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新作! 2019年度年始特別SS (1) 

昨年は、やたらと治は墓参りをしたがっていた。
それは気持ち的に余裕ができているからだろう。
だけど、それはできないでいる俊平だった。
なにしろ、治の父親は生きているからだ。

おばさんは、まったくなんてことをしてくれたのだろう。
だけど、それを言えば治のことだ、会いたがるのは目に見えている。
だから、俺は自分の生まれ育ったところを口にした。
名古屋だと。

それを聞いた途端、治の目は大きく見開かれ気がそれたみたいだ。
 「ういろう、ひつまぶし、味噌カツ、台湾ラーメン、煮込みうどん、きしめん、金のしゃちほこ」

思わず遮っていた。
 「しゃちほこは食べ物ではありません」
 「分かってるよ。お城の飾り物だろ」
 「行きたいか?」
 「もちっ」
気がそれたので良しとして、目前に迫っていることを思い出させてやる。

 「その前に何か忘れてないか?」
 「クリスマスだろ。しっかりと覚えてるよ。プレゼントも用意してるからOK!」
親指を立ててくる。

あえてにこやかに応じてやる。
 「他には?」
 「正月の用意はしてないけど良いよな」
 「他は?」
 「え、他?」
 「他にはないかな?」

んー……と考え込んだ治に、あえてにこやかに言ってやる。
 「他に大事なことがあるだろ」
 「他に大事な……」

なかなか思い出そうとしない治にいらついてくる。
すると大きな声をだしてきた。
 「あっ!年末掃除してないや」
 「治」
 「ごめん。明日と明後日の二日間でやる」
 「それならよろしく。で、他にもあるだろ」
 「え、他って……」

首をちょこんと傾げてる治は可愛い。
だけど心を鬼にして言ってやる。
 「治」

口調で何か気がついたのか治はソファの上で正座をした。
 「そんな怖い顔をしてどうしたの?」
 「もっと大事なことがあるだろ」
 「もっとって……」

ため息をついてしまったが、仕方ないと思い耳を引っ張って言ってやる。
 「この間の試験の追試があるだろっ」
 「あ、選択の英語……」
 「ったく、現実逃避しやがって」
 「う、そ、その……」
 「23日に総合、25日にヒアリングⅡ。カレンダーに印つけてるから」
 「えー……」
 「なんで英語だけ追試になるかなあ」
 「世の中はクリスマスだよ」
 「追試になるのは何でだ?」
 「う……」

 「まあ、お前一人だけじゃないが、総合は15人、ヒアリングⅡは38人だからな」
 「中学高校と比べると難しいんだよ」
 「リアルで聞き取ることができずに総合を卒業できると思うなよ」
 「だって」
 「決めた。名古屋行きはなしだ」
 「なんでだよっ。せっかくの楽しみを」
 「で、3月の春休みに10日間ぐらいでニューヨークだ。いいな」
 「え、にゅ、ニューヨークって……」

 「いいか。治は目の前にある追試2科目、絶対に落とすなよ」
 「はーい」

名古屋よりニューヨークの方が断然に嬉しい。
その話は、治にやる気を与えたみたいだ。




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