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好きになったのは年上で意地悪な人 (46) 

 とてもいい気持ちのまま、週末まで過ごせそうだ。
 そう思ったのに、金曜日の終業間近になって利根川専務に捕まってしまった。
  「やっと捕まえた」
  「なんですか? 送迎なんてしませんからね」
  「私をなんだと思っているんだ。顔を見れば送迎しろとしか言わない奴だとでも思っているのか」
  「違うのですか?」
 
 そう返すとため息をつかれる。
 あれ、違ったのか?
 と思っていたら、意外な言葉を口にしてきた。
  「久しぶりに顔を見たと思ったら包帯してたし、今は絆創膏か。何かあったのか?」
 
 前髪を上げておでこを見てくれるので、パシッと手を叩いてやる。
  「専務には関係ありません。それに勝手に人の身体を触らないでください」
  「身体ではなく髪だよ」
  「髪も身体の一部です」
  「おかざ」
  「いいですか。いい加減に自分は専務なんだと自覚してください」
  「もちろん自覚してるよ」
  「されてませんよ。それでも仕事が回るのは秘書が頑張っているからです」
 
 利根川専務は苦笑している。
 へえ、そんな表情なんて初めて見た。
 だから意地悪してみたくなったのだ。
  「本当に分かっているのか秘書無しで1週間でも仕事してみてはいかがですか?」
  「で、岡崎が面倒みてくれるのか」
  「なに言われてるのですか。私は常務秘書です。たとえ秘書課長や社長から頼まれても専務秘書はしませんので」
  「きっぱりだなあ」
  「私の性格を御存知でしょう」
  「そうだけど。でも、岡崎の包帯を見てびっくりしたのは本当だよ。これでも気にしてるんだ」
  「お気持ちだけいただきます。それに気にしていただくようなものではありません」
  「おかざ」
 
 タイミングよく携帯が鳴る。
  「電話だ。失礼します。はい」
  『岡崎さん、車の用意できました。1階の車寄せに居ます』
  「了解。すぐ行きます」
 
 常務のドアをノックして声を掛ける。
  「常務、用意できましたか? 重森君は1階の車寄せで待ってます」
  「できましたー」
 
 
 廊下に出た常務は驚きの声をだしていた。
  「うわっ……、と、利根川専務」
  「なんだ、その格好は」
  「パーティーに招待されたので」
  「岡崎まで」
  「秘書同伴のパーティーなので。それでは失礼します」
 
 利根川専務の声が追いかけてくる。
  「誰のパーティー……、おい、岡崎」
  「専務には関係ないです」
 
 
 瀬戸常務は声を潜めて言ってくる。
  「居るなら居ると教えてくれる?」
  「本人を目の前にして、どう言えばいいですか?」
 
 うーん……と考え込んだ常務はエレベーターが1階に到着すると言ってきた。
  「メールで」
  「そうか、その手がありましたね。次回からはそうします」
  「よろしく」
 
 
 重森君の運転で、パーティー会場へと向かった。
 
 
 
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