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GW旅行は能登半島 (7) ~ロッククライミング

 そして、皆してロッククライミングをしていた。
 簡単に言えば崖登りだ。

 筋力だけでなく、如何にして体重を感じずに登って行くか。
 なんとかして崖を登りきると、もう一つ崖があった。

 余分に焼いていた朝食の残りを食べ一息ついたところ、探索に出かけていた安藤専務と高橋常務が戻ってきた。
 「木登りして枝伝いしていけば1時間位で中腹にある小屋に着きます」
 「また小屋なのか…」
 社長の、その言葉に苦笑して高橋は言い切った。
 「そうです、小屋です。登って見てないので分かりませんが、どうされますか?」
 その言葉に応じたのは副社長だった。
 「せっかくだ。本格的なアスレチックを楽しむか」
 「他の方達はどうですか?」

 瀬戸が手を上げている。
 「あ、あの、枝伝い出来ない人は…」
 それに応じたのは安藤だ。
 「もちろん、抱きかかえてあげるよ」
 その言葉に思わず身を引いたのは瀬戸だけでなく桑田専務もだった。
 昨年の沖縄で無理矢理枝伝いされたのを思い出したからだった。


 最初は良かった。
 あのコロコロ体型の社長ですら登りきろうと頑張って木登りしていたのだ。
 それが、あの桑田専務が自身の重みで枝を踏み外してしまった。
 もう少しで中腹の小屋に着く、そんな時だった。桑田は、自分の下に居た社長と本田専務を道連れにし枝をボキボキボキッと落として3人一緒に落ちていった。
 「えっ…」
 「う…」
 「わー…」

 「お、お父ちゃんっ」
 「こら、危ないっ」
 「だって、おと…、おとーちゃーん……」

 そんなにも経たない内に、シーン…と静かになった。
 「あ…、おと……」
 ギュッと腕に力を入れ、坊ちゃんを抱きしめてやる。
 「お前は落とさんからな」
 「ありがと…」

 硬質な声が聞こえてきた。
 「1時間でも10分でも早くテントに戻って、あの3人を助け出す」
 この声は副社長だ。
 「坊ちゃん、泣く時じゃない」
 「は、はい。必ず助けます」


 父子としての絆は無いに等しいが、それでも自分の父親だ。
 物心ついてから高瀬が面倒を見てくれていた。
 東京に来てからも高瀬が殆どの様に面倒を見てくれ、執事である爺ちゃんセンセーも面倒を見てくれていた。たまに早く帰宅してきたお父ちゃんは、お母ちゃんと一緒に作った合作料理を食べてくれていた。お父ちゃんとの思い出は無いが、それでも楽しかったのを覚えている。

 ただ、あの日。
 「お前等、2人揃って料理下手だなあ」
 「そんな事を言うのなら、もう作ってやんないから」
 「そうだよ。そう言うのなら食べないでよ」

 高瀬は、この言葉を言っていた。
 「社長は、照れ隠しなんですよ」
 「高瀬も食ってみろ」
 
 むぐっと口の中に押し込まれた高瀬は涙目になっていたっけ。
 「しゃ、社長、押し込む力が強いです」
 「どんなだ?」
 「美味しいです」
 「嘘だろ…。高瀬、お前って味覚音痴か」

 執事の爺ちゃんセンセーは仄々と見ていた。

 あの日があったからこそ、父子としての絆は無いが、それでもお母ちゃん経由でお父ちゃんの存在を感じていた。
 だけど、その翌日。
 お母ちゃんは死んだ。


 坊ちゃんこと政行は祈っていた。
 (お母ちゃん、お父ちゃんを助けて。俺が探しに行くまで守ってあげてね)
 







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