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好きになったのは年上で意地悪な人 (63) 

 でもバイオリンを弾かないと腕がなまると言うと、海ならどんなに大音量でも大丈夫だと言ってくる。
 いや、バイオリンは大音量で弾く楽器ではないから。
 いい所がある。
 そういう言葉を口にした宮田常務は「10分後に駐車場」と言い残して自分の部屋へと戻った。
 
 どこに行くのだろうと思い車に乗り込む。
 到着したのは、夢の島。
  「なんで……」
  「来たかったんだ。それに誰も住んでないから堂々と弾けるぞ」
 
 この人は、そんなにも来たかったのか。
 俺に声を掛けたのかどうか分からないが、サッサと歩いて行く。
  「どうした? 来ないのなら置いていくぞ」
 
 それを聞き、冗談じゃないと思い慌てて荷物を持ち駆け出す。
 少し経つと、こう言ってきた。
  「バイオリン抱いていろ」
  「はい」
 
 すると横抱きされた。
  「えっ」
  「少しだけだ。怖かったら目をしっかり瞑っとけ」
  「は、はい」
 
 
 なんか揺れたかも。
  「ほら、降ろすぞ」
  「はい」
 
 降ろされ、ここは何処だとキョロキョロしていると海の上にいた。
  「え、何……」
 
 すると、こんなことを言ってくる。
  「私のヨットだ。湘南まで30分、日本一周なら一日掛かるかな」
  「ええっ」
 
 敦さんは笑っている。
  「夢の島イコールゴミの埋め立て地というイメージを持つ者は多いが、ここは私専用のヨットハーバーだ。遠慮しなくていい」
  「ヨット、運転できるのですか?」
  「隣にあるクルーザーも運転できるよ」
 そう言うと、免許証を見せてくれた。
 
 
  「ふわぁー……。進んでる、凄いっ」
  「ヨットに乗るのは初めてか?」
  「見るのも初めてです」
 
 思う存分、バイオリンを弾いていた。
 聴衆は敦さんと海洋生物。
 
  「楽しいっ」
  「それはよかった」
  「たまに運転してるのですか?」
  「ヨットを買ってからは飛行機でなく、ヨットで行き来してた」
  「凄い」
  「今は土日や連休を利用して二泊三日のミニ旅行してる」
  「いいなあ。病みつきになりそうだ」
  「だから、夢の島に連れて行くと言ったんだ」
  「ああ、それで。でも、皆はゴミの埋め立て地だと思ってますよ」
  「邪魔者を排除するには最高の場所だろ」
 その言葉に笑っていた。
  「あはは。たしかに黙らせるには最適地ですね」
 
  「コンビニバイトは、休みはいつ?」
  「木曜と日曜が固定で、水曜は隔週で取れます」
  「なら、水木と連休になるのか」
  「そのときもヨットに乗せてくださいね」
  「いいよ」
  「やったー」
 
 
 海デートを楽しんだあとは道場だ。
 退社するまで、残りわずか。
 
 
 翌日、会社に行くと山口君に声を掛けられた。
  「岡崎さん」
  「おはよう、山口君」
  「おはようございます。テツさんに話したのですが断られました」
  「あいつも多忙だからな」
  「岡崎さんが」
  「しないよ」
  「そんなあ」
  「忘れた? 私は日曜担当なんだ。山口君がするという手もありだよ」
  「とんでもない。なにもできませんよ」
 
 まあ、担当となった人が決めるだろう。
 私の意思表示は示したからな。
 
 
 


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気持ちよさそ~

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