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サドなアイツと俺 (32)

素直に、口から言葉が漏れた。

 「トニー…」
 「ん、今度は何処が痛いって?」
 「トニー…」
 「腹か?」
(違う)
 「トニー…」
 「何処だ?」
 「トニー…」
 「だから、ど」

(このニブちん、分かれよ)
 「抱いて…」
 「へ?」

 「トニー抱きしめて」
 「ジュン…」
 「トニー、ごめん、ありがと」
 「意味分かんねえんだけど?」
 「いいから抱きしめて」


はいはい、と言ってトニーは俺の背中から腹に腕を回してくる。
 「違う」
 「何が?」
 「こんなんでなく」

くるっとトニーの方を向こうとしたら背中に痛みが走る。
 「つ……!」
 「ほらほら、ゆっくり動けよ」

 「トニー」
 「居るからさ」
 「抱きしめて」
 「だから」
 「違うって」
 「何が違うんだ?」

恥ずかしくて言えないが、でもトニーは俺の背中の後ろに居る。
見えないからというのもあり、言えた。
 「トニーの……、その…、腕に、胸に抱かれたい………」
 「…それ、俺の顔を見て言えたら抱いてやるよ」

なんで、こういう時に意地悪言うのかね。
なので即答してやる。
 「それは無理」
 「ほー…」
 「だってトニーは俺の後ろに居るもん」
 「なら、こっち向けよ」
 「背中が痛い」


とんでもねぇ甘ちゃんだな…と呟いてるのが聞こえてくる。
トニーはベッドの中を、俺の背中側から目の前に移動してきた。
両手を広げて言ってくる。
 「ほらよ、これなら言えるだろ。もう一度言ってみろ」


恥ずかしくて言えない。
なので、勝手にトニーの胸に顔を埋めてやる。
 「言えよー。こーら、ジュン。さっきの言葉言えよー」


煩い。
だけどトニーは俺を抱きしめてくれてる。それが嬉しい。
 「トニー…」
 「うん?」


トニーの温もりが、優しさが嬉しい。
ダディやヒロとは違う優しさと温もりだ。
背中に回されてる片方の腕を解き、その手に頬擦りしてたら口が滑った。
 「トニー、大好き…」

途端に、トニーはもう片方の腕に力を込めてくる。
 「いっ…!」

 「あ、わりぃ…。思わず嬉しくて力が入ってしまった」
 「バカ力なんだから」
 「はいはい、ごめんね」

今なら言える。
さきほどの言葉では無くて、自分の思いを込めての言葉だ。
 「トニー…」
 「なんだ?」
 「俺、素直じゃなかった」
 「んー…、今日のお前は何処かが故障してるみたいだな」
 「ありがと。俺、トニーの優しさ、さっき知ったばかりなんだ」
 「何だよ、それ。お前、やっぱり変だ。明日はGP行こうな。背中と、その口を診てもらおう」
 「うん、そうする」
 「おい、そこはツッこむとこだろ」


背中が痛くて寝がえり打てなかったけど、トニーが一晩付いてくれてた。
 「くっ…、うぅ・・」
 「痛いの痛いの、飛んでけー……」
と言いながら、優しく背中を撫でてくれる。
その言葉と、温かくて男らしい腕の中は、俺を優しく包み込んでくれる。



一夜明けた翌日。
トニーは一緒に行きたがっていたが、俺は1人で近くのGPに診察に行った。
そのGPにはフランス人女性と日本人男性が居て、日本人男性ドクターが診てくれた。
その日は消毒と湿布張りをしてくれた。
3日間、通院する様に言われた。


日本に居た時は直ぐ薬を出されていたけど、元々GPでは薬は出さない。
それは、俺の家がクリニックをしていて、隣がエドのGPだというのもあるが、そういう医療面においては日本感覚に馴染めなかったものだ。
どうして直ぐに薬を出そうとするのか、また、どうして診察費などを、その時毎に支払わないといけないのかを疑問に思っていたものだ。

そして、この日本人ドクターはネームカードをくれた。
 「君のお父さんと同じゼミ仲間なんだ。恐らくボスは私の事を憶えてないだろうな。
なにしろ人の名前と顔を憶えるのは苦手な人だったからな…。
ああ、マサとユタカなら覚えてるかもしれない。パースに戻ったら聞いてみると良いよ。
この名前を知ってる?とね」


そのカードには、こう書かれていた。
  
  Shigeo Mizoguchi (シゲオ ミゾグチ , 溝口繁雄)



チャットアプリを開きパースに連絡する。
相手はマサだ。
マサに聞くと、こう返ってきた。
 「ボスもシゲの事は知ってるよ。
卒業後は大学の病院でチーフをしていて、フランス人女性と結婚してるんだ。
そっちに移住して8年になるのかな…」


それを聞いて納得した。
ああ、だからダディは即答でフランス行きを許可してくれたのか。












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やっと素直になれたジュン。

さあ、最終話に向けて突っ走りますっ!

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