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2019年度年始特別SS (4) 

山道を走り登っていく2人を、二人の副学長は見守っていた。
 「いやあ、驚いたねえ」
相手は何も言わない。
 「今の心境をどうぞ」
マイク代わりに手をグーにして突き出してやる。
溜息とともに出てきた言葉はこれだった。
 「何か連絡あったか?」
 「俊平先生から?」
 「そうだ」
 「いや、何も。全く、全然」

そうかと呟いた相手は、こんなことを言ってくる。
 「何を言えば良いのか分からなかったんだ」
 「あれで良いと思うよ」
 「変じゃなかったか?」
 「大丈夫だよ」

その言葉に安堵の溜息をつく。
 「まるで、走ることしか頭になかった、中学生の俺に似ていた」
 「わははっ。せめて高校生にしてやれよ」
 「あいつにとって父親は死んでいるんだ。遺影に手を合わせているほどだからな」
 「あっちも何か感づいてるかもしれないね」
 「俊平君が言いくるめてくれるだろう」
 「まあ、まだ俊平先生のほうが分が高いね」
 「でも、いつかは……」

思わず口をつぐんでしまった。
途端に、片瀬の口調が変わる。
 「そのいつかは自分で決めるんだな。由治。お前はここの副学長である前に、彼の父親なんだから」
 「啓……」
 「ああ、もうっ!なんで、こういうときに名前呼びするかねえ」
 「昨日はしなかったからな」
 「はいはい。先に食べ物を買ってからね」
 「分かった」

そう。
まだ、その時期ではない。

いつかは……。

いつかは告白したい。

治。
私が、お前の父親だよ。

お前は、自分の意思で人生を生きろ。


呟いていた。
 「治……。意志の強い目をして、可愛くなってたな」

啓の笑い声が聞こえてくる。
 「ふふふっ。男の子なんだから、可愛いという言葉はやめた方が良いよ」
 「でも、あの顔だと、さすがにかっこいいとは言えない」
 「たしかに、あの顔だと難しいなあ」



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親子の出会いでした。

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