貴方がいる。それが強くなれる秘訣だ! (10)
エドは呆然としている。
「そんなことがあっただなんて……」
「トモの、オファーは断ったから言う必要はないと思ったんだ」
ヒロが口を挟んでくる。
「私は現場に居た。その現場視点から言ってもいいかな」
ちらっとトモのほうを見る。
顔色のないトモはなにを思っているのだろう。
「トモ、大丈夫か?」
微かだがトモは頷く。
「本当に大丈夫なのか?」
声は出ないが頷いている。
そんなトモにポールは声を掛ける。
「いきなり話してしまって、ごめん。トモ。私は悔しいんだ」
その言葉にエドは聞いてくる。
「なにが悔しいんだ? トモを救えなかったからか?」
「違う」
「即答か」
「各部署への連携が取れなかった。それが一番悔しいんだ」
「どういう意味だ」
「私の代わりに誰かがやってくれたみたいで。私が落ち着いていれば対処していただろう。だけど私はしなかった。感情的になっていたんだ。私は、ボス失格だった」
ヒロは穏やかに口を挟んでくる。
「その誰かとは、室長だよ。彼は各部署へ顔を出し巡回だけでなくフォローもしていた。だけど、それはボスの仕事ではない。ボスでない誰かがしていくものだと思っているよ」
「でも……」
「現場視点から言わせて貰う。その室長は皆に、こう言っていた。『落ち着いて通常通り仕事をしろ。ボスは今回の件で色々と手を回し調べているから安心しろ。現場は私に任せると言ってくれた』とね」
つっ……と目から一筋の涙が流れ落ちる。
「ポール。いや、アンソニー。彼は、お前を見ていなくても見ているんだよ。誰かに任せてもいいんだよ」
「私は……、私は、自分で」
エドが頭を撫でてくれる。
「うんうん。よくやった。偉い、偉い。うん? ヒロ、トモもだ」
声を掛けられたヒロは隣に目をやると、鼻水を出しながらティッシュペーパーを手探りで引き寄せているトモを抱きしめてやる。
「トモ……」
「っ……」
「一つ一つ乗り越えていこう。ゆっくりな」
なにも言えないトモは黙ってペンを取る。
「ごめん。今はなにも言えない。30分休憩欲しい」
「顔洗ってくる」
と書いた二枚の紙を博人の眼前に出す。
「30分でいいのか?」
と言う声に頷く。
「分かった。ポールも顔洗っておいで」
「いいの?」
「いいよ。さっきのキッチンを使って。洗面所はトモが使うから」
「じゃ、キッチン借ります」
ヒロはエドとワダに話していた。
「お酒より、紅茶のほうがいいね」
「でも、せっかくだから飲む」
そう言うと、エドは一気に煽った。
ゲホゲホっ……。
咽せているエドに言っていた。
「エドも顔洗っておいで」
ワダも言ってくる。
「とても辛そうなお顔をされてますよ。酸っぱい、辛いでしょう」
その言葉にエドは頷くとキッチンに向かった。
博人と和田は笑いながら言っている。
「こんなお酒を一気飲みするなんて日本人でもいませんよ」
「そうだね。私は熱湯で割るかな」
「私は実を食べるほうですね」
「飲まないのか」
「その時の気分によりけりです」
まあ、確かに梅酒を原液のままで、ストレートで一気に飲む人っていないよな。

にほんブログ村

「そんなことがあっただなんて……」
「トモの、オファーは断ったから言う必要はないと思ったんだ」
ヒロが口を挟んでくる。
「私は現場に居た。その現場視点から言ってもいいかな」
ちらっとトモのほうを見る。
顔色のないトモはなにを思っているのだろう。
「トモ、大丈夫か?」
微かだがトモは頷く。
「本当に大丈夫なのか?」
声は出ないが頷いている。
そんなトモにポールは声を掛ける。
「いきなり話してしまって、ごめん。トモ。私は悔しいんだ」
その言葉にエドは聞いてくる。
「なにが悔しいんだ? トモを救えなかったからか?」
「違う」
「即答か」
「各部署への連携が取れなかった。それが一番悔しいんだ」
「どういう意味だ」
「私の代わりに誰かがやってくれたみたいで。私が落ち着いていれば対処していただろう。だけど私はしなかった。感情的になっていたんだ。私は、ボス失格だった」
ヒロは穏やかに口を挟んでくる。
「その誰かとは、室長だよ。彼は各部署へ顔を出し巡回だけでなくフォローもしていた。だけど、それはボスの仕事ではない。ボスでない誰かがしていくものだと思っているよ」
「でも……」
「現場視点から言わせて貰う。その室長は皆に、こう言っていた。『落ち着いて通常通り仕事をしろ。ボスは今回の件で色々と手を回し調べているから安心しろ。現場は私に任せると言ってくれた』とね」
つっ……と目から一筋の涙が流れ落ちる。
「ポール。いや、アンソニー。彼は、お前を見ていなくても見ているんだよ。誰かに任せてもいいんだよ」
「私は……、私は、自分で」
エドが頭を撫でてくれる。
「うんうん。よくやった。偉い、偉い。うん? ヒロ、トモもだ」
声を掛けられたヒロは隣に目をやると、鼻水を出しながらティッシュペーパーを手探りで引き寄せているトモを抱きしめてやる。
「トモ……」
「っ……」
「一つ一つ乗り越えていこう。ゆっくりな」
なにも言えないトモは黙ってペンを取る。
「ごめん。今はなにも言えない。30分休憩欲しい」
「顔洗ってくる」
と書いた二枚の紙を博人の眼前に出す。
「30分でいいのか?」
と言う声に頷く。
「分かった。ポールも顔洗っておいで」
「いいの?」
「いいよ。さっきのキッチンを使って。洗面所はトモが使うから」
「じゃ、キッチン借ります」
ヒロはエドとワダに話していた。
「お酒より、紅茶のほうがいいね」
「でも、せっかくだから飲む」
そう言うと、エドは一気に煽った。
ゲホゲホっ……。
咽せているエドに言っていた。
「エドも顔洗っておいで」
ワダも言ってくる。
「とても辛そうなお顔をされてますよ。酸っぱい、辛いでしょう」
その言葉にエドは頷くとキッチンに向かった。
博人と和田は笑いながら言っている。
「こんなお酒を一気飲みするなんて日本人でもいませんよ」
「そうだね。私は熱湯で割るかな」
「私は実を食べるほうですね」
「飲まないのか」
「その時の気分によりけりです」
まあ、確かに梅酒を原液のままで、ストレートで一気に飲む人っていないよな。

にほんブログ村
- 関連記事
-
- 貴方がいる。それが強くなれる秘訣だ! (12) テスト開始!!
- 貴方がいる。それが強くなれる秘訣だ! (11)
- 貴方がいる。それが強くなれる秘訣だ! (10)
- 貴方がいる。それが強くなれる秘訣だ! (9)
- 貴方がいる。それが強くなれる秘訣だ! (8)