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秘書の育成研修 (2) 

 3週間後、桑田常務は退院してきた。
 その初日となる日、常務は社長と一緒に10時に重役出勤して来た。まあ常務なので重役なのだから大丈夫なんだけど。
 その1時間半前の8時半過ぎ、峰岸は冴木が会社に居るのに常務が居ない事に気が付いた。
 「どうして、常務は居ないんだ?」
 「送迎は社長秘書に頼みました」
 「何故?」
 「峰岸さん、あなたは言われましたよね?送迎は冴木君の仕事だ。自分でしろと」
 「なるほど。それで社長と一緒に来るように常務に言ったのか」
 「社長秘書の新野君に、常務の送迎もお願いしました」
 「まあ、私的にはどっちでも良いのだけど。どうして、それを私に報告しなかったのかな?」
 「え、だって送迎は私の」
 「送迎は冴木君の仕事だ。でも、社長と一緒に出勤するという事は10時出勤になる。いつもは9時出勤で、9時から10時までの1時間の仕事はどうなる?」

 冴木は、やっと分かったみたいだ。
 「あ…、すみません」
 「謝って済む問題じゃないだろう。今日の9時からは常務会議だ。それは知らせておいた筈だ」
 「そう言えば……」
 「勝手な事はしない様に」
 「すみませんでした」

 全く腹の立つ奴だな。この役立たずが。

 胸ポケットから四角い物を取り出し冴木に差し出す。 
 「これを渡しておく」
 「これは何ですか?」
 「常務のマンションに行って同居人に渡してくれれば良い」
 
 冴木はハテナな表情をしている。
 「渡して”ご協力ありがとうございました”と言えば良い。簡単な仕事だ」
 「あ、はい、そうですね。分かりました。渡しておきます」


 翌日の朝。
 本当に渡したのかどうか疑わしいので連絡をする。
 「桑田常務の秘書の峰岸です。退院おめでとうございます。部下に渡す様にと定期券を持たせたのですが」
 『ああ、はい、受け取りました』
 「私が行ければ良かったのですが、申し訳ありませんでした」
 『いや、良いですよ。昨日は仕事が休みだったので暇してたので』
 「そうですか。これからも何かあれば協力を仰ぎたいと思っていますので、その時も宜しくお願い致します」
 『あいつのお守りは大変だろうけど頑張って下さいね』
 「ありがとうございます」
 『気にして頂きありがとうございます。これからも宜しくお願いします』
 「はい。こちらこそ宜しくお願い致します。それでは、これで失礼致します」


 まったく、本当に手の焼ける事だな。
 フォローするのも大変だ。
 まだ常務の方がやりやすい。

 その退院したばかりの常務にハードスケジュールは無理だ。少し余裕を持たせ仕事をして貰う。
 それを冴木君にも教えないといけない。

 そんな時、社長秘書から電話があった。
 『明後日から急な出張で10日間ほど居ないので常務の送迎は出来ないので、よろしく』
 「えらく急ですね」
 『3ヶ月に1回はあります』
 「分かりました。連絡ありがとうございます」

 冴木君に言うと嫌そうな顔をして呟いている。
 「その間はマンションにしてくれないかなあ…。あそこだと車を何とかしないと…」

 なるほど、そういう事か。
 送迎自体が嫌なのかと思っていたのだが、単なる見栄かと気が付いた。
 常務の自覚持ち計画は、本人は言葉使いに注意を払っているので及第点をやるが、残りの秘書改革を実行するべきだな。






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