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甥っ子コンプレックス (6) ヒロト視線

 久しぶりにヒロを見かけた。マドリーヌそっくりの顔だから間違える事は無い。
 あっちは私に気が付いてないみたいだ。
 何処に行くのか黙って付いて行くと、チャーチに入って行った。
 いきなり男性の声が聞こえてきた。
 「今日も来たのか」
 「お母様が死んで」と返してるのはヒロだ。

 何を話すのか柱の陰に身を潜めて聞き耳を立てていた。
 「寂しいってか」
 「何も出来ないんだ」
 「いいか坊主」
 「僕は何をしたらいいの?」
 「そうだなあ…。祈ることはしてるから、後は力を付ける事かな」
 「力って…」
 「喧嘩でなくて合気道とか少林寺とか、フェンシングでも良い。自分に自信を付ける事だな」
 「人を傷つけるなんて嫌いだ」

 その言葉に、数人の笑い声が聞こえた。
 「誰かを傷つける為ではなく、自分自身の限界にチャレンジするもんだ」
 「そうそう。むやみやたらと傷つけあうのでなく、こうやったらこうなる、とか計算しながらしていくものだ。坊主、お前は数学って嫌いだろ?」
 そう聞いてきた男に、ヒロは即答していた。
 「苦手…」

 「やっぱりなー」
 「頭を使え」
 「数学なんてものは、ここをこうしたらああなって、でも、これをあっちに持って行ったら…と、摩訶不思議な物になる。そうなると、これがハマるんだよな」
 「型にはめずに違う閃きが来る時もあるけどな」
 「まあ、そん時はそん時さ」

 そうか、ヒロも悩んでるんだよな。それもそうだ、私にとって最も愛する女性だけど、ヒロにとっては母親だ。彼等の言葉に触発され声を掛けてやる。
 「ヒロ、帰ろう」

 ふいに声を掛けられ驚いたのか、こっちを振り向いてきたヒロは驚きの顔を向けてきた。
 「え、なんで…。誰にも言わなかったのに…」
 聞き捨てならない言葉を耳にした。こいつは…、でも今は怒るタイミングではない。

 他の男達は気が付いたみたいだ。
 「え、マルク様?」
 「なんで、ここに…」

 ざわつくが、構わずにヒロに言ってやる。
 「ヒロにとって母親だけど、私にとっては姉なんだ。だから一緒に悩んで乗り越えよう」
 「マルク…、ありがと」


 神父が近付いて来る。
 「マルク様。当チャーチに足を運んで頂きありがとうございます」

 めんどくさいのは嫌いだ。
 「この子は連れて帰る」
 「お知合いですか?」
 「先日、亡くなった私の姉の子供だ」
 「え、マドリーヌ様の…」

 ヒロの手を握ってやる。
 「ヒロ、帰るぞ」
 「あ、はい」

 そう言うと、何を思ったのか神父や男達に向かってお辞儀をした。
 「あ、あの、今日は帰ります」

 すると、皆は一斉に立ち上がるとお辞儀を返した。
 「お気を付けて」


 ヒロトは急に態度が変わった彼等を不思議に思っていた。
 どうして、そんな事を言うの。
 いつもは「気を付けて帰れよ」とか「犬に噛まれるなよ」とか笑い飛ばしながら言ってくるのに。







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ヒロトは、自分の居る場所を把握してなかった。
という事でしょうね。

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