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好きになったのは年上で意地悪な人 (83) 

 怜は父親に言っていた。
  「親父、この3人を止めて」
 
 その言葉にため息がでそうになった父は、仕方なく言ってやる。
  「そこまでして私の居場所を突き止めてどうする気だ。智弥、お前には家をやっただろう。それに生前分与で4人に分けたはずだ。これ以上なにを搾り取ろうとするんだ。何も残ってないぞ」
 その言葉に即座に応じたのは末っ子の怜だ。
  「親父には、残りの人生が残っているでしょ。この3人は、それを狙っているんだよ」
 
 3人の声が重なる。
  「怜っ」
  「私を殺すのか? にしては」
  「違うよ。俺は親父が好きだから側に居たいの。兄貴たちとは違う」
 
 兄貴と呼ばれ、長男が口を挟んでくる。
  「怜、お前は誰に養ってもらったのか忘れたのか?」
  「親父だよ」
  「俺のはずでは……」
  「小学校卒業するまではずっと一緒だった。兄貴は俺が小学校卒業すると大学を卒業して家から出た。しゅう兄やけい兄も俺が中学を卒業すると家から出て行った。俺には親父だけが頼りで、唯一の肉親だ」
 
 はっきりと拒否られたのは初めてで、3人は苦虫を噛みつぶした表情になっている。
  「あー……、年が離れてるからなあ」とは次男が、
  「怜は生粋のファザコンかあ」とは三男だ。
 
 これまた、きっぱりと言ってやる。
  「だから、俺は親父の側に居たいの」
  「婿養子に入ったくせに」
 
 その言葉にキレかかりそうになる自分を、ここは会社だと押さえていた。
  「忘れたの? 兄貴が結婚して家から追い出したくせに。しゅう兄だって家を追い出されて居場所がないからと言って会社を創って会社で寝泊まりして。けい兄はフランスへ修行しに行った。親父はいろんな国を3年から5年で行ったり来たりの風来坊で……。 皆して自分勝手なんだからっ」
 
  「でもな、それとこれとは違う。今日、ここに来たのは親父を突き落とした犯人の顔を見るためだ」
  「しゅう兄、本当に見るため?」
  「そうだよ。食ってかかってるのは兄貴で、恵斗なんてガンを付けてるだけだ」
 
 ったく、こいつらは。
 ため息を吐いた父親は長男に言ってやる。
  「とっとと帰れ」
  「言われなくても。怜、しっかり親父を見張れよ」
  「俺、専務秘書なんだけど」
  「犯人の?」
  「違う」
 
 
 いや、このままだと害を呼ぶ。
 そう思い当たった父親は牽制の意を込めて言ってやる。
  「智弥」
  「なんだ」
  「入院しててオファー掛かってないんだ。掛けるか?」
  「んー」
  「兄貴、やめといたほうがいいよ」
 
 次男にも言ってやる。
  「修司のほうでもいいぞ」
  「パスさせてもらう」
  「そうか。私の居場所を突き止めようと尽力しなくて済むぞ」
 
 その言葉に3人の足が止まる。
  「盗聴器とかGPSとか付けなくていい。無駄な出費が抑えられる。違うか?」
 
 三男の声が反応する。
  「ちなみに、いくら?」
 
 その言葉に、会社から配布されているスマホで、あるサイトを画面にだし見せてやる。
  「イタリア?」
  「違う、ドイツ語だ」
 
 4人が覗き込む。
  「なにっ」
  「凄い、平均950だなんて」
 
 末っ子の、その言葉に応じてやる。
  「ここは知り合いが多いから700で手を打ったんだ。それと言っておくが、私は再婚なんてする気ないからな」
  「なんだよ、急に」
  「父親は風来坊だったため死んだ、と言えば済む問題だ」
  「なんのことか」
  「さっき恵斗が言ってただろう」
 
 三男の「あ、やばっ」という声が出てくる。
 その声に、長男と次男は睨み付けてやる。
  「恵斗、お前はあ……」
  「ごめん、ごめん。つい」
  「つい、で済むと思うなっ」
 
 双子の兄に叩かれ三男は叫んでいた。
  「よくも料理人の手を叩いたな。しゅう。後で覚えてろっ」
  「それぐらいで鈍るなら料理人やめろ」
 
 長男が口を挟む。
  「兄弟喧嘩は、そこまでだ。ここに来た目的を忘れるな」
 
 その言葉に、双子は頷いた。
 
 
 

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