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社員旅行は南の島 (23)

利根川は皆の様子を見ていた。
本田と安藤の言葉が胸に突き刺さる。
本田の「トレード」という言葉で思い出した。そうだ、秘書をトレードできるんだった。だから、俺は乗ったんだ。このまま皆を置いて一人で来た道を戻ればヴィラに着く。でも、体が動かない。

誰かが近寄って来たのか、覗き込まれてる気配がする。
 「利根川専務。今からでも遅くない。人と協力、調和する事を身に付けて欲しい」
この声は社長だ。
 「君が高瀬を思ってる様に、少しでもうちの子を思って欲しい。一人っ子だから生意気だったり我儘な所もあるが、あいつは自分なりに頑張ってる」
 「社長…」
 「うちの専務は4人共マイペースで我が強すぎる。
だから、私は思い直したんだ。発案は息子だが、それに色を塗ったのは私だ。
重役同士で横の絆を強めて欲しい、と思ってね」
 「え…?」
 「私としては楽しかったよ」
 「俺の醜い状態を目にして楽しいわけないでしょ」
 「誰が醜いと言った?」
 「え?」
 「誰も言ってないよ。殴るな、蹴るな、睨むなとは聞こえてたが、醜いとは聞こえなかった」
 「でも、俺は…」
 「私はね、ありのままの利根川君と会えたな、と思ってるんだ」
 「ありのままの俺…」
 「そう。うちの子に対しての暴言に睨み顔。もっと見てみたいなと思ったよ。
他の3人の顔は知ってるから、あとは、利根川君。君だけなんだ」
 「それはどういう意味ですか?」
 「うちの子の言動を目にして、君は色々な表情と言動を見せてくれた。でも、もっと見ていたい。
まだ、あるよね?」

社長は俺の顔を覗き込んでくる。
 「ないです」と言って、顔を背けてやる。

 「ないのか、それは残念だな」
そう言って、社長は俺の背中をぽんぽんと優しく叩いてくれる。
その気配がなくなった。
その代り、社長は他の3人と話をしてるのか、話し声が聞こえてきた。


 「桑田君、本田君、安藤君」
 「はい、なんでしょう?」
 「利根川専務の事、頼んだよ」
(は?何の事だ?)

そう思っていたら、3人は応じている。
桑田は、
 「お任せください。生意気さもないと、こっちとしては飽きますので」
 (あ”あ”…、誰が生意気だと?)

本田は、
 「色々な表情が見れて楽しかったです。また、こういうのをしたいです」
 (冗談じゃない、もう金輪際やらねえからな)

安藤なんて、これだ。
 「毎年、場所を変えてやりますか?来年は大西洋とか如何でしょう?」
 (太平洋も大西洋も同じだっ)

社長なんて、こう応じていた。
 「そうだね。場所は考えとくよ」
 (げっ…、やる気かよ。俺は行かねえからな)


その3人は、俺の方を見てくる。
 「ねえ、利根川君。重役は強制参加だからね」
 「なっ…、くわ」
それを遮るように本田が、
 「ああ、それじゃ今度は副社長にも声を掛けようか」
 「え、副社長は、こん」
それを遮るように安藤が、
 「ああ、それ良い考えですね。たしか副社長は幾つか無人島を持ってるからね」
 「はあ?おい、あん」
今度は社長だ。
 「そうだな、じゃ次は夏だな」
 「なっ、しゃち」

社長は沖に向かって大声を出した。
 「おーい!今度は夏にするぞー!!」


真っ先に返事をしたのは坊ちゃんだ。
 「はーい!そこにはイルカも居るのー?」
その言葉に即答したのは他の誰でもない、利根川だった。
 「知るかっ!この拉致られマッパ野郎っ」


わはははっ……。
社長と、3人の専務は笑い出した。







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利根川は、社長からの言葉で変わるのでしょうか?
また、夏にされるそうでww

はい、ただいま夏のをPCに打ち込み中です。



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