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好きになったのは年上で意地悪な人 (28) 

1時間もすると疲れた。
体力ではなく、精神のほうだ。
 「大変だ……」
 「はははっ。誰かに教えるというのは本当に疲れるからねえ」
 「新一さんは」
 
俺の言葉を遮るように新一さんは言ってくる。
 「休憩時間だから体力を使ってみよう。一本、相手して」
 「俺が?」
 「他に誰がいる?」
 「師匠」
 「岡崎師匠?」
 
その言葉に人差し指で示される。
 「いや、道場主の師匠です」
 「悟とやると異種に持ち込むからなあ」
 「嫌ですよね」
 「うん、嫌。だから一本」
 「はい。よろしくお願いします」
 
すぐに分かった。
こんなんだと埒があかない。
新一さんは参段に落ちたかもと言ってたのに、やっぱり伍段保持者だね。
マジに本気ださないといけない。
その気持ちが伝わったのだろう。
重みのある拳がきた。
その拳を受け止める。
思わず力を込めた一発を見舞う。
 「凄く重いのを返してくるんだね。休憩も終わる。決めさせてもらう」
 「こいっ」
 
師匠の七連発を一度見た。
だから俺も連発を繰り出した。

 「は……」  

相手が悪かった。
時間差で三連発と五連発を食らってしまった。
受け止めることはおろか避けることもできず顔の前をガードするのがやっとだった。
 「うー……。こんなのありかよぉー」

ご機嫌な声が聞こえてくる。
 「私の腕も、まだ捨てたもんじゃないな」
    
新一さんは道場から出て行く。
 「悟ー。岡崎君、バタンキューになったぞ」
 
その言葉を聞いたのが最後だった。
俺は目を閉じ寝込んでしまった。
それを見た悟は言っていた。 
 「本気でやり合ったのか」
 「もちろん」
 「新一さんが本気でやり合うと、必ず相手は負けるのに。岡崎君にとっていい勉強になっただろうな」
 「それは悟の見解か」
 「そうだ」
 「それは嬉しいな」
 「仕方ない。今日は、ここまでだな」
 
 
 「で、バタンキューとなった岡崎君はここで寝て帰るのか」
 「宮田、よろしく」
 「なんで私が」
 「この間は、お前が岡崎君を連れてってくれたのだろう?」
 
その言葉に、宮田は溜息をついた。
 「ったく、仕方ないなあ」
 「荷物はこれだけだ」
 
と、小ぶりなリュックを渡される。
その中に手を突っ込み、鍵を見つける。
 「はいはい。鍵は、これか」
 「よろしく」
 
 
   

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