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桜前線に乗って、花見日本一周旅行 (1)

 「やっぱり日本と言えば、これだな」
 「ねえ、やっぱり桜ですよね」
友明は、卒業した大学の学長と一緒に夜桜を楽しんでる。


ここは昔、博人の父親が住んでた建物が建てられてあった場所だ。今は既に跡形もない土地のみになっている。その敷地内には桜の木が塀の代わりになる様に、外から敷地内が見えない程の等間隔に植えられている。
ちょっとした花見気分になる。だから、行き交う人達も見上げたり、私達と同じ様にシートを敷いて花見をしている人達も居る。

だから、あのクソ爺が居ても別になんの事は無い。
なにしろ血の繋がっている兄弟なのだから。
だが、つい最近とはいえフォン=パトリッシュの家系史を知った博人は心中複雑だ。
そのクソ爺は、ドイツから一緒に付いてきたフランツと、ずっと居る。
あくまでも『御』としての位置に拘っているみたいだ。

そんな博人の心中を知らない諒一と友明は、『御』と一緒に話している。
パースから一緒に付いてきた和田も、龍三と『御』に再会して嬉しそうだし。
どういう態度を取れば良いのか分からない博人は、一人で黙々と飲んでいる。
飲み食いしてると、無理に話をしなくても良いからだ。
宴会が始まり終わるまでの4時間、ずっと飲んだり食べたりしていた。


もう、本当にしょうがないな…、という苦笑顔で諒一は近付いてくる。
 「博人、食べてばかりいな」
だが、博人は遮ってやる。
諒一の口に大き目な鳥の唐揚げを押し込んでやる。
 「食べさせてくれたのかな?ありがとう。でも、博人の声が聞きたいな」
 「おやすみ」
 「博人、今、何て言ったの?」
喋りたくないので、後は寝るしかないのかと思ったので、言ったまでだ。
それをどう言えば良いのかと思ってたら友明の声が聞こえてくる。
 「博人先生は機嫌悪そうですね。体調悪そうでもないのに…。
学長、博人先生をお願いしますね」
 「何をお願いなの?」
 「博人先生のマンションか、学長の屋敷かのどちらかにです」
 「ああ、そういう意味ね。博人、私の所に来るかい?」

だが、博人は友明に聞いてる。
 「友はどうするんだ?」
 「この近くに弟が住んでるので、弟の家に泊まります」
 「なら、諒一の所に行く」
 「嬉しいな。ボスも来て良いんだよ?」
 「いえ、既に弟と約束してますので」
 「兄弟、仲が良いんだね」
 「普通だと思いますよ」


そんな時に龍三の声がする。
 「あ、迎えが来たみたいですね。それでは、御開きにしましょう。和田、1軒行くか?」
 「久しぶりに夜通し語り合いたいな」
 「それじゃ、帰るか」
 「ああ、ロゼでな」
 「わははっ…、飲み助になるか」


博人は諒一の車で。『御』とフランツと和田は、龍三の娘の運転する車で。
各々の場所へ向かう。
それを見送った友明は、徒歩で弟の家へ向かう。
誰にも知られず伏せてきた家。
その家で、弟は家族6人で暮らしている。
客間に通され、そこで義兄弟は語り合う。
たまには博人さんと離れて寝るのもありだな。

明け方近く、誰かが覗いてる気配がする。
 「うわっ、酒臭ぁ…」
 「二人とも呑み助だな」
ああ、優人の息子二人か。
だけど、起こしに来たのではないらしい。
襖は閉められ、二人ともリビングに向かったみたいだ。



こちらは、諒一の屋敷。
博人は諒一のベッドに寝転んでいる。
 「全く、昔もそうだったが…、今でも甘えん坊なんだな」
 「たまには一緒に寝ても良いだろ…」
 「ああ、もちろん良いよ」

いつもとは違う温もり。
昔は、諒一だけでなくマルクもよく抱きしめてくれたのを思い出す。
思わず笑っていた。
 「どした?」
 「ん、諒一は可愛いなと思ってね」
その言葉に、諒一は笑いながら言ってくる。
 「逆だろ。博人の方が可愛いよ」
 「諒一はエッチした事はあるのか?」
 「なんだよ、いきなり…」
 「抱く方?それとも抱かれる方?」

諒一は呆れかえった口調で言ってくる。
 「ったく、さっきまでは全然喋らなかったくせに、相手が私だけになると喋ってくるんだな」
 「どっち?」
 「そういうお前はどっちなんだ?まだ誰彼構わずか?」
 「私は一途だよ。遊びでは無い」
 「女遊びから卒業したのか。それは良かった、安心したよ」
 「で、諒一は?」
ニヤニヤしながら博人は聞いてくる。
溜息付いて、諒一は一言だけにした。
 「おやすみ」
そう言って横向いて寝たふりをする諒一を博人は揺さぶる。
 「こら、諒一、言うんだっ。私は知ってるぞ、婚約者はどうした?
そう…、言わないのなら、こうしてやるっ」

博人は諒一の脇の下や脇腹を擽っていく。
笑いを我慢していた諒一は、ついに声を立てて笑っていた。
 「あは、あはははっ…。
や、め、やめろ、博人っ…。くすぐったい…」
擽るのを止めない博人に苦笑しながらでも、諒一は嬉しかった。
 「ったく、本当に…」

目から涙を出しながら笑っている諒一に、博人はとどめを指す。
博人の顔が真面目になっているのを見て、諒一も真面目になる。
そんな諒一に、博人は口を開いた。
 「諒一、私は友明と暮らしている」
 「うん、その様だね」
 「私の恋人は、友明だ」

諒一は驚いて目を見開いてる。

博人は、クソ爺の方ではなく、恋人である友明の方をカミングアウトしたのだった。


そして、こちらは龍三の離れにある、部屋。
『御』とフランツが大人しくベッドを共にしている。
恐らく、今回が最後の日本滞在になるだろうと思い、エッチは控えて夜を過ごす。
まだ、幼かった頃の自分を思い出す。
年の離れた兄の結婚式に甥っ子の誕生。
だけど、兄を差し置いて自分がドイツに向かったのだ。
フランツに一目惚れして離れたくなかったからだ。

先代の『御』である、アダム=バーンズ・フォン・パトリッシュ。
貴方の血は途絶えるだろう。
マルクは死に、矜持は放浪してる。
恐らく、博人はドイツには来ない。そして諒一も日本での生活を楽しんでいるみたいだ。
残るはマルクの子と孫だが、彼等には向いてない。
アンソニーもポールと名を変え、博人とエドの側に居る。
儂の役目は、ここまでだ。
フォン=パトリッシュも、儂の代で終わりだ。
 「フランツ、起きてるか?」
 「はい、なんでしょう?」
 「アンソニーとエドに会いたい」
 「帰りに寄りましょう」
 「ああ、頼む」

フランツは言えないでいた。
博人が、フォン=パトリッシュの全てを知ってる事を。
でも『御』の、今の言葉を聞いて、新たに決意をした。
(御、ヒロト様は全てをご存知です。ですが、私はそれを貴方には申し上げません。
ご自分で終わらそうとされている。私は、貴方に付いて行くだけです…)



そして、こちらはジュニアを含め8人に師事していた元躾役兼文武の師匠二人。
武の龍三はご機嫌だ。
 「わははっ…、さすが和田だ」
文の和田もご機嫌だ。
 「アンソニー様はポールになって、こんな顔になってるのに、未だに私の睨み顔を目にすると俯いてしまうんですよ」
 「文の和田、復活だな」
 「アンソニー様は、元々スポーツ系の人ですからね」
その言葉に、龍三は遠い目をして応える。
 「アンソニー様の裏はアンソニー様しか使えないからな…。会いたいが、会わない方が良いだろう。まあ、近くに和田が居る事だしな」
 「データを差し上げますよ」
 「サンキュ。この顔を見てるだけで涙が出そうだが、それでも本人が、その顔を気に入ってると言ってるのだから、こっちは何も言えないな」
 「良い目くらましになってるみたいですしね」
 「あ、そっちか。なるほどね…」

瞬間だが、沈黙が落ちる。
和田が、その沈黙を破ってくる。
 「龍三。今、私はドイツに居た頃の気分になってるんだ。また、文武を師事するかい?
短期間になるけど…」
 「誰に?」
即答だった。
 「諒一様に」

あははははっ……。
 「博人様は入らないのか…」
 「パースでやってますからね」
 「そんなの必要ない、と言って逃げそうだな」
 「それを追い詰めるのも楽しいです」
 「乗った!」


 





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2 Comments

ますみ  

No title

私は男同士の会話、好きだからこのままでもオッケーです♪
フェロモン不足になったら脳内劇場に頼りますから~~(笑)。

みんな、それぞれ自分の道を歩き出・・、いえ、歩き続ける。
でも、交差したり並走するから、孤独ではないのよね。

桜が気持ちにピッタリ寄り添ってるみたいです。
桜餅も!

2016/03/28 (Mon) 10:35 | REPLY |   

あさみ  

Re: No title

ますみさんへ


男しか出てこない、今作。
しかも、爺さん同士の年寄りCPから、博人友明の中年CPまで、幅広い年齢層!w

はい、脳内劇場でお願いしますね~


そうです、孤独だけど、誰かと居るだけで嬉しいものです。
たとえ、クソ爺と言ってるお爺様だろうが…。


桜餅、大好きっ♪

2016/03/28 (Mon) 22:51 | REPLY |   

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