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弟と兄 (47)

今年の大学の入学式は4月3日の月曜日だ。
本来なら4月2日にするのだが、今年は日曜日という事もあり3日にするらしい。

その前日の4月2日にスーツを受け取りに行った。
そして、その日は俺の誕生日でもある。
40歳になった兄と俺の年の差12歳が、11歳になる日なんだ。
そう、兄の誕生日は3月15日で俺の誕生日は4月2日。
スーツ姿の俺を、兄に見て貰おうと思っているのだ。


大学の入学オリエンテーリングの時、入学者対象にスーツの割引券が同封されており、1着だけ購入する人は半額で購入できるが、2着買えば1着は無料だけど、2着目は半額になるという嬉しいクーポン券だ。
3月に入ると、駅近くのスーツ専門店に行って採寸してもらっていたのだ。


淡い紺を基調として濃淡の2色のグレーが格子模様となっている上下。
もう1本は、ノーコンの上下。
色々な時に活躍するだろうと思ってノーコンにしたのだ。
スーツ2着とインシャツを4着買ったので、ネクタイは3本付く。
落ち着いた雰囲気を持つ赤紫色のと、黒地にクリーム色とオレンジ色が挿し色となってるのと、ノーコンだが星が散らばっているのとだ。

どっちにしようかな、と思ってると帰ってきたみたいだ。


 「お帰りなさい」
 「ただ…」


振り向いた兄の目が大きくなっている。
その兄に言ってやる。
 「驚いた?今日受け取りに行ってね、最初に見て欲しいなと思って」
どう?と聞きながら、くるっと1周回って見せる。

大きくなってた目が優しくなってきて微笑んでいる。
 「驚いたよ。うん、よく似合ってる」
 「ありがと。これとね、もう1本あるんだ。着てくるから待ってて」

待っててと言ったのに、兄はついてくる。
 「誰かと会うのか?」
 「何言ってんの、入学式に着るスーツだよ」
 「入学式?」
 「大学は制服なんて無いんだからね」

すると兄は額に手を当てて俯いてしまった。
 「あー…、聞けばよかった」
 「何を?」
 「誕生日プレゼントを買って帰ったんだ。欲しい物を聞いてれば良かった…」


着替え終わり、声を掛けてやる。
 「はい、もう1本はこっちだよ」
 「ん、どれどれ…」


どう?と、また1周回って見せる。

 「さっきのも良かったが、こっちも良く似合ってる」
 「どっちを着て行けば良いと思う?」
 「そうだなあ、入学式ならどっちでも良いと思うよ」
 「俺も迷ってね」
 「それなら春らしく…、今来てる格子模様の方かな」
 「なら、こっちにする」

スーツを脱ぎ、ハンガーに掛けていく。
兄の声が聞こえてくる。
 「で、入学式っていつ?」

俺は思わず溜息を吐いていた。
 「明日だよ」

 「は?明日?」

益々、目が大きくなっていた。


服に着替えてリビングに行くと、四角い包みを手渡された。
 「誕生日プレゼントだよ。おめでとう」
 「ありがと。開けて見ても良い?」
 「うん、良いよ」

包装を解くとチョコレートの箱が出てきた。
 「わあ、チョコだっ」
 「中を見て」

ここのチョコ好きなんだよな、と思いながら蓋を開ける。
 「え…」


うん、もちろん個別包装されたチョコもあったよ。
でも、驚いたのは・・・。
個別包装されたチョコ達に四方八方を守られているかの様に見える物にだ。
それに驚いたんだ。

 「こ、これって…」
 「うん、その驚いた顔も見たかったんだ」
 「意地悪…」
 「俺の思いだよ。受け止めて欲しい」
 「ありがと…、大事にする」


兄は、ペンダントを俺の首に掛けてくれた。
兄弟という重さよりも、ペンダントの重さの方が重い感じを受ける。
涙が頬を伝う感触がある。
 「おにぃ…、ありがとう、本当に大事にする」





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19歳の誕生日おめでとう、祐樹君。
スーツ姿を着た祐樹君の晴れ舞台は、すぐだね。
写真とらなきゃ、だわ。

そして、最終話まで残り数話です。
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