BL風味の小説

BL風味のオリジナル小説です。
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俺の気持ちはブレない 第二部(28)~最終話~

博人と友明は黙って聞いていた。
政行があちらに行くと、博人さんが言ってくる。
 「本当に、プールが好きなんだな」
 「まあ、本人がそう言ってるのだから良いよ」
 「作ったかいがあったな。しかし、案外早くに吹っ切れたもんだな」
 「彼は軽い方だから。あれが私と同じ脳だったら、どうなるやら」
 「まあ、な…」


違う声が割って入ってくる。
 「ボス、博人先生。お帰りなさい」
 
 「ただいま」と、博人さんが。
 「話を聞いたよ」と、友明は言う。

 「何のですか?」
だが、友明はとんでもない事を言う。
 「君ならセンター長を任せられるな」
 「え…?まさか話しって…、彼のプール戻り?」

さすが東響大学医学部の先輩と後輩。
しかも、ボスである友明に懐いてパースでの5年間を卒業しても、そのままパースに3年間居付いていた人間だ。
すぐに、何の事か分かった高橋一比古(たかはし かずひこ)は、泣きついていた。

 「ちょ、ちょっと待って下さいよ、センター長にはボスしか居ませんよぉ」



そう、ここ東京のリハビリセンターの職員は、全員が全員、パースのクリニックへ大学5年生の時の実地期間を6ヶ月間丸ごと滞在して、現場実地していたのだ、
実地を終え大学を卒業後、パースで5年間働く。
だが、この高橋一比古はクリニック・ボスに懐いて、その後、3年間をパースで働いていた。
そして、大学に戻り、リハビリの大切さを後輩に教えている。それと同時に、リハビリセンターが出来たので、彼は自ら立候補したのだ。
自分の就職先に、と。

そして、いずれは戻ってくるだろう。
パースのクリニック・ボスと博人先生の完全帰国を心待ちにして。



5年前、この二人が最上階にプール、サロン、道場を作りに帰国していたのを知ってるのは、この高橋一比古を含む職員と、龍三先生だけだ。


ちなみに、高橋一比古の父親は、ボスである福山友明と同期で教育学部を卒業しており、医学部の方にちょくちょくと顔を出して仲良くしていた二人の内の一人だ。
父の名前は、高橋冬吾(たかはし とうご)。
もう一人は、海堂響(かいどう ひびき)。
同じ教育学部卒業生であり、頭脳明晰でありルックスも良い5人の内の一人である。





水泳選手が恋をすると、脇目もふらずに突っ走っていく。それは、ゴーグルを掛けた先には、一直線先しか見えないからだ。
それもそうだろう、脇目をふってると追い抜かれてしまう。

アスリートにとって、誰かを好きになるという思いは原動力になるが、そこまでのものでしかないのだ。でも、政行はドクターストップが掛かった事によって、一旦、止まってしまった。
だから、自分の事を振り返る時間が出来たのだ。

政行の気持ちはブレない。
だけど、短期間とはいえ別の人間を好きになってブレた時期もあった。
純粋な気持ちの塊である政行は、これからも嘉男以外の人間を好きになる時が来るだろう。
そして、その度に嘉男と言い合ったり、泣きながら生きていくだろう。
友明とは違う。
政行の場合は、恋人である嘉男は一つしか年齢は違わないという同世代だ。






週1だが、水曜日は政行とデート。
デート場所はリハビリセンターにあるプールだけど、作り物ではなく自然な笑顔が見れる。
恋人気分を満喫している嘉男に、アサミはからかうばかりだ。
なにしろ腐の楽しさがマンネリしているので、アサミはつまらないのだ。
所長はリア充だし、プールスタッフは変わらないメンバー。
バイト先の新聞配達は早朝なので、腐だなんて全く縁のない仕事だ。
デッサン教室も、殆どが女性だし。
マサユキコーチが居た頃は色々とあったが、腐要素は沢山あった。
どこかに腐は落ちてないかな。

腐男子のアサミは、腐を探しに行く為3ヶ月程休みを取ろうかな、と思う様になった。
 
 「腐探検」
うん、良いかも。
と、独り言ちるアサミだった。













 ‐完 ‐ 



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俺の気持ちはブレない 第二部(27)

見学の日、担当の先生は政行と嘉男を最上階に連れて行ってくれる。
エレベータから降りる。

 「すごっ…」
嘉男さんの声が漏れ聞こえてくる。


プールに向かう廊下を下っていくと、リハビリしている人が見える。
プールにはビュールームが付いており、そこに入る。
そこからはプールだけでなく、富士山の見える方角だという事が分かる。

たとえ見学だとしても、ソワソワしてくる。
その人達が笑ってるのが分かる。
楽しいんだな…。
担当の先生が声を掛けてくる。
 「よろしかったらどうぞ」
 「え?」
 「海パン一式持って来られてるのでしょ?ロッカーはこちらです」

俺は嘉男さんに言っていた。
 「もしかして、その荷物…」
 「そっちこそ」


ロッカーで着替えてると、担当の先生も着替えているが、その先生の背中から脇に掛けて大きな傷跡が見える。
思わず口に出ていた。
 「先生、その傷…」
 「ああ、これはオーストラリアで研修してた時に怪我したものです」
まあ、そのせいで激しいスポーツは出来なくなりましたけどね…。
その呟きが聞こえたのかどうかは分からない。


先生に連れて行かれて、シャワーを浴びてプールに入る。
改めて思った。
ここのプールは温かい。
いや、温水プールとか屋内が温かいとか、そういう類の事では無い。
光だ。
床上1.50mから縦に2m、横幅3mほどの範囲で、円柱を挟んで等間隔に6枚のガラスが張られている。
そして、床上1.50mまでと3.50mから天井までの壁はクリーム色で統一されて、お風呂とサウナは窓際に位置するプールの入り小口に設置されていて、広い。
そのサウナの幅分の円柱が合計12本。
その柱には飾り模様がされてる。
贅沢と言う言葉を通り越して、何も言えなかった。

まるで、神殿かと思えるほどだ。
そのガラスから射しこまれてくる温かい光を身に受け、政行は思っていた。
 (どこの坊ちゃんが考え建てたんだ?こんな神殿みたいな建物だけでも引いてたのに…。
最上階のプールにまで、これだなんて…)


プールの水に足先を浸けると温かい。
ただいま、という気持ちになってくる。
嘉男さんは、サブンッと遠慮なく足から水中へ飛び込む。
 「飛び込み禁止ですよ」
そんな政行の言葉をスルーして嘉男は言ってくる。
 「政行。今のお前の顔、嬉しそうだよ」
 「本当?」
 「ああ。本当にプールが好きだ、と言ってるようだ」

担当の先生は、こちらにと俺を誘導してくれる。


ここからね、と言ってくれる。
政行は絶句なのか唖然としてしまっていた。
 「先生、これって…」
 「楽しいですよ。では、私はお先に」
そう言って、先生は先に階段を上り行ってしまった。

プールサイドからは、座って入るか足から飛び込んで入るかになる。
でも、飛び込みは禁止だから、座って入る事になるからこっちに連れてきたんだな。
肩に負担を掛けない為に、先生は気を使ってくれたんだな。
どうしても手を使って腕の力を使うからだ。
でも、これは楽だな。
そう思うと、政行は先生の後を追いかける様に階段を上っていく。
 「いざ、出発ー」


中々来なくてイライラ気味な嘉男さんの顔が見える。
思わず声を上げていた。
 「ぃやっほー!」


ザブンッ…。

と、音を立て、俺は水中に顔まで潜った。
プハッ…と顔を上げ、横に振って水滴を飛ばす。
 「へー、滑り台かあ。楽しそうだな」
 「うん、楽しかったよ」

嘉男さんは、俺も、と言って滑り台に向かっていく。
それを見てると、滑り台までは距離があり、高さがある事に気付く。
カーブも3つある。
そして、一度だけでは足らず三度も滑って楽しそうな嘉男さんを見てると、俺も楽しくなってきた。

先生の声が聞こえてくる。
 「はい。それでは見学から体験になりますよ」
思わず返事をしていた。
 「はい!」


泳ぐ事は出来ないけれど、水と友達になり、自然との調和を感じる。
そういうのは、泳ぐことよりも初歩的な事だ。
政行は、プールでのリハビリをする事に決めた。

嘉男さんは滑り台が気に入ったらしく、付き添いで来る。
まあ、リハビリだから付き添いは必須なので、はしゃぎ過ぎなければ良いらしい。
その代わり、付き添い料1回につき1,000円だけどね。



 「だから、悩み苦しんだ期間って、半年も経ってないのです。
まあ、泳げないのはあれなんですけどね…。
やっぱり、俺ってプールバカなんですよね。
誰が建てたのか分からないけど、ありがとうと言いたいです」


チリリンッ♪

客が入ってきたのだろう、声が掛かる。
 「こんにちはー」
 「あ、いらっしゃいませー」





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俺の気持ちはブレない 第二部(26)

それから5年の月日が経った、友明62歳の2月。
友明は博人と共にパスポート更新の為、日本に帰国した。
真っ先に学長の墓参りをした二人は、件のカレー屋に向かう。


チリリンッ♪


 「いらっしゃいませー」
元気の良い声が聞こえてくる。

 「え…、ひ、博人先生っ?」
 「パスポート更新でね、2ヶ月程だけど」
 「食べに来て下さりありがとうございます」

曇りのないスッキリと晴れた表情で、彼は言ってくる。
 「俺、きっぱりと吹っ切れました」
 「え、きっぱり?」
 「はい。綺麗さっぱりとですっ」

彼は話し出す。
まあ、他に客が居なかったのもあるが…。



恋人である嘉男と一日の内の半分以上を過ごしているのだが、週2の割合でリハビリに通ってる政行は、リハビリの担当医に愚痴とも取れる事を話していた。
相談相手も居ないし、リハビリに来るだけしか出来ない。
そのリハビリの担当医は即答してきた。
 「走ればどうですか?」
 「え…、だってドクターストップ掛かってるんですよ?」
 「詳しく聞かれましたか?」

え、詳しく…?
あんまり自信が無いので俯いてしまう政行に、担当医は言ってくる。
 「貴方の掛かっているドクターストップは、筋肉をこそげ落とし蹲ってしまった骨を定位置に戻した為の副作用ですよ」
 「ドクターストップを軽く見るな、と言われたのですが…」
 「個人の度合いのよりけりです。でも慎重になるのは良い事です」
 「俺のは、軽い方?」
 「ただ、これだけは言っておきます。泳ぐ事は出来ません。」
 「はい、それは分かってます…」
 「野球とか球技種目も出来ません。
だけど走ったりジャンプしたり、肩に負担の掛からない事なら出来ますよ」
 「え……」
 「え…、って。あれ、もしかして聞かれてない?」

聞いてたかもしれないし、聞いてなかったかもしれない。
どうだったのかを思い出そうとしても思い出せない。
すると、そのリハビリ担当医は自分で結論を出したみたいだ。
 「まあ、ドクターストップを掛けられると、驚きと焦りがありますからね。
そういう状態の時に何か言われても頭に残らないですからね。
だから、貴方の頭には残って無いのでしょう。
でも、慎重になるのは良い事です」


肩に負担の掛からないスポーツなら出来ますよ。
そう言われ、リハビリの一環としてプールを紹介された。
政行は驚いて何も言えない。
 「泳ぐのではなく、ゆっくりと歩き、速足で歩く。その練習です。水中における人体は負荷は少ないですからね。そして、水の上に大の字になって寝そべる。
水と一体になるのです。いわゆる、自然との調和ですね」


水と一体、自然との調和。
そういう言葉なら、信じられそうだ。
プールならマンションにも付いてる。
だが、その先生はリハビリセンターの最上階に連れて行ってくれる。
エレベータから降りると、政行は目を瞠った。

これはっ…!

目の前には、大パノラマの東京が見える。
それは息を飲むほどの絶景だった。

エレベータへと視線を移した政行は、エレベータを中心として人が2人ほど歩ける幅があり、クリーム掛かった色の壁に囲まれるようにエレベータが二基、中心に位置してある。
角に当たるのか、四角は緩やかな傾斜になっており下方へと向かってる。
 「凄いでしょ?ここは都心の中心部ですからね。360度、どこを見てもパノラマですよ。
落ちない様に、床上1mからガラス張りになっております。エレベータが二基ありますので、エレベータ室みたいでしょ?
天気が良いと、富士山やベイブリッジ、千葉の方も見える時があります。
プールはこちらです」
そう言って、緩やかな斜面の内の1つを下っていく。

プールの場所を教えてくれたが、広そうだ。
ビュールームには登録された人だけしか入れないけれど、と言われ、それもそうだと政行は納得する。
プールにはお風呂とサウナが付いてます。
と、簡単に説明してくれた。
 「元々、ここには病院が建てられてました。先代が無くなると、その息子が継ぎ、そして違う人間がボスになった。でも、1年もしない内に潰れたみたいです。
でも、先代の息子は音楽を愛でてサロンも作りました。
いわゆる、音楽リハビリです。その場所があちらになります」

今度は、音楽リハビリの部屋に連れて行ってくれる。
その部屋にはサロンと見て取れる楽器が置かれてある。
思わず呟きが出る。
 「オーケストラみたいだ…」
 「そうです。ここの職員は、何かしら楽器が弾けて武術も出来て指導の出来る者ばかりです。」
 「そうなんですね…」


 「そして、もう一部屋。こちらが道場です」
サロンの向かいにある部屋を開けてくれる。
板の間だ。
 「この道場では月会費を払っての道場通いと、リハビリの為の道場使用があります。
曜日が決まってるのですが…、今日はどちらも使用されない日ですね」


政行は気になっていた事を口にした。
 「先生って、理屈好きですか?」
 「うーん…、好きというか…、どうしてですか?」
 「なんとなく…」
 「どうしても医学部は理屈こきになりますからね」
 「え、リハビリの先生って医学部なんですか?医者だけだと思ってた…」
 「そうですよ。他は理学療法学部や作業療法学部とか、ですかね」
 「そうなんだ…」

だから、身体への負荷とか何とかが分かるのか。

そうしてたら、パンフレットを渡される。
 「これは、リハビリ用のパンフレットです。
見学、体験は随時出来ますので、その気になったら言って下さいね」
 「はい」



嘉男さんに、その事を言うと「見学だけでもすれば良いのでは」と言われた政行は、パンフレットに水曜日はリハビリコースが組み込まれてるのを見つける。
そうだね、と思いリハビリの先生に電話で話す。

政行は、念のため持って行くことにした。





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俺の気持ちはブレない 第二部(25)R18!!性描写あります。18歳未満&抵抗のある方はご遠慮ください

※R18!性描写あります。18歳未満&抵抗のある方はご遠慮ください※


嘉男のバナナを口に含み、奉仕していく。
苺も貰おう。
バナナがある程度熟れてくると、今度は苺だ。
片方の苺を舌で押し潰したり舐めたりしては、もう片方の苺を指で抓み潰す。
 「ん……」

あ、起きそうな気配がする。
腹に唇を這わせ、ゴマを舐める。
 「ん…、政、行?」


政行の行動を邪魔しようと腕が伸びてくるが、政行は嘉男のバナナを口に含む。
 「う……」
 「俺も、欲しいんだ…」
嘉男のバナナは固く、熱く、デカくなってくる。
だが、政行のも同様だ。
 「ま、まさ…、あっ」
 「ん、待ってて…」
 「やめ…、ま…」


先端を強く吸ってやる。
 「くぅ……、や、め…」

もっと、もっと強く。
 「ぁ…、あああっ」


嘉男のバナナの先端から出てきた蜜を飲み込んでは舐め取り、先端にキスをする。
ちゅっ。


 「ん、御馳走様でした」
 「ったく、お前は…」
 「嘉男さん、俺はブレないから」
 「何が?」
 「俺の気持ち。そりゃ、博人先生を好きになった事があったけど、嘉男さんだけだから。
博人先生から言われたんだ。これからは悩み苦しむ時期になる、と。クリニック・ボスからは泣きたい時は泣き、言いたい時は言えば良い、ってね」
 「ああ、俺にぶつけてくれると嬉しい」
 「嘉男さん…」
 「人間だから泣いたり笑ったり苦しんだりするんだよ。
俺は、博人先生からパースに居た時に話を聞いた。覚悟の要る事だと。
あの博人先生でも悩んで、悩み苦しんでいた時期があったんだ。でも、仕事をする事で逃げていたってね。その覚悟を受け止めるまで時間は掛かった、って。
並大抵な事では無いと、俺も分かるよ。
だから、政行。一緒に話し合ったり泣いたりすれば良いと思ってるよ。
何度も言うが、お前とクリニック・ボスとは違う。
あの人は、一人で10年間苦しんだんだ。
でも、政行は違う。最初っから俺が付いてる。
泣いて良いよ。だけど、俺だけにして欲しい。
約束して。
泣くのも笑うのも、俺だけに見せるって」
 「嘉男さん…」
 「その泣き顔も、俺だけに見せるって。約束して…」
 「うん、約束する。約束します」


そういうと、政行は素直に嘉男の腕に抱かれ、その胸に顔を埋めた。
目の前には熟れ頃の苺がある。
その苺を口に含み、コロコロと口の中でしゃぶる。

 「政行…、お前は、される側だ」
 「ん?」
 「俺が攻める方なの」
そう言って、嘉男は政行の口を開けて自分の苺、いや乳首を救出する。
 「あ、俺の苺ー…」


嘉男は、政行の頬を挟み持って、その唇に、自分のを触れ合わす。


 「ん、ん……」

唇が離れる。
唾液が糸を引く。
嘉男さんの目が、政行の潤んだ目に視線を合わせてくる。
 「よ、しおさん…」
 「政行、もう1回」
 「ん…」

政行は目を瞑る。
そんな政行の額に、両頬に、鼻の頭に、唇にとキスを落としていく。
耳の中を舐めてくる。
 「ん、やぁ…」

嘉男の唾液で政行の耳が塞がってる様な感じを受ける。
その内に、項から首元を経由して反対の耳にくる。
両耳とも舐められ、思いっきり感じてしまう。
政行の中心部のモノが固くなり嘉男の身体に強く押し付ける。
 「政行、早いな…」
そう言うと、嘉男は政行の胸の小さな尖りを攻めてくる。
 「あ…、ぅ……」

その小さな尖りを口に含み舐めてしゃぶり甘噛みする。
 「ふ、ふ…」

政行の叢を掻き分ける様に、バナナはそそり立っている。
嘉男は、それを無視してヤシの実と先程言っていた秘孔の冒険をする。
つぷっ…と、指が挿し込まれる。
 「ん……」
先程したから今回は難なくスムーズに指を飲み込んでくれる。
一気に3本に増やす。
 「あっ…、イ、イ…、気持ち…」

政行の腰は嘉男を誘っているかの様に動いてる。
 「政…」

嘉男は、自分のを宛がうと一気に挿し込んでいく。
政行の声が漏れ聞こえる。
 「嘉男さん…、きて」

その言葉に煽られ、嘉男は腰を政行に打ち付ける様に動かす。
 「ふ…、ふ…」

早く、強くと打ち付ける。
 「ふ…、う…」
 「政…」
 「嘉…、欲しい…」
 「ん……」

政行が先なのか、嘉男が先なのか、それとも一緒なのか。
ほぼ同時に、二人はイッた。
 「あああっ…」
 「ぐぅ…」


政行は、きっぱりと言ってくる。
 「嘉男さん、俺はブレないから」
 「え?」
 「これからは嘉男さんだけだから、覚悟しといてね」
 「ああ、政行も覚悟しろよ」
 「どういう意味?」
 「俺は嫉妬深くヤキモチ焼きだからな。博人先生の件は、あっちが相手にしなかったのもあり、目を瞑ってた。だが、これからは浮気なんて許さないからな」

博人先生の件を持ち出されギクッとなったが、俺がキスをした事は知られてないみたいだ。
でも、政行は言い返していた。
 「そっちこそ、俺が何も知らないと思うなよ。好みのタイプだと見ると、直ぐに手を出してエッチするんだからな。人を好きになるな、とは言わないけど…。やたらとエッチしないで。
エッチするのなら、俺だけにして」
 「なら、そうさせて貰う」


お互いに微笑んで、これから来るだろう悩み苦しむ時期に備えてるみたいだ。
この二人は、最初から一緒に居る。




それでも、友明とは違う。
10年間という月日を、友明は仕事をする事で忘れようとしていたのだ。
なにしろ、ドクターストップを掛けられて半年後に退院して福岡で5年間、シンガポールで3年間をオペドクターとして、新しい自分に、また未知なる仕事にチャレンジしていたからだ。
だが、シンガポールでの銃撃戦で、ドクターストップで悩み苦しむよりも数百倍以上の苦しみを味わって…、いや、死んでもおかしくは無かった。
料理を作る事、メスを持ってのオペドクターとしての道を、失明という形で余儀なく潰されてしまったからだ。その事を、政行と嘉男は知らない。
知ってるのは、当時のボスであるアンソニーと室長をしてたレイと、エド・ボスと博人先生だけだ。
だから、友明は自分の経験から言ったのだ。

 「泣きたい時は泣け。我慢をするな。
一緒に居たい、と言ってくれてる人が居るのだから、自分の気持ちをぶつけるんだな」と。

なにしろ、友明は先に博人をパースに呼びつけて、半年後に話したのだから。
だから、博人は受け止めるまで時間が掛かったのだ。



海と空の向こうでは、ドクターストップが外れて、道場で過ごす事が多くなった友明は祈らずにはおられなかった。
彼は、私とは違う。
水泳や激しい運動は出来ない身体になった。だけど、君は自分で新しい道を選んだ。
君達は、二人ともまだ若い。

35歳や36歳の私は片目だけで生活をしていた。
ただ、博人先生は私が話しても側に居てくれた。
それだけが救いだった。
嫌なら日本に帰れば良いのだから。でも、博人先生は帰国しなかった。それが、私にとっては本当に嬉しかったのだ。
仕事をする事で紛らわせていた私に、次々と学生時代の仲間が数人集まってきたのもあり、彼等に気取られない様にしていた。

現在は人外の力で失明していた左目に光を戻された友明は、五体満足というありがたみを肌で感じていた。
だけど、あの記憶はまだ生々しく残っている。
笑い話にもならない、自分から進んで話せる事柄では無い。


おそらく、彼、政行君は30年も苦しむことは無いだろう。
30年近くもアスリートでやってきた人だ。並大抵の努力だけではやってこれなかった筈だ。
だが、君は筋肉をこそげ落としてのドクターストップだ。
私とは違い、走る事も飛び跳ねる事も出来る。
私は脳でのドクターストップだったのだから、君とは大いに違う。
その事に気が付いて欲しい。

そして…。
どうか、少しでも和らげます様に。
日本から遠く離れたパースの地から祈ってます。




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俺の気持ちはブレない 第二部(24)R18!!性描写あります。18歳未満&抵抗のある方はご遠慮ください

※R18!性描写あります。18歳未満&抵抗のある方はご遠慮ください※


梅雨も明けた7月下旬。
季節限定食は鰻丼になった。
一日20食限定だと、すぐに完売になるが増やさない。
それは『MEN'Sスポーツジム』で、夕食6人分の弁当を定休日以外の週6日に作るからだ。
口から口へと伝わり、今では開店時間の12時より前に列を作ってくれるほど集まってくる。
それでもセルフサービスなので、なんとか回ってるのだ。
恋人である嘉男が15時半まで手伝ってくれるのもあるから、大助かりなのだ。
だが、嘉男が手伝ってくれると女性客の多い事。
嘉男のルックスが女受けする事に今更気が付く政行だった。

15時半から18時までは、そんなにお客さんは食べに来られない。
その時間は、仕込みをしたりナプキンやお冷等の補充やテーブルの拭き掃除をする。
たまに昼寝したり…。
18時前になると、本屋やスーパーへのアルバイト達が夕食として食べに来られたり、仕事帰りのお客さん達が持ち帰りを注文してくれる。
19時過ぎると夕食を食べて20時からの仕込みをする。

ここはお酒を置いてないので、飲みに来られるお客さんはいない。
21時過ぎるとおでんが主流になる。
 『21時からメニュー』を作って、昼間とは違う雰囲気にする。
白米と豚汁のセットと、炊き込みご飯とワカメと豆腐のシンプル味噌汁のセットだ。
これが、よく出るのだ。
遅い時間でも胃に負担の少ないメニューをと思ってのメニューだ。
それに汁物が付いてるので、寒くても少しは温まってくれるかな、と思ったからだ。

23時閉店間際に嘉男さんは帰宅してくる。
たまに、アサミコーチも一緒の時があるが、今夜は一緒では無い。
 「そんなにも余って無いけど…」
 「美味いから良い」
 「そう言ってくれると嬉しい」
 「食後のデザートがあるからな」

え、デザート?
何か買って帰って来たのかな。
片付けも終わり、その日の収支の計算も終わると、嘉男さんが声を掛けてくる。
 「終わったなら、デザートの時間だ」
 「何を食べるの?」
 「苺とバナナとヤシの実かな」
 「美味しそう」



寝室に連れられ、頂きますと嘉男さんの声がする。
 「ねえ、どこにイチ」
服の上から抓られた。
 「ん。ここにイチゴがある」
 「いや、そこは苺ではなく、ち…」
 「で、バナナはここ」
と言いながら、スラックス越しに俺のモノに触れてくる。
 「んっ…。ま、まさかデザートって、そういう意味?」
 「他に何かあるのか?」
 「あ……」

嘉男さんの手はTシャツの裾から入り込んで、肌に触れてくる。
 「んん…」
 「政行…」

ベッドに押し倒され、乳首を噛まれる。
 「あっ……」
 「ん、固くなってきてるが、食べごろにはもう少しかな…」

 「よし…」
 「それなら、先にバナナだな」
 「あ……」

バナナに手をやり、嘉男は扱いてくれる。
筋を1本ずつ這わせたり、バナナの先端と言っては、先端部分をぐちゅぐちゅと擦ってくる。
 「ん…」

挙句の果てには、ヤシの実。
「ヤシの実って何?」なんて聞く事は出来なかった。
だって、ヤシの実と言ってお尻の境目に指を触れてくるんだから。
なんて、政行も冷静に状況判断は出来なかった。

嘉男はヤシの実の汁を飲む…と言って、政行の窄まりに指を当てて押し広げてくれる。
 「ふ…」

舐められてる感触がある。
 「あ、あ…」

ヤシの実を解して、中に突っ込む。
そう言って、嘉男は窄まりに指を2本、一気に挿し込む。
 「ああっ…」

指が3本になり、押し広げられる。
 「よ…し…」
 「ん、待ってろ」

その言葉と同時に、嘉男のバナナが、いや嘉男のモノが突っ込んでくる。
 「ふぅ……」
 「ま、さ…」
 「ん…」

嘉男は政行の顔を覗きこんで大丈夫そうなのを見て取ると、腰を動かした。
 「は、は、は……」
 「ま、さ…」

イイ所を突いたのか、政行の身体は仰け反る。
 「あっ!」
 「ここか…」
 「あ、あ、あ…、も、もう…だ、め」
 「まだだ」

嘉男の腰の動きが激しくなってくる。
 「ふ、ぅ……」
 「ま、さ…」
 「よ…、し…」


政行の方が先に意識を手離した。
 「っ…!んんっ……」

数瞬後、嘉男は政行の中に放った。
 「くぅっ…」



目が覚めると、政行は文句を言ってくる。
 「もう、嘉男さんばっかり…」
 「俺のデザートだからな」
 「俺も、欲しい…」

それに対して、嘉男はこう返してきた。
 「お前は、俺に抱かれていれば良いんだよ」
 「だって、俺も抱きたいの」
 「風呂入って寝るぞ」
 「ちょっと、嘉男さんっ!」


スルーしてくれる嘉男に腹が立つが、それ程でもない。
寝てる時を攻めれば良いのだから。



風呂から出てベッドに潜り込むと、二人して仲良く寝てしまった。
だが、政行は途中で目が覚めてしまう。
自分の横でぐっすりと寝ている恋人の寝顔を見つめていると、満足感を感じる。

その寝顔に政行は心の中で話し掛けている。

嘉男さん。
俺は自分の手でメダルを取ったわけでは無いよ。
お父ちゃんは、「金がモノを言う」なんて言ってくれたが、金では無いんだ。
周りの協力があったから、嘉男さんがデンッと構えて待っててくれたからだよ。
 「ここがお前の居場所だよ」
と、あの時言ってくれた。
東京オリンピックが終わった最終日に言ってくれて抱きしめてくれた。
あの時はエッチしなかったけどね。
嘉男さんが言ってくれたのを、俺は本当に嬉しかったんだ。
今迄、色々な事があったけど、他の人を好きになった事もあったけどね。
嘉男さん、ありがとう。
これからもよろしく。

ふいに、クリニック・ボスの言葉が頭に浮かんできた。
 「泣きたい時は泣け。我慢しなくても良いんだ」

政行は心の中で返した。
(ありがとうございます。人間って、嬉しい時も涙は出るんですね。
貴方達と出会えて、話も出来て良かった。嘉男さん、一緒にパースに来てくれてありがとう)

でもね、俺もデザートが欲しいんだよ。


そう呟くと、政行は行動に移した。





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俺の気持ちはブレない 第二部(23)

政行の声が聞こえる。
 「それじゃ、あっち行くから。食べててね」
 「頂きます」
 「どうぞー」


リビングから店のキッチンシンクに向かう。
思わず足が止まってしまった。
だって、高瀬が居るとは思わなかったからだ。
 「…何か用ですか?」
 
だが、高瀬はモヤモヤとしている。
 「あいつとは、どういう関係だ」
 「高瀬には関係ない」
 「政行、あいつは」
 「煩いな、勝手に入ってこないで」


店に戻ると鈴の音が鳴る。
 「こんにちはー」
 「いらっしゃいませ」
アサミコーチだ。
 「食べに来ました」
 「ありがとうございます」
 「本人から聞きましたよ。二人で暮らしてると」
いきなりの言葉で、思わずお皿を落としそうになった政行にアサミは言ってくる。
 「嘉男と二人で暮らしてるのでしょ?それはそれは嬉しそうに話してくれましたよ」
 「え…」
 「まあ、うすうすと感づいてましたからね。やっぱり、そうなんだと確信しました」
 「はい、こちらです」
 「あ、ありがとうございます。で、幾らですか?」
細かいのが無いと言われ、1万円からお釣りを渡す。
アサミコーチの話は終わって無かったみたいだ。
 「でね、夕食の弁当を6人分、お願いしたいのです」
 「え、夕食の弁当?」
 「水曜以外、毎日」
 「あの」
 「嘉男をこき使ってやりますので渡してやって下さいね」

アサミコーチは一方的に話を終わらせては、カウンターに座った。
 「ん、美味しいっ。もう少し辛くても良いかな。次は冒険しよう」
と、嬉しそうに野菜ゴロゴロカレーを食べてくれている。


俺は、隣室のリビングで食べてる嘉男さんに、今の話をしに行った。
嘉男さんは、こう応じてくれる。
 「外注仕事になるから、書面での契約になる。と、アサミには言ってるんだ。
でも、そういう話が来るのは、まだ先の事だから」
と言われ、安心した。
だけど、これだけは聞いておきたいので嘉男に聞く。
 「で、アサミコーチに一緒に暮らしてるって事を話したの?」
 「あいつ煩いんだよ。だから話した。邪魔しに来るなよ、ってな。もしかして、来てるのか?」
 「カレーを食べにね」

それを聞いた嘉男は溜息を吐いて呟いてる。
ったく、あいつは…。



キッチンシンクに戻ると高瀬から声を掛けられる。
 「政行…」
 「セルフサービスなので、食器類は、こちらに持って来て下さいね」
 「ああ…」

高瀬が席に戻ると、利根川に声を掛けられる。
 「いい加減にしないと愛想も振り撒いてくれなくなるぞ」
 「黙れっ、この骨皮五右衛門っ」
 「まー、懐かしい呼び名だこと。ここの能無し坊ちゃんが呼び始めたんだよな」
 「そうだよ、利根川が難しくて、骨皮になったのが始まりだな」


高瀬は、素直に食べた食器をシンクに位置されている食器置き場に持ってきた。





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俺の気持ちはブレない 第二部(22)

ガチャガチャーンッ…!


え、何の音だろう。もしかして誰かが割った?
そう思うと、音がした方に駆け寄った。

 「あ、ごめんなさ…、お皿が落ちて…」
(落ちて?落としたのではないのか?)

 「ねえ、グラス足りないんだけど」
 「申し訳ございません。すぐ出します」
そう言って自動洗浄乾燥機からグラス立てを出す。
横からグラスを一つ取られ、思わず言っていた。
 「ちょっとっ、飲み口に指紋を付けないで」
グラス立てをお冷の下にセットして、お客様にこちらからどうぞ、と指し示す。

注文を受けて、それを皿に盛りつけていく。
支払いを済ませて、お客が座りたい席に座るのだけど、支払う前にテーブルに持って行こうとするのを見て、他の皿に盛り付けて支払いを済ませて貰う。
 「どうぞ、こちらの方をお召し上がりください」
 「はい」


 「ちょっと、勝手な事をしないでっ」
 「でも」
 「でも、じゃないっ!」と言って、その皿を奪い取り破棄する。

その数分間で、俺の怒りはマックスになっていた。
 「いい加減にしてよねっ!帰って、二度と来るなっ!」
 「でも…」
 「自分が何をしたか分かってるのか?お皿8枚とお椀を1セット割ったから、弁償してもらう。
合計1万円を持って来て」
 「あ、買ってきます」
 「買うのは俺。お前は金を持ってくるだけ」
 「お兄」
 「俺は一人っ子だ。弟なんて居ない。とっとと1万円を持ってくるんだな」
 「でも」
 「これ以上、俺を怒らせる気かっ」
 「ご、ごめんなさっ…」

そいつは財布から万札を1枚渡してくれるので、領収を切ってやる。
 「良いか、二度と来るなっ!」


その後、店先で塩を撒いたのは言うまでもない。


高瀬と利根川は、そんな政行を見て話している。
 「ふ…、今のあいつなら継がせても誰も文句は言わんと思うぞ」
 「止めてやれよ。あいつは継ぐ気は無いと言ってたぞ」
 「何時の話だ?」
 「2週間ほど前だ」
 「まあ、頑固な所は親子そっくりだな」
 「そこは否定しないけどな…」
その苦笑気味に言った高瀬に、利根川は痛い事を突いてきた。
 「何シケてんだよ。まさか告って振られたとか?」
 「何の事だ?」
 「お前はあいつにベタ惚れだったからな。誰が見ても、お前の片思いだと分かるぞ」

ぶっ…。
思わず噴いてしまった。
 「そんなに分かるか…?」
 「俺は、お前をずっと見てきてるからな。それに、こんな所まで食べに来るなんて、未練を引きずってる証拠だな」
 「煩いっ」

それでも、俺は政行を抱いたんだ。
政行は覚えてないみたいだけど。
政行、お前は俺に強請ってきたんだよ、「欲しい」って。
まあ、何年も放ったからしにしてたからな…。

高瀬は思い返していた。
頬を紅潮させて乱れていた政行は、俺に言ってきた。
 「よ…、し…、欲しい」と…。

政行、俺の政行。



チリリンッ♪

 「いらっしゃいませ。あ、あれ?」
 「花見弁当3個」
 「3個ですか?」
 「うん」
 「ごめんなさい、1個しか残ってません」
 「じゃあ、カレーライスを持ち帰りで」
 「メニューに無い事を言わないで下さい」
っとに、無理な事を言ってくるんだから。
そう思ってたら、嘉男さんは言ってくる。
 「俺は食べて行けば良いけど、アサミとサガミが腹空かしてるからな」
 「お握りなら出来るけど…」
 「それなら、二人に聞いとく。俺は食べるから」
 「賄いでも良いですか?」
良いよ、と嘉男さんは言いながら店から隣室へと移動している。
堂々と、表から隣室へ移動しないで欲しいな。


賄いを作り、隣室の方へ持って行く。
 「昼食ですよ」
 「サンキュ。あの二人は食べに出るって言ってた」
 「そう。あのね…」
キスされた。
 「っ……」


今朝は早出で仕事に行ったので昨夜も求めてこなかった。
それを思い出すと、身体の中が疼く。
 「ふ…」

暫らくすると、唇は離れていく。
 「政行、顔が真っ赤だ」
 「もう…、意地悪っ」

俺は嘉男さんに抱きしめられ、先程まで感じていたイライラ感が薄れていくのが分かる。
 「あのね」
 「何?」
 「博人先生とクリニック・ボスが食べに来てくれたの」
 「二人とも食いっぷりが良いからなあ」
 「で、明後日あっちに戻るって」
 「そうか…、会いたかったな」
 「恋人によろしく、って言われたので伝えとく」
 「ありがと。あの先生は飲み助だからな。また来てくれるかな」
 「クリニック・ボスは日本酒と濁酒しか呑まないみたいだしね」
 「ウィスキーも飲みそうな感じだけどな」
 「洋酒は苦手だって言われてた」
 「へえ、意外な…」



高瀬はシンクの中で聞き耳を立てていた。
政行、そいつの名前は何て言うんだ。
新田…、新田…。
新田、なんだろう…。





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俺の気持ちはブレない 第二部(21)

 『カレーの辛さで冒険しよう屋』がオープンして2週間。
出だしから売り上げは好調だ。
問題は、これからだな。


博人先生とクリニック・ボスが食べに来てくれた。
 「いらっしゃいませっ」
 
博人先生が応じてくれる。
 「私達は、明後日戻るから」
 「そうですか。戻られてもお元気で」
 「ありがとう」

そう用事が済んだのか、でも食べに来てくれて嬉しいな。
すると、大きな音と声が聞こえてきた。


バンッ!!
チリリンッ…。

 「お兄ちゃんっ、やっと見つけたっ!!」

お兄ちゃんって誰の事なんだろう?
そう思っていたら、その人は俺の目の前に立っている。
 「あ、あのお客様?」
 「お兄ちゃん、僕だよ、宗一。忘れたの?」
 「え…、宗一って、誰?」
 「お兄ちゃんの弟だよ」
 「俺の?」
うん、と頷いてくるが、俺は一人っ子だ。
なので、素直に言葉にする。
 
 「俺、一人っ子なので兄弟は居ないよ。誰かと間違えてるよ」
 「間違えてないっ。お兄ちゃん、約束してくれたでしょ」
 「お店の邪魔になるので」
 「僕の家が無いのはどうして?お母ちゃんは居なくても別に構わないけど、お兄ちゃんが居れば良いんだよ」
 「何の事を言ってるのか分からないんだけど…」
 「お兄ちゃん、パンケーキのお店を出すって言ってたよね?パンケーキでは無く、カレーのお店になってるじゃない」
 「あの?」


チリリンッ♪

ベルが鳴る。条件反射で口にしてしまう。
 「いらっしゃいませー」
 「花見弁当を6人分お願いしてた池谷です」
 「あ、はい。イケヤ様ですね。こちらになります」
 

 「お兄ちゃん、忙しそうだね。手伝ってあげるよ」
そう言うと、エプロンはどこ?と聞いてくる。
 「あ、あの、君…」

すると、違う声が割って入ってくる。
 「政行、そいつはあの女の子供だ」
 「え…」
顔を向けると、高瀬が3人の男と一緒に居た。
 「なんで…」
政行は高瀬の言葉を反芻していた。
(あの女の子供?あの女の…、子供…?)

やっと思い付いた。
 「ええっ…!あの女の子供?嘘っ、あの小さかった…」
その子は溜息を吐いて言ってくる。
 「何年も会ってないから直ぐには無理だろうなとは思ったけどね…。お兄ちゃん鈍い」
 
その子は、続けて言ってくる。
 「僕、大学3年生なんだ。春休みで家に帰るとここでは無く、自分の本当の父親の所に行けと言われたのだけど、意味が分からなかった。
お母ちゃんは再婚して妊娠してると言って、僕の事なんて相手にもしてくれなかった。
でも、僕はお兄ちゃんが居れば、それだけで良いの。
ねえ、お兄ちゃん。僕と一緒に居て」

政行はパニクッテいる。
 「あの…、俺、頭ん中、混乱してきた…」


高瀬はマイペースに注文してくる。
 「野菜ゴロゴロカレーを大盛りで」
 「たか…、大盛りですね」
高瀬に詳しい事を聞こうと思ったが、今は営業中なので話を諦めた政行に、他の3人も同様に注文してくる。
高瀬は、アドバイスしてくれる。
 「政行、そいつは桑田とは何の関係も無い。お前とは、全くの無関係の人間だ」
 「うん、それは分かってる」

高瀬の後ろに居た人が言ってくる。
 「能無し坊ちゃんとお会いするのは、随分と久しいが…。3年後のオリンピックに向けての練習はされてるのか?」
 「お宅は誰?」
 「…専務の秘書だ」
 「秘書に、そんな事を言う必要は無い」
 「ほう…、私を誰」

声が秘書の声を遮る。
 「御馳走様でした」
 「あ、ありが…、博人先生」
 「ん?」
 「その、今迄ありがとうございました」
 「いえいえ。これからは苦しみ悩んでいく期間が待ち受けてる。それをどのようにして切り抜けるかが、問題になってくるからね」
 「はい…」

クリニック・ボスが割って入ってくる。
 「良いかい?私は、自分の事を君に話せた時点で、一歩を踏み出せた。
君も、自分の事を話すと、一歩を踏み出せる。
自分が言いたい、伝えたい、分かって貰いたい。そういう気持ちになった時に話せば良い。
そこの厳つい秘書もどきに、今の時点で話す事では無い」

専務の秘書は、クリニック・ボスを睨み付けている。
 「誰が秘書もどきだと?」
 「違うか?私が思うに、あっちの2人が秘書で、君は専務だな。私なら、そう判断する」
 「何故、そう思うんだ?」
 「まずは、その態度と上から目線の喋り方。それに相手を卑下する言い方。
しかも、あっちの2人は新人と見て取れる。オタオタとしてるからな。一番先頭に居た眼鏡は秘書の先輩だな」
 「ふ…。あんたは誰だ?」
 「自分から先に名乗るもんだ」

クリニック・ボスと秘書もどき。
この二人の対決は見ものだ、と思っていたら高瀬の声が聞こえる。
 「そうですよ。その人は我が社の専務で、あっちの2人は、この春に入社してきた新人です」
その言葉に、政行は高瀬に聞いていた。
 「秘書もどきでなく、専務?」
 「そう、利根川が専務になったんだよ」
 「利根川…、トネガワって、あの骨皮五右衛門?」

ぷくくくっ…、と高瀬は笑い出す。
 「その呼び方を覚えてるのか…。そうだよ、その骨皮だよ」
骨皮と言われた専務は怒ってる。
 「高瀬、何を笑ってるんだっ」


クリニック・ボスと博人先生は店から出て行こうとしてるので、政行は駆け寄る。
 「あ、あのっ」
 
二人とも振り返ってくれたのが嬉しくて、政行は微笑んでいた。
 「あちらに戻っても、お元気で。また、日本に帰国した時は寄って下さいね。
色々とお世話になりました。本当に、ありがとうございました」
 
博人先生の声がする。
 「君なら大丈夫だよ。恋人に宜しく」
クリニック・ボスの声もする。
 「ドクストップ掛かって30年経つと、並大抵の事には動じなくなる。
自分の心に負けないで、強く自分を持つ事だな」
 「友のは、本当に言葉が難しいからな…」
 「分かったよ、子供相手に分かりやすく言えば良いんでしょ…」

クリニック・ボスは言い直してくれる。
 「泣きたい時は泣け。我慢しなくても良いんだ。
君は最初から一人では無い、側に居てくれる人が居る。
私と違うのは、その点だ。
その人に、自分の気持ちをぶつけるんだな。ぶつけることが出来ないのなら、気持ちが収まるまで泣くんだな。泣く事も出来ないのなら、誰かに愚痴れば良い。
時間だけが、唯一の薬だ」
連絡してくれれば出来る限り相談に乗るから。

 「はい。ありがとうございます」


本当に、この二人の言葉は俺の心に沁み込んでくる。
時間だけが唯一の薬。
そうかもしれない。
クリニック・ボス。
俺は、貴方の様に強くなりたい。


うん、俺は大丈夫だ。
俺の気持ちは、ブレない。



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俺の気持ちはブレない 第二部(20)

可愛い子というか、男性が真っ先にキッチンカウンターに駆け寄ってくる。
 「悟さん、セルフサービスですよ。自分でして下さいね」
その言葉に、昌平が声を掛ける。
 「優ちゃん、ここのおでんは良い味を出してるよ」
 「本当ですか?おでん大好きっ」
優ちゃんと呼ばれた可愛い男性は一串を皿に取り、口に含んだ。
 「こらっ。優介、行儀悪いよ」
 「ふふっ…。美味しい」

3人はカレーとおでんを注文して食べてくれている。
先程、悟さんと呼ばれた人がこんにゃくを食べながら、感想をポロッと口にしてくれる。
 「ん、このこんにゃく美味い」
 「こんにゃくって、味付かないでしょ?」
 「切り方によりけりだよ」
 「そうなの?」
 「よく見てご覧。包丁で無く、スプーンで切り取られてるのが分かる?」
 「え…、あ、本当だ」
 「こんにゃくは味が付かないのでは無く、付きにくい物なの。でも、スプーンや手で千切ると味は付くんだよ。どうしてだか分かる?」

昌平はウンザリ顔になってる。
 「やれやれ、久しぶりに悟のうんちくか…」

優介は悟に話し掛けてる。
 「でも、聞いた事あるよ」
 「包丁は繊維を綺麗にスパッと切ってくれるからね。それよりもスプーンや手で千切る方が味が染みやすいんだ。
こんにゃくに味を付けるのは千切り方と包丁の入れ具合だね」
 「友兄も、隠し包丁を入れてるしね」
 「こら、友兄ではなく、ボスと呼ぶもんだ。ったく、何千回言わせれば気が済むんだ…」

でも、優介はどこ吹く風の表情で無視してくれる。
 「でも、なんでこんにゃくをおでんの具に入れるの?」
 「優介は、そんな事も知らずに作ってるのか?」
 「え…、だって意味なんて無いでしょ?」

あのね…、と溜息を吐いて、悟は話す。
 「何事にも意味はあるんだよ。この、こんにゃくを例にするよ。
ノンカロリーの代名詞とも呼ばれている食べ物で、植物繊維を豊富に含み、身体の余分なカロリーを掃除してくれる。
ノンカロリーと言えば、寒天もそうだね。だけど、この二つは違う食材で、役目も違う。
それに、おでんとは高カロリーな食材を使用するのが殆どだ。
高カロリーな物を食べ続けていたら、昌平みたいなデブになる。だから、こんにゃくは必要なんだよ。カロリーを抑えてくれるからね」

その言葉にムカついた昌平は話に乗ってくる。
 「優ちゃん、分かりやすく通訳してあげよう」
 「はい、助かりますっ」
 「悟と優ちゃんみたいな関係の事を言うんだよ」
 「どういう意味ですか?」
 「喧嘩しながら、笑い合いながら、エッチな事をしながら」

ガチャンッ…。
 「し、失礼しました…」
危ない、3人の話を聞いていたら、手が滑ってしまった。


昌平は続けてる。
 「色んな出会いや出来事でミスをしても、この御つゆというエッセンスが、ジャガイモや肉や玉子やこんにゃくや大根を彩っていくんだ」
 「昌平、何を言ってるんだ。益々、分からない…」

だが、優介の顔は、瞳はキラキラと輝いてる。
 「なるほど。出会うべき仲間であり、一緒になる恋人なんですねっ」
 「そうだよ。一緒に居るけど、家族では無いんだ」
 「それなら、昌平さんと悟さんと俺達みたいな関係ですね」

その言葉に二人の声が重なる。
 「「 どういう意味? 」」
 「友に…、あー、ボスという御つゆで、エッセンスで繋がってる」


ぶわはははっ…。
昌平は笑い出す。
 「ボ、ボスを、ボスをエッセンスにするか……。あはははっ…」
悟は苦笑している。
 「ボスをエッセンスにして欲しくは無い。
だけど、優介。君が私達の所に来たのは、君の意思だ。君の言葉で、ボスは動いたんだよ。
忘れないで欲しい。ボスにとって君は大事な人だ」

優介は口を尖らせている。
 「そりゃ、言葉は悪いかもしれないけど…」
 「大丈夫だよ、拗ね坊さん。言いたい事は分かるから」
悟は、そんな優介の鼻の頭を小突いてる。

腹を抱えて笑い転げている昌平を見て、政行は自然と笑顔になっていた。


政行は、冷蔵庫から出来たばかりの物を持って行く。
 「あの…」
 「はい?」
 「これ、出来たばかりで試食して感想頂きたいのですが、良いでしょうか?」
 「嬉しいっ!頂きますっ」


優ちゃん、優介と呼ばれてる人は、パクッとスプーンを口に含むと、キラキラと瞳を輝かせると、一気に齧り付く様に食べてくれる。
もしかして、その人は一人で食べきるつもりなのか…。
俺、3人分のスプーンを渡したのだけど。


 「ちょ、ちょっと優介っ!お前ね、それ食べ過ぎっ」
 「まだ…」
その二人はヨーグルトプリンが入ってるボールの取り合いをしている。
 「何がまだだよ。ほら、今度は私」
 「えー、もうちょっと」
 「だめっ!」
自分の脇でしっかりと挟み込んだボールを誰にも取られないようにホールドして食べてる。
 「お、上手いっ」

 「ちょっと、そこのお二人さん。年寄りにも食べさせてやろうという気は」
 「ないねっ」
 「悟、お前はー…」
だが、優介の言葉はこれだ。
 「どこに年寄りが居るの?」
 「優ちゃんが、そんな事を言うなんて…。パースに行ったからなのか?そうなんだな。
優ちゃん、いや、優介。
お前はこのまま日本に居なさいっ!今一度、言葉の躾をし直してやるっ」
 
 「ボスの子供の相手をしてるからね。あの子も言うからな」
 「うん、あの子と居ると楽しいよ」




「こんにゃく」という一つの食材で、ここまで幅広い話が聞けるものなのか。
政行は、心の中が温まる思いを感じていた。
ところで、パースに居たの?
ああ、観光しなかったから分からないな…。


視線を感じる。
そっちに顔を向けると、まだ高瀬が居た。
高瀬は黙ったまま政行を見つめているので無視してやる。
もう、何も言う事は無い。




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俺の気持ちはブレない 第二部(19)

そして次の日。

18時過ぎると、高瀬が来た。
 「高瀬?なんで…」
 「何回か来たのだけどリフォーム中だったから。その内にオープン日が書かれて…。
昨日来たんだけど、多くて入れなかった」
 「昨日は73人も食べに来てくれたんだ」
 「最初は物珍しさもあるからな」
 「うん、そうだね。それに持ち帰りメニューも作ったんだ。だけど、今日は完売したんだ」


高瀬は真面目な顔をして言ってくる。
 「政行。俺の気持ちは変わらない」
 「何の事?」
 「俺は、お前が好きだ。一度、お前を抱いたが…。お前は『俺が欲しい』と言ってくれた。
あれから放っておいた結果となったが、俺は忘れてない。政行、俺は」
だが、遮ってやる。
 「俺は、好きな人が居る」
 「お前を10年も放っておいたのは謝るよ。だから浮気されても文句は言えない」
 「高瀬、何か誤解してない?」
 「してないよ」
 「いや、してるよ。俺は高瀬の事は何とも思ってないから」
 「嘘だ」
 「嘘では無い」
 「なら、どうして俺に抱かれた?」
 「抱かれた覚えは無い。俺には」
 
今度は、高瀬が遮ってくれる。
 「俺に抱かれ、お前は俺に言ったんだ。俺が欲しい、と」
 「だから、言った覚えは無いと言ってるんだ」
 「でも、あの時は」
 「煩いっ!人の話を聞けっ」

バンッ!
と、シンクを叩き高瀬を黙らせる。

 「大学を卒業して13年間、俺は嘉男さんを見てきた。高瀬では無い。
俺は、嘉男さんが好きなんだ。」
 「嘘だ…」
 「色んな事があった。でも、その度に俺は嘉男さんに側に居て欲しかった。
高瀬では無い、嘉男さんだけだっ」

高瀬は黙ったまま突っ立って帰ろうとしないので、政行は溜息を吐いて口を開く。
 「分かった。高瀬に、俺の気持ちを言う」

深呼吸をして政行は口を開いた。
 「俺は、高校生だった頃は高瀬が好きだった」
 「え…」
 「高瀬を目標に、理想にしていた。高瀬をお兄ちゃん呼びしなくなったのは、高瀬が好きだったからだ。でも、高瀬は違っていた。俺に言ってくるのはメダルの事だけ。
挙句の果てには見合いしたよね?あの現場を見てショックだった。
高瀬は、やっぱり俺の事を見てくれてないんだと…」
 「見合いって、1回しかしてないぞ」
 「俺には、その1回で十分なダメージだったんだ。
大学入って、高瀬の事を忘れようとして、アメリカやカナダに行っていた。会いたくなかったから。
4年生にもなると就職の事を考えないといけない時期で、それでもあの女にことごとく邪魔されたけど、それでも就職先は見つかった。お父ちゃんにしか知らせなかった。でも、お父ちゃんは誰にも言ってなかったみたいだね。高瀬も知らなかったみたいだし」
 「まさか、ボスは知っていたのか…。最初から?」
 「そうだよ。何処に住んで、何をしているのかもね」
 「ニューヨークで会ったのは…」
 「あれは偶然だよ」


あと、これも言っておかないとと思って、もう一度口を開く。
 「ねえ、高瀬。俺はドクターストップを掛けられている。もう二度と泳ぐ事も出来なければ、運動出来ない身体になったんだ。オリンピックだなんて、もう手の届かない世界になったんだ」
 「詳しい事を教えろ。俺は、この目で見た事しか信じないぞ」
 「あの時、高瀬も居たでしょ?それに、俺は好きでもない奴に身体を見せるつもりは無い」
 「政行」
 「これだけは言っておくよ。俺は、高瀬が好きだった。でも、それは叶わぬ片思いのまま、失恋した。目標と理想は高瀬だったけれど、今は違う…」
涙が出そうになるが、構わずきっぱりと言い切る。
 「俺は、博人先生みたいに温かくて大きい掌を持つ人間になって…、クリニック・ボスみたいにドクターストップ掛かっても自分を卑下する事の無い人間になりたい。そう思ってるんだ。
あの二人は、俺を一人の人間として見てくれてる」


口調を変えて政行は高瀬に言う。
 「ねえ、高瀬。こんにゃくは、どうしておでんの具に入れると思う?」
 「こんにゃく?」
 「うん。はい、一串サービスしてあげる。どうぞ」
こんにゃくを一串、皿に盛ると、高瀬に渡す。
高瀬は、こんにゃくを口に含んで食べていく。食べきったのを見計らい、政行は再び聞く。
 「分かる?こんにゃくの意味」
 「意味なんて無いと思うぞ」
 「なら、どうしておでんの具に入れるの?」
 「それを俺に聞く?」
 「うん」と頷き返事を待っている政行に、高瀬は一抹の不安を感じた。
 
 「昔から入ってたんだろ。それを今も受け継いでるだけだと思うぞ」
 「高瀬は、そんな風に思ってるのか」
 「それじゃ、政行はどうしてだと思うんだ?」

待ってました、と言わんばかりに政行は応じる。
 「こんにゃくはカロリーがないけど、食物繊維というのは多量に含まれてる。それは、便通をよくする物で、余分なカロリーを吸収して体外に排出してくれる。
たくさん食べれば良いという事では無い。それに、ダイエットする為に野菜しか食べないという事では身体のバランスが取れない。丁度良いという言葉があるように、さじ加減が必要なんだ。
食べ物に限らず、不必要な物はこの世には無いんだ。」
 
友明の言葉を、そっくりそのままパクっていた。


高瀬は憮然としたままだ。
 「…何が言いたいんだ」
 「客としてなら歓迎する。だけど、それ以外では来ないで欲しい」
 「どうして?」
 「さっきも言った様に、俺は好きな人が居る。その人と一緒に暮らしてるんだ」
 「なっ……」
 「俺は、お父ちゃんの会社を継ぐつもりはこれっぽっちも無い。
お父ちゃんは、帰って来いとも何とも言わなかった。だけど、俺は2ヶ月間、家に居たんだ。
でも、お父ちゃんとの会話は無かった。それは、お互いがお互いを必要としてなく、家族というものが機能してないという証拠だ。」
 「俺は、お前を必要としてる」
 「俺が高瀬を必要としていた時期は、既に通り過ぎた。もう過去の事だ」
 「まさゆ…」
 「高瀬、今迄ありがとう。俺はブレない。それに、ドクターストップ掛かった人間にしか、俺の気持ちは分からない」
 「政行、俺だってドクターストップ掛かった人間だっ」
 「でも、俺とは違うだろう?」


どのぐらいの時間、睨みあっていたのだろう。
電話が鳴る。
 「はい、いつもありがとうございます。『カレーの辛さで」
 
明るい声が遮ってくる。
 『は~い、昌平です。政行君、先日は御馳走様でした』
 「こちらこそ、ありがとうございました」
 『もう少しで、そっちに着くんだけど…。3人で行くので、リザーブよろしくねっ』
 「キッチン寄りのテーブル席で良いですか?」
 『うん、良いよ』
 「分かりました、お待ちしています」
 『よろしくね~』


政行はリザーブの札を置く。
昌平って誰だっけ…?



少し待つと、ドアベルが鳴る。
チリリンッ♪

 「いらっしゃいませ」
 「先程電話した者でーす」

その顔を見て、政行は思い出した。
 「あ、思い出した。クリニック・ボスと、おでんを食べてた人だ」
 「お、顔見て思い出してくれたんだ?嬉しいな」



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