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秘書の育成研修 (46) 

 全く、坊ちゃんは実家だし、高瀬も見つからない。研修しているのは山本から聞いて知っていたから来たのに。もう終わったのか、残念。秘書全員に聞けるチャンスだったんだけどな。

 この私の大事な部分を蹴り上げてきた岡崎には落とし前を付けさせて貰うか。
 タイプじゃないが、啼かせて知ってる事を吐かせてやる。
 
 しかし、あのヤリ手ベテラン秘書が、どんな表情をして、どんな風に啼くか。あの澄まし面や髪を乱れさせると、どんな風になるのか。ふふ…。想像しただけで楽しくなってきた。待ってろよ、岡崎。私のこの手で、お前を乱れさせてやる。


 だけど、岡崎は高瀬が件の人材育成センターで働いてる事は知らない。
 DVDを返しに行った時に受付に居たのは明智の父だったからだ。その2階に住んでいる事も知らなければ、最初に来た時、部屋に”どうぞ”と言ってくれ、お茶を淹れに奥に引っ込んだ人が、どんな人なのかも知らない。

 もしかしてバレるのは時間の問題かもしれない。
 耳を澄まして聞いていた山岡は頭を抱え座り込んだ。
 (どうしよう、バレるのは時間の問題だ。頭が痛いなあ…)

 そんな山岡に声が掛かる。
 「どした?」

 山岡は何も言わないので無視されたのかと思ったのか、利根川は山岡の顔を上げる。
 急に、目の前に専務が現れたので山岡は驚いてた。
 「え、な、何が…」
 「山岡、どうかしたのか」
 「え、利根」
 「気分悪いのならタクシー取っ捕まえて帰れよ」
 「ありがとうございます。少し休んでれば大丈夫ですので」
 「大事にしろよ」
 「ありがとうございます」

 ふいに頬に冷たい物を押し付けられ顔を上げ目を開けると利根川専務がしゃがみ込んでいた。
 「あの…」
 「これ飲んでろ。少しは気分が違うと思うぞ」

 そう言うと、アクエリアスのペットボトルを手渡してくれる。押し付けられていたのはペットボトルだったみたいだ。
 「ありがとうございます」
 「ゆっくりして風邪引かない内に帰れよ」
 「利根川専務も」
 そう応じると、おう、と返して専務は帰って行った。

 悪い人じゃないんだけどな。
 そろそろ潮時かも知れない。
 そんな事を思って山岡はペットボトルに目を向けると、何やら文字が書かれているのに気が付いた。
 ”お大事に”と書かれてある。

 ありがとうございます、頂きます。
 そう呟くとアクエリアスを一気に半分ほど飲んだ。
 「ぷはぁー…、気持ち良い。もう少しゆっくりして帰ろう」


 バレないかどうかとハラハラしていたのだが、どうやら緊張で顔色が悪かったみたいだ。それでも、いい思い出ができた。
 利根川専務の、あまり人には見せないさり気ない優しさ。私は忘れない。




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利根川と、山岡の二人の思いでした。

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