BL風味の小説

BL風味のオリジナル小説です。
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4人の幼き戦士(2周年記念SS) ~あとがき~

いつも読みに来て頂き、ありがとうございました。


 『4人の幼き戦士』は如何でしたでしょうか?
このブログも2周年を突破し、3年目に入りました。
詳しくは、2年と1ヶ月ですね…。
その2周年を記念しての、小説をどれにしようかなと思いつつ・・・。
Rジャンルでありながらでも、ごく薄目のジャンル臭を残しつつ何か無いかなと思い当たったのが、この物語でした。

本編である『俺様ボスと私の恋物語』から、最新の番外編である『君は腐れ縁であり運命の人』までをリンクしております、この物語。
昨年の、ある物語のあとがきにも書かせてもらったのですが、本当に書きたかったのですよ。
この4人の事を。
書けて良かったです。

主人公は、『俺様ボス~』シリーズの10人の内の先駆けとも言われる福山豊。
はい、『君は腐れ縁であり運命の人』の主人公ですね。
その豊の幼少(4歳)から、9歳になるまでの、イタリアでの暮らしぶりを書いてます。
母であるミレーネはイタリア王妃の王女であり、日本人男性と日本で過ごしていたので、母の帰国と共に、一緒に付いて行った豊でした。

その豊の過去だけでなく、『俺様ボス~』の主人公である福山博人の過去までが暴露される結果となったのですが…。
まあ、それも良しとしましょう(*´∀`*)

謎多しの2人だったのですので、少しはフォン=パトリッシュの過去が分かって頂けた事と思います。
ウォルター、リン、アダム=バーンズ。
この3人との接点も、お分かりいただけた事と思います。

そして、いつものメンバーで締めくくってます。
ウォルターそっくりの、『俺様ボス~』シリーズのボスの左腕に君臨しているサトル。
リンそっくりの、『俺様ボス~』シリーズのボスの右腕に君臨しているヨウイチ、ことスズメ。
アダム=バーンズそっくりの顔をしている、『俺様ボス~』シリーズの主人公の福山博人。
そして。
銀髪碧眼のグズ、こと『俺様ボス~』のボスの先駆けの位置にいる、ユタカ。


この後は、プロットが行き詰まっており、8月後半からの物語が、ストックが無いのです~(泣
なんとかして、ネタを繋ぎ合わせてプロットを練りに練り、物語を作っていこうと思います。
気長にお待ちくださいませ。

明日から2,3日ほどリアルで多忙の為、更新はお休みさせて貰います。


これからも、よろしくお願いいたします<(_ _)>




  あさみより  2016/7/29








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4人の幼き戦士 (20)~最終話~

下界から声が聞こえてくる。

 「スズメー、腹減った」
 「煩いなっ、このイタリアのガキが。たまには作ってやろうという気は無いのかっ!」

 「お前が作るのを放棄したら、誰が作るんだっ」
 「このクールビッチが…。お前はスィーツでも食ってろっ」


イタリアのガキ。
それは三人が側に居たいと思ってる人物だ。
グズは、あの時のままだ。
変わって無いbaby faceだ。
リンは気が付いたみたいだ。
 「あれ?ヨーイチだ」
 「誰?」
 「私の甥っ子だよ。姉の子なんだ。決めた。私はヨーイチの側に居る」
ウォルターは一人の人物を言い当てた。
 「あの黒髪黒目の元気一杯な感じの子か」
 「うん、そうだよ。私が、ヨーイチに武術を教えたんだ。あれ、でも待って…」

リンは、クールビッチと呼ばれてる人を見ながらバーンズに声を掛けてる。
 「ねえ、バーンズ。あの人、ウォルターと似てるね?」
 「ああ、髪の色は違うが、似てるな」
 「え…?」


その時、女の声が聞こえてきた。
 「サトル、あんたは一体」

思わずウォルターは目を瞠っていた。
 「ス、スーザン?え、何で…」
整形でもしたのか、スーザンは昔と変わらない体型と顔形だ。
スーザンと、クールビッチと呼ばれてる男とのやり取りが聞こえてくる。
 「サトル」 
 「煩いな。親子の縁は切った筈だ。とっととアメリカへ帰れっ」
 「そういう事を」
 「私の母親は飛行機事故で死んだ」
 「何言って…、私は生きてるわよ」
 「私の予想では、私の産みの母親はアメリカ行きの飛行機で死ぬ。」
 「サトルッ!縁起でもない事を言わないのっ」
 「煩いっ!このアバズレが黙れっ」

そのやり取りを見聞きして、ウォルターは呟いてる。
 「もしかして、あの子はスーザンの子供?俺の親戚…」
リンはウォルターに言ってくる。
 「ねえ、ウォルター。あの子の守護」
ウォルターはリンの言葉を遮って呟いてる。
 「スーザンって結婚したんだね。イケメンな男にしか興味持たないから結婚は無理だろうと思ってたんだ。サトルっていう名前なんだね。
初めまして…。サトル、俺は君の側に居るよ。
これからよろしく」


バーンズは、ウォルターが呟いてる間に見つけていた。
自分の孫であるヒロだ。
側には、エドが居る。
 「ヒロ…、エド…。私の、私の大事な孫と従弟。私は、君達の側に居るよ。
グズ。君には守護は必要ない。強いからな。
私はエドとヒロを見守る…」



4人の戦士の内の三人は、それぞれの縁者の側に付き見守る。
残り一人の銀髪碧眼の殺人魔ダークは、昔と違って優しく、意地悪になってるみたいだ。



バーンズは、さらに残りの二人をも見つけた。
文武の文壇を師事していた人物の、ワダだ。
その側には昔とは違い強面になったアンソニーが居る。
ドイツと日本とに離れ離れに暮らしていた従兄弟が、オーストラリアで一ヶ所に集まって暮らしているのを見て、バーンズは微笑ましく見ている。

アンソニー、君は父親の跡を継がないんだね。
昔は、君はよく言ってた。
「人殺しは嫌いだ。ずっとドイツに居たい」と。
君の人生は、君のものだ。

これからは、ポールとしての生活を、君なりに謳歌していけ。
私は、君達の側に居るよ。
私の、もう一人の孫。
5人いる孫の内、二人はここに居て一緒に笑いあってる。
それが、なによりも凄く嬉しい。

マルクと親子喧嘩するより、ここに居たい。
マルク、お前は自分の過去に囚われている。
それを助けたいが、時は既に遅しだ。


アダム=バーンズは、感じ取っていた。
ここは温かい所だ、と。

そう、ここは笑顔と音楽で満ちている。
たまに言い合いしたり泣く事もあるが、それはそれで良いと思う。

声が聞こえてくる。
 「クマヤロー!今日こそ、やっつけてやるっ!」
 「毎回、毎回、同じ言葉だな。違う言葉は無いのか…」
 「うっせ!っんのヤロー・・・」

ヒロ、君は強いんだね。
9人が一斉に攻めてきても、君は数瞬で倒す。
見事な腕前だ。
大人しくバイオリンと一緒に居た昔とは違い、活発になってるんだね。



あの小さい4人の幼き戦士は、再び出会った。
一人は生きてるが構わない。



ここは青くて綺麗な海に囲まれてる。
そこに居るのは…、
赤髪ではなく黒髪だが、ウォルターそっくりの顔をしたサトル。
黒髪黒目でリンそっくりな、元気一杯のヨーイチ。
バーンズと同じ金髪のエドと、これまたバーンズそっくりの顔をしてるヒロ。
そして、銀髪碧眼の殺人魔ダークと畏れられていたグズ改め、イタリア王子のユタカだ。



















4人の幼き戦士 (19)

やっと、バーンズが来た。

リンの側には赤髪のウォルターまで居る。
私より早くに死んだのだろうか…。

野暮用を済ませてたら遅くなった、とバーンズは断りを口にする。

リンとウォルターは、バーンズから話を聞いた。
グズは、まだ生きてる。
本名はユタカで、イタリア王子としてフリーパスで世界を行き来しているという事を。
どうやら、ある男に惚れているみたいで告る事は出来ないチキンな奴だという事も付け加えた。

それを聞いてウォルターは笑ってる。
 「やっぱり、あいつは何時まで経ってもネンネだな」
リンは呆れている。
 「全く、何時まで経っても子供だね~」
バーンズは、そんな二人を微笑ましく見ている。

ウォルターは、バーンズに声を掛けてくる。
 「なあなあ、リンは病で死んだらしいけど、バーンズは?」
リンは、バーンズにウォルターの死に様を教えてくる。
 「ねえねえ、ウォルターはね、私が死んだ事を聞いて、車に轢かれて死んだんだって。
ウォルターって危機感のない所は昔と変わらないよね~」
 「だって、お前が死んだって聞いて、ショックだったんだよっ」

バーンズは、そんな二人にとんでもない言葉を返してくる。
 「何時まで経っても、お前達は仲良いよな。私は、息子に殺された」
その言葉に、2人は驚いてる。
 「え、息子に?」
 「バーンズって結婚したんだね」

バーンズは、やっとカミングアウトした。
 「私は早くに結婚したんだ。4人目が生まれて、直ぐにイタリアに拉致られた」
 「え…」
 「何で子供隊?」
リンの言葉にバーンズは答える。
 「背が低く幼く見えたからな。昔から、よく子供に間違われていたよ」

バーンズは二人に提案を持ち掛けた。
 「なあ、あいつの所に行ってみないか?」
 「あ、それ良いな。あいつのネンネぶりを見てみたい」
 「ウォルターッ!あ、でもグズの好きな人が気になる。どんな人なのかなぁ」
呆れた様にバーンズは言ってくる。
 「ったく、お前等は…。相手は男だぞ」

が、二人ともスルーしてくれる。
 「行こ、行こ」
 「守護霊になるのも良いね」
リンの、この言葉にウォルターとバーンズは笑い出した。


あはははっ…。

笑いが落ち着いて、ウォルターはボソッと呟く。
 「守護霊ではなく悪霊だろ」

バーンズは溜息を吐いてる。
 「はあ…。ウォルターは相変わらず、頭悪いな」
 「な、にゃにおうっ」
 「悪霊とは低級霊やイタズラ霊、からかい霊とか呼ばれてる霊だぞ。私は、そんなのにはなりたくないな」
 「なら、何になりたいんだ?」
即答だった。
 「ゴッドファーザー」


その言葉にウォルターは笑い出す。
 「ぷぷっ…。やっぱ保護者じゃん」
リンは嬉しそうに口を開いてくる。
 「良いよね。彼の言葉は好きだよ」
 「どんな言葉?」
 「ん、やっぱりこれだね」
すると、バーンズとリンの言葉が重なった。

 「銃は置いて行け。カノーリは持って来てくれ」
  
ウォルターは相槌を打つ。
 「その言葉は知ってる。
『たとえ失敗しても、それに捕らわれるな。違うやり方を模索して成功させろ。』っていうあれだろ」
バカにしたようなリンの声が掛けられる。
 「へぇ、ウォルターらしくない。物知りじゃん」
 「俺だって、その映画好きなんだよ」

この二人のやり取りを聞いて楽しい雰囲気を壊すのは嫌だが、バーンズは聞いていた。
 「で、どうするんだ?」

二人の声が重なった。
 「行くよ」


なら行こう。

三人は手を繋ぎ、バーンズに同調する。
バーンズは、数瞬後には居場所を見つけた。
 「居た」

その言葉を発した瞬間、グズの頭上に着いた。



四方を海に囲まれた場所だ。
最初にウォルターが口を開いた。
 「海に囲まれてる…?ここって、日本?」
そのウォルターにリンは応じる。
 「いや違う。日本は、こんなに広くない」
バーンズが正解を導く。
 「オーストラリアだ」

その言葉に、二人は驚く。
 「えっ…、南半球?」
 「へぇ、南半球には行った事ないや」
 「北半球が寒い時は、こっちは反対の暑い時期で…」

 「え、だって俺等死んでるんだよ?暑さや寒さなん…って、バーンズ、何を見てるんだ?」
リンも分かったのか、バーンズに詰め寄る。
 「バーンズ、それってトラベルガイド…」


 「ばれたか・・・」
その呟きが聞こえたのだろう。
ウォルターとリンは、逃げ出したバーンズを追って行く。
 「待てー!結局は、お前も知らないんじゃんっ」
 「バーンズの知ったかぶりっ」

あはははっ…。



二人は、逃げるバーンズを追いかける。
笑い乍ら、三人は追いかけっこをしている。
まるで小さい子供みたいに。



4人の幼き戦士 (18)

ここは『無』の世界。


 「マルク、待ってたよ」
 「うん?誰だ?」
 「分からないみたいだな…」
 「誰だ?と言ってるんだ」
 「お前は…、誰に向かって睨み付けてるっ!」

アダム=バーンズは、マルクに気を飛ばす。
吹き飛ばされたマルクは死んでるので痛みも何も感じない。
だけど、雲に激突したままの体勢でマルクは睨み付ける。
 「何をするっ」
 「それは、こっちの台詞だ。」
 「あ?」
 「よくも、私に毒を盛って刀で腹を切り開いて、銃で撃ってくれたな」
 「何の事だ?」
 「お前の死に様は見させて貰った。見事なまでに爆発したよな」
 「一体、何を…」
 「お前は、どうしてあんな事をした?お前にとって、あれは生き延びる為のものだったのかっ?
必要不可欠だったのか?」

だが、マルクは釈然としない表情だ。
そんなマルクにバーンズは業を煮やした。
 「お前を殺人者にする為に、マリアは生んだわけでは無い。
お前が生まれた土地がイギリスだったから、お前はイギリス人となったんだ!
マリアは信じていたよ。お前の笑顔が、全ての人を癒してくれる事を。
それがっ!自分の思い通りにならないからって、直ぐに銃を撃つだなんてっ…」

マルクは、なんとか一つの結論に至った。
 「ああ、思い出した。
あんたが、私の実の父親か…。
言っておくが、実の親より育ての親、という言葉があるんだよ。
私は、私に利をもたらしてくれる人を好んでいるんだ。
あんたは死んだんだ。過去の人間が何を言っても、遅いんだよ」

 「ならば、毒だけでなく刀や銃をも使うって事か…」
 「刺客を送り込んでも返り討ちにあってたからな。誰に殺されたのか分からないし…。
それに医療に力を入れてるから、薬や毒は、しこたま蔵にあるからな」
 「あれは、側付に使う物だ」
 「みたいだな。で、なんで知ってるんだ?」
 「最初に医療に力を入れてたのは、私とユタカだ」
 「ユタカ…」
マルクは目を細め考えてるので、アダムは教える。
 「イタリア王子だよ」
 「ああ、あのイタリア王子ね…」

それを聞いて納得したマルクは、突然に態度を豹変した。
 「父親面しても遅いんだよっ」
そう言いながら、マルクは銃を撃ちだした。
しかし、アダム=バーンズも死んでるので当たる事は無い。
それに、人殺しとしての経験値は父親であるアダム=バーンズの方が上だ。

 「最初に手を出したのは、お前だからな」
そう言って、バーンズは、ある構えを取った。
しかし、文武の文壇の方に才を出していたマルクには分からなかった。
そうだろう、その構えはリンが得意とする手刀と八卦掌のコンボだからだ。

銃は当たらないが、拳や気だと当たる。
痛みは無いが、それでも相手には当たるのだ。


それを、途中から入ってきた人物は傍観している。
今は、まだ手を出す時では無いと思ったのだろう。
そう、マルクと共に爆死したアランだ。

 「今度は親子での遣り合いか…」
そう呟いたアランにマルクは気が付き、命ずる。
 「デイモス、命ずる。あの男を」

 「ハッ!」

微かだが、マルクの注意がそれ、一瞬の隙が生まれる。
その隙を、バーンズは見逃さなかった。
死んでいるのにも拘らず、バーンズの力は予想より遥かに強かった。
何しろ、異名を持つ程の力の持ち主だ。
 『金のタイガー』は、死しても強い事を証明した。


マルクは、自分の父親がどの様な人物なのか知らなかった。
それもそうだろう。
バーンズの過去を知ってる者は、国外に居るのだから。

 「マルク…。この『無』の世界では転生は出来ない。
これからも、親子喧嘩するからな。」

そのバーンズに、アランが口を開いてくる。
 「バーンズ様、御強いですね」
 「ふんっ。私を誰だと思っている」
 「さすが、『金のタイガー』と謳われてる御方だけあります」
それは嫌味もなく、純粋に羨む表情で紡がれた言葉だった。
イタリアの隊で過ごした経験は、どんなに年月が経っても身体に染みついてる。
アダム=バーンズにとってアラン達の側付20人は、可愛い子供であり、隊での後輩だ。
イタリアの隊は、アラン達20人が最後の隊員だった。
あの国王が死んでから、国は崩壊した。
ユタカはイタリアを継ぐつもりは無いみたいだし、それでも良いと思ってる。
それに、人とは無理矢理に強制で継がれても、潰れるのは目に見えてる。



マルクは、暫らくは起きてこないだろう。
今度は、何処に行こうかな。

リン、君の所に行ってみよう。
君も『黒の豹』という異名を持つ程の力のある人だ。
同じ『無』の世界に居るだろうな。


感覚を研ぎ澄ます。
そして、昔のリンの顔を思い出す。



4人の幼き戦士 (17)

いつも、あの部屋に居て、あの椅子に座っている男を、あの息子は父だと思っているみたいだ。
あの子の父は、この私なのに。

マルク。
自分だけイギリスで生まれた事を、まだ根に持ってるようだが…。私は、それだけで次代を決めるわけでは無い。

音楽を愛でる人間になって欲しい。
エドまでいかなくても良いから。
ヒロみたいにクールでなくても良いから。
小さい頃のお前は、明るく笑顔の絶えない子だった。




私は人殺しだ。
いくら無理矢理あの隊に入れられても、私は大勢の人間を殺めた。
あそこで生き延びる為には、必要不可欠な事だった。

そして、あのフランスのパーティでグズと再会して家紋を創った。
あれには、私の思いが入っている。

公表する家紋はシンプルな方にして欲しいと思い、もう1枚創った。
こっちは、私専用のだ。

アダム=バーンズは、自分用の家紋を眺めている。

蒼は、宝石(いし)の色。
金は、アダム=バーンズの金髪。
銀は、イタリア王子であるユタカの銀髪。
赤は、アメリカに帰国したウォルターの赤髪。
黒は、中国に帰国したリンの黒髪。

その他にも、自分の仲間の居場所に、同盟を結んだ多くの国々に、多くの家。
それは、まるで大判の世界地図だった。



リン、ユタカから聞いたよ。
病で死んだって。
君のアレは、君の甥っ子に渡った事もね。
ウォルター、君はどうしてる?
元気で生きてるだろうか。
グズ、いやユタカ。
私は、アレをどうやら無くしたみたいだ。
ごめん。
君が見つけてくれる事を祈ってるよ。


アダム=バーンズは、その男が『御』となった晴れ姿を見る事は無かった。
息子であるマルクに、殺されたのだ。
毒と刃と銃によって………。


現在のフォン=パトリッシュの『御』は、初代の『御』であるアダム=バーンズの意思を汲み取り、その原本の方に桜の木を付けて、家紋を世界に公表したのである。





ロシア語で書かれている手記を訳した博人は、茫然としていた。
ふと見ると、桐で作られた箱も一緒に送られてる。
それを開けて見た博人は、息を飲んだ。

そのアダム=バーンズ専用の家紋が綺麗な状態のまま包装されているのだ。
手書きで書かれた一枚の和紙が挟まれている。
それには、日本語で書かれてある。
恐らく、自分の叔父である、現『御』の字だろう。
 「いつかは、きっと貴方の孫を、自分の甥っ子を次代の『御』にさせます。
あの子は、貴方の血を引いてる孫の中でも、最有力候補です。
私が死んだら、教えて差し上げます。
私を『御』にしてくれてありがとうございます。」



博人は、泣いていた。
 「お爺様……」
何も言えなかった。
軽い気持ちで、家系史を紐解こうとしていたのだ。
まさか、こんな事が書かれていただなんて…。

 「お爺様…。
私は、跡を継いでません。だけど、貴方のアレは私が日本に連れ帰ってました。
現在では一つになり、ある人物の中に存在してます。
御免なさい。そして、ありがとうございます。
そうか、私にロシア語を教えてくれた貴人が、お爺様だったんだな。
そして、初代『御』だったのか…。
知らなかった、御免なさい…」


そして、現『御』であり、自分の叔父に毒づいた。
 「クソ爺め、こんな事を書きやがって…。やっぱり、誰にも言うつもりは無かったんだな」



4人の幼き戦士 (16)

ある年。
フランスで催されてるパーティに招待され、参加していた。
その時に、グズと再会した。
見間違える事は無い。
何しろ、私と同じ房に居たのだから。
銀髪碧眼の美男子が、そのパーティに参加しているのだ。
思わず声を掛けていた。

 「グズ…」
相手は無視してくれるが、私はグズという名前しか知らない。
なので、無難な声の掛け方をする。
 「ハイ!ムッシュ。私はアダム=バーンズ。昔、イタリアの隊に居たグズだよね?」
そう言うと、相手は目を細めてジッ…と睨むように見つめてくる。
アレを見せたいが、最近は何処に行ったのか見かけないので身元証明が出来ない。
でも、分かったのだろう。
 「まさか…、金の、タイガー……?」
 「そうだよ。殺人魔ダーク君」
 「久しぶりっ」
嬉しかった。
 「君は変わってないね」
 「何が?」
 「そのbaby face」
グッ…と詰まっていたのを見ると、とても嬉しくなった。
その時に、色々と話をした。

グズは、近況を知らせてくれた。
大学の医学部を卒業して4年経ったばかりの28歳だと。
 「あれ…、大学って4年でしょ?」
 「日本の大学は、ノンスキップで6年なんだよ」
 「なるほど…、日本は勉強好きな国なんだね」


バーンズはグズが偽名だと知り、ユタカと呼ぶようになった。
そのユタカを、バーンズはドイツへ招待した。
その道中、バーンズはある事をユタカにお願いした。

ドイツに着き、ユタカは気になった事をバーンズに聞いていた。
 「この子達は…」
 「御察しの通り、あそこに居た子達だ。でも、身寄りがない子ばかりなんだ」
 「なら、師事しなくても」
 「いや、世界の事等を中心に教えてあげて欲しい」
 「バーンズだって」
 「私は『御』なんだ」
その言葉でユタカは分かったのだろう。
 「ああ、なるほど…」

そして、5年間という期間を書類で契約を結んだ。
バーンズは、ユタカに子供を合わせた。
だが、その子供は小さい子を抱いているのを見て、ユタカは思わず聞いてきた。
 「バーンズ、あのおチビちゃんは?」
 「孫だよ」
 「は?孫?」
 「息子の孫なんだ」
 「孫って、バーンズ……」
ユタカの脳内はパニクッてるみたいだ。
 「私は49歳だよ。まあ、早くに結婚したからね」
 「え、49歳?」
 「そうだよ。末っ子が生まれて、あそこに連れて行かされた」
ユタカは、凄く驚いていた。
 「え、嘘っ!それじゃ…」
 「あの頃はグズは勿論だが、ウォルターやリンも自分の子供を見てるつもりだったよ。
私は、昔から背が低くて、いつも子供だと間違われていたんだ」
 「そうなんだ…」


それから、ユタカは20人の側付に色々と師事していた。
フィルやアランを始め、20人の子供達の心身を強く、鋼の様に逞しく師事していく。
ユタカのお蔭で医学に強くなり、バーンズも含め医療に身を置く様になった。
人間は、何歳になっても勉強は必要だな。


そして、約束の5年が来る。
その時に、家紋を創った。
エドは興味津々で覗き込んでくる。
もちろん、ワダとリューゾーも見守ってくれる。

自分の思いを込めて創ったものだ。
自分の過去を知らせたいという思いは無い。
だけど、これだけは残したい。伝えたい、という強い思いはある。
それだけで良い。
だから、これだけは伝えて欲しい。

『我々4人は永遠に仲間だ。
どんなに遠く離れていても・・・
もう会うことは無くても・・・
共に苦しみ耐えてきた、あの数年を忘れはしない。』

だから、この色にしたんだ。

蒼は、宝石(いし)の色。
金は、アダム=バーンズの金髪。
銀は、イタリア王子であるユタカの銀髪。
赤は、アメリカに帰国したウォルターの赤髪。
黒は、中国に帰国したリンの黒髪。


4人の幼き戦士 (15)

ある日。
長女マドリーヌの婿が、ある男と二人でドイツにやって来た。
子供であるヒロを迎えに来たみたいで、その時、自分の弟だと紹介してくれた。
その男は、私の執事の子供を見つめていた。

別室で、私は、その婿に話を持ち掛けた。
 「自分の亡き後は、長女の子供であるヒロにしようと思っている」と。
即答だった。
 「自分の跡継ぎにするつもりでいる」と。
でも、考えておいて欲しいと言うと、帰国するまでには返事をすると答えてくれた。

どうか、考えを改めて欲しいな。
そう願っていた。


数日後、それは起きた。
その婿と一緒に着ていた年の離れた弟は、私が留守の間に執事の子供のフランツと遊んでいたらしい。屋敷内をバタバタと子供の様に遊び回って、ある部屋に入ってしまった。
その部屋は『御』の公務室だった。
レッドカーペットを敷き詰めた奥には『御』の椅子。
その椅子に座ったらしい。

その二人を見つけたのは、ホワンだった。
 「失礼します。……誰だ、お前はっ」


詳しくは知らない。
その二人は執事から説教されたという事は、後から聞いて知ったのだ。

私は、もっぱら新しい事業として医療に力を入れていたせいで、あまり公務室に居なかった事もあり、座る事は殆どなかった。
その男が、再び、その部屋に忍び込んで、ある事を采配していただなんて知る由も無かった。


ついに、長女の孫が日本に帰国する日が来た。
婿は、私に返事をしてきた。
やはり、自分の跡継ぎにする、と。

やはり無理だったか…。
 「それなら、ある土地を持っているので、それをプレゼントさせてくれ」
と言うと、彼は「ありがとう。病院を建てるつもりでいるので、その場所にさせてもらう」と言ってくれたので、嬉しくて安心した。


バイオリンをこよなく愛する私の孫。
柔道や合気道を主にして、帝王学やフォン・パトリッシュの家系史等も含め、言語に色々な勉学を師事させてきた。
それらが、ヒロの今後を作ってくれることを祈っている。
もう会う事は無いだろう。
そう思うと、私はヒロに言っていた。
 「君には従兄が居る。君の近くに、リョーイチとキョージが居るから、仲良くしてね」
ヒロはロシア語で返してくれた。
 「はい。お世話になりました」

私の得意なロシア語を、この孫は自分から教えて欲しいと言ってきた時は驚いたが、それでも嬉しかったのを覚えている。
ありがとう、ヒロ。


彼等が帰国して半年ほど経つと、ある男が一人でやって来た。
長女の婿の弟だ。
その男は、私に言ってきた。
 「フランツが好きなので一緒に居させて欲しい」

何を言ってるのだ、この男は。
すると、とんでもない事を言ってきた。
 「貴方の後は、俺が継いでやる。心配しなくて良い」
 「な、何言って…」
怒りが湧きあがり、それ以上、何も言えなかった。
しかも、タイミング良く執事が、執事見習いの息子フランツを連れてやって来た。
フランツが驚いているのを見て、確信した。
この男は、フランツに何も言ってなかったのか、と。
 「え…、何故ここに?」
 「フランツ、会いたかった」
その男はフランツを抱きしめていたが、フランツは焦っていた。
そうだろう。
目の前には一族のドンである『御』と、執事である自分の父親が睨んでいるのだから。


仕方なく、テストと称して男にチャンスを与えてやった。
及第点だな。
でも、このパワフルさは見習うものがある。
その時、私は気が付いた。
この男なら、ヒロとも血は繋がっている。
きっと、あの子を『御』にしてくれるだろう。
でも、この男は帝王学を学ぶ必要がある。
最も信頼のおける二人に、帝王学を仕込んで欲しいと願った。
その二人は、その男と同じ日本人だ。
文壇のワダと、武術のリューゾー。



そして、10年間。
その男は帝王学を学ぶ為にドイツに居た。




4人の幼き戦士 (14)

一方、こちらはドイツ。


アダム=バーンズは空港に着くと、執事が迎えに来てるのが目に留まった。
 「ああ、空港から連絡があったのか」
 「バーンズ様。お帰りなさいませ」
バーンズは執事の肩を叩き、何かを呟いてくる。
それを聞いた執事は、思わずバーンズを抱きしめていた。
執事の目からは、涙が溢れ出ていた。
 「滅相も無い、有難きお言葉を頂き嬉しゅうございます」
そう言いたかったのだが、何も言えなかった。
ただ、バーンズの名前を繰り返していた。
 「アダム…、アダム…。お帰り、アダム…」

アダム=バーンズは、屋敷に着くと、真っ先に自分の家に向かった。
執事の声が止めようとする。
 「バーンズ様。先に御両親ですっ」
 「煩いっ」


自分の家の門を潜ると、バーンズは大声を出しながら、ある部屋へと向かう。
 「マリアッ!マリアッ!」

その声が聞こえたのか、マリアの御付きの女中が薄く扉を開ける。
その隙間に、バーンズは声を掛ける。
 「マリアッ!」
 
 「お静かにっ!何方様ですか?」
だが、バーンズはその女中をスルーして、奥に向かって声を響かせた。
 「マリアッ!私だ、バーンズだ!生きてるか?」

女中は驚いて目を見開いてる。
 「え…、バーン、ズ、様…?」


ドタドタドタッ…と、こちらに向かってるのか音がする。
一人の女性が泣きはらした顔で、バーンズの顔を覗く。
 「バー…、バーンズ?バーンズッ、お帰りなさいっ」
マリアはバーンズに抱き付いてくる。
マリアを抱きしめながら、バーンズは口を開く。
 「マリア…、ごめん、ごめん…。心配させて、本当にごめん」
 「帰って来てくれて嬉しい…」
 「マリア。忘れた事は無かったよ」
 「バーン…」
 「ただいま、マリア」
アダム=バーンズはマリアを抱きしめ、その場でキスをした。

久しぶりに会う子供達は母親似になっていた。
長女マドリーヌは11歳、次女ナンシーは10歳、三女クララは6歳になっており、三人共が母親マリアそっくりの美人になっていた。息子のマルク8歳は明るく笑顔を振りまいている。


アダム=バーンズは4人の子供と暮らしながら、イタリアに連絡をしていた。
自分達の脱退が成功したのはイタリア王妃の協力もあったからだ。
それに、他の隊員達も自分達の家族の元へ帰りたいという気持ちも知ってたからだ。

皆はグズがイタリア王妃の子供であることは知らない。
知ってるのは、あの場に居た私達3人だけだ。
他の皆が知ってるのは、グズはイタリア人であり『殺人魔ダーク』という異名を持っている、という事だけだ。

何処で戦いをするのか、大体の予測は付いていた。
その場所で待っていたのだ。
必ず来るのは知っていた。
だから、その時に知らせたのだ。
相手との交渉はバーンズがしていた。
その交渉内容は、二つだった。
無益な殺生はしない。
ドイツのフォン・パトリッシュとリンクを繋げて欲しい。
そういう簡単明瞭な言葉だった。
バーンズがドイツの名家の嫡男だという事は、顔を見れば分かる。相手側はバーンズの事を知っているので、自分達にも利は有り、相手にとっても不足は無い。
そういう判断をして、交渉は成立していった。

それは、書面におこしての正式な契約だ。


そして…。
皆が皆、それぞれの国に、屋敷に、家に戻りたいが為に、自分達の実家の連絡先をアダム=バーンズに教えていた。
それは密かに、何度も何度も行われていた。
段々と、一人が三人に、そして、子供隊全員になったり。
大人隊も一人が三人になったりして、イタリアには誰一人として戻る事も無かった時があった。

その時は、誰もが期待を抱いた。
今度は誰の番になるのか。

その内、戦場に赴いた先から誰も戻ってこないという報告を何度も受け、不審に思ったイタリア王は、後を尾けていた。
だが、気が付いた時は遅かった。
ドイツを中心に、スイス、フランス、アメリカ、オーストリア、地中海に沿海州、ポルトガル、中国等々の連中に囲まれてしまっていた。
王を守る筈の衛兵は両手を上げて降参の意を示したが、反対に王に殺されてしまった。
そして、王にくっ付いて来ていた残りの隊員は、王に手傷を負わせた状態で、そのまま放っておいた。そして彼等は自分達の国に、家に戻ってはドイツのフォン=パトリッシュと手を結び、後の医療界における絶大な力を持つ財閥へとなっていったのだ。


その当時は、侯爵だったフォン=パトリッシュ家を、アダム=バーンズは次々とあの隊から脱退してきた者達と手を組んでは、多くの国や名家達と同盟を結んで組織化させていった。
そして、自ら『御』と名乗っては、侯爵から抜け出し、世界へ通じる組織へ、財閥へと成長させたのだった。
なにしろ、あの隊では、多国籍の人間ばかり居たのだから。




そして…。
4人の子供達が結婚して、バーンズには次々と孫が生まれた。
日独のハーフのリョーイチを筆頭に、キョージ、ヒロト、アンソニー、ニールの5人だ。
それぞれ一人っ子だが、幼少時はドイツの屋敷で過ごして貰う事にした。
なにしろ、ドイツと日本は遠いからだ。
一番喜んだのは、息子であるマルクだ。
女ばかりの姉妹に囲まれて育っていたので、男兄弟が出来たみたいな感じを受けたらしい。
中でも、お気に入りは長女マドリーヌの一人息子であるヒロトだ。
気は小さいが優しく、音楽を愛してバイオリンを好んでよく奏でてくれていた。
誰かと言い合う事も嫌がっては、よくマルクの背に隠れていたものだ。

私もそうだが、屋敷の者も、ヒロトの演奏を聴くと癒されていた。
その内、ヒロトは同じ音楽を愛するエドワールと一緒に居る事が多くなってきた。
エドワールは、私の年の離れた従弟だ。
エドのバスと、ヒロのバイオリン。
2人で、よくデュエットをしてくれたものだ。


リョーイチは理知的で、頭の良い孫だ。
マルクとは、年の離れた兄弟と言っても過言では無いほどの相手だ。
お互いが、ヒロを可愛がり、マルクも一緒に同じ部屋で寝ていた時も一時期あった。

キョージは、リョーイチの母とアンソニーの父の間に生まれた子だ。
それでも、同じ孫だ。
天パで朗らかなキョージは、リョーイチを兄として慕っている。
だが、リョーイチは日本で生まれたので日本人だが、キョージはドイツ人だ。

アンソニーは、シンガポールのマフィア・ドンになったホワンとの間に生まれた孫だ。
だけど、ドイツで生まれた為ドイツ人という国籍だ。
恐らく、アンソニーはホワンの跡を継ぐだろう。

ニールは、マルクの子供だ。
マルクは自分はイギリスで生まれたのでドイツ人という拘りを持っているのか、ドイツ人の子供を持ちたがっていた。
ニールは、おっとりとして喧嘩を好まない孫だ。


4人の幼き戦士 (13)※R18!性描写あります※

※性描写有ります。抵抗のある方&18歳未満(?)の方は、スルーして下さい※


フォン・パトリッシュ。

たしかに、そう聞こえた。
グズは、直ぐに思い当たった。
フォン・パトリッシュって、ドイツの名家だけど、ヨーロッパ中に在って、顔パスな人種だと聞いた事がある。バーンズは、その家の息子…。嫡男という事か。


シンガポールに着くと、ウォルターとリンとグズは3人共が未成年だという理由で、親が迎えに来るまで待機する事を余儀なくされた。
真っ先に迎えに来たのは、一番近くに住んでいるグズの父親だ。

そして、ウォルターとリンは自分達の迎えが来る数日間、エッチに励んでいた。

 「ふ、ふ…」
 「ウォ…、ウォル、ター…」
 「リン…、はげし……」

リンはウォルターの肌に吸い付き…、胸元や腹にも痕を点けていく。

 「リン…」
 「ウォル、ター…」

リンはウォルターの中に自分のシンボルを挿し込み、押し進めていく。
 「Oh・・・、No・・・」
 「ウォル・ター…」

 「Wow・・・」
 「ウォル…」

 「Ah-・・・」
 「ウォルター…」

 「ッ……」

先にウォルターのが弾け出た。
次いで、リンが。


リンは、ウォルターの上に覆い被さると、抱きしめる。
 「もう、会えないかもしれないね…」
 「でも、俺達は仲間であり、恋人だよ…」
即答で返ってきたウォルターの、その言葉にリンは微笑む。
 「うん。我的心上人」 
 「え、何?」
 「私の一番大事な人って言う意味だよ」
 「ん…」
ウォルターは照れてる。


ウォルターは意を決して、リンの唇に触れる。
すると、今迄我慢していたのか、リンの双眸から涙がツッ…と、流れでる。
 「ウォルター…、ウォルター…」

 「リン、また会えるよ。今度は、アメリカから中国へ行く。遊びに行くから、待ってて」
 「ん…、うん、うん…」

頷く事しか出来ないリンだけど、ウォルターは自分の思いを告げた。
 「リン。あそこでは辛かったけど、リンと出会えて嬉しくて楽しかった」
 「ウォル…」
 「これからも、よろしく」
 「ウォルターッ!」


2人は、ギュッと抱きしめ合った。
恐らく、今世では二度と会えないだろう。
それでも、今。
この時は確かにお互いを感じてられるし、触れる事も触れられる事も出来る。
2人は抱き合い、互いの親が来るのを待っていた。
1時間でも、半日でも、一日でも遅く来る事を願って…。


やがて、別れの時は来た。
それでも、「文明の時代だから、大丈夫だよ」というウォルターの言葉を、リンは信じた。


リンは、病で倒れ死ぬまでウォルターとメールのやり取りをしていた。
お互いに何度か中国やアメリカへ渡ったり、中間地点だと言うハワイへ行ったりして、2人は逢引きを重ねていた。

そのリンが死んだ事を、ウォルターは、リンの妹から知らせを貰った。



4人の幼き戦士 (12)

隊から外に出るのは二ルートある。
一つは、そのまま真っ直ぐ外に出るルートであり、もう一つは宮殿経由して出るルートだ。
4人が取ったのは、後者のルートだ。
なにしろ、この4人は強いので、宮殿の警備にも携わっているのだ。

交代の時間が来る。
その時間を利用したのだ。
最も手薄になる時間だ。

グズはレースの大判カーテン2枚と王家の紋章を奪い取る。
リンは果物とレースの大判カーテン2枚。
ウォルターはパンと薄地の布袋。
バーンズは飲み物と厚地のテーブルクロス。


誰にも気付かれず、空港へ着く。
真っ先に果物とパンと飲み物で腹を満たす。
そして、それぞれが奪い取った物で身を整える。

グズは、レースのカーテンをグルグル巻きにして、踵が隠れる位の丈にして、その上から薄地の布袋の底にナイフで切り取り穴を開け、頭から被る。持っていたペンダントを首に掛け、紋章は胸に付ける。
そのペンダントは、イタリアに来る時に、お母様から手渡された物だ。
 「王家の紋章と、お母様の印が付いてるから、持っていなさい」と言われ持っている。

お母様、私は日本に帰ります。約束の5年も終わりに近づいてるから。
もう二度と来ない。
あの男は、私からお母様を奪い結婚しただけでなく、お父様のフルートを壊してくれ、私を隊に放り込んでくれた。でも、そのお蔭で、私は仲間を得ることが出来、武術やIT関連や銃器等を会得することが出来た。


そして、皆もレースのカーテンでグルグル巻きにして、隊の制服をお洒落にする。
用意が出来た所で、グズは3人に、こう言った。
 「芝居をするから」と。

そして、グズは、空港のスタッフ達に向かって、人懐っこい笑顔を振りまき、流暢なイタリア語で話し出した。
 「私は、イタリア王妃の子供だ。証拠が欲しいって?この瞳に髪の色をよく見て。それに、このペンダントもだ。お母様に連絡を取っても構わない。パスポートも見る?
それに、彼等は2人共私の警護をしている。一緒にシンガポールに向かう。行先は日本。
イタリア王妃に、連絡を入れても良いよ。『貴方の子供は、約束通り日本に戻る』とな。
それと、もう一人。彼はドイツに向かう。その手配をよろしく」


グズがイタリア王妃と言う言葉を連呼したお蔭で、イタリア王妃は一人で空港に来た。
王妃はグズを見るなり、抱き付いて来た。
 「ユタカッ…!ごめんね、ごめんね。お母様を許して、とは言えないけれど…。
ごめんね。
こんな目に遭わせてしまって…。本当に、申し訳ない事をしたと思ってる…。
ここに連れて来なければ良かった…」
 「約束は5年間だからね。帰るから」
 「そうね…。日本に帰っても元気でね。貴方のお父様に伝えて。御免なさい、と。」
 「大丈夫だよ。私は色々な経験をさせて貰った。あそこに居た3年半は、辛い事もあったけれど、仲間も出来た。その仲間と一緒に、ここを出る。」
 「ユタカ…。もう、お母様とは言ってくれないの?」
 「…王妃様。貴方の子供は、4歳になられる女のお子様と、1歳になられた男のお子様だけだ。私の事は、死んだと思って欲しい。もしくは飛行機事故で亡くなった、と…」
 「ユタカ。私の血を継いでるのは、紛れもない貴方だけよ。それに、あの二人は私には似てないから…。ユタカ、これを…」

手渡されたのは、護身銃だ。
 「要らない」
 「持っておきなさい。いずれは必要になる。それにね、ユタカ。貴方は、イタリア王子よ。
誰が何と言おうと、貴方はイタリア王子よ。
忘れないで、貴方は、この私が生んだ王子よ!」

空港のスタッフから声が掛かる。
 「王妃様、王子様のご出立の準備が整いました。」

その言葉を耳にした王妃は、立ち上がり述べた。
 「ユタカ、帰りなさい。それは、母だと思ってくれれば良いから。形見だと思って、持ってて」
 「…短い間だったけど、お母様と呼べる時間を過ごせる事が出来て、嬉しかったです。
さようなら。そして、お元気で。」
 「ユタカ…。その恰好、良く似合っててよ。さすが私の王子」
 「ふんっ…、私を誰だと思ってる」

イタリア王妃は微笑みながら跪いては、息子の手の甲に口づけた。
まるで、臣下のように。
 「ユタカ。私のユタカ…、貴方は立派な王子よ。神の御加護がありますように…」


バーンズとウォルターと林は、本当にイタリア王子だったんだ、と驚いていた。
バーンズは、別れ際に教えてくれた。
 「王子様だとは全然思わなかったよ。だけど、仲間として教えておく。私のフルネームを。
『アダム=バーンズ・フォン・パトリッシュ』
ドイツでは有名な名家だよ。グズ、アレは有難く貰っとく。日本でも元気でな」
その時に、バーンズは護身銃を贈ってくれた。どこに隠し持っていたのやら…。


 「バーンズも元気で」

アダム=バーンズは片手を上げると、さっさと一人でドイツ行きの飛行機に乗って帰国した。




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