺には無理なの分かってるだろっ!」
 「決まる迄で良いんだっ!」
 「やだねっ!決まらなかったらどうするんだよっ!」
 「だから」
 「なら、今日中に決めてっ」
 「そんな簡単に決まるわけないだろっ」
 「俺、言ってたはずだ。継ぐ気は無いって!」
 「だから決まるまでの」
 「ヒラならいざ知らずっ!誰が常務になるもんかっ!」

話が見えないんだけど…、と思い聞いていた俺は、その言葉を聞き驚いた。
 「え、じょ、常務?政行、お前」
だが、社長が遮ってくれる。
 「だから次のが決まるまでの間で良いから、と言ってるんだっ!」
 「いやだ!と言ってるでしょっ!」

すると政行は俺に振ってきた。
 「高瀬も、黙ってないで何とか言ってやって!
いくら後が決まる迄でも、やった事の無い仕事を、しかも常務だなんて出来る訳ないでしょっ!」
社長も言ってくる。
 「高瀬、お前は私とこいつの兼用秘書になれ!こいつを説得させろっ!」

俺は社長に聞いていた。
 「もしかして明智常務の後がまですか?」
 「見つかるまでの間だけだっ!」
政行は、俺に聞いてくる。
 「明智?明智光秀が辞めたの?」
 「光秀でなく、明智満彦(あけち みつひこ)。そう、辞めたんだよ」

 「社長、後がまが見つかる間って、どれぐらいの期間ですか?
それに、彼の仕事は全部門に渡ってました。いくら見つかるまでと言われても…、御子息には無理かと思われます」
その言葉に政行は頷いてる。
だが、社長は宣告してきた。
 「さっきも言ったが…。高瀬、お前は私とそいつの兼用秘書だ。
そいつが出来ない分は、お前が補助しろ」
 「えっ!?」


政行は俺に言ってくる。
 「高瀬、俺はお父ちゃんに拉致られて来たんだ。
今日はせっかくの休みで食料品の買い出しに行ってたのに」
 「え、拉致って…社長?」
 「暇そうにしてたから連れてきただけだ」
 「休みの日は誰でも暇でしょっ」

また親子喧嘩が始まりそうだ。
すると、政行は何かを思い付いた表情をしてきた。
 「分かった。今日と明日だけだ。その二日間で決めといてねっ」

そう言うと、社長室から出て行った。


 「社長?」
 「まあ、なにはともあれ今日と明日はする気が出たみたいだ。
あいつの秘書は、お前しか出来ないと思う。大変だろうが、頑張ってくれ」

はあ…。
思わず溜息が出ていた。

 「社長も二日間で常務を決めないといけなくなりましたね。緊急会議を開きますか?」
社長は俺の顔をじっと見つめてくる。
何か嫌な予感がするのだが…。
 「いいか、高瀬。お前は、あいつの秘書だ。あいつを説得させることが、第一の仕事だ」
 「え…、まさか、常務に」
 「あいつに常務をさせようという気は無い。それに数日で決まるほど簡単な事ではないっ」

それはそうだが、もしかして…、と思っただけだ。



そして、政行は常務室を模様替えしていた。
 「ったく、人が買い物し終わった時を狙って拉致ってくれるんだから…」
呟き毒づきながら、ある事をしていた。


昼前の11時半頃、件の常務室から何か匂いがしてくる。
利根川はドアを開き覗くと、思わず声を掛けていた。
 「な…、ここで何をしてるんだ?」

声を掛けられ振り向いたが、少しして顔を戻す。
 「こら、人の顔を見て無視しない」
利根川は近付いて行く。
と、政行は相手のネームバッジに手を当てる。
 「ああ、骨皮か…」
 「とねがわ、だっ!なんで、ここに居るんだ?しかも、これって…」
 「何かヘマしたりポカしたらクビになるでしょ。それを狙ってるんだよ」
 「意味が分からないんだけど…?」
すると、この一言が返ってきた。
 「お父ちゃんに聞いて」
そう言われた利根川は、社長よりも高瀬に話を聞くかと思い、上のフロアに向かった。


聞いてみると、その返事に驚いた。
 「はあ?2,3日で後が決まると思ってるのか、あいつはっ!」
 「だから嫌がってるんだよ。俺としては、あいつのあの表情が怖い…」
 「どんな?」
 「何かを思い付いた様な表情。何をしでかすか…」
 「さっき、覗いてみたが。あいつ…」

そこで区切ると、高瀬に耳打ちした。
 「は?う、嘘だろ…」
 「本当だ」
 「あ、あいつはー…、そういう事を考えるかっ」


先程の利根川の顔が近くて、心臓の音が駆け足になっている。
足音を消してくれる絨毯を敷き詰めてるのだけど、バタバタと足音が響いてる様な気がした。













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さあ、社長の息子が登場です。
『俺の気持ちはブレない』の登場人物の、水泳で活躍していた元アスリート政行君です。
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