俺はノーマルだ。お前と一緒にするな! (2)
知ってる事を全部ではないが教えてやる。
昨年のGWで安藤専務の持ち島での知ってる事しか話せませんと前置きして。
上司と別れて秘書だけでゴール時点に先回りして、上司が着くまで食材を取って、それらを使っての食事作り。平行してもう1軒のコテージを建てた事。そこから話し、自分は食事作りだったのだけど、見てられない状況だったので、コテージ建て班に入って手伝っていた。
高瀬さんは、どこの班だったのか分からないけれど、その小屋の基盤となる床造りをしていたら、高瀬さんに”自分には出来ない。役に立たない人間だな……”と言われた。
その言葉を聞いた俺は頭にきて言っていた。
「秘書とは専務秘書のサブから始まり、上二役の秘書を経験して専務秘書のメインになり、力を認められた者は常務秘書に抜擢される」と。
だけど、高瀬さんは何処かへ行ったみたいで、それから姿を見かけなくなった。
でも、そんな高瀬さんを見かけた人が居て、こう言っていた。
「黄昏ていた」
黄昏れる年齢じゃあるまいし、次に見かけた時はぶん殴ってやる。そう思っていたのに、高瀬さんは戻ってこなかった。だから、留守番以外の人間で探し回っていた。
そしたら叫び声が聞こえてきたので何処からなんだろうと思ってたら、洞窟の中で男3人に殴られたり蹴られたりしていた。皆で、その3人を捕まえて崖の上から落としてやりましたけどね。
高瀬さんは刺されていたのもあり熱を出して寝込んでしまって、本当に足手まといで役立たずな人でしたよ。手動で扇風機もどきを作って高瀬さんを含めた社長秘書は完成したばかりの木造コテージで、他の皆は普通のコテージに分かれて過ごしてました。熱も下がった翌日、上司たちがゴールしたのです。
高瀬さんは、重役9人を見た時に元気に笑い転げていた。
「真っ黒」と言いながらね。
でも、私が知ってるのは、ここまでです。
「何で、何で、そんな事にっ……」
「何で、と聞かれても私には分かりません。犯人はあの島の住人であるサメに食べられた。社長秘書の仕事とは、どんな事をしていたのか分かりませんが、高瀬さんだって悪いんですよ。気が付かなかったほど呆けっとしてたみたいだから」
差し出してくれた紅茶を飲み切る。
(こういう事はマメだし、淹れさすと美味いよなあ)なんて事を思いながら、腰を上げる。
「それでは、私はこれで」
「待て」
「知ってる事は話しました」
「他にも何か」
「知りません」
「いや、何か」
「くどいです。知ってる事は話しました」
「お前が、そう言い切る時は話しきった時か、他にも何かを隠してるかのどちらかだ」
「どうして、そう思われるのですか?」
「何年の付き合いだと思ってるっ」
(まったく、高瀬さんの事になると鋭くなるよなあ)
はあ…、と溜息吐いて応じてやる。
「これ以上は何も知りません。先ほども言った様に1年経てば時効だと思ったから話したのです。それだけです」
「それじゃ、こっちに帰ってからは」
「それこそ、全然知りません」
「お前が」
本当にしつこいなあと思い遮ってやる。
「お忘れですか?あの日以来、高瀬さんの姿を見かけた事は無いです。ああ、そう言えば会議で私が高瀬さんはどうされたのですかと聞いた時、”辞めた”と社長が仰られてた。それ以外は、全く知りません」
それでは、失礼させて頂きます。
そう言ってリビングから出ようとする岡崎に腹が立ったのか、利根川は呟きを口にした。
「まだ終わってない」


昨年のGWで安藤専務の持ち島での知ってる事しか話せませんと前置きして。
上司と別れて秘書だけでゴール時点に先回りして、上司が着くまで食材を取って、それらを使っての食事作り。平行してもう1軒のコテージを建てた事。そこから話し、自分は食事作りだったのだけど、見てられない状況だったので、コテージ建て班に入って手伝っていた。
高瀬さんは、どこの班だったのか分からないけれど、その小屋の基盤となる床造りをしていたら、高瀬さんに”自分には出来ない。役に立たない人間だな……”と言われた。
その言葉を聞いた俺は頭にきて言っていた。
「秘書とは専務秘書のサブから始まり、上二役の秘書を経験して専務秘書のメインになり、力を認められた者は常務秘書に抜擢される」と。
だけど、高瀬さんは何処かへ行ったみたいで、それから姿を見かけなくなった。
でも、そんな高瀬さんを見かけた人が居て、こう言っていた。
「黄昏ていた」
黄昏れる年齢じゃあるまいし、次に見かけた時はぶん殴ってやる。そう思っていたのに、高瀬さんは戻ってこなかった。だから、留守番以外の人間で探し回っていた。
そしたら叫び声が聞こえてきたので何処からなんだろうと思ってたら、洞窟の中で男3人に殴られたり蹴られたりしていた。皆で、その3人を捕まえて崖の上から落としてやりましたけどね。
高瀬さんは刺されていたのもあり熱を出して寝込んでしまって、本当に足手まといで役立たずな人でしたよ。手動で扇風機もどきを作って高瀬さんを含めた社長秘書は完成したばかりの木造コテージで、他の皆は普通のコテージに分かれて過ごしてました。熱も下がった翌日、上司たちがゴールしたのです。
高瀬さんは、重役9人を見た時に元気に笑い転げていた。
「真っ黒」と言いながらね。
でも、私が知ってるのは、ここまでです。
「何で、何で、そんな事にっ……」
「何で、と聞かれても私には分かりません。犯人はあの島の住人であるサメに食べられた。社長秘書の仕事とは、どんな事をしていたのか分かりませんが、高瀬さんだって悪いんですよ。気が付かなかったほど呆けっとしてたみたいだから」
差し出してくれた紅茶を飲み切る。
(こういう事はマメだし、淹れさすと美味いよなあ)なんて事を思いながら、腰を上げる。
「それでは、私はこれで」
「待て」
「知ってる事は話しました」
「他にも何か」
「知りません」
「いや、何か」
「くどいです。知ってる事は話しました」
「お前が、そう言い切る時は話しきった時か、他にも何かを隠してるかのどちらかだ」
「どうして、そう思われるのですか?」
「何年の付き合いだと思ってるっ」
(まったく、高瀬さんの事になると鋭くなるよなあ)
はあ…、と溜息吐いて応じてやる。
「これ以上は何も知りません。先ほども言った様に1年経てば時効だと思ったから話したのです。それだけです」
「それじゃ、こっちに帰ってからは」
「それこそ、全然知りません」
「お前が」
本当にしつこいなあと思い遮ってやる。
「お忘れですか?あの日以来、高瀬さんの姿を見かけた事は無いです。ああ、そう言えば会議で私が高瀬さんはどうされたのですかと聞いた時、”辞めた”と社長が仰られてた。それ以外は、全く知りません」
それでは、失礼させて頂きます。
そう言ってリビングから出ようとする岡崎に腹が立ったのか、利根川は呟きを口にした。
「まだ終わってない」

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