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新潟県私立田村学園高等学校 その三

そして、いよいよ、その少年の、ここでの練習最終日。
たまたま校長は出張で出掛けていて、教頭が少年と話をしていたそうだ。
シンプルに応えたそうだ。
 「あちらでも頑張ってくれたまえ」って。
そうだろう、教頭も卒業した高校に編入しようとしてるんだ。
感慨が無い筈は無い。
教頭もそうだが、俺にとっても同じ後輩になるのだから。


そして、東京へ出発する日、もう一度、少年は来た。
校長と話をする為にだ。
そして、帰り際、正門まで送ってやると、そいつは声を掛けてきたんだ。
 「西田先生が、1年間頑張ったところで・・・、2年間、頑張ります。
そして、エスカレーターとはいえ、大学でも頑張るつもりです。
今まで、ありがとうございました。
いっぱい迷惑を掛けてしまいました。
本当に、申し訳ありませんでした…」

その言葉を聞いて、俺は目をウルウルさせていたね。
 「うんうん、頑張れ。身体を大事にしろよ」
ありきたりな言葉しか言えなかったけど、嬉しかったね。

そしたら、そいつは正門を出た後、俺に制服のジャケットとインシャツを渡してくれたんだ。
なんて言ったと思う?
 「第2ボタンだと思ってください」
だと。思わず笑っちまったよ。

眼鏡先生にやるかと言ったら、駄目だと言われた。

 「俊平先生にバレるでしょ」
 「もう時効だろう」
 「うーん・・・、ま、どっちでもいいや」

そう言って、その少年はバス停に向かい歩き出した。
バス通りに行く手前の角で振り返るので、手を振ってやると、振り返してくれた。


そして、俺は眼鏡先生に言いに職員室へ戻ったんだ。
いつもの如く、自分の経験談を一から話し出してな。
でも、俊平は、目敏く見つけてしまった。
 「西田先生、これは何ですか?」
 「そして、俺は同好会を創ったんだ」
 「西田先生、これは治のでしょう?なんで西田先生が持ってるのですか?」
 「女子を入れようとは思わなかったね。1年間、本当にがむしゃらに走ってた。大会のエントリーってどうやってするんだっけ?って、市役所へ聞きに行ってたね」
だが、俊平はしつこい。
 「こら、こっちの話も聞けよ」
 「お前ね、誰に向かって言ってるんだよ」
 「西田のジジイにだよ」
 「口、悪くなってきてるなあ」
 「だから、なんで治の制服を持ってるのか聞いてるんだっ」
 「いいか、俊平。お前は長距離のキングと呼ばれてる男だ。ここぞという時は実力を発揮すれば良いんだ。そうでない時は」
 「るせえよ、御託並べるんじゃねえ。この服をどこで手に入れたのか聞いてんだ」
 「あれ、眼鏡を外してんじゃん。俊平は眼鏡掛けてた方が良いぞ」
 「この野郎、その首、へし折ってやろうか」
 「いやー、まだ生きていたいなあ」
 「なら、とっとと吐け」
 「うぇぇ…、ってか?」
 

でも、俊平のマジな目を見て負けた。
だから、言ってやったんだ。腕時計に目をやり、ゆっくりとな。
 「んー…、バス停に、着く、かな……。記念に…、さっき、だったかな…」

と俊平の方に目をやると、既に俊平の姿は無かった。
正門を飛び越え様としてるのが目に入ってきたんだ。
さすが、早いねえ。
長距離のキングと呼ばれてるだけある奴だ。

さあ、追いつくのか。
どうなんだろう。

ってか、あいつ、引継ぎはどうするんだ。
その為に、俺を呼んだんだろ。


 「やれやれ、あいつは全く話を聞かない奴だな。
でも、間に合うのかあ?
いくらなんでも、相手は乗り物だ。
まあ、どっちみち連絡はしてくるだろうよ」

と、暢気に構えてたんだ。





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そういう背景だったのですね…。

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