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自分の道は自分で決める! (56) 

 その頃、マサはショーンの腕の中で寝ていた。
 目が覚めスマホを見ると13時半になろうとしている。
 そろそろ行かないと、と思っていたらLINEがくる。
 
 アプリを開くと、珍しく長文だ。
 ーボス
  仕事帰りの博人さんが、チャーチを出たばかりの2人に声をかけられ、そのまま連れて帰ってきた。だから迎えはいらない。ちなみに今日は13時に終わったらしい。悪かったな。
 
 その文面に、こう返す。
 『無事に帰り着いたのなら良かったよ』

 
 いつもなら14時にチャーチの門が開き帰宅時間になる。
 1時間早めの帰宅だったのなら仕方ないな。
 
 
 それから一ヶ月後。
  「仕事が入った。こいつをよろしく」
  
 そう言ってショーンはパースを発った。
 
 こいつって、この犬なのか。
 エドの犬でさえも中々懐いてくれず言うことも聞いてくれないのに、どうすればいいんだろう。
 可愛さの欠片がない。
 研ぎ澄まされた感覚を持っている。
 まるでショーンみたいな犬だ。
 
 その犬と暮らしだして1週間経った頃、やっと食料を口にしてくれた。
 ショーンが居た頃は抵抗することもなく口にしていたのになめられているのかな。
 
 どれぐらいの期間を一人と一匹で過ごしていただろう。
 いつの間にか43歳になっていた。
 1年以上、こうやって過ごしていることになる。
 
 むっくりと顔を上げ、ソファの足下に陣取るように座る。
 あまり間を置かずドアが開く。
 
  「いい子にしていたか」
 
 
 ショーンだ。
 ショーンが帰ってきた。
 
 懐くことも甘えることもしない。
 この1人と一匹は言葉は通じていなくても信頼しあっている。
 悔しいが見ていれば分かる。
 
 ショーンはさっさと部屋に入っていく。
 そうだ、飲み物だ。
 そう思いキッチンに入り飲み物をトレイに載せて持ってくると、ショーンの部屋のドアが開いた。
 声を掛ける。
  「ショーン、お帰り。ウエルカムドリンクならず、お帰りドリンクだよ」
  
 クスッと笑ってくれる。
 レアな表情を見せて貰った。なんて思っていた。
  「ただいま。ありがとう」
 
 そう言い、ドリンクを飲んでくれた。
  「その仕事って途切れることが無いんだね」
  「需要と供給があるからな」
  「昔から思っていたけど、私には無理だな」
  「ま、ドクターに人殺しはできんよな」
  「次は連れて行って」
  「俺の仕事ぶりを見たいってことか?」
  「違う。私でなく、彼を」
 
 彼?とハテナな表情をしたショーンはチラッと犬を見ている。
  「手が焼けると?」
  「私といるより、ショーンといるほうが楽しそうだから」
  「国内ならいいが、国外になると手続きが面倒なんだよなあ」
  「どうやって連れてきたの?」
  「ヨットで」
  「はあ?」
 
 
 ショーンは2号に向かって声をかけている。
  「太ったか? 運動不足かな。ならヘソに釣れてってやる」
  「ヘソってどこ?」
  「地球のヘソ」
  「エアーズロックか。たしかに運動に適してるかも」
  「だろ。明日連れてってやる」
  
 優しげな表情と目で犬を見ている。
 散歩には連れて行ってるが、運動とは言えないな。
  「それじゃ、仕事だから。あとよろしく」
  「これから? いつ戻ってくる?」
  「明日の朝9時半頃かな」
  「遅いな」
 
 その言葉が嬉しい。2号を優しく触り声をかけてやる。
  「じゃ、行ってきます。ショーンからご飯貰えよ」
  「人間の飯は?」
  「カレーがある。温めて食べて」
  「カレーか。嬉しいな」
 
 
 嬉しそうな表情をしているショーンを見ていると、こっちも嬉しくなる。
 なので、いい気分で仕事に向かった。
 
 
 
 

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