青春ド真中 (8)

日本に帰国した翌日。
文雄は、門の勝手口から入り玄関で呼び鈴を鳴らす。
応えを待たずに玄関を開き、中に入る。
と、同時に声が聞こえてくる。
 「ほいほー…。お、文雄か」
 「うん。ゼミでシカゴとニューヨークに行ったから、土産を持って来たんだ」
 「へー、良いなあ。シカゴとニューヨークかあ...」

文雄は横に一歩寄り、後ろに居た弘毅を押し出す。
 「お、生徒会長だ。いらっしゃい」
 「あ、あの、こんにちは」
文雄が口を挟んでくる。
 「ニューヨークに滞在していた時に、弘毅の両親と会ったんだ」
文雄の言葉に誘われ、弘毅は言うタイミングを貰った。
 「父から、先生宛てに手紙を貰ったので、渡しに来ました」
 「ありがとう。どうぞ」
 「お邪魔します」


久しぶりに来る、この家は相変わらず広い。
文雄さんの双子の兄の宮田は、リビングのソファでだらけている。
キッチンから良い匂いがするので、ユウか高田先輩かどちらかが何かを作ってるのだろう。
文雄さんが声を掛ける。
 「海外土産を持って来た。マサしか居ないのなら、マサだけにやる」
その声に、キッチンから声が返ってくる。
 「フミオ?海外って、何処に行ったの?」と言いながら出てきたのは高田先輩だ。
 「文兄、何処に行ってたの?」と出てきたのはユウだ。

二人はキッチンから出ると弘毅を目にして驚いている。
 「え、コウキ?」と、高田先輩は驚いてるみたいだ。
 「なんでコウキが…」と、ユウは俯いた。
そうだろう、ユウは文雄と弘毅のキスシーンを間近で見ていたのだから。いや、見せつけられたのだ。その後、コウキから別れの言葉を貰ったのだ。
忘れられない。
あれは、去年の夏休みだった。


結局、三年間ともコウキと同じクラスになれなかった。
長兄であるマサ兄は三年間とも同級になってるのに…。


高田先輩は、そんなユウの心中は知らないので、コウキに声を掛ける。
 「今ね、デザートを作ってたんだ。昼食後のデザートなんだけど、食べて」
先に文雄が応じる。
 「昼食って何だ?」
 「カレーだよ」
 「お、テルのカレーか」
 「うん」
 「食べる、食べる」
そう言って、文雄はさっさと座ってしまった。
高田先輩は、弘毅に声を掛けてくる。
 「コウキも、座って待ってて。持ってくるだけだから」
高田先輩は、そう言ってくれるがなんか居た堪れない。
弘毅は先に、先生に手渡した。。
 「先生、これです」
 「ありがとう。早速開けさせて貰う」


開けた封書には、弘毅が3年生になった時点でエアメールで送ってた書類だ。
それと、これは・・・!

中身が何なのか分からない弘毅は、興味津々な表情だ。
なので、言ってやる。
 「進学における同意書や資料を送っていたから、記入してくれた物だ。
で、こっちは…、双子の弟とのスリーショットだな」
 「は?ちょっ…、あの親は何をっ」
宮田が声を掛けてくる。
 「は?双子の弟?松井、お前…」
そこに、宮田の双子の弟の文雄が応えてやる。
 「双子には目もくれずだったから、俺が宿題だしてやったんだ。
名前を憶えて抱っこするか、それとも写真を撮るか。どっちかで、とな」

そこに高田先輩の声が聞こえてきた。
 「お待たせ~、カレーですよ」
 「あ、ありが」
すると、高田先輩の嬉しそうな声が聞こえてくる。
 「おおっ!かーわいー」
文雄が応じてやる。
 「弘毅の弟だ」
 「へー、双子なんだ。なら、コウキはお兄ちゃんなんだね」

ユウも、お盆を手にリビングに出てくる。
 「はい、サラダです…」


テンションの高い高田先輩は、ユウに声を掛ける。
 「あ、ねえねえ、ユウ見て。可愛い双子ちゃんだよ」
 「え、双子?」
ユウに、無理矢理写真を見せてる。
 「コウキの弟は双子なんだって」
 「へ、へえ…、そうなんだ……」

高田先輩に写真を見せられ、ユウは双子よりも一緒に写ってるコウキに目が行く。
(やっぱり忘れられない…)

宮田先生は、その写真を撮り上げる。
 「これは、俺が貰ったの。手紙と一緒にな」
 「えー・・・」と、不満気な声を出してるのは弘毅だ。


ふと見ると、長男の口が動いている。
 「マサ?お前、何を食ってるんだ?」
 「フミオからの土産だよ。美味いよ、サンキュ、フミオ。
で、こっちは松井からっ…」
すると・・・、
 「チョップ!」
と、叫びながら、宮田先生は宮田の頭を叩いた。
 「てぇなー…」
 「バカたれっ!それは、お前にではなく、宮田家の主宛てだっ。
弘毅の父親からなんだからなっ」 
長男の頭を叩き、手から奪い返したチョコの包装紙を破いて口に頬張った宮田先生は、嬉しそうに部屋に戻って行く。
 「ぅんまーっ!さすがニューヨーク、高級チョコだっ」



テルの手作りカレーとユウのサラダを食べながら文雄は土産話をしている。
エスカレーターとはいえ、宮田学園の大学に入学した高田先輩は嬉しそうに聞いてる。
食後のデザートは、二人の力作の巨大プリンだった。
 「でかっ・・・!」

高田先輩は応じてくる。
 「うん、デカすぎてどうしようと困ってたんだ。だから人数が増えて嬉しいっ」



でも、味は美味しかった。
弘毅は、家にそろそろ帰ろうと思い、声を掛けた。
 「御馳走様でした。それでは、2学期まで失礼します」
 「一緒に」
文雄の、その言葉に嬉しいと思いながらでも、弘毅は答えていた。
 「久しぶりの実家でしょ?ゆっくりして下さいね」
 「え、でも…」

弘毅は、皆に話した。
 「あのね、実は…。夕食を日替わりで作ってるんです」
その言葉に4人は驚いてる。
 「えっ・・・」と、長兄のマサが。
 「日替わり?」と、宮田先生が。
 「料理を?」と、高田先輩が。
 「文兄が?」と、ユウが。

その言葉に、弘毅は返していた。
 「カレーライス、シチュー、味噌汁、肉じゃが、野菜炒めは作れますよ。
それに、目玉焼き、オムレツも上手だし。掃除はあれですが、洗濯は出来ます」
 「ほー…、文雄が、ねえ・・・」
と信じられない目付きで宮田先生が文雄さんを見ている。
なので、弘毅は文雄に言っていた。
 「宿題です。食事を作ってあげて下さいね。で、9月の授業が始まるまで、ゆっくりして下さい。
俺は掃除をしたいので」
先生が声を掛けてくる。
 「文雄は散らかし魔だから、掃除するのなら居ない時が良いよな」
 「はい。二度手間になるので」

こればかりは、なんのフォローも出来ないので正直に話した弘毅だった。








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あら、あらら・・・
宿題を出して、帰省を促したのね
優しい弘毅だね~

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