FC2ブログ

自分の道は自分で決める! (18) シンガポールにて

 善は急げと言う言葉があるとおり、翌月の9月付けでフランスのインターポールへ入庁した。
 日本のように終身雇用でないので、3年か5年の契約になる。迷わず5年契約にした。
 ただ、日本では刑事と言っても雑用ばかりだったので、基礎的なことも分からず苦労していた。肝心の言葉の壁というのは難なく読み書きもできるし理解もできるからいいのだけど、当時のボスには手を焼くなあと言われたほどだった。
 フランスでの仕事と生活に慣れた翌年の5月、シンガポールで開催される医者の集まりのガード役に抜擢された。
 フランスからは5人のビッグドクターが向かうため、タイマンでのガードになるらしかった。
 だが、その集まりは最初の数日間だけで、残りは銃撃戦により閉じられることになった。
 
 重軽傷者もだが、死者数も桁違いで人種も様々だ。
 フランスからのビッグドクター5人は無事だったので、ボスに彼らのガードを任せ帰国のゲートを見送った。
 首謀者も、どうしてこうなったのかも分からず、残りの数日間を4人で調査に充てる。
 
 
 ふいに名前を呼ばれたような気がした。
 どこから。
 誰なのだろう。
 
 その声がしたほうに足を向けていた。
  「マサ?」
  「どこ行くんだ?」
  「待てよ。おいっ」
 
 その3人の声は無視して、先ほどの声に叫んでいた。
  「誰だっ! 私を呼んだのは誰だっ」
 
 返事がない。
 こっちの方から聞こえたと思ったのだけど違うみたいだ。
 仕方なく方向を変えようとしたら何かに躓き転げてしまった。
  「てえっ」
 
 転げた先には見知った顔があった。
 目は開いているが失神しているのが分かる。身体は土の下に隠れているみたいだ。
  「な……。ど、して……。カズ……、カズキー」
 
 私を呼んだのは、カズキ、お前か――。
 
 
 家の番号なんて知らない。
 だからLINEを起動し誰かと連絡が付けばと願っていた。
 
 真っ先に反応がきたのはユタカだった。
  ”どうした。久しぶりだな”
  ”ああ、久しぶり。今、シンガポールに居るのだが、カズキと会っているんだ”
  ”カズキと?”
  ”私は仕事で来ていて、明日には戻らないといけない。カズキの親の電話とか知らないか?”
  ”調べて連絡する”
  ”よろしく”
 
 
 連絡がくるまで応急処置をするつもりだった。
 擦り傷がたくさんあり、殴打などは見当たらなく安心したものだった。そのとき、パスポートとビザと、帰りの日付がオープンになっている飛行機のチケットが身体に巻き付けてあった。見てみると、シンガポールの多国籍病院で医者として勤務していることが分かった。思わず声に出ていた。
  「へえ、凄いな。医者として活躍しているんだな」
 
 カズキの家の番号を教えて貰ったので電話すると、今日の便で日本に帰らせることにした。
 空港まで見送った私は、そのときカズキの声を聞いてないことに気が付いた。
  「カズキ、お前」
  「ありがと」と言ってるのか、声は聞こえないが口はそう動いている。
 
 目の前で銃撃を見たのなら一時的なショックを受けて言えないのかもしれない。
 そう思っていた。
 ふいに低い声の三重奏が聞こえてきた。
  「マサ」
 
 その声で気が付いた。
 やばい、すっかり私事で動いていた。
 振り返り3人に謝る。
  「ごめん、ごめん。仕事モードに戻るから」
  「友だち?」
  「大学時代の一番仲がよかった仲間だよ」
  「生きててよかったな」
  「そうだね。安心したよ」
 
 カズキは目が覚めると、ずっと私を抱きしめ離れようとしなかった。
 食欲はあるみたいでガツガツと食べていたのを見ると安心したものだ。
 ああ、そういえばゲップを出していたな。
  「……ップ」って。
 
 そうだ。
 ゲップを出していたときは声というか、音が聞こえていた。
 そのことも含めてユタカにその後の報告をLINEで送ったものだった。
 そしたら、OKと返事がきた。
 
 
 再度、仕事モードに入った私は皆と一緒に空港から出た。
 途端に背と右耳の上に何かを突き付けられる。
 気配を感じなかった。
 誰だ。
 リーダー、これは誰?
 
 声が届かなかったみたいだ。
 今度は、声を最大にする。
  「リーダーっ! わ、私のっ」
 
 リーダーは振り向いてきた。
  「急に大きな、……なっ」
  「えっ」
  「マサッ」
 
 
 
 

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




関連記事

0 Comments

Leave a comment