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好きになったのは年上で意地悪な人 (65) 最後の秘書研修

 担当だから早めに着くように行く。
 秘書課長の話から始まり、夕食まであっという間に過ぎる。
 夕食後は、スポーツの時間だ。
 なにをするのだろうと思っていたら、器具を設置している。
  「佐藤君、それは」
 
 担当者の佐藤君は、にこやかに応じてくれる。
  「今時は、移動式というのがあるのですねえ」
 
 すると声を張り上げる。
  「それでは、紹介します。本日のスポーツはスポーツジムで働いている私の弟です。自己紹介よろしく」
 
 話を振られた佐藤君の弟は元気よさそうだ。
  「ってえなあ、叩くな。初めまして、佐藤茂です。東響大学の正門近くに在るスポーツジムで働いています。本日はよろしくお願い致します」
 
  「東京大学って……、赤門の近くにスポーツジムってあったっけ」
  「いえ、そっちのほうでなく、東に響くと書く東響大学です」
 
 思わず聞いていた。
  「もしかして、そこの卒業生?」
  「はい、そうです」
 (うへぇ、俺と同じ大学の後輩かよ)
 
  「それでは準備体操します。両腕を伸ばして他の人に当たらないように広がってください」
 
 準備体操が終わるとマットに向かって並ぶように言われたので、皆で二列に並ぶ。
  「前転でマットの端まで転がります。メガネはスポーツウェアのスタッフに預けてください。では始めます」
 
 うへえ、前転だなんていつぶりだろう。
 そう思っていたら、「もう一度します。今度は、そっちからこちらへ戻ってください」と言われた。
 なんか、これだけで目が回りそうだ。
  「運動不足の方が多いようですね。水分補給してください。次は平行棒を渡りますので、設置し終えるまで待ってください」
 
 そんなにも待つ時間はかからなかった。
 半数は一人で歩けるが、残り半数はスタッフに手を引かれて歩いてる。
  「これは思ったよりも多いな。計画変更して山にするか」
  「はい。山に設置し直します」
 
 山ってなんだろうと思っていたら、設置していた鉄棒器具を低くし、平行棒6本とも並べ置き、骨子にしている。その上にマットをかぶせている。 たしかに山だ。
 
  「次は、このマットで作った山を上り下りしてもらいます。スタッフは手伝いますが、できるかぎり自力でお願いします。手本を見せますね」
 
 そう言うと、スタッフの人に向かって頷いた。一人のスタッフは身軽に上っていく。しかも手を使わずにだ。
 頂上に立つと、その人は止まる。
  「この頂上は高さ3メートルあります。二通りの下り方をしてもらいますので、皆さんはできるほうで下りてください」
 
 すると、その人はマットの山を走るように下りてきた。
  「では、もう一通りの下り方をしてもらいます」
 
 先ほどと同じ人が走り上り、今度は前転で下りてくる。
 あの前転は、これか。
 
  「さあ、下り方は好きな方でどうぞ。自力で上り下りしてください」
 
 一番手は山本君だ。
 あのプライドの高い山本君が手を付いて上っている。
 頂上まで上ったのはいいが、座り込んでいる。
 そういえば高所恐怖症だったことを思い出した。
 どうするのだろうと思って見ていると、山本君は前転して下りた。
 その山本君に「一番手は緊張すると思うのですが、自力で上り下りできたのは流石です」と、お褒めの言葉を掛けてくれている。
  「さあ、順番に、お願いします」
 
 
 どんどんと皆は上り下りしていく。
 何人かはスタッフに声を掛けて下りることができた。
 俺も上ったはいいが、どうしよう。下りられないよ。走って下りるかと思ったが、結構高さがあり怖い。
 なので前転で下りる。
 
 俺のすぐ後ろは榊原君で走り上ろうとしている。だけど靴下を穿いたままだ。
 それだとダメだ。
 板の間で滑り転んだ榊原君はマットに顔から突っ込んだ。
 
 一人一人に一言ずつコメントをしてくれていた佐藤コーチは、こう言っていた。
  「こういうときは靴下を脱いだ方がいいね。板の間は靴下を穿いてると滑るから」
  「もう1回、いいですか?」
  「もちろん、いいですよ」
 
 靴下を脱いだ榊原君は、再度挑戦して走り上り、走り下りた。
  「ふう……、疲れた」
 
 その後ろに居た峰岸も、なんとか自力で上り、前転で下りていた。
 
 
 



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今回のスポーツは器具を使ってのジムでした。

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