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俺の気持ちはブレない (40)

それから当分の間は何も起きなかった。
高瀬はあれから来ないし、政行は忙しくしていた。

3年の月日が経ち、政行35歳の夏。
4年ぶりに会うライバル達と会って一緒に食事をして楽しんでいた。
さすがデイブだ。
政行は、デイブと同着でお互いが金を首に掛けて貰う。

最終日にある最終レースに入る前、誰かが控室へ入ってきた。
 「政行、調子良さそうだな」
 「え?」
 「でも、デイブと同着ばかりではなく、一つぐらい…」
政行は遮っていた。
 「まさか高瀬?」
 「なんだ、分からなかったのか?恋人なら直ぐ分かれよ」
 「は?誰が誰と恋人だって?」

高瀬は珍しく顔を真っ赤にさせている。
 「まあ、この3年は会って無かったからな…」
そう呟き、高瀬は政行を抱きしめ頭にキスを落としてくれる。
 「終わったらホテルへおいで。一緒に食事をしよう」
 「皆と一緒にBBQなんだけど…」
 「相変わらずな4人組だな…」
苦笑しながら高瀬は、なおも言ってくる。
 「政行、遅くなっても良いからホテルへおいで」
 「俺、高瀬とは会わない」
即答され、高瀬は驚いてる。
なので、もう一度きっぱりと言ってやる。
 「俺には好きな人が居る。それは高瀬では無い」
 「政…」
 「約束通り、来期も出場する。だけど二人きりでは会わないから」

ドア越しに声が掛かる。
 『ハイ、マサー』
 『ヤー、すぐ行く』

政行は高瀬を部屋に残して廊下に出ようとするが、後ろから抱きしめられる。
 「政行、俺は先月フランスから戻って来たんだ。3年間、ずっとボスと仕事をしていた。
……頑張って来い」
そう言って、高瀬は腕を離した。
 「言われなくても自己更新するつもりだ」



3,2,1…、GO!

最終レースはデイブよりコンマ002ほど早く着いた。
アナウンスが聞こえる。
 『日本!日本が金!アメリカはタッチの差で銀ですが、両者とも素晴らしい泳ぎを見せてくれましたっ!!』
 『続けて、カナダはアメリカと同着で銀!フランスもタッチの差で銅!』

プールサイドに上がり、4人でハイタッチして互いの拳を突き合わす。



一方、こちらは日本。
その様子をテレビ越して見ていたアサミは、ぽつりと呟く。
 「良いなー。水泳で出会い仲良くなって絆も深くなっていくのか…」
その独り言にサガミコーチは応じる。
 「手の届かない人だと思っていたんですよ。それでもスランプから抜け出て、また泳ぐ様になったのは本人もそうだけど、見てるこっちも嬉しいですよね」
でも、アサミは自分の世界に浸ってるのかサガミコーチの言葉をスルーしてくれる。
アサミの独り言呟きは続いてる。
 「あの水滴が…、あの筋肉が…、ああ、良い体格だ……」
苦笑しながらサガミコーチは言ってくる。
 「アサミコーチ、デッサンしたらどうですか?」
 「デッサン…」
徐にデッサン帳と鉛筆を取り出し、アサミは描いていく。
 「はあ…、この筋肉の付き方、良いなぁ…」

すらすらとデッサンしていくアサミのデッサン力を目の当たりにして、サガミコーチは凄いと思いつつも、苦笑していた。
テレビの向こうでは、スポット映像に変わっていた。




こちらは桑田邸。
 「いい加減に、あの水泳バカをどうにかしてっ」
 「どう、とは?」
 「殺して」
 「物騒な…」
 「宗一が桑田の跡取りになるには、もう少し時間が掛かる」
 「大学生ですからね」
 「あの子は一人暮らしなんて必要無いのに、それでも言う事は一人前になってきてるんだから」
 「良い事だと思いますよ」
 「あと2年ね…」
 「そうですね、あと少しで20歳になられますよね」

溜息を吐いて女主人は言ってくる。
 「宗一が後を継ぐには、あの水泳バカが邪魔なの」
 「どうしてですか?」
奥方は睨んでくる。
 「あいつは、正真正銘の桑田の長男だからよっ!」
 「でも、泳いでるだけで何も邪魔な事は」
 「生きてるだけで邪魔なの」
そして、今度は命令してくる。
 「良い事?あんた達5人で、あの男を殺して。それか致命傷を与えて放っておけば良い。
そうしたら勝手に死んでくれる」

自分の子供は宗一だけだ。
その後、何回か妊娠したけれど、産まれるまでは育たなかったのだ。


義弟だと信じて疑わない宗一は、アパートの部屋でテレビをじっと見ていた。
一体何回出場すれば気が済むのだろうか。
大学を卒業したら義父の会社へ入る事になるだろう。そうなったら義兄とは会えない。
会えるのは、一人暮らしをしている学生時代だけだ。
それも、残り2年半。
大学の斡旋しているバイト先でアルバイトをして、外の世界に触れていた。
自分は何も出来ない事を改めて知ったのだ。

最初は、義父や義兄の卒業した出身大学に行こうと思っていた。
でも、知らなかったので義父の執事に教えて貰ったのだ。
大学を受験するから、二人の出身大学を教えて欲しい、と。
義父の出身大学には到底勉学は追い付かないという事が、その名前を聞いて直ぐに分かった。
ならば、義兄の大学になら…、と淡い期待を抱いていた。
だが、物の見事に自分の頭では無理だと思い知らされた。
まさか、義父の出身大学が国立の東響大学だなんて…、また義兄の出身大学が私立とはいえ早稲田大学だなんて…。
自分は頭が良いわけでも無いし、指定推薦なんて無理だ。
一般入試でなんとかしてやっと入れた私立の某大学。

だけど、義父は日本には居ないと分かり、入学金や授業料はどうなるのか心配だった。
すると、母はポンッと出してくれた。
その家から出て、2年目。
自炊なんて出来ないから、もっぱらコンビニの弁当ばかりだ。
それでも、米炊きと味噌汁は作れる。

昔、まだ幼稚園に通ってた頃、兄だと思っていた。
一ヶ月に一度しか会えなかったけれど…。
部屋に入れてくれて、パンケーキ、ホットケーキから、段々と手の込んだ物になってシュークリーム、ケーキ、タルト等々を作って食べさせてくれた。
とても美味しかったのを覚えてる。
あの家では家政婦が作ってくれてたが、ある時、送迎車の運転手の美那狭が作ってくれた。
あのラーメンは、本当に美味しかった。
米炊きと味噌汁は美那狭が教えてくれたのを思い出す。

お兄ちゃん、約束は忘れてないよね?
お店を開くには、たくさんのお金が必要だといういう事は、今なら良く分かるよ。
泳いでも良いから、お店を開いたら僕を一番に呼んでくれるのを待ってるからね。

それでも、宗一は諦めることが出来なかった。
バイト先の図書館から歩く事10分程で、その件の『MEN'S スポーツジム』へ着く。
区を越えるが、それでも近くに居れる。






政行は仲良し4人組でBBQを食べた後、マネージャーとして一緒に付いてきた嘉男と、その土地での最後の夜を過ごした。

高瀬はホテルの部屋の窓からオリンピック村の方を見ている。
いつ来るのか分からない。
おいでと言ったものの、当の本人は会わないと言ってきたのを思い出す。
政行。
俺はお前をずっと見てる。
見守ってるから、日本に戻ったら会いに行く。
そして、今度こそ、最後まで抱くからな。




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そして、3年後・・・。
数人の人物が、何かを決意してます。。。


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2 Comments

ますみ  

No title

年月は、時間はいろんなものを変えていきますね。
風化させたり、増幅させたり。時には歪んでしまったり。

ヒトの想いほど厄介なものはない、・・のかなあ?
それは、抜いても抜いても生えてくる草、かも(現在庭で戦ってるので、つい・・・)。

2016/05/23 (Mon) 10:35 | REPLY |   

あさみ  

Re: No title

ますみさん


ほんと、人の思いほど厄介な物は無いですよね~


>抜いても抜いても生えてくる草、かも(現在庭で戦ってるので、つい・・・)。
それはっ・・・!
大変ですよねぇ
私は、既に戦いを諦めてます
これが目につく表に生えてるのなら、なんとか戦うかもしれませんが。。。
全く目につかない裏に生えてるのですから
気にはなるが、戦おうという気はないですε-(ーдー)ハァ

2016/05/24 (Tue) 09:53 | REPLY |   

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