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二人のピエロ (64) ~最終話~

もう一人、ピエロになろうとしている人物がいる。
ポールだ。

マックスを始め、ミハエル、ショーン、ジョージはポールの事をドン呼ばわりしてくれる。
溜息付きながら相手をしてやるが、内心は嫌がってる。
だが、その葛藤に気が付かない元側付達では無い。
以前とは違い、色々と外の世界を見ては経験してきてるからだ。
そんな時に、ドイツからメールが着た。
 『新しい門出にメッセージを贈る。
ポール、お前らしくすれば良い。殻に籠っても良い。
側付は、皆が皆、既にドイツを卒業しておる。顎で使う事を覚えろ。
シンガポールの病院でボスをしていた頃とは違う。その事だけは、しかと覚えておけ。
エドとヒロト、そしてオーストラリア・ドンと一緒に生きていけ。
パトリッシュは、儂の代で終わりだ。
息災でやれ。   【御】 』



お爺様らしい文面に、ポールは思い返していた。
お爺様。
私は、ドイツやお爺様が嫌で反発したわけではない。
何が嫌なのか。
それはマルクだ。
マルクが嫌で嫌で、だから反発したんだ。
ドイツに戻れるのは嫌では無かった。むしろ嬉しかった。
監視役が付くのは当然だろうなとも思っていた。
その監視役がマルクという事だけで、繋がりを絶とうとしたんだ。
監視役がマルクでなければ、今頃はドイツのどこかの病院でボスをしていただろう。
同時に、色眼鏡で私を見て蹴落とそうとする輩も大勢いただろう。
それを思えば、今の自分は恵まれている。
なにしろイタリア王子を含め、あの連中は色眼鏡で見てこないからだ。
エドとヒロは、昔から私に色々な事を教えてくれる。
それに、ワダも居る。
なにより、大好きなトモも居る。

お爺様。
殻に籠っても良いのですか?
それならば、私は籠ります。
殻に籠ってもエドとヒロが居るし、何より自分達に色々と師事してくれたワダとイタリア王子が相談相手になってくれるし、フォローもしてくれる。
そう思うと、メールを返した。
『お爺様。
メッセージ、しかと受け取りました。
お爺様も、フランツと共にお元気で。』




そして、二人のピエロが誕生した。
一人は、オーストラリア・ドンと呼ばれ、恋人と子持ちのシングルファーザー。
もう一人は、『ブラック・ドラゴン』のボスとなったポールだ。
ポールに恋人は居ないが、親戚が居る。
エドとヒロトだ。
なにより、今度はトモも居る。
昔の蟠りは解けて、トモは私に笑顔を見せてくれるようになった。
まだ、日本で一緒に働いていた頃の様に。

だが、二人は違う道を進んでいる。
ポールが再びトモの横に立って歩んでいくには、まだ先の事である。




 「っ……」
そして、今夜も魘されて目が覚める。
未だに、あの悪夢から解放されない。
それでも、週に1,2回になってきてるのがせめてもの救いだ。
あれから何年だ………。
33歳になる年の5月だったから、13年半ほどか。
ふいに博人さんの言葉が過る。
 「迷惑云々は考えるな。
私が居る事を忘れないで欲しい。
9年間苦しんできたんだ。あと9年間は同じように苦しみ悩むと思う。」

ボソッと呟く。
 「あと最低でも6年か…。もしくは、それ以上になるだろうな…」
その呟きが聞こえたのだろうか、2本の腕が自分の身体に触れる。
その温もりは、自分を抱きしめてベッドに横たえてくれる。

そうだ、私には博人さんがいる。
完全に一人ではないんだ。
そう思うと、安心しては抱かれたまま眠りについた。



だが、宝石(いし)は気が付いた。
魘されて起きる原因を。
これは、自分の力ではどうする事も出来ない。
本人の乗り越えようとする力しか対処法はない。
なるほど、だからこその、あの言葉か。
宝石(いし)は、主である友明の言葉を思い出していた。
 「人間にとって一番の敵は、自分の心だ。逃げたくなる時もあるのが人間だ。
迷う時、泣きたくなる時もある。」

あの時は、強い精神力だけだと返したが訂正しよう。
 『精神力も必要だが、周りのフォローも大事だ。
我が主よ、我はフォローに徹しよう。
我を使え。そして、我を求めよ。
音楽を愛でるという気持ちを忘れるな。
心を癒してくれるのは、心に響いてくる音であり、心を紡ぐ声だ。
お前の側に居るバイオリンは、心に響いてくる。
そいつのバイオリンは、我の心までも動かしてくれる。
それに、お前は帝王学を学んでおる。それを使え、出し惜しみするな。』


トモアキ・フクヤマ。
我にとって、最高の主だ。
お前を、我の最後の主にしよう。
お前が死ぬと同時に、我も霧散となろう。
もう、主は待たぬ。

ヒロト・フクヤマ。
いや、本名で言わせて貰う。
ヒロト=ヴィオリーネ・フォン・パトリッシュ=フクヤマ。
かの初代『御』であるアダム=バーンズの直系の孫。
つい最近、家系を知ったばかりみたいだが、お前には知らせておこう。



宝石(いし)は、ヒロトの五感だけではなく、脳にも語り継げるように自分の見聞きしたことを伝えていく。それは何億年もの昔から現在に至るまでの、自分の主が見聞きした事柄だ。
地球だけではなく、他の恒星、プラネット、果ては神話の世界まで。
それ等を勝手に自分の中に押し込まれてる博人は、知りたくなくても知る事を強制された。
それらは夢ではなく、全てが現実に起こった事だ。

明日、目が覚めるとお前は知るだろう。

それは、これからの人生にとってどんな影響を及ぼすのか。
それは我だけでなく、誰も知らない。
それに、だ。
我を、その身体から追い出す事は出来ぬ。
我は、お前達二人に掛けよう。
ああ、もう一人いたな。あの幼き子供。


ソレは、呟く様に祈るように言葉にする。
 『我が主を選ぶのは、我には行動に動かす為の器が無いからだ。
だが、その器の持ち主が誰でも良いという訳ではない。
音楽を愛で、心の痛みを知ってる者。
そして、それを自覚しては克服しようと努力している者だ。
トモアキ・フクヤマ。
お前は殻に籠ってピエロとなり、あの連中を動かせ。その為の助力は惜しまぬ。』


その言葉が通じてるのかどうかは分からないが、ピエロになろうとしている友明と、側に寄り添う様に抱きしめている博人の二人は、これからの運命がどうなるのかは知らない。
恐らく、逆らう事無く受け入れるであろう。






















‐ 完 ‐







☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。
最終話です。
読んで頂きありがとうございました<(_ _)>


そして、ピエロとなった友明とポール。
この二人は、これからどうなるのでしょうね?_?

この続きのネタが、ほんの少ししか出来てないので、未だ分からずです。。。



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