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好きになったのは年上で意地悪な人 (27) 

ラジオ体操と屈伸、腕立て伏せをした後、本番に入る。
 「足は軽く床に付け、腰から下の下半身を屈伸させながら拳を突き出します」
こういう風に。
と言って、手本を見せる。

新一さんの声が聞こえてくる。
 「それ言うなら、拳の作り方も必要だな」
 「あ、そうか。それもそうだ」
 「拳を作った後に、さっきの膝から下の屈伸付きで突き出す、だな」
 「待ってください。メモります」
 
一人ずつ相手をしていく。
優介には掠りもしなければ当たらないのはなぜだろう。
師匠が優介に言ってる。
 「優介、護身術でなくて空手でやり合うものだ」
 「んー……。空手、ねえ……」
 
当たらないのは護身術で避けてるのかと気付く。 
 「あれ……。優介、何かやってる?」
 「護身術」
 「それだけじゃないのは知っている」
 「合気道と少林寺はなりを潜めている」
 「いや、そっちのほうでなく、身体の動きが柔らかい」
 「そう?」
 「うん。別にいいのだけど、護身術だけで、こんなに柔らかくなるのかなと思ってさ」
 「極めるとなるのだよ」
 「そうですか」
 
次は常務だ。
 「宮田常務は身体が硬いですね」
 「言っただろう。私は応援するほうだと」
 「たまには運動するのもいいですよ。はい、手首をひねって、突き出す」
 「プロレスみたいな感じだな」
 「プロレスはファイティングポーズを取りますが、武術は脇に手を当て、そこを基準にします」
 「なるほどね」
 
今度は新一さん。
 「え、と……」
 「緊張しなくていいから。同僚だと思えばいい」
 「はい。それでは、屈伸しながら手首を捻り突き出す」
 
ヒュンッと空を切る音が聞こえる。
 
と同時に、拳を顔面の手前で受け止める。
 「ふむ。いい顔をするな」
 「ありがとうございます」
 
 
最後に師匠だ。
 「手加減してくださいね」
 「何を気弱になっているんだ」
 「だって、この間の本気だったでしょう?」
 「皆が皆、本気だったはずだ」
 「意地悪なんだから」
 「来年からは岡崎君も本気になって突き出す側だ」
 
新一さんが割って入ってくる。
 「へえ。そういうことは六段、受かったんだ?」
 「この間の土曜にな」
 
師匠が応えてくれ、新一さんは俺に向かって言ってくる。
 「そっか、おめでとう」
 「ありがとうございます」
 「本気でやりたいな」
 
え、新一さんと本気でやり合うの?
だけど師匠が代わりに応じてくれた。
 「後でな。今は岡崎君の師匠ぶりの勉強会だ」
 「もちろん」
 
 
      
  

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