FC2ブログ

甥っ子コンプレックス (15) 

 それよりもサリーの事だ。
 「サリーの事だが」
 「ありがとうございます。あいつ等は、あの子を攫って来るように言われたようです」
 「ヘル、それは」
 「あの子には、”母親は病気で亡くなった”と伝えて下さい」
 「だが」
 「最近、ガンが見つかったのです」
 「え…」
 「苦しみ死んでいくのを見るよりは、まだ良い」
 ヘルは泣き顔に、泣き声になった。
 「あの子には言ってないんです。言えば、あの子の将来を潰してしまう。ここに縛り付ける事は出来ません。あの子もそうだが、サリーもイギリス人なんです。同じ死ぬのならイギリスで死なせてやりたい…」

 何も言えずに黙っていた。
 「ああ、そうだ。マルク様、あの子には、こうお伝えください。”母親は、サリーはイギリスで事故に遭い死んだ”と。その方が良い。お願いします」
 「ヘルが、それで良いなら」
 「はい、お願いします」

 何となくだが、ヘルの気持ちが分かる。だけど、他の問題がある。
 「ところで、この6人はどうすれば良い?」
 「んー…、区域に放りますか?」
 「良いのか?」
 「骨も残らず食べられる事でしょう」
 「区域でも、自然区域の方か。とんでもない言葉を守り役が言うものだな」
 「こいつ等に罪はないが、せめてもの気持ちです」

 ヘルは強い口調で言ってくる。
 「終わりましたら、ご報告に行きます。お戻りくださいませ」

 ヘルはサリーの身体を触っている。どんなにサリーに抱き付き、また触りたいのか、それが分かった。そうか、泣きたいのかと思いあたり、「報告待ってるよ」と言って、自分の邸に帰った。




 その6人は後ろ手に縛られ猿ぐつわを噛まされた状態で、自然区域に立たされている。
 直ぐに気が付いたのだろう、獣は臭いを嗅いで近寄ってくる。
 その内の一人が走る。だが、獣の方が早い。走っている足がもつれ転げる。その瞬間、痛みがきたのだろう。だが声を発する事も無かった。
 目を大きく見開き、顔は恐怖に引き攣っていた。
 残り5人も走ったが、獣に後ろから横からと噛み付かれた。

 私の愛する妻を犯しただけでなく、死なせてしまった。
 その償いは、死しかない。
 東の守り役のフォン・パトリッシュ。
 私は許しはしないからな。







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


ヘルとは、米国の「ミスター」とか英国の「サー」と同じで、ドイツの呼称です。


関連記事
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment