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好きになったのは年上で意地悪な人 (31) 

 誰にも見つからずに帰れてラッキー。
 そうそう、毎週木曜日はバイオリンを習っているんだよね。
 師匠である新一さんは何か言ってくるかな。

 俺の顔を見た途端、新一さんの動きが止まる。
  「もしかして、夕べの最後の一発か……」
  「いえ、違います」
  「しかし」
  「たんこぶです」
  「なぜ、そんなところに……」
  「バイオリンを弾くのに支障ないので大丈夫です」
  「そう? ならいいが……」
 
 雑念、邪念を追い払ってバイオリンを構える。
 
 
 しばらくするとコンビニ店長の声が聞こえてくる。
  「BGMに最高だなあ。新一も楽しそうだし」
  「彼は天才バイオリストだからね」
  「え、いやいや、とんでもない。俺はまだまだですよ」
 
 するとコンビニ店長は、とんでもないことを言い出してくる。
  「そうだ。悟もいるから3人で年末リサイタルってどう?」
  「はあ?」
  「そんなに目くじら立てなくても」
  「悟のバイオリンで金を払ってまで聴きに来る人っていないよ」
  「あのねえ……」
  「弟バカもいいけど、あいつは趣味で弾いてるんだ。俺や彼とは違う」
  「なら、悟をのけて2人でリサイタルはどうだ?」
  「俺は引退してるんだけど」
  「なんのために弾いてるんだ?」
  「楽しむため」
  「じゃ、どうして引退したんだ?」
  「決まってるだろ。リーダーはチームメイトの誰かがミスっても責任を取らされるんだよ。俺をやめさせてリーダーになりたいがためにミスってたら、その本人がクビになった」
  「自業自得だ」
  「オーケストラは個が主張するチームではない。自分の個を抑え、皆と一つになるものだ」
  「じゃ、ミスると目立つのか」
  「そうだよ。主張していいのはリーダーだけだ」
  「そういや、皆の手が止まってる間、一人で目立って弾いてたな」
  「それがリーダーだ。でも、俺は思いっきり主張したかった。だから引退したんだ」
  「引退してからは弾かなくなったよな」
  「皆とバカやってるほうが楽しいからな」
  「なんでも楽しむのが一番さ」
  「そうだよ。好きな奴といれるしね」
  「好きな奴、いるのか?」
  「秘密。ね、岡崎君」
 
 いきなり振られて面食らってしまう。
  「え、俺?」
 
  「昔と違って、今の君の音は艶っぽくなっている。恋をしているのだろうね」
  「恋って……」
 
 パッと浮かんだのは宮田常務の顔だった。
  「恋っていうのかな」
  「自覚すると音は素直に現れる」
 
  「恋。この気持ちが恋……」
 
 
 
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新一ったら……。
物の見事に、自分から徹へ矛先を変えることができたね( ̄m ̄〃)

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