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好きになったのは年上で意地悪な人 (39) 

 翌週は16時に早退して病院に行っていたのだけど、誰にも捕まらなかった。
 峰岸からメールがきたぐらいだ。
 それに、仕事用として配布されたスマホの着信履歴には利根川専務の名前がずらっと並んでいる。
 メールのほうも利根川がほとんどで、他は峰岸。
 思いが声に出ていた。
  「そうだよな。俺なんか居ても居なくても会社は回る。重森君もいるし……。 峰岸とは違う。ただ勤務期間が長いだけのベテランでもなくヤリ手秘書でもない。早く仕事を見つけないと残り4ヶ月ちょっとだ。10月に入る前に言ったのだけどな。あれから二ヶ月になるのか、早いなあ」
 
 うーん……。
 こうなるとバイオリンを本業にしてアルバイトを見つけよう。
 師匠の道場で空手を教えるから、他にもう一つ。
 新しい仕事かあ、そうだなあ。
 
 
 マンションに着くと、そのまま1階のコンビニで夕食を買おうと思い入っていく。
  「いらっしゃいませー」
  「こんばんは」
  「お仕事、お疲れ様」
 
 最近は惣菜とおでんが置いてあるので、惣菜パックを数種類とおでんの具の卵、こんにゃく、大根、ジャガイモを二つずつ専用の深皿に入れレジに持って行く。
  「いつもありがとう」
  「美味しいから」
  「嬉しいな。そう言って貰えるのが一番嬉しい」
 
 新一さんと違って、コンビニ店長は明るく朗らかな人で、一緒にいると楽しくなってくる人だ。
 お金を財布から取り出そうとしたときに気が付いた。
  「あ……」
  「何か買い忘れ?」
  「いえ、バイト募集のチラシが見えたので」
  「バイトしたいの?」
  「はい」
  「んーと、明日なら昼間、時間取れるから面接にどうぞ」
  「13時半から道場だから」
  「ああ、そっか。明日は、あいつが来るから12時半からでもOKですよ」
  「12時半にお願いします」
  「履歴書持ってきてね」
  「はい、分かりました」
 
 
 その日のうちに履歴書を書き終え、翌日は面接の時間より少し早めに行く。
  「来年の3月末日で、今働いている会社を退社します」
  「え、そうなの?」
  「9月に退職届を出して受理されています。それまでは土日祝祭日に仕事をして、来年の4月からは平日も仕事をしたいです」
  「接客業は未経験だよね」
  「はい、そうです」
  「バイオリンは?」
  「続けます」
 
 表の店先から声がしてくる。
  「ただいま」
  「おー、お帰り」
  「ボスは?」
  「店長な」
  「そうだった」
 
 店長は店先に顔を向けて声を掛けている。
  「新一、ちょっと、こっち来て」
  「なに?」
  「岡崎君がね、ここでバイトしたいって」
  「え……」
  「接客業未経験、来年4月からプー太郎になるから、ずっと続けたいって」
  「バイオリンは……」
  「続けるって」
  「ああ、よかった」
  「どうしたらいいと思う?」
  「とりあえずは試用期間だな」
  「そうだな。1ヶ月かな」
  「採用するかどうかは、その1ヶ月の成長度合いだな」
  「それもそうだな」
 
 コンビニ店長は俺を見て言ってきた。
  「とりあえず来月の1ヶ月を試用期間とするから、それから採用するかどうかを決める。どうかな?」
  「はい、お願いします」
 
 バイト時間が決まった。
 土日祝祭日の17時から閉店24時まで。1時間の休憩で交代制。
 それと12月24日はクリスマスケーキの渡し日なので、その日は来て欲しい。
 
 17時からだと、道場が終わってから用意しても十分に間に合う。
 よし、バイト頑張るぞ。
 
 その前に秘書の研修だ。
 いつだっけと予定表を見る。
 んげ、明日と明後日じゃないか。
 やっべぇ……、自分のことで頭がいっぱいで気が付かなかった。
 とりあえず空手だ。
 で、帰ってきてから準備だな。
 
 
 
 
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