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桜咲き、春一番で桜散る (2)

コウジが連れて来た『パープル』のトップの人物に会えたのが嬉しくて、アキはテンションが高かった。そのせいか、音が少し走ってしまっていた。
あれ、リーダーがこっちを向いて苦笑してる?
なんで?
不思議に思っていたら、コウタが近くまで来ていた。
 「お前ね、他人に合わせる事をしましょう」
 「え…」
 「え、じゃ、ねえよっ。走り過ぎやがって…」

その言葉で気が付いた。
 「あ、ごめんごめん」

ヨシさんに会えたことが、とっても嬉しくて興奮していたんだな。


コウタの心中は穏やかでは無かった。
なにしろ、あの人が来てるのだ。
だから、アキはテンションが高くなってると思ってるのだ。
アキが、あの人から離れたのを機に、俺の方に寄ってきたんだ。
あの人の方から。
 「ねえ、コウタ君」
 「え、俺?」
 「うん、そうだよ。半年ぶりになるのかな」
覚えてる?とグラサンを外して聞いてきたのは、ハロウィンライブの、あの時に会った人だった。
 「何か?」
 「君たち二人の進展は無さそうだね…。私としては応援してたのに。
まあ、アキは鈍いところがあるからねえ…」
しみじみと、そう言ってきたんだ。
なので、言ってやった。
 「応援してくれるのはありがたいが、どうのこうのと言われたくない」
でも、相手の方が上手だった。
 「まあ、それもそうだね」


そのアキは、見目麗しい3人に囲まれ、楽しく談笑していた。
凄く腹が立ったのもあり、見目麗しい3人の所に殴り込みを掛けに行こうと思ってたら、ライブ始るよーというリーダーの声が聞こえてきた。
それを合図にアキがステージの方へ走ってくるのを見て、安心したんだ。

なのに、今は興奮してて音を走らせてるし…。
いくら俺でも、こんな走ってる音にドラムの音を重ねる事は出来ませんっ。


リーダーもそうだけど、サブギターのマサも呆れてるし、キーボードのケンだけが楽しそうにアキのベースに合わせて音を重ねてる。
ケンはギリギリに来たからアップしてないので、良いアップになっただろう。
リーダーの声が、マイク越しに聞こえてくる。

 「はーい、それではケンのアップも終わった事だし、い・く・よー!」

 「おー!」



hanami_live_2017.jpg


最初の2曲は、童謡をジャズ風にアレンジしたものを演る。
そして、MCを挟む。
 「皆さん、こんばんはー!
今夜は来て頂きありがとうございます。
3月も、もう終わりに近づいてきちゃいましたね。
皆さん、花見は行かれますか?今宵は葉桜ですが、それでも温かい日々が続いてるので、例年より早く花見できるかもしれませんね。花見にちなんだ曲を、3曲続けて演らせてもらいます」

普段では演奏しないポップな歌謡曲を、3曲カバー演奏する。
その後、MCに。
 「それでは、毎度のメンバー紹介です。
時間ギリギリに到着した、重役出勤のキーボードのケンッ」
ケンがキーボードを弾き、音を出す。
 「はーい、こんばんは。遅れてすみません、本当にギリギリまで仕事だったんですよぉ」

リーダーの声が続く。
 「それでは、お次。なぜか興奮に興奮して最初っから走ってしまったベースのアキッ」
え、俺の方にくるの…、と焦りながら、ベースの音を出す。
 「こんばんはー。ごめんなさい、緊張してましたっ」

リーダーの声が続く。
 「お次は、花も霞んでしまうほどのお洒落なギター、マサッ」
テレながら、マサはギターの音を出す。
 「こんばんはー。今宵の花見は葉桜だから、華を持たせないとね」と、桜ではなく、バラの花をギターのネックに巻き付けたのを見せながら、ウインクまで付けてる。
その言葉に、女性客が興奮している。
 「マサー、素敵っ」
 「花見より、マサの方を見ていたいわぁ」
等々、色々と。

リーダーの声が、その女性たちの声を抑えるように続く。
 「お次は、今夜も低音で盛り上げてくれるだろう、ドラムのコウター」
コウタもドラムを叩き音を出す。
一瞬にして、ざわめきが静かになる。
 「花見と言えば、アルコールだよねー。ライブ終わったら飲みたいなあ」

 「そして、最後に。ボーカル&メインギターの俺、アサミです。
皆、盛り上がろうぜっ」


大歓声が上がった。






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大好きな人が聴きに来てくれてる。
そう思うと、舞い上がるよね💛

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