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弟と兄 (18)

我が家は日本家屋なので、部屋の仕切りは襖だから鍵なんて物はない。

兄の襖を開くと、先に目がいくのは壁に貼り付けられている大判の写真。
それは、一昨年、俺がインハイで走った時の写真だ。
全国大会の時は、応援に行くと言って一緒に行ったものだ。

等身大のサイズに引き伸ばして貼っていた。
それを見ながら、俺は恥ずかしさもあったが嬉しくもあった。
その写真を見て、少しは慰められた。

机に近寄ると、ビニール敷きの下にはサッカーボールを蹴っている真木の写真が数枚、挟まれている。
 「お兄ちゃんが、なんで…」


俺は、もしかして裏切られてたのか。

真木との出会いを思い返そうとしていた。
真木は、去年の体育大会の頃から俺に接してくるようになった。
1年生の時は、宿敵部としか認識が無かった。
でも、俺を見てるようで見てない視線を寄越してくる時もあった。
あれは、俺を通してお兄ちゃんを見てたのか。


なんだか、泣きたくても泣けないや。
それに、ここは兄の部屋だ。
泣くのなら自分の部屋だ。


なんとかして自分の部屋に戻ったが何もする気が起きてこない。
着替えたくないのだが、習慣というのは抜けない。普段は上着を脱いでカッターシャツの上にジャージの上を着てるので、今も、その格好だ。
学校で、しかも養護室で、あんな事をするなんて信じられない。

その時に気が付いた。
 「お兄ちゃんは突っ込まれる方なんだね」


凄くショックで本当に何もする気が起きてこない。
布団を頭から被り、ベッドの上に座り込んでいた。


遠くから声が聞こえてくる。
 「ただいまー」


声が掛かり、襖が開かれていく。
 「祐樹、ただいま」
 「お、お帰り」
兄はずけずけと入ってくる。
 「なに、英語の教科書を広げたまま暗くなってるんだ?あ、分かった。今日のテストの自己採点をしてたのか」
英語の教科書がベッドの上に置いていたのを兄は手に取って見てる。
 「祐樹、どうした?」
 「あ…、何でもない」
 「クラブも良いけどテスト期間はテスト勉強しろよ」
 「明日と明後日は大会だもん」
 「ああ、そうか。応援行きたいが、1年生のテスト作りがあるからなあ。
行けなくて悪いが、頑張れよ」
 「うん」


台所に行ったのだろう、声が聞こえてくる。
 「晩飯はまだか。仕方ないなあ、今日は出前を取るか」



お兄ちゃんは、俺に見られていた事を知らない。
だから普通に接してくる。
でも、俺はどう反応すればいいのか分からなく、上の空だった。
そんな俺を見て、言ってきた。
 「そんなんだと、明日の大会はどうなるのかね?部長さん、しっかり走ってくれよ」
 「分かってるよっ、ただ気になって…」
 「まあ、今日のテストはもう終わったんだ。結果を待つだけだな」


お兄ちゃんは、俺の気持ちが分かって無い。
どんなにお兄ちゃんの事を思ってるのか。

 「もう寝る…」
 「お休み」
兄は微笑んで言ってくるので、微笑み返していた。
 「ん…、お休みなさい」












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明日、明後日の大会は、どうなるのでしょう。。。
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