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卒業、それは過去からの決別 #2 ~SSは最終話~

 「卒業かあ…」
しつこいほどにぼやくユタカの声に、イラつきのあるタカの声が応じてくる。
 「でも、今は生きてるんだ。そうだろ、違うか?」
するとマサの声が聞こえてきた。
 「そうだよ。昔の事を思っても、時は戻らない。今、この時を生きてる事に感謝しろよ」

そのしんみりとした雰囲気をぶち壊すかのように明るい声が聞こえてきた。
 「あれぇ、皆して、そこで何をしてるの?」
ジュンヤの声が聞こえてきたので振り返った。
 「おま…」
 「えっ」
 「そのっ」
絶句したタカとマサとユタカに、ウインクしてジュンヤは聞いてきた。
 「似合う?」

3人は脱力してしまったが、暫らくして口を開いてきた。
 「ジュンヤ、お前は、自分で似合うと思ってるのか?」
 「うん、思ってるよ。マサも着てみたい?」
 「誰が着るもんか」

 「そうだよ。需要とかあるのか?」
 「可愛いと思うんだ。ユタカは…、似合わないな」
 「ったりまえだ」

 「どっかの誰かさんに着ろ、とでも言われたのか?」
 「いや別に、全く誰にも何も言われてないよ。あのね、今年の6月下旬で、このブログは3周年目に入るんだよ。だから、宣伝も兼ねて着てみたんだ」
 「へえ、もうそんなに経つんだ」
 「タカも、一緒にどう?」
 「やだね」

マサは聞いていた。
 「なあ、ジュンヤ」
 「ん、やっぱり着たいってか?」
 「違う。絶対に着ないからな。その…、卒業って言葉を聞いて、何を思う?」
 「卒業、ね…」

ジュンヤは、ゆっくりと言葉を紡ぐ様に言ってきた。
 「人によりけりだと思うんだよね。私は大学卒業してもモデルを続けてきた。医者なんて、世界を飛び回ってる時にバイトでやっていただけなんだ。ドクターの資格を持っていたせいか、それは役に立つ時が多かった」

ジュンヤはユタカの表情が曇っているのを見て、ユタカに顔を向けて言いだした。
 「だけど、ユタカ。
お前さん、ボスの事を思い出すんだろう。
大学卒業した直後の、あの事故で死んだと聞かされたが、ボスは悪運が強いんだ。
お前の、あの家で起きた事件を憶えてるだろう。骨折紛いな事をされたが、骨折どころかひびも入って無かった。本当に運が強く、ボスもまた生きようとしてたんだ。
卒業というのは、寂しく感じる言葉だが、私は、こう思ってるんだ。
 『卒業とは、今迄とは違った挑戦に向かうのに必要なものだ』とね。
だから、おめでとうと言うんだよ。
ま、私の自分勝手な解釈だけどな」


3人は溜息を吐いていた。
 「ジュンヤって」
 「強いな」
 「前向きな言葉だな」

ジュンヤは口を開いた。
 「そもそも、モデルというのは本当に人によりけりなんだよ。服を着るのか、服に着られるのか、服を自分のモノにするのか、服は自分の一部なのか。それらを踏まえたうえで、モデル業というのは成り立つものなんだよ。医者は誰でもなれるし、出来る職業だ。
しかし、モデルは違う。
いかに自分を魅力的に魅せることが出来るか。
自分を演出していくものなんだ。
高2の時から引退するまでの26年間、頑張ってやって来た。
ミラノ、パリ、ニューヨーク等を中心にして色々な賞を頂いたけど、自分というのをしっかり持っていないと、流されて干されていくんだ。
いいか、謎野郎にハーフ野郎に…、なんとか野郎」

タカに殴られた。
 「って…」
 「なんとか野郎って何だよっ」
 「あ、思い出した。ごっついの、だ」
 「この野郎、殴られたいか」
 「やだねー。さっきも殴っただろう。
あの時も言ったが、私の忠誠心は変わらない。ボスがボスでいる限り、私はボスに付いて行く。
『自分の夢を持ちながら、悩みながら進んで行けば良い。疲れたら私が癒してあげる』と言った言葉は、無期限ものだ。だから、私はパースに来てるんだ」


ジュンヤの言葉で、3人は思い出していた。
大学時代、ボスは襲われ骨折紛いな事をされた事件を。
ユタカは、自分の屋敷の一部を壊された事をも思い出した。
 「私は…、私は、あの男を絶対に許さない!だから、めちゃめちゃに殺してやったんだ。
私にとって、ボスは…、トモは小学校の時からの腐れ縁だけど、あいつしか見てこなかった。
トモの行く先を阻む奴は、誰であろうと蹴散らしてやる」

タカは頷いてる。
 「あの時は、場所がそうだったからハーフが助けたが、私も助けたいんだ。
この命を賭けてでも、盾になっても守りたい。あんな熊野郎にでなく、この私が助けたいんだ」

その言葉に、マサも頷く。
 「親の七光りでなく己の力を知りたい、という願望は今でも持っている。
ボスが生きてる限り、ボスの側に居たい。あの忠誠心は、今でもある。だから、パースに来ることに決めたんだ」



声が聞こえてきた。
 「誰が何をほざいてるのやらと思ったのだが…、お前等は何年経とうが変わってないな」

声がした方を向くと、サトルだ。
 「ボスは何時まで経っても強がりの塊だからな。まあ、直せと言っても、こればかりは無理だろう。
それに、私も忘れてないからな。『バカになって。バカになれないのなら、私たちが甘やかしてバカにさせてあげる』という言葉は、今でも有効だ。
言っておくが、私は、これから東京に帰る。
あの忠誠心を知ってる者は、5人だけだ。他の奴等には一言も喋るなよ」

その言葉に、マサとユタカとタカとジュンヤの4人はハモッていた。
 「分かってるよ、澄まし野郎」
その言葉を聞き、澄まし野郎ことサトルは苦笑していた。
懐かしい呼び名だ…、と。

 「で、何しに帰国するんだ?」とユタカの言葉に、
 「父が死にかけなんだ」とサトルは返すと、
 「え、『御』が?」と、マサが驚いた。
 「昌平でなく、隆星の方が言ってくるんだ。もう駄目なんだろう…」

タカは聞いてくる。
 「で、何時の便で帰るんだ?」
 「ワンがパスポートの更新で帰国するって言うんで、便乗させてもらうんだ」
 「ワンのジェットか…」
 「ところで、その着ぐるみはジュンヤか?」
 「そうだよ、よく分かったな」
 「よく似合ってるな」
 「ありがとー。サトルだけだよ、そう言ってくれるのは」
 「色違いとか模様違いで、他に無いか?」
 「どうするんだ?」
 「優介に着せたい」

わはははっ…。
サトルの、その言葉に4人は大笑いしてしまった。
優介君、可哀想に。
サトルの玩具になっちゃって、御愁傷様。


茶色のプチ模様を着こんでいるジュンヤの後を4人は付いて歩き、店に向かった。
茶色と黒色の2色しかないが、トラ模様、ミケ模様、プチ模様、縞模様の4種類がある。
茶色のミケ模様を買ってサトルは4人に声を掛けた。
 「もう、ここへは来ない。優介が先に死んだら来るけど、私が先に死んだら、ここへ来るようにと優介には言ってあるんだ。その時は、よろしく」
 「分かった」
 「気を落とさずに」
 「お大事に」
 「恋人は大事にしろよ」
その4人の言葉に微笑み、サトルは目を瞑り、意識を学生時代の頃に戻す。
目を開くと、学生時代によくしていた腕組みと冷笑を見せ、別名『左腕は澄まし野郎』と呼ばれてた頃にしてた冷ややかな口調で声を掛ける。
 「お前等も元気でな。ありがとう」

そう言って、サトルは店を出た。


 
他の3人は、色々と物色している。
 「へえ、色んな物を置くようになったな」と言うタカの声に、
 「この時期は、まだ暑いからね」と返すジュンヤに、
 「ここだからこそ置ける物だな」と返してくるマサの声に気が付いたジュンヤは、ユタカをチラリと見て納得した。
 「ああ、なるほど。遅かりしのホームシックなのか」

言い当てられたユタカは悔しくて…、悔しさのあまり手直に掛けてあったタイガーの着ぐるみを頭からすっぽりと被り、顔を隠した。
 (くそっ。本当に、医学野郎は、何かの言葉で言い当ててくる、うんちく野郎だよなあ…。
そうだよ、ホームシックだよ。トモと一緒に日本に帰りたいんだ。それには、あのクマヤローをどうにかしないといけないんだよ…)


3人の笑い声が聞こえてくる。
 「あはははっ…、ユタカがタイガー着てるー」と笑うジュンヤと、
 「王様は、さすが動物の王様を選ぶんだな」と呟いてるマサと、
 「ははっ…、タイガーになってボスを守ってるクマヤローを狙い撃ちだな」と、これまた笑い転げてるタカの3人を心の中で罵っていた。
(そうだな、これでクマヤローを狙い撃ち…、出来るわけないだろっ!あいつには腕力どころか知力や帝王学や武術にも負けてるんだからっ)



そして…、サトルに対して言えなかった言葉は胸に秘めて、結束力を再び強めた4人でした。

サトル、俺たちは何時まで経っても最強の仲間だからな。
何かがあろうが無かろうが、頼ってこい。
待ってるからな。














To be continue...





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福山さんシリーズのSSは最終話です。

そして、引き続き『弟と兄』をお楽しみに~
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