夏休みは沖縄旅行 後半(23) 沖縄旅行に向けて話し合い
その場所は、沖縄本島より南南東に位置する島。
海に国境なんて無いと思ってる人が多いと思うが、実は、きちんと国境はあるのだ。
日本国に位置するその島からは遠目にクジラが泳いでるのが見れる。
砂浜は日本国に面していて、森の中に小屋をいくつか建てている。
福山副社長は、「夏休みや正月休みは1人で来ることが多く、子供が小学生の時は、家族そろってよく来てたんだ」と話してくれた。
小屋は5軒あるので、『砂浜から小屋探し』という、安藤島よりシンプルな企画だ。
そんなの2,3日あれば十分に辿り着く。
誰もが皆、そう思っていた。
福山副社長は5日間を考えていた。
専務と常務で各々にカードを引いて貰う。
カードを引き終わると、皆に見せ、ペアが出来る。
そう、専務と常務のペアだ。
ダイヤのAの社長と、クローバーのAの本田専務。
ダイヤのJの桑田専務と、クローバーのJの瀬戸常務。
ダイヤのQの安藤専務と、クローバーのQの高橋常務。
ダイヤのKの副社長と、クローバーのKの坊ちゃん、こと桑田常務。
ジョーカーは、利根川専務と久和田常務。
それぞれが相手に挨拶をする。
慌てて席を立った本田専務はお辞儀する。
「えっ、社長と?よ、宜しくお願いいたします」
「よろしく、本田君」
瀬戸常務は軽くお辞儀をする。
「桑田専務、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、瀬戸常務」と、桑田専務は軽く会釈を返した。
高橋常務も軽くお辞儀をする。
「安藤専務、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、高橋常務」と、安藤専務は軽く会釈を返す。
坊ちゃんこと、桑田常務は立ち上がりお辞儀をする。
「え、副社長と一緒…?よ、よろしくお願いいたしますっ」
「うん、こちらこそよろしく。坊ちゃんと一緒だなんて嬉しいな」と、副社長は微笑み返した。
だが、久和田常務はお辞儀をしない。
「利根川専務、フェアにいきましょうね」
「もちろんだ」と、利根川も会釈を返さなかった。
5組のペアが出来上がったので、ルールを決めた。
各自、水の入ったペットボトルを1本ずつ貰い、小屋探しをする。
安藤島とは違い、洞穴や洞窟がある。
そこまで言うと、福山副社長は自分のお気に入りの小屋に狙いを定める。
坊ちゃんと一緒なので楽しい探検だ。
あらかじめ、地図に小屋の大体の場所に丸印を付けて、皆に渡す。
内心では、《No。1は見つけにくい小屋であり、2~4は3,4日位で辿りつけれる小屋で、5は一番見つけやすい小屋だ。だが、その番号の意味が分からない人には、No.1が一番見つけやすいと思うはずだ》と、思いながら。
副社長は皆に言ってきた。
「木には色々な実がなっているから食べても良いよ。だけど、食べ散らかしたり、火をおこしても片付けなかったりするのだけは止めて欲しい」
その言葉に応じたのは、重役の中でも一番のリーダーである桑田専務だ。
「副社長、それは当然の事です。自分たちで食べ物を見つけ食した後の片付けが出来ないと、そのペアは失格にすれば良いのです」
利根川は聞いていた。
「副社長、春は秘書のトレードというのがあったのですが、今回は何かあるのですか?」
即答だった。
「いや、無いよ。ただ皆と一緒に楽しみたいな、と思っただけだよ」
「そうですか。それなら気が楽です」
「うん。たまには肩の力を抜く事も必要だよ」
「そうですね」と返していたが、内心は、こう思っていた。
(このクソヤロー。そんな事で夏休みを潰しやがって…)
そして、最後に副社長は付け加えてきたのだ。
「あ、今回は重役だけなので、秘書の皆は気兼ねなく夏休みを満喫してくれ」
その言葉にツッコミどころを憶えたのは、その場に居た秘書もそうだが、皆もだっただろう。
沈黙が下りた。
誰も何も返さない。そんな沈黙にイラついた桑田常務秘書の峰岸は瀬戸常務秘書の岡崎の方を見ると、溜息を吐いてるのか額に手を置いて下を向いて首を横に振っている。お前も思うのなら言って欲しいねと思い、その沈黙を破り声を掛けたのだった。
「それでは、ご無事で戻られますようお祈りしてます。行ってらっしゃいませ」
にこやかに返していた峰岸は、内心ではこう思っていた。
(本来なら、社長秘書か副社長秘書のいずれかが言うべきものだろう。まったく、使えん奴等め…)
会議が終わると、峰岸は岡崎に愚痴っていた。
「岡崎は何も思わなかったのか?」
「何を?」
「副社長の最後の言葉」
「あー…、秘書は夏休みをって言うあれか」
「そうそう」
岡崎は溜息を吐いて言ってきた。
「本来ならば社長秘書か副社長秘書の仕事だろ。峰岸も黙っておけば良かったのに」
「沈黙のまま時間が過ぎていくだけだ。仕事に差し障る」
「耐えることも必要だよ」
すると、岡崎は笑い出して言ってきた。
「それに、見てたか?お前が言うから、あの6人は安心しきった顔してたぞ」
「普通なら、あの6人の内の誰でも良いから、言うべき事だろ」
「流れから言うと、副社長秘書だな」
「まったく、使えん奴らめ」
「同感だ」
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秘書も人間。
愚痴りたくなりますよね。
海に国境なんて無いと思ってる人が多いと思うが、実は、きちんと国境はあるのだ。
日本国に位置するその島からは遠目にクジラが泳いでるのが見れる。
砂浜は日本国に面していて、森の中に小屋をいくつか建てている。
福山副社長は、「夏休みや正月休みは1人で来ることが多く、子供が小学生の時は、家族そろってよく来てたんだ」と話してくれた。
小屋は5軒あるので、『砂浜から小屋探し』という、安藤島よりシンプルな企画だ。
そんなの2,3日あれば十分に辿り着く。
誰もが皆、そう思っていた。
福山副社長は5日間を考えていた。
専務と常務で各々にカードを引いて貰う。
カードを引き終わると、皆に見せ、ペアが出来る。
そう、専務と常務のペアだ。
ダイヤのAの社長と、クローバーのAの本田専務。
ダイヤのJの桑田専務と、クローバーのJの瀬戸常務。
ダイヤのQの安藤専務と、クローバーのQの高橋常務。
ダイヤのKの副社長と、クローバーのKの坊ちゃん、こと桑田常務。
ジョーカーは、利根川専務と久和田常務。
それぞれが相手に挨拶をする。
慌てて席を立った本田専務はお辞儀する。
「えっ、社長と?よ、宜しくお願いいたします」
「よろしく、本田君」
瀬戸常務は軽くお辞儀をする。
「桑田専務、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、瀬戸常務」と、桑田専務は軽く会釈を返した。
高橋常務も軽くお辞儀をする。
「安藤専務、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、高橋常務」と、安藤専務は軽く会釈を返す。
坊ちゃんこと、桑田常務は立ち上がりお辞儀をする。
「え、副社長と一緒…?よ、よろしくお願いいたしますっ」
「うん、こちらこそよろしく。坊ちゃんと一緒だなんて嬉しいな」と、副社長は微笑み返した。
だが、久和田常務はお辞儀をしない。
「利根川専務、フェアにいきましょうね」
「もちろんだ」と、利根川も会釈を返さなかった。
5組のペアが出来上がったので、ルールを決めた。
各自、水の入ったペットボトルを1本ずつ貰い、小屋探しをする。
安藤島とは違い、洞穴や洞窟がある。
そこまで言うと、福山副社長は自分のお気に入りの小屋に狙いを定める。
坊ちゃんと一緒なので楽しい探検だ。
あらかじめ、地図に小屋の大体の場所に丸印を付けて、皆に渡す。
内心では、《No。1は見つけにくい小屋であり、2~4は3,4日位で辿りつけれる小屋で、5は一番見つけやすい小屋だ。だが、その番号の意味が分からない人には、No.1が一番見つけやすいと思うはずだ》と、思いながら。
副社長は皆に言ってきた。
「木には色々な実がなっているから食べても良いよ。だけど、食べ散らかしたり、火をおこしても片付けなかったりするのだけは止めて欲しい」
その言葉に応じたのは、重役の中でも一番のリーダーである桑田専務だ。
「副社長、それは当然の事です。自分たちで食べ物を見つけ食した後の片付けが出来ないと、そのペアは失格にすれば良いのです」
利根川は聞いていた。
「副社長、春は秘書のトレードというのがあったのですが、今回は何かあるのですか?」
即答だった。
「いや、無いよ。ただ皆と一緒に楽しみたいな、と思っただけだよ」
「そうですか。それなら気が楽です」
「うん。たまには肩の力を抜く事も必要だよ」
「そうですね」と返していたが、内心は、こう思っていた。
(このクソヤロー。そんな事で夏休みを潰しやがって…)
そして、最後に副社長は付け加えてきたのだ。
「あ、今回は重役だけなので、秘書の皆は気兼ねなく夏休みを満喫してくれ」
その言葉にツッコミどころを憶えたのは、その場に居た秘書もそうだが、皆もだっただろう。
沈黙が下りた。
誰も何も返さない。そんな沈黙にイラついた桑田常務秘書の峰岸は瀬戸常務秘書の岡崎の方を見ると、溜息を吐いてるのか額に手を置いて下を向いて首を横に振っている。お前も思うのなら言って欲しいねと思い、その沈黙を破り声を掛けたのだった。
「それでは、ご無事で戻られますようお祈りしてます。行ってらっしゃいませ」
にこやかに返していた峰岸は、内心ではこう思っていた。
(本来なら、社長秘書か副社長秘書のいずれかが言うべきものだろう。まったく、使えん奴等め…)
会議が終わると、峰岸は岡崎に愚痴っていた。
「岡崎は何も思わなかったのか?」
「何を?」
「副社長の最後の言葉」
「あー…、秘書は夏休みをって言うあれか」
「そうそう」
岡崎は溜息を吐いて言ってきた。
「本来ならば社長秘書か副社長秘書の仕事だろ。峰岸も黙っておけば良かったのに」
「沈黙のまま時間が過ぎていくだけだ。仕事に差し障る」
「耐えることも必要だよ」
すると、岡崎は笑い出して言ってきた。
「それに、見てたか?お前が言うから、あの6人は安心しきった顔してたぞ」
「普通なら、あの6人の内の誰でも良いから、言うべき事だろ」
「流れから言うと、副社長秘書だな」
「まったく、使えん奴らめ」
「同感だ」
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