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4人の幼き戦士 (12)

隊から外に出るのは二ルートある。
一つは、そのまま真っ直ぐ外に出るルートであり、もう一つは宮殿経由して出るルートだ。
4人が取ったのは、後者のルートだ。
なにしろ、この4人は強いので、宮殿の警備にも携わっているのだ。

交代の時間が来る。
その時間を利用したのだ。
最も手薄になる時間だ。

グズはレースの大判カーテン2枚と王家の紋章を奪い取る。
リンは果物とレースの大判カーテン2枚。
ウォルターはパンと薄地の布袋。
バーンズは飲み物と厚地のテーブルクロス。


誰にも気付かれず、空港へ着く。
真っ先に果物とパンと飲み物で腹を満たす。
そして、それぞれが奪い取った物で身を整える。

グズは、レースのカーテンをグルグル巻きにして、踵が隠れる位の丈にして、その上から薄地の布袋の底にナイフで切り取り穴を開け、頭から被る。持っていたペンダントを首に掛け、紋章は胸に付ける。
そのペンダントは、イタリアに来る時に、お母様から手渡された物だ。
 「王家の紋章と、お母様の印が付いてるから、持っていなさい」と言われ持っている。

お母様、私は日本に帰ります。約束の5年も終わりに近づいてるから。
もう二度と来ない。
あの男は、私からお母様を奪い結婚しただけでなく、お父様のフルートを壊してくれ、私を隊に放り込んでくれた。でも、そのお蔭で、私は仲間を得ることが出来、武術やIT関連や銃器等を会得することが出来た。


そして、皆もレースのカーテンでグルグル巻きにして、隊の制服をお洒落にする。
用意が出来た所で、グズは3人に、こう言った。
 「芝居をするから」と。

そして、グズは、空港のスタッフ達に向かって、人懐っこい笑顔を振りまき、流暢なイタリア語で話し出した。
 「私は、イタリア王妃の子供だ。証拠が欲しいって?この瞳に髪の色をよく見て。それに、このペンダントもだ。お母様に連絡を取っても構わない。パスポートも見る?
それに、彼等は2人共私の警護をしている。一緒にシンガポールに向かう。行先は日本。
イタリア王妃に、連絡を入れても良いよ。『貴方の子供は、約束通り日本に戻る』とな。
それと、もう一人。彼はドイツに向かう。その手配をよろしく」


グズがイタリア王妃と言う言葉を連呼したお蔭で、イタリア王妃は一人で空港に来た。
王妃はグズを見るなり、抱き付いて来た。
 「ユタカッ…!ごめんね、ごめんね。お母様を許して、とは言えないけれど…。
ごめんね。
こんな目に遭わせてしまって…。本当に、申し訳ない事をしたと思ってる…。
ここに連れて来なければ良かった…」
 「約束は5年間だからね。帰るから」
 「そうね…。日本に帰っても元気でね。貴方のお父様に伝えて。御免なさい、と。」
 「大丈夫だよ。私は色々な経験をさせて貰った。あそこに居た3年半は、辛い事もあったけれど、仲間も出来た。その仲間と一緒に、ここを出る。」
 「ユタカ…。もう、お母様とは言ってくれないの?」
 「…王妃様。貴方の子供は、4歳になられる女のお子様と、1歳になられた男のお子様だけだ。私の事は、死んだと思って欲しい。もしくは飛行機事故で亡くなった、と…」
 「ユタカ。私の血を継いでるのは、紛れもない貴方だけよ。それに、あの二人は私には似てないから…。ユタカ、これを…」

手渡されたのは、護身銃だ。
 「要らない」
 「持っておきなさい。いずれは必要になる。それにね、ユタカ。貴方は、イタリア王子よ。
誰が何と言おうと、貴方はイタリア王子よ。
忘れないで、貴方は、この私が生んだ王子よ!」

空港のスタッフから声が掛かる。
 「王妃様、王子様のご出立の準備が整いました。」

その言葉を耳にした王妃は、立ち上がり述べた。
 「ユタカ、帰りなさい。それは、母だと思ってくれれば良いから。形見だと思って、持ってて」
 「…短い間だったけど、お母様と呼べる時間を過ごせる事が出来て、嬉しかったです。
さようなら。そして、お元気で。」
 「ユタカ…。その恰好、良く似合っててよ。さすが私の王子」
 「ふんっ…、私を誰だと思ってる」

イタリア王妃は微笑みながら跪いては、息子の手の甲に口づけた。
まるで、臣下のように。
 「ユタカ。私のユタカ…、貴方は立派な王子よ。神の御加護がありますように…」


バーンズとウォルターと林は、本当にイタリア王子だったんだ、と驚いていた。
バーンズは、別れ際に教えてくれた。
 「王子様だとは全然思わなかったよ。だけど、仲間として教えておく。私のフルネームを。
『アダム=バーンズ・フォン・パトリッシュ』
ドイツでは有名な名家だよ。グズ、アレは有難く貰っとく。日本でも元気でな」
その時に、バーンズは護身銃を贈ってくれた。どこに隠し持っていたのやら…。


 「バーンズも元気で」

アダム=バーンズは片手を上げると、さっさと一人でドイツ行きの飛行機に乗って帰国した。





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