出会うから別れがあるんだ (3) ソフトな描写があります。

 アールは真っ裸にされると鞭で天井から吊るされ、鞭で背や腹を打たれる。
 目の前で改めて見るアールの裸は筋肉が隆々と付いている。
 マルク様も優しく撫でる感じだった鞭打ちが、段々とサマになってきている。
 アールは何も発しない。
 だが、鞭はアールの大事な所に掠る。それを見ると堪らなくなった。
 「マルク様っ」
 「煩い、お前は黙ってろっ」
 アールの背に筋肉が付いており、その筋肉が邪魔なのか、鞭は脇腹に微かに当たる。

 「マルクさ、ま…」
 何度も何度も鞭を揮う。
 するとコツが分かってきたのか、マルク様の鞭はアールの腿に当たった。
 「っ…」

 狙いを定めたのだろう。
 今度は迷う事無く下半身に当たった。
 「ッ……」

 彼はイタリア語を口にしていた。
 そりゃね、誰でも鞭の様な物で、その大事な所を強く当てられると痛いよ。
 それに、人間は窮地に陥ると自国語で早口になると言うが、アールはイタリア人なのか。どおりで銀髪にダークブルーの瞳の持ち主だと思ったんだよ。
 その事はマルク様も気が付いたみたいだ。
 今更気付いても遅いと言われたが中国語で話していたんだ。
 分かるわけないだろう。


 ビシッ!と張り詰めた音が聞こえたかと思うと、ドサッ…、と何かが落ちた音がした。それはアールが床に倒れた音だった。遂に言っていた。
 「マルク様、人殺しは止めて下さい」
 「ウィル、貴様は誰に言ってる」
 「マルク様の手は医者の手です。医者が人殺しなんて」
 「煩いっ」
 躱そうと思えば躱せる。
 だけど、その鞭を受けた。

 ビシッ。

 迷う事無く、私の顔に当たった。
 マルク様は、一部始終をじっと見ていたフィルに声を掛けている。
 「フィル、ウィルを連れて行け」
 「どこへ」
 「病院に決まってるだろ。その傷を治療してもらうんだ」

 フィルは安心気な表情をして応じている。
 「はい、畏まりました。それで、そちらの男は」
 「こいつは、このまま放っておく」
 「は、はい」

 マルク様、貴方は優しい御方だ。
 側付である私に傷の治療だなんて、普通はさせないだろう。


 数日後、覚悟を決めて本宅に足を向けた。
 「マルク様、私の手当てをして頂きありがとうございます」
 「私が手当てしたのでない」
 「でも、マルク様がフィルに言って下さったお蔭で助かりました。ありがとうございます」
 
 お互いが押し黙ってしまったが、その沈黙を先に破っていた。
 「マルク様、私の意思は固いです。どうか、私に世界を見て歩く事をお許しください。
 お願い致します。私は、守りたい相手を傷付けることなく、また泣かせたくも無いです。
 私は自分の意思で決めたのです。だけどフィルには相談しました」
 「フィルは何も言ってきてないぞ」
 「私は自分で言いたいので黙って欲しいと、お願いしたのです」
 「貴様は」
 「お願いです。マルク様はヒロト様と居られる時は和やかで優しくなれる。それは、元々がお優しいからです。マルク様、私は世界を知りたいのです。私たち側付にとってドイツに来た事はハングリー精神が失われつつあります。それで良いと思います。ドイツで学んだ事を活かし生きていく事が出来る。それに、私は自分の生まれ育った場所に骨を埋めたい。そう思っております」


 暫らくすると返事があった。
 「分かった…」
 「マルク様」
 「この私に理屈を言ってくる奴は居なくなれ」
 「マルク様…」
 「二度とドイツに来るな」

 その言葉を聞き首を垂れる。
 「ありがとうございます。御身、お大事に」
 「ついでに、あの拷問部屋に居る奴も連れて行け」
 「え、拷問部屋って」
 「あのまま放りっぱなしにしてたからな」
 「なっ、何て事をっ」
 「とっとと出て行けっ」


 無事に卒業することが出来た。

 アールなんて、ぐっすりと寝ていたほどだ。
 なんてタフな奴なんだ。
 何も考えない、神経が図太いだけかも。






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出会うから別れがあるんだ (2) 

 通常で行くと2日掛かるが、木々を伝い最短距離で行くと1日でマルク様の私有地に着いた。
 どんな感じの人なのか、また人数の事も聞かずに来たから分からないが、取り敢えず誰か居ないか探すか。
 イタリア側から探す事2日目に、ある人物を見つけた。
 その人は川の中に頭を突っ込んで何かを探しているみたいだ。
 顔を上げた時に声を掛けた。
 「ミスター、そこで何をしているのですか?」

 だけど何の反応も無かった。
 英語が分からないのか、ドイツ語、フランス語でも声を掛けてやる。
 すると中国語で声掛けた時に反応した。
 「ある人を探している」

 この人は中国人なのか。いや、それでも銀髪に目付きの鋭いダークブルーの瞳は欧州人を思わせる。しかも筋肉が付いてるのでスポーツマンなのかなと思うほどだ。
 中国語で返されたので中国語で話し掛けてやる。

 その人の名前はアール。
 詳しい事は教えてくれなかったが、おそらくこの人が侵入者なのだろう。
 ここは、ある人の私有地で侵入者を連れて来る様に言われてると言うと焦り出した。
 「探し人が見つかれば、その人を連れて帰る」
 「でもね、ここは私有地なんだ」
 「悪いが」
 「主人が連れて来いと言ってるんだ。まあ、取り敢えず君の怪我の具合を見てからだね」
失礼、と言って服を脱がせた。

 思わず口笛を吹いていた。
 「凄い筋肉だね。君は何かスポーツしてるの?」
 
 アールは黙っている。
 「何か言わないと意地悪するよ」
 「スポーツ全般…」
 「へえ、身体を動かすのが好きなんだね。アールは何のスポーツが一番好き?」
 「アウチッ」
 「ごめん、塗り過ぎた。…ん、英語も分かるの?」

 アールは溜息を吐くと、こう返してきた。
 「ドイツ語、フランス語も分かる」
 「へえ、オールマイティなんだねえ。凄いや」


 アールは水が好きみたいだ。
 怪我の様子を見てOKと言った私の呟きを聞くと、パパパッと服を脱いで全裸になり川の中に潜ろうとしている。
 「ちょ、待って。駄目だよ。怪我してるんだ、水に入っちゃ駄目っ」

 川から引き揚げると、アールはキョトンとしている。
 その表情がジョンに似ていて思わず微笑んでいた。
 「その怪我が治ってからね」

 その怪我が治るまで1週間を要した。
 その1週間という短期間で興味を引かれた。
 似ていてもジョンとは違う。あのふんわりとした泣き虫ジョンは可愛いけど、アールは危険な男という匂いをさせている。
 そのアールが文武共に秀でている事が分かり、怪我が治るまで一緒に居た。
 怪我が治り傷跡も消えた日、言っていた。
 「アール、君を主人に会わせたい」
 「勝手に入ったのは謝るよ」
 「たぶん、それだけでは済まされないと思う」
 「どうして?」
 「主人はキレるから」
 「叩くのか?」
 「鞭で打ってくるんだ」
 「ドイツ人か…」
 「頼むからアールも喧嘩しないでね」
 「努力する」

 アールを連れてドイツに戻るのだが、アールは木登りは苦手みたいだ。
 ドイツを発って戻るまでに10日間掛かった事になった。
 何か言われるだろうか、言われるだろうな。
 覚悟していた。



 部屋のドアをノックする。
 「マルク様、ただいま戻って参りました」
 「遅いな…」
 「申し訳ありません」

 アールを部屋内に入れ、後ろ手でドアを閉めた。






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最新作!! 出会うから別れがあるんだ (1)

 ここはドイツにあるフォン・パトリッシュ邸の一室。
 そこでウィルはフォン・パトリッシュ家のジュニアと対峙していた。

 「マルク様」
 「何故だ」
 「お願いです。私は、挑戦してみたいのです」
 「ここに居ても出来るだろう」
 「自分の為に、もっと切磋琢磨したいのです」
 「ウィルッ」
 「ここには20人も必要ではありません。私は、今迄は甘んじてきた。だけど、自分の力を、外に出ても生きていける力を得たいのです」
 「その為に、イタリアから教えに来て貰ってるだろう」
 「あの王子は契約が切れたので、既に帰国されてます」
 「それならフィルやアランと」
 「あの2人は相手になりません。もっと強い相手とやり合いたいです」
 「とにかく、駄目なものは駄目だっ」
 「マルク様っ」
 「駄目だっ」

 そんな時、ヘル・グスタフォーからイタリアと隣接した私有地に、何者かが侵入していると情報を貰い、そいつを捕獲するよう指示された。
 「今の話を」
 「生きて連れて来るんだ。お前なら出来るだろ」
 「マルク様、今の話を」
 「お前は強いからな」
 「…分かりました。その代わり、連れて来ると、先程の話は了承して頂けますか?」
 「そいつの状態次第だな」
 「生きて、傷も付けずにですか?」
 「お前なら出来るだろう?」
 「やります」

 イタリア国に隣接した私有地に誰かが侵入したから、そいつを連れて来いと指示を出され、つい聞いていた。 
 くそぉ、足元を見やがって…。
 取り敢えず支度をしよう。
 そう思い自分の部屋に向かう。


 ここは実力のNo.1からNo.3までの位置にある奴は個室をあてがわれる。私は7位だが、ジョンの側に居たくて7位を保持している。可愛いジョンはすぐ泣いてしまうので、皆から虐められるのもあり、表のNo.1を保持しているフィルと一緒にいつも守っている。
 いつもはフィルとジョンの3人一組で任務を遂行するのだが、今回は違う。
 私1人だけだ。
 たまに1人で任される時があるので、そのつもりで支度をする。

 コンコンッとノックが聞こえるが無視だ。
 「ウィル、居るか?」
 
 この声はフィルか。
 「悪い、今は取り込み中だ」
 「お前の裸なんて見慣れてる」

 そう言いながら入ってきた。
 「何処に行くんだ?」
 「イタリア近辺。ジョンの事よろしく」
 聞こえてないのか返事がない。

 「あの事、マルク様に言ったのか?」
 「言ったよ。そしたらタイミングよく賊が侵入したと連絡があって任務を押し付けられた」
 「何も聞いてない…」
 「”生きて傷を付けずに連れてこい”とか”お前なら出来るだろう”と言われた」
 「はあ…。ったく、あの人は」
 「1人でだ」
 「大丈夫なのか?」
 「仕方ないだろ」
 「気を付けろよ」
 「ダンケ。ジョンの事よろしく」
 「ああ、そっちは任せとけ」
 
 やっと返事を貰い、安心してドイツを後にした。








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お待たせしました。
いよいよ、ウィルとアーノルドの出会いの、お話になります。

最新作! 『出会うから別れがあるんだ』

いつも読みに来て頂きありがとうございます。

本音を言いますと、今作の方を4周年記念SSにしようかと迷っていたのです。

出会い=別れ

でも、この図式を二作で表しても良いかなと勝手に思って、
今作は『4周年記念SS 後編』と題してのタイトルにしました。

人とは、出会うからこそ別れが来るものです。
それは付き物ですね。

ジャンルに思いっきり迷いましたが、BLにします。
男性しか登場しないので主従愛、仲間愛という事で(無理矢理くっ付けてるww


 ~あらすじ~
 良い思い出は一つも無かった。
 だけど、これだけは言える。
 今、私は生きてる。
 だからこそ、これからの人生を過ごす。

 ”ありがとう”なんて感情は無いから言わない。
 だから、この言葉を贈りました。

 ”人間、出会うから別れが来るんだよ”
 
 ”今まで、よく頑張ったね。お疲れ様”

 その言葉に、母は頷き”ありがとう”と応じてくれました。
 生まれて初めてだったんです。
 最初で最後の言葉。
 初めて、母の口から”ありがとう”と言葉を貰いました。

 言って欲しかったんだよね。
 でも、誰も言わなかった。
 私なら言えるから、”よく頑張ったね、お疲れ様”と言ったまでです。

 ”来世では会えるかどうかは分からないけど、元気でね”

 その言葉を最後に言うと、穏やかな表情をしていました。
 まるで私を虐めていた頃は無かったよ的な感じでした。
 貴方に包丁で刺された痕は、まだしっかりと残ってる。
 「金が掛かる」と言って病院に行くなと言われたからね。
 行っても数針縫うだけだし。
 だから、私は自分の身体を見るのが嫌なんです。

 その翌日、母は永眠しました。

今年の2月22日に、私の母は他界しました。
その私の思いを文にしました。

本当に、感謝の念なんて無い。
それは、彼等にとっても同じ事でしょう。

勝手にイタリアに連れて来られ、挙句の果てにはドイツへ。
でも、ドイツでは。。。
自分たちに日の目を見る事を許してくれた。
生きる術を教えてくれた。
誰かを護る事を許してくれた。

だからこそ、彼等は生きている。
自分の生きたい道を。
真摯な思いを、頑ななジュニアは受け止めてくれた。

私だって、
私の生きて行きたい道を突き進んで生きたい。

3(R)



 ~登場人物のご紹介
フィル
ウィリアム(ウィル)
ジョン
アール(アーノルド)

 スペシャル出演者
マルク様
ドイツにあるフォン・パトリッシュ候である『御』のジュニア。

レイ
シンガポールで出会った多国籍病院の室長。




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4周年記念SS ~あとがき&次作のお知らせ

 いつも読みに来て頂きありがとうございます。
 4周年記念SSは如何でしたでしょうか?
 一番肝心なタイトルが決まって無く、捻りも無い『4周年記念SS] と、そのまんまのタイトルにしましたが…。今、決まりました。(遅い…)
 『ハネムーンは能登半島(4周年記念SS)』

 ブログ始まっての、3番目に結婚を挙げたカップルです。
 1番目は『ネコの事情』の主人公で、2番目は、その主人公の飼い猫レモン&リンゴ。だから、3番目のカップルです。
 ひっそりと2人で鳴らした幸せの鐘。
 文中にありましたが、友明も喜んで祝ってくれる事でしょう。
 しかも、ひっそりと鳴らしたくせに、空き缶でオープンカーの天井を開いてのWedding走りをさせるという、お茶目な優介。悟の苦笑やら失笑する複雑な気持ちが分かるわ。

 前作である『GW旅行は能登半島』で瀬戸常務の常務秘書をしている岡崎からアドバイスを欲しいと声を掛けられ、結局は能登に行く事になった悟は、とんでもない物をお土産に貰ったのですね。いや、勝手に漁ったと言うべきか…。

 その悟は恋人である優介と、初の二人旅!
 能登って、素晴らしいスポットがあるのですね。調べてると色々と出てきましたよ。
 『幸せの鐘』だけでなく『縁結びの鐘』というスポットもあるようで、両方の鐘を鳴らすと良い人と出会え結婚出来るらしいです。
 悟は、相手は居るのだから『幸せの鐘』を鳴らして、2人だけで誓いの言葉を口にする。

 もう、仲良く睦まじく生きていって欲しい、そんな2人です。
 そんな2人ですが、思う所があるみたいですね。
 「奥さんと言われるのも良いけど、俺も上に乗っかってエッチをリードしてみたいな。それにはネット検索して情報を得ておかないと…」(優介)
 「寝間着はTシャツに短パンだと味気ないから、浴衣にさせるか」(悟)

 おやおや、2人揃って何を考えているのやらですね(*≧m≦*)
 そして、龍から気品や怒りを貰ったのは政行ではなく、悟の方でしたね。


 違うサイトでエロ無しのファンタジー小説を龍視点で書いて更新中です。
 悟が出演しています。
 一緒に読んで頂けると幸いです。

  『龍神の宮殿』



 そして、次作の紹介です。
 幸せになったカップルが居れば、反対に別れる人も居るということです。

 その私の思いが凝縮された次作には、久しぶりの人が登場します。
 ドイツにあるフォン・パトリッシュの元側付だったフィル、ウィル、ジョンの話です。
 主役はウィルことウィリアムです。
 エロは全くありませんが(苦笑)、性描写のさわりの部分ならあります。
 御了承を。
 別名、『ウィリアムとアーノルドの出会い』です。
 ちなみに、その後の作品の付箋的な要素を含んでおります。

 引き続き読んで頂けると嬉しいです。

 ありがとうございました。




 ともゑより


 

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