クルーザーで太平洋巡り! (23)
そしてクルーザーは赤道沿いに、日本へと向かう。
ポケットと徹君を降ろすためだ。
ポケットが操縦して沖縄へと向かう。
ヨットで飛行場のある沖縄本島へ向かい、見送る。
「ボスに会えて嬉しかったよ」
「ありがとう。悟に渡して貰いたいのだが、いいか?」
「いいよ」
今度は徹君だ。
「徹君、これを優介に渡して貰えるかな」
「はい、渡しておきます」
「言っておくが、私の空手は無視していいからね」
「かっこよかったので真似したいです」
「無理だよ。悟も言うと思うが、誰にも真似できないから」
「そんなことを言われると、俄然やる気になってきました」
「ま、痛い目を見ることも勉強かな」
「痛い目とは、どういうことでしょうか?」
「そのときに分かるよ。それじゃ元気で」
「友明さんも、お元気で。とっても楽しかったです。ありがとうございました」
その態度を見て、思わず呟いてしまった。
「優介は、本当にいい親友と巡り会えたんだな」
その言葉が聞こえたのだろう。
徹君は照れている。
クルーザーに戻ると博人さんはショーンに声を掛ける。
「ショーンは何処で降りる?」
「中国大陸なら、どこでもいい」
「私たちはシンガポールに行くんだ。そこでもいいかな?」
「ああ、いいよ」
「了解」
クルーザーの操縦士が博人さんに代わる。
シンガポールのハーバーに着く。
そこからフェリー乗り場まで徒歩で向かう。
ショーンが博人さんの名を呼ぶ。
「ヒロ」
「ショーン。私たちは、あの頃の関係には戻れない」
「分かってる。だけど」
「アドバイスをあげる。ショーンも固定を持てば分かるよ」
「俺は」
「第一、理想とするタイプが高過ぎだよ」
「自分で言うのか」
「私だって考えて迷って色々な経験をして決めたんだ。特別な相手でなくてもいい。お気に入りの人が現われるまでアンテナを張り巡らすといいよ」
「俺は」
「ショーンと会うのは、これが最後だ」
あまりにも強い口調ではっきりと告げた、その言葉にショーンだけでなく私も固まる。
「元気で。Good Luck」
「ヒロ……」
どれぐらい、そこに立っていただろうか。
既にヒロの姿は見えない。
「ヒロ。それでも俺は忘れない」
届かないだろうが、呟いてしまう。
「ヒロ。俺は、君が好きだ。君は女にしか興味を持たなかったから諦めていたのだが、男に目覚めたのなら俺にも分がある。そう思っていたのだが違ったみたいだな」
シンガポールの人のざわめきが俺の呟きを消してくれる。
あの銃撃戦が暴発したとき、ここら一体は惨状と化していた。
現在では、名残は一欠片も残ってない。
ハットを深く被り目を瞑る。
少し経つとパートナーに声を掛けてやる。
「イヨン、帰るぞ」


ポケットと徹君を降ろすためだ。
ポケットが操縦して沖縄へと向かう。
ヨットで飛行場のある沖縄本島へ向かい、見送る。
「ボスに会えて嬉しかったよ」
「ありがとう。悟に渡して貰いたいのだが、いいか?」
「いいよ」
今度は徹君だ。
「徹君、これを優介に渡して貰えるかな」
「はい、渡しておきます」
「言っておくが、私の空手は無視していいからね」
「かっこよかったので真似したいです」
「無理だよ。悟も言うと思うが、誰にも真似できないから」
「そんなことを言われると、俄然やる気になってきました」
「ま、痛い目を見ることも勉強かな」
「痛い目とは、どういうことでしょうか?」
「そのときに分かるよ。それじゃ元気で」
「友明さんも、お元気で。とっても楽しかったです。ありがとうございました」
その態度を見て、思わず呟いてしまった。
「優介は、本当にいい親友と巡り会えたんだな」
その言葉が聞こえたのだろう。
徹君は照れている。
クルーザーに戻ると博人さんはショーンに声を掛ける。
「ショーンは何処で降りる?」
「中国大陸なら、どこでもいい」
「私たちはシンガポールに行くんだ。そこでもいいかな?」
「ああ、いいよ」
「了解」
クルーザーの操縦士が博人さんに代わる。
シンガポールのハーバーに着く。
そこからフェリー乗り場まで徒歩で向かう。
ショーンが博人さんの名を呼ぶ。
「ヒロ」
「ショーン。私たちは、あの頃の関係には戻れない」
「分かってる。だけど」
「アドバイスをあげる。ショーンも固定を持てば分かるよ」
「俺は」
「第一、理想とするタイプが高過ぎだよ」
「自分で言うのか」
「私だって考えて迷って色々な経験をして決めたんだ。特別な相手でなくてもいい。お気に入りの人が現われるまでアンテナを張り巡らすといいよ」
「俺は」
「ショーンと会うのは、これが最後だ」
あまりにも強い口調ではっきりと告げた、その言葉にショーンだけでなく私も固まる。
「元気で。Good Luck」
「ヒロ……」
どれぐらい、そこに立っていただろうか。
既にヒロの姿は見えない。
「ヒロ。それでも俺は忘れない」
届かないだろうが、呟いてしまう。
「ヒロ。俺は、君が好きだ。君は女にしか興味を持たなかったから諦めていたのだが、男に目覚めたのなら俺にも分がある。そう思っていたのだが違ったみたいだな」
シンガポールの人のざわめきが俺の呟きを消してくれる。
あの銃撃戦が暴発したとき、ここら一体は惨状と化していた。
現在では、名残は一欠片も残ってない。
ハットを深く被り目を瞑る。
少し経つとパートナーに声を掛けてやる。
「イヨン、帰るぞ」
