FC2ブログ

甥っ子コンプレックス (5) 

 すると元気な声が聞こえてきた。
 「あー、ここに居たあ」
 「え、なんでマルクが…」
 その声の持ち主はキョージとエドだ。
 とにかくキョージは煩い。
 ペラペラと喋り続けて”煩い”と言っても、しつこく話してくる。
 エドは喋り屋では無いが、キョージの話し相手になり相槌を打っている。
 「リューゾー、次は音楽の時間だよ」
 「エドワール様、ヒロト様は、まだ今日の分は終わってません」
 だが、ヒロトは既に道場の入り口に居た。
 「ありがとーございましたっ」

 ぺこっとお辞儀をしてヒロトはエドとキョージと一緒に道場を後にした。
 「あー…、音楽に向ける情熱の半分でも良いから、こっちに向けて欲しいなあ」

 その言葉に、思わず返していた。
 「リューゾーも大変だね」
 「まあ、今日はマルク様はご自身で来られたので良しとしますか」

 うわ、藪蛇だ。
 「さっきので疲れた」
 「まだまだです。あんな緩い一発で倒れるなんて、らしくないですよ。さあ、いきます」
 いや、緩くなかったぞ。と言いたかったが、文句は言えなかった。

 それからと言うものの、ヒロトは頻繁に私の部屋に来るようになった。
 ノックをして自分で開けて入ってくる。
 「良いでしょうか?」と声を掛けてくるが無視してると、今迄の様に勝手に自分で本棚の本を漁り、誰かが呼びに来るまで居座り本を読んでいる。
 いつもはソファなんだが、リューゾーが来る時は必ず「移動します」と言って伺いを立ててくる視線を寄越してくる。そんな時は私のデスクの下にシートを敷いて、そこに座り込んだり、書斎の左奥にある部屋に入ったりしてリューゾーを撒いている。
 左奥は別に良いが右奥の部屋に入ろうとしていた時は、さすがに睨みつけていた。
 右奥の部屋は誰にも見られたくないからだ。


 そんなある日、お姉様が死んだ。
 しかも、私の目の前で。
 車に轢かれた。
 「何故…、マドリーヌッ」

 マドリーヌに走り寄り抱き起す。
 「マル…」
 「マド」
 「マルク、ヒロと…、なかよ・く…」

 姉は、姉の一番はヒロの事だった。
 「ヒロと、仲良く、して…」
 
 それが、最後の言葉だった。
 「マドリー…、マドリーヌッ…」


 マドリーヌ。
 私の大切な、最愛なる女性。
 何故、私の目の前で轢かれるんだ。
 私はカールに呼ばれて…。
 そこで気が付いた。
 カールは何処だ。
 だけど、それよりもマドリーヌの事で頭が一杯だった。

 それを機に、私は自分の部屋に籠りだした。
 そして、ヒロも私の書斎部屋に来なくなった。

 「マドリーヌ…、私の、私の大事な人…」

 姉の後を追う様に母も死んだ。
 何故なんだ。
 お姉様っ、お母様っ。

 何もする気が起きてこない。
 だけど、私は医者として働かないと。
 ここの跡継ぎになる為に。
 だけど、暫らくの間は何もしたくない。







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


関連記事
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment