FC2ブログ

自分の道は自分で決める! (71) 

 無事にパースに帰り着いた。
  「うー……、寒い」
  「ったく、暑いと言えば、今度は寒いかよ」
  「冬だから仕方ないだろ」
 
 ヨットから下りると裏口に向かう。
  「ただいまー。2号どんな?」
 
 
 顔を覗かせると唸ってくる。
  「え、なんで」
  「真っ黒な顔だ」
  「あ、そうか。顔は塗ってないや」
  「イヨン、新しいのに替えてやる」
  「ねえダウンクリームはどこ?」
  「時間掛かるぞ」
 
 ショーンが2号の水と餌を新しく替えて暖炉に薪を焼べている間、ダウンクリームを塗ったくっていた。吠えることはないが匂いを嗅いでいた2号は、そのうちソファの足下に寝そべる。
  「あー……、明日には元に戻ってますように」
  「だから時間掛かるぞ」
  「なんで、もっと早く言ってくれなかったの」
  「まさか板で寝るとは思わなかったからな」
  「ショーンは焼けて」
  「ない」
  「断言するのか」
  「言っておくが、俺の上に寝っ転がったから、背中にダイレクトしたんだ」
 
 頭の中で、その図を描く。
  「気付くのが遅かったのか」
  「そういうことだ。起こしても起きなかったから抱きかかえてベッドに運んだんだ」
  「そういえば、目が覚めたらベッドだったな」
 
 溜息をつかれる。
  「こんな鈍い奴に何度も手錠を掛けられていたのか……」
 
 腹が立ち、言い返してやる。
  「私より鈍い奴がいたということだね」
  
 そう言うと睨まれた。
 スズメ2号、もといシンの言葉が頭を過る。
  「目つきの怖い人」
  「端整な顔立ちをしたナイスガイに間近で睨まれて本当に怖かった」
 
 そうだな。
 人を殺すことを仕事にしている人だ。
 本気で睨まれるとビビルよな。
 思わず口にしていた。
  「本当に……、ショーンって端整な顔立ちをしたナイスガイだよな」
  「どした? 頭の中も日焼けしたのか?」
  「してませんっ」
 
 
 私はインターポールでデカをしていたから怖いとかビビルこともなかった。
 黙って離れられると寂しい。
 それだけだ。
 だから、その日のうちに思い切って荷物を全部こっちに持ってきたんだ。
  「なんだ、これは」
  「今日から、ここで暮らす」
  「本気か?」
  「そうだよ。もう一度言うけど、この気持ちがなんなのか自分でも分からない。ただ言えるのはこれだけ。ショーン、私は君を愛しているとは思ってない。でもね、一緒に居たいのは本当なんだ」
  「マサ……」
  「嫌いじゃないし、第一、ここに居ると楽しい」
  「俺の仕事がなんなのか知ってるだろ」
  「知ってるよ。2号も懐いてくれるしね。でも2号が居なかった3年間、ずっと寂しかった。一人になりたい時、ショーンに会いたい時は来ていた。ここに居れば会えると思っていたんだ。でも、目が覚めると誰も居ない。そして一段と寒くなる。もう、この繰り返しは嫌なんだ」
  「まるで告白されてる気分だな」
  「ショーンは愛なんて要らないって言ってたよね。私は親から愛して貰ったことはない。都合の良い奴隷だった。だけど、日本を出てフランスに行ってからは人間になったんだ」
  「犬になっただろ」
  「仕事のね。でも心まではなってなかった。自由なショーンに憧れていた。だから一緒に居たいんだ。いいだろ」
  「貶されることもなく素直に言われたのは初めてだ」
  「ショーン」
 
 ショーンは仕方ないなと言いながら、こう言ってきた。
  「いいか。俺の仕事を忘れるな」
  「ありがとう。2号、これからは毎日おれるよ。よろしくね」
 
 そう言うと、2号は意味が分かったのだろう。尾を振って応じてくれた。
 
 
 


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ





同棲が始まる。

関連記事

0 Comments

Leave a comment