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好きになったのは年上で意地悪な人 (48) 初体験

 こういうサービス業というか接客業は初めてだ。
 優介は20時にならないと来れないので、それまでの3時間は内勤をしていた。
 
 収支の打ち込み、チラシ作り、POP作りなどが、それだ。
 収支の打ち込みなら大丈夫だが、チラシやPOP作りは初めてだ。
 クリスマスのデザイン絵を描くように言われた。
 19時前には休憩に入り夕食を食べる。
 だけど、このデザインというかイラストは苦手な部類で、「絵力も見たいから一生懸命に描いてね」と言われたから、描かざるを得ないのだ。リサイタルのチラシは専門業者に頼んでいるから、一から自分でするのは大変だ。
 
 夕食後、もう一度試みていたら声を掛けられる。
  「徹、起きてる?」
 
 優介だ。
 もう、そんな時間なのか。
  「寝てません」
  「だって、下を向いてるし。何やってるの?」
 
 覗き込んでいるみたいだ。
  「だから寝てるわけでは」
  「ぶわははっ」
  「優介先輩、煩いです」
  「あははっ……。だって、だって」
  「煩い、黙れ」
  「あはははっ……。そういえば高校ん時は選択しなかったっけ。相変わらずの才能だねえ」
  「るさい。黙れっ」
 
 
 店長が中に入ってきた。
  「優ちゃん、何を笑ってるの?」
  「だって、だって……。見てよ、昌平さん。徹の絵を」
  「お、クリスマス絵ができたの? どれ」
 
 ひょいっと取られる。
  「あ、待って」
  「徹君の絵力は私と同じかあ。笑いたいが笑えない」
  「え、そうなの?」
  「こうなると敦史か優ちゃんに描いてもらおう」
 
 
 やっと笑いを抑えた優介はエプロンを付けると声を掛けてくる。
  「それでは声出しをして商品の補充からやりますよ」
  「はい」
  「まずはいらっしゃいませ、ありがとうございますという言葉が基本ね。分からないことは誰かに聞く。お客様には敬語だから気を付けて」
  「はい」
  「商品を見れば分かるけど、チョコレートは思ってたより売れるから。箱に5枚ほど残ると商品を出して補充する。これを品出しと言います」
  「はい」
  「倉庫は、こっちね」
 そう言うと、カーテンの奥へと入っていく。
 
 
  「涼しい……」
  「体感温度は涼しいけど、1度の冷蔵庫だから。でないと飲み物が温くなるからね」
  「1度の冷蔵庫かあ」
  「隣は冷凍庫だから気を付けてね」
  「しもやけになりそう」
  「軍手してたら大丈夫だよ。で、売れる時間帯は昼前11時から13時、夕方の16時から18時、夜の20時半から22時」
  「なるほど、食事前とか学校や会社帰りか」
  「そうそう」
 それ以外にも優介が教えてくれることをメモしていく。
 
 
  「それじゃ、品出しするよ」
  「はい」
  「バイオリンより思い物を持たせるな、なんて言葉は言わないようにね」
  「言いません」
 
 
 各国のチョコレートを二パックずつ、飲み物の段ボール数箱を台車に乗せ表に出る。
  「夏場は飲み物がよく売れるけど、冬はあまり売れないねえ。それじゃ、前出しも教えるよ」
  「補充は?」
  「補充しつつ前出しもしていくの」
 
 見ててと言って優介は手際よくやっていく。
  「あ、なるほど。賞味期限の早いほうを手前にするのか」
  「そうそう。それじゃ、俺は入り口からするから、徹はこっちからね」
  「了解です」
 
  
 昼間は分からないが、夜は結構お客さんが来る。
 これにレジ打ちが入ると覚えられるだろうか。
 
 17時から24時までで、1時間の休憩。
 6時間勤務だけど、仕事をしたという感がある。
 今夜はぐっすり眠れそうだ。
 敦さんも来てくれたし顔が見れて嬉しい。
 
 眠気に逆らわず目を閉じた。
 
 
 

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接客業は大変だぞぉ~

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