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自分の道は自分で決める! (79) 

 このスイミングスクールは都内でも有名な所だ。
 あのお母さんだって最初は近場で良いと言ってたのだけど、テストを受けて合格したから許してくれたんだ。
 そんなスイミングスクールにヨシは、どうやって入れたのだろうか。
 
 帰りのバスでヨシは話しかけてくる。
  「なあ、俺ばっか話しているのだけど。マサは、いつも何してるんだ?」
 
 なにも言わず目を瞑って黙っていたら覗き込んでくる。
  「おーい。マサー」
 
 ちょんちょんと指で頬を押してくる。
 嬉しいのやらくすぐったいのやら、なんか久しぶりな気分だ。
  「なあ、もしかして寝てる?」
 
 その言葉に思わず目を開けてしまった。
  「約束したから……。もう話しかけてこないだろうと思っていたのに……」
 
 そんな僕の言葉をいとも簡単にヨシは返してくる。
  「バーカ。あん時、お前のおばさん、近くに居て聞いてたんだぞ」
  「友だちは、ヨシだけだったから……。ずっと、1人で。死ぬまで、1人でいようと思って」
  「バーカ。本当に真面目だよなあ」
 
 
 バカ呼びしてくるヨシに話しかけられるのが嬉しくて、話していた。
 週2日の剣道と水泳と塾。
 残り1日は家で勉強していると。
 
 ヨシは呆れた口調で言ってくる。
  「まるで未来の警視総監だな」
  「なに、それ」
  「よし、決めた。俺も未来は刑事になる。マサが総監なら、俺は副総監だ」
  「ヨシ……」
  「そうと決まれば、剣道は必要だな」
  「勉強もね」
  「う……、ま、そ、それもそうだな」
 
 なにやら考えていたらしく、頭を左右に振りながら言ってくる。
  「いやいや、マサと一緒なら勉強も苦じゃ無い」
  「ヨシ。お前、まさか」
  
 ヨシは決めたみたいだ。
  「なら、今日は、このままマサの家に行って話しをしよう」
  
 その言葉に、お母さんがどう反応を示すのか。
 それが怖かった。
 
 僕が殴られるのはいいが、ヨシまで殴られたらどうしよう。
 そういう思いが過ったからだ。
  「ヨシ―」
 
 
 ヨシは有言実行の人間で、物怖じすることなく話をし出した。
 その話を最後まで聞いてくれた両親に、ありがとうという気持ちが湧いてきた。
 お父さんが言ってきた。
  「正孝が警視総監で、君が副総監か」
  「これから頑張れば、きっとなれます」
  「20……、いや、40年後が楽しみだな」
  「ありがとうございます」
 
 でも、お母さんは反抗的な言葉だった。
  「頑張ってもなれるものと、なれないものがあるのよ」
  「夢や目標は大きいほどやり甲斐があると思っています」
  「正孝はなってもらわないと困るけど、君は」
  「マサは、おばさんとの約束を守って死ぬまで1人でいるつもりだと言っていたけど、そんな悲しいことを言わせたくない」
  
 その言葉に、お母さんは僕を見る。
  「正孝、いったい何を」
  
 お母さんの言葉を遮るようにヨシは話しだした。
  「マサと話すことも遊ぶこともしなくなったけど、俺はずっと見てきた。マサは、幼稚園では誰とも話をしていない。幼稚園の先生だろうが口を利かずに先生を困らせていた。このまま生きるゾンビになって欲しくない。だから俺が守ってやる」
 
 もう、何も言えなかった。
 その場に蹲っていた。
 
 
 



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