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あの夜の約束 (3)

陽が落ちるまで、まだ時間はある。
遊具のある場所までは直ぐに着いた。
気持ちを奮い立たせるように声を出す。

 「優ちゃん、待ってて。迎えに行くからね」


何処をどう行けば良いのか分からない。
それでも整備されてる山道は心強い。

歩く事、1時間強。
真っ暗闇だが、この中に優が居ると思うと頑張れる。
ヘッドライトの明かりをMaxの位置にもってきて、牛乳とパンを口にする。


そろそろ、てっぺんに着く頃かな。
そう思ってたら、たくさんの洞穴がある事に気が付いた。
もしかして洞穴の中にいるかもしれない。
そう思うと、健志は大声を出し、優の名を呼ぶ。
 「すーちゃん。すーちゃん居るー?」


遠くから同じ様な声が、言葉が聞こえてきた。

 「……ちゃん、居る―?る―?る―?」

やまびこだ。


一気に怖くなり洞穴の中に入ろうと駆け寄るが、入れない事に気が付いた。
洞穴は50㎝ぐらいしか空いてなかったからだ。

今度は洞穴を一つ一つ探していく。
いくつ探したのだろうか、それでも50㎝以上も進める穴があった。
ごくん…と、唾を飲み込み静かに声を出す。
 「すーちゃん?優ちゃん居る?」


返事は無いが、その洞穴の中を進んで行く。だが、1mぐらい行った所で行けない洞穴だった。
一体、何個の洞穴をそうやって歩いていたのだろう。
結構な距離を歩いたと思うが、何も見えない。
一体、この洞穴たちは何処に向かってるのだろう。
そう思うと、泣きそうになってきた。

その時、何かに躓き転んでしまった。
 「ふ…、ふぇっ…」


泣いてしまう前に、その躓いた物に気が付いたのだ。
水筒だ。
その水筒は、プーさんの水筒。
もしかして…と思い、辺りをゆっくりと見渡すと居た。
探し人は、水筒の隣に丸まっている。

 「すーちゃん?」

だが相手は何も言わない。
だけど、自分と同じケープを着てるし、リュックもプーさんで、名前が書かれてある。
 「もとむね すぐる」と。

顔を覗きこむと、目を瞑ってる。
会えて嬉しいのだけど、もしかして…と一抹の不安を感じ、起こそうと揺り動かす。
 「すーちゃん、すーちゃん起きて。すーちゃんっ」

ぐっすりと寝てるみたいだ。
水筒を手に取ると、全部飲んだのだろう。重みが無いのが分かる。
お菓子も食べたのだろう、ゴミが散らかってるので片付けてやる。

すーちゃんをひっくり返し、心臓の位置に耳を置き心臓の音を確認する。
うん、寝てるだけだ。
死んでないから大丈夫。
と、確信し安心すると眠気が襲ってくる。
 「すーちゃん、もう少しネンネね。起きたら一緒に帰ろうね」


暫らくすると、寒さで目が覚めた。
優は、まだ寝ている。
その寝顔を見ていると、ほんわかとなってくる。
すると優の目が開いた。
 「あ、おっきした」

その声で、誰が居るのか分かった優は笑顔になった。
 「おはよっ」
 「おはよじゃないよっ。なんで登ったの?」
 「女の子がね、ピンク色のハンカチを飛ばされて取りに行って欲しいと言ってきたんだ」
 「もー……、だからって人騒がせな」
 「ごめんね」
 「大人に言ってから、一緒に行く事っ。分かった?」
 「そうだね。今度からはそうするよ」


ほら、パン持って来たから一緒に食べよ。
そう言って、健志はパンと飲み物をリュックから取り出し優に渡してやる。


かいがいしく世話を焼てくれる健志に優は言っていた。
 「たけちゃんって、お母さんみたい」
 「お母さんじゃないっ」
 「じゃ、お兄ちゃん」
 「お兄ちゃんでもないっ」
 「なんて言えば良いの?」
 「たけしさん」


ぷぷっ…。
思わず笑っていた。
そんな優に健志は小突いてやる。
 「笑うな」
 「ごめんね」

 「あ…」
 「何?」
 「血、出てる」
 「え、どこ?」
健志はリュックから消毒薬と絆創膏を取り出し、優の手当てをしてやる。
さすが医者の息子だ。
 「ありがと」
 「どういたしまして。じゃ、帰ろう」
 「うん」

二人は手を繋ぎ、健志が通ってきた道を戻って行く。


 「あ。見てみて、たけちゃん。お星さま、綺麗だね」
 「そうだね。優ちゃん、約束して」
 「なーに?」
 「絶対に一人で知らない所に行かない事」
 「うん、約束する」
 「僕は優ちゃんの横に居るから」
 「うん。これからは、たけちゃんに言う事にする」
 「約束だよ?」
 「うん」


二人は約束の指切りをし、おでこをコツンと合わせて微笑んでる。


暫らく、そのままで居た。
そして、そのまま指切りの状態で手を繋いだまま、麓まで下りて行った。





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無事に見つかって良かったね(´▽`)

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