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俺の気持ちはブレない (33)

自分の休みが終わった翌日の木曜。
いつも通りに弁当を作って午前中は泳ぎ、昼はランチ屋でカレーを。夕食様に4人分を作る。
仕事場である『MEN'S スポーツジム』に着いた政行は、いつも通りに声を掛け着替えにロッカー室へ向かった。
たまには受付もするんですよ、とアサミコーチに言われたマサユキは、夕食後に受付に居た。
 「いらっしゃいませ」
 「こんばんはー」
挨拶をすると、挨拶を返してくれる。
 「マサユキコーチ、今日は受付ですか?」
 「この時間は受付ですよ」
 「平泳ぎのアドバイスをして欲しいのですが…」
 「はい、良いですよ」
 「顔を上げて泳いでるのだけど、顔を付けた方が良いの?」
すると、違う声が割って入る。
 「顔を付けると狙い撃ちされなくて良いと思いますよ」
マサユキも、その成人さんも笑ってしまった。
そう返してきたのは所長だ。
 「平泳ぎというのは俗名、忍者泳ぎですからね」

マサユキはツボにハマったらしく、凄く受けてる。
(そういえば、平泳ぎの時は『顔は付けて泳ぐ様に。敵から頭を毟り取られますよ』とアサミコーチに指導されてるな…)と、思い出してた。
 「社長さん、この笑い上戸どうしましょう?」
 「楽しくて良いねぇ。でも、顔を付けた方が、敵から狙い撃ちされなくて良いのか。なるほどね…」
納得して着替えに行ったみたいだ。
違うだろ、と思ったものの、何も言えないでいた。

どうしよう、笑いが止まらない。
耳元で声が聞こえてくる。
 「政行…」
 「ん……」


所長はニヤニヤしながら言ってくる。
 「なるほど、キスすれば笑いは止まるというのは本当なんだな」
 「も、もう…、ここは仕事場」
 「誰も居ないぞ」
そう言われ、辺りを見回すと、受付の隣にあるスタッフのロッカー室だ。
たしかに、ここには二人だけだ。
 「笑い上戸なんだな」
 「だって、笑わせてくれるから…」
 「笑うなとは言わないが、仕事場で、あんな馬鹿笑いはしない様に」
 「はい、分かりました」
そう返したマサユキは、再度、受付に出た。
すると元気のいい声が聞こえてくる。
 「お兄ちゃん、会いたかったっ」
へ?
声のする方に振り向いたマサユキは、高瀬から貰った写真と同じ顔をしてる事に気が付いた。
 「お兄ちゃん、会いたかった…」
 「あ、あの…?」
 「あ、僕、これから泳ぐんだ。じゃ、後でね」
後でね、と言われても…、俺は20時からプールに入るんだけど…。
ああ、あの子がそうなんだ、とマサユキは気が付いた。



閉店時刻を過ぎ、館内のチェックをしてると一人の人間が目の前に現れた。
 「お兄ちゃん、待ってたんだ」
 「え、俺?」
 「うん、帰ろう?」
手を差し出してくるが、俺はまだ仕事が終わって無いのもあり無視する。
 「まだ仕事中だから」
 「でも、終わったでしょ?」
 「仕事が終わるのは23時過ぎだよ。第一、君は誰?」
 「23時?そんな…、電車が無い…」



俺は館内チェックをする為、動き回っていた。

静かな館内に大きな声が響く。
 「嫌だ、離せっ!やっと、お兄ちゃんと会えたんだっ」
 「なりません。奥方様がご立腹されてます」
 「怒りたければ怒らせといたら?僕は、お兄ちゃんと…」

パンッ!

 「ったいなぁー、何する」
 「なりません。貴方は桑田の跡取りです。貴方は一人っ子ですよ」
 「違うっ!お兄ちゃんが居る」
 「そんな方は居りません」
 「なんで、なんでお兄ちゃんではなく、僕なの?」

アサミコーチは声を掛ける。
 「お客様。既に当館は閉店しております。お帰り下さい」
 「あ、お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。お坊ちゃま、帰りますよ」
 「お兄ちゃん…」



23時前にはチェックが終わり、着替える為スタッフのロッカーへ向かう。
着替えながらアサミコーチは聞いてくる。
 「桑田の跡取りって、誰ですか?」
 「分かりません…」
 「貴方は長男でしょ?」
 「俺は一人っ子だけど、水泳バカだから…。候補ではないです」

そう応えるマサユキに、アサミコーチは受付での出来事を教えてくれた。
 「ご存知ですか?」と聞いてくるが、俺はその言葉に質問で返した。
 「その従者って、眼鏡を掛けてる40歳ぐらいの黒髪スーツの男ですか?」
 「いえ、眼鏡は掛けてなかったですよ。スーツでは無くTシャツにGパンでした」
 「それなら、俺には分からないです」

高瀬はオフの時でもスーツだから、違う人間だ。
すると、アサミコーチはスタッフルームで、その人の似顔絵を描いてくれた。
 「え…、アサミコーチ、こんな特技があったのですか。凄い…」
 「どこかのバタフライで自由形を泳いでいた誰かさんに触発されて、その時からデッサン教室に通ってるんです」
 「俺には、描けない…」

その誰かさんも口を開いてくる。
 「アサミは器用だなー」
 「ありがとうございます。現在は、そのデッサン教室で教えてるんですよ」
 「それは凄い」

サガミコーチも言ってくる。
 「アサミコーチ、所長を描いて下さい」


すらすらと、何の苦も無くアサミコーチは所長の似顔絵を描いてくれる。

 「凄いや!」と、サガミコーチが。
 「似てる!」と、マサユキコーチが。

当の本人は文句だ。
 「もっとハンサムな男の筈だが…」

アサミコーチは即答だった。
 「年を取って老けた、という事です」

マサユキコーチとサガミコーチは思わず笑っていた。



マンションに戻った政行は、そのGパン男のイラストを写メって高瀬にメールした。
程なく、高瀬から返信が着た。
 『知らない人間なので、調べておきます』


 
 


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弟の宗一は、とうとう実力行使にでましたね~。
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