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~新入生勧誘会、活動編~ (3)

5人が登場した途端、黄色い声が飛んできた。
 「キャー!」
 「素敵、素敵っ」
 「カッコイイ~」
 
リーダーである松井はステージから下りると、女子高校生の群れに向かって声を掛けた。
 「お嬢様。どうぞ、こちらへ」
手を差し伸べると、女子高校生は思わず手を取り、ステージに一緒に上がった。
彼女を席に座らせ、松井は声を掛ける。
 「紅茶、珈琲、何をお飲みになられますか?」
 「紅茶で、お願いします」
 「畏まりました。えっと…、」と、メニュー表を見ながら「シュークリームとイチゴケーキとチョコレートケーキもございますが、如何されますか?」と、付け足す。
 「全部下さい」
その言葉に苦笑していた。 
 「少々お待ちくださいませ」

5人が、揃いも揃って自分好みの女性に手を差し伸べていた。そして、この日、この時、自分の未来の花嫁をゲットしたのだった。そう、経済学部の5人は、学生時代の内に結婚したのである。



経済学部の5人が黒の執事服だったのに対し、教育学部の5人は濃いブルーの執事服だ。
 「お嬢様、お坊ちゃま。こちらにどうぞ」
と、椅子を引いて待ってる姿は、自分で歩いて来いと強制している風に見える。
中々、足が動かない中、一人の男子学生が5人の内の一人に近付いて行った。
 「小林君。どうしたの、その恰好は」
 「煩い。お坊ちゃま、珈琲で宜しいでしょうか?」
 「うん、お願い」
 「お待ちください」
 「あ、そうだ。食い物はチョコ…、って、はやっ」
 「どうぞ」

インスタントなのか、そう思った男子学生は珈琲を口にした途端、幸せそうな顔をしてきた。
 「美味いっ…、この珈琲、マジで美味いよ。ねえ、誰が淹れたの?お代りして良い?」
 「お代りされるのなら、代金を頂きますよ」
 「執事が金を取るの?まあ、いいや。それじゃ1,000円で」
 「え、嘘。マジで?」
 「うん、マジで。チョコケーキも付けてくれ」



その男子学生の一言で、他の男子学生もステージ上に上がってきた。
 「美味い珈琲を飲み歩きしてるだけど、淹れて?」
 「お待ちください」
次々と学生が上がってきて、順番待ちをする様にまでなってしまった。
埒が明かず、カーテンの後ろに置いておいた残り5脚も前に出した。
そして、再び経済学部の5人が登場したのだ。



喫茶店ではなく、三学部による執事でもなく、本来は医学部だけの催しにする為にと思っていたのだが、ここまで盛況になると〆方が違ってくる。
再び、友明はステージ上へ出てきた。
 「皆さん、如何でしたか?珈琲が美味しいと言葉を頂き出て参りました。私が珈琲を淹れさせて頂きました。そして、この時間からは医学部の登場となります。
教育学部と経済学部の10人の方、お疲れ様でした。
皆さん、もう少し、お付き合いください」


 「ああ、やっぱり出るのか…」
 「仕方ないね…」
 「ボスが乗り気だからなあ」
 「先陣切ってるし」
皆は、手直にあるビールとかワインを煽り飲む。


友明は、ステージ上で身に纏っていたビニールケープを破って、本来の衣装を見せた。
途端に、声が上がった。
 「可愛いー」

その言葉にガクッとなるが我慢だ。
 「それでは、医学部の登場ですっ」

皆がマントを翻し登場してきた。
皆の声援は、ただ一人に向けられていた。
 「オオー!ジュンヤ様ー」
 「キャー!ジュンヤ様ー」
 「素敵ぃ~」

モデルをしているジュンヤにとっては目立つ事は嫌いではないが、台詞を言うのが嫌なんだ。
ワンなんてワインを持ったままステージに上がってる。
 「お嬢様の血と、このワイン。どちらが甘いのか、また美味なのか…」
ヤジが飛ぶ。
 「吸って欲しいー」
 「吸いはしないが、そちらに行っても良いかな?」
 「どうぞー」


そう、医学部はドラキュラ姿なのだ。
ワンはそう言うと、隣に居たカズキを引っ張り二人で行く。
それを見たユタカは自分も隠れるつもりで一歩、前に出る。
ジュンヤの手を引いて行きたいが手が届かない位置にいるので、近くに居るユウマにする。
 「私も、そちらに行っても宜しいでしょうか?」
ユウマ、行くぞ。と目配せして、引っ張って行く。

ボスはスズメに指図を出しているみたいだ。
 「それでは、ここからは医学部の話をします」

なに、何も聞いてないぞ。

ステージ上に残ってる医学生5人、ジュンヤ以外はマントを脱ぎ、ハットのてっぺんを平らにならして被り直す。
そして、牙を取り外して首に掛ける。
そう、駅員の格好だ。
ボスである友明が、やりたいと言ってきた格好だった。
その牙を口に含み、ピッピ―…、と笛の音を鳴らすのはスズメだ。


お喋り大好きなスズメがマイクを持ち、駅員よろしくなりきっている。
 「この場にいらっしゃる皆様に、ご連絡いたします。
まだゼミやサークルが決まってないし入ってもない。どこに入るか悩まれてる方は、まだいると思います。ここからは、私達が所属しているゼミの仕事を簡単に説明させてもらいます。
そして、私達の話が終わると、今度は先程登場して頂きました教育学部と経済学部の方々からも、ゼミやサークルの説明をさせて貰い、それで、今回はお開きになります。
それまで、もうしばらくお付き合いください。
質問等がありましたら、そちらに観客として座り込んでいる4人のドラキュラに聞いて下さい。4人のドラキュラ君、よろしく」
スズメ以外は、研究の仕方を書いた大判のプラカードを持って立っている。

 (くそぉ…、やられた…)
と、4人共スズメを罵っていた。


 「それでは、先ずは私達の所属しているゼミのご紹介です。
DNAサメ研究室に所属しており、そこでは植物からDNAを採取しております。
一枚目に書かれていますね、大きく」
そう言われ、ゼミ研究室のプラカードを持ってるボスが一歩、前に出る。

続けてスズメは話し出す。
 「普通でしたら、ラットと言いましてネズミを使ってするのですが、サメ研究室では植物の花や草木などを使ってDNAを採取してます。いわゆる、自然におけるDNA研究室です」
今度は植物の花や草木の絵を描いてるカードを持っているサトルが一歩前に出て、続けて研究風景を描いたカードを持っているマサとタカが一歩、前に出る。

 「白衣着用しての研究が主ですが、たまに、こうやって白衣以外の服を着て気分を変えて研究をしております」

言い終わると、照明が煌びやかにステージ上を映しだすと同時にBGMが流れてきた。
その中で、ジュンヤがモデル流に歩を進め、タラップまで歩いて、その場でゆっくりと一回転しながらスラックスを脱ぎ、上着も脱いで裏表にひっくり返して袖に通す。
途端に、黄色い声が上がってきた。
 「キャ――」
 「ジュンヤ様――」
 「カッコイイー」

駅員の姿から、銀色の布地で作られた近衛兵の姿になったのだ。
ジュンヤのスラックスは2枚履きになっており、上着はリバーシブルになっていたみたいだ。
ドラキュラのハットから駅員の帽子になった、その帽子をひっくり返すと…。
落ち着いた雰囲気のクリーム色のハットになった。
ジュンヤは、ご満悦な表情を浮かべている。

だから、それぞれの個性を活かす為に、手作りだったのだ。


その黄色い声が煩かったのか、スズメは耳を塞いでる。
いつの間にか、マイクはマイクスタンドにセットされていた。
 「この春の勧誘オリエンテーションには参加いたしませんでしたので、今回、ここで説明させて頂いた次第です。興味ある方は、医学部以外の方でもwelcomeですので、見学に来て下さい。
是非、お待ちしております。
それでは、お次は経済学部です。どうぞ~」





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三学部による、サークルやゼミの勧誘説明会だったのですね。

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