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お前の帰る場所は俺の所だよ (8) 

俊平は、大学から帰ってきた治の母親との会話を思い出していた。

 「俊ちゃん、今まで治の世話をしてくれてありがとう」
 「おばさん、どうしたんです?」
 「治は一人暮らしさせるから」
 「は?」
 「あの子は俊ちゃんに頼り切っている。今のままだと、あの子は甘えることしかできない。もっと挑戦していって欲しいの」
 「それは、学生生活以外のことですか?」
 「そうよ。俊ちゃんが高校から大学卒業して数年ほど仕事してたよね。その間の暮らしはどうだったのか、どういう思いで生きていたのか。それを考えると、治にも生きて欲しいの」

その真面目な表情のおばさんは、治のことを本気で思っている母親の顔だった。
 「俺は走ることで自分を主張したかった。でも治の側に居たかった。だから、そのまま特待生として大学に進んだ。教職に就こうと思ったのも、治を手助けしたかったから。俺は治を中心にした生活を送りたかった」
 「自分中心の生活をして」

強い口調で言われハッと気がついた。
 「甘えているのは、俺の方ですね。申し訳ありません」
 
今度は優しい、いつもの口調に戻っていた。
 「治の一人暮らし、賛成してくれる?」
 「はい、賛成します」


先ほどの治の泣きそうな表情を思うと、こっちまで泣きそうになってくる。
俺にとって治は可愛い弟から好きになり、愛の対象にまでなった恋人だ。

でも、おばさんには俺を養子にしてくれて世話を焼いて貰った恩がある。
それを裏切って俺は治に手を出したんだ。

でも、これ以上は裏切ることはできない。

そうだな。
これは、俺自身の挑戦でもある。
治が先か。
俺が先か。
どちらが先にギブアップするだろうか。

それでも、今の治のことを考えると甘えた根性ではできない。

気を引き締めると治の部屋のドアをノックして声を掛けて中に入る。
 「治、入るぞ」






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