BL風味の小説

BL風味のオリジナル小説です。
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俺の気持ちはブレない (2) ~心の叫び~

結局、名前を思い出せずに抱きしめられたまま寝ていた。
目を開けると、目の前には無造作にボタンが留められては見え隠れしている胸元。
ああ、夢では無かったんだ。
抱かれ心地も囁かれ心地も良い。
同年齢とは思えないほど整った顔立ち。
でも、寝顔は可愛いな。
襲ってみたくなる。
今迄は泳ぐことしか興味は無かった。
人との付き合いも、あの5人が居れば十分だった。
ましてや女との付き合い、恋愛なんてまるっきり興味は無い。

そういえば、あのスポーツジムも男限定だよな。
女性限定のスポーツジムがあるから男限定があっても良いのではと思い創った、と人事担当者が話してくれたのを思い出す。

俺、子供相手だけしか教えてないのだけど、成人相手だと教え方とかは違うのかな。
やっぱり、その……。
そんな目付きで、そんな思いで泳ぎに来る人は多いのかな。
なんか、今になって不安になってきた。
あ、でも自分はコーチだという自覚を持って接していれば良いのかな。
分かんないけど、他人を寄せ付けないオーラを出してれば良いんだろうな。

しばらく悶々と考えていたら声が聞こえてくる。
 「何を考え込んでいるんだ?」
おい、聞いてるか?
俺の身体を色々と弄ってくる、その声の持ち主に聞いていた。
 「何をどうやったらこんなになるの?」
 「何がだ?」
 「この肉付きに腹割れ」
 「政行も付いてるし割れてるぞ」
 「いや、でも…羨ましい……」
 「朝から抱かれたいか…」
思わず、その隆起した筋肉に触れていた。
ビクッ、ビクビクッ…。
身体が揺れ動いてるのを見てると、水泳だけでなくジムとの併用か、と思い当たる。

俺はマシンジムより水泳を希望したからな。
4月からは、この人の経営するスポーツジムで働く。
 「俺ね、他人からどう見られているのか分からないんだ。
子供相手なら教え方とかは分かるけど、成人相手だと接し方が分からない。もしかしたら、どさくさに紛れて身体を触られるのか、それとも襲われるのか。
今になって、そんな気持ちが出てきてる。俺に出来るのかどうか…。
何かミスしたらクビにされるのかな、とか思ったり……」
 「大丈夫だよ」
 「本当に?」
 「ああ、うちのスポーツジムに通ってくる人達は大丈夫だ。心配なのはスタッフの方だ。
1人居るんだよね、そんな奴が」
 「所長?」
 「バカッ、俺はお前限定なの。だけど、そいつはジムの方だから接触は無いと思う。
それに研修が有るんだ。スタッフ同士での指導方法やコミュニケーション等の研修もある。
子供とか成人とかは関係ない。
ただ、これだけは忘れて欲しくない。
スポーツジムというのは、通われてる客がいての仕事だ。
ミスをしないかどうかではなく、言葉使いには気を付けろ。
まさか、そんな事で考え込んでいたのか…」
 「そんな事で、と言われるけど…。こっちは初めての事で心配なんだ」
 「緊張感があるのは良い事だ。だが張り過ぎるのも緩過ぎるのも駄目だ。適度な緊張感を保持していれば良い。まあ、それは仕事しながら身に付けていくものだ」
今は俺だけ見ていれば良いんだ…。
そう言いながら、俺の胸に唇を触れてくる。
 「っ……」
 「まさ…」
 「ぁ……、だ、だめっ、今は駄目っ」
 「何で?」
 「手伝ってくれるんでしょ?俺一人だと中々片付かない」
 「それもそうだな。片付けを先にしてエッチタイムだな」
 「違うよ」
 「何を即答してくれるんだ」
 「先にご飯だよ。それで片付けて、エッチタイ……」
そう言うと、所長は微笑んでは返してくる。
 「それもそうだな、腹が減っては何も出来ないよな」


先ずは朝飯だ。
と思うと同時に、食材が無い事に気が付きスーパーで買ってくると言って俺は買いに行った。
朝食は簡単な物にした。
トーストした食パンにレタスを置いて目玉焼きを乗せ、ケチャップを掛けて食べた。


徐に勉強部屋から片付けだした。
やはり一人より二人の方が早い。
本棚と机は設置してくれてるので、その本棚の隣には多目的棚6個を横長に2段にしてクローゼット寄りの壁に付ける。その上の壁には大判の世界地図を貼りつける。
ヒューッと口笛が聞こえるので振り向くと、所長だ。
 「中々の大判だな」
 「でしょ。これはね、ダーツの的にもしてるの」
 「ダーツ?」
 「そう、これ」と言って俺はダーツの弓矢を見せては的に向かって一本を放つ。
放たれた箇所は日本だ。
 「へえ、良い腕前だな」
そう言われると嬉しくなってくる。
ふと見ると、所長も弓矢を構えようとしているのが目に映る。
 「先に片付けてから遊びましょう」

次に、隣のクローゼットルームに取り掛かる。
カーペットは敷いてくれてるので、後はパイプを繋ぎあわせて衣類のハンガーを掛けていく。
藍物、夏物、冬物に分けて。
そして多目的棚2個を縦置きにしてアクセサリー類を置いていく。
ここでハタと気が付いた。
鏡が無い。
洗面所に行けば良いのだが、姿見は欲しいな。
なので買い出しリストを作り、書いていく。
姿見鏡。
そう書くと、他にも書き加えられる。
照明器具、カーテン。
それらは持って来た覚えがあるので、階段を下りてキッチンの後ろ側に段ボールが山積みされている中から見つけ出す。それを渡すと、足りない照明器具をリストに書いていく。



2階に上がると、背が高いのだろう。
椅子を使わず背伸びもしてない、余裕に腕を曲げてカーテンをカーテンレールに取り付けている男がいる。
俺も平均的だと思うのだが、その男の後ろにくっ付いて自分の手を頭の上に乗せ、相手の後頭部の真ん中より下あたりに自分の手が位置する。  
何かを感じたのだろう、振り向いた相手は怪訝そうな表情をしている。
 「何してるんだ?」
 「う………」
 「その手は何だ?」
 「俺180なんだけど…、この位置って………」
言いたい事が分かったのだろう。
ふっと鼻で笑われ、頭をポンポンと叩かれる。
 「政行は可愛いねえ。俺は194だよ。ついでに言うと、明日で23だ。政行より一つ年上だよ」


ぐっ…。

言葉に詰まってしまった。
日本人で190越えの奴が居るとは…。
 「せ、せめて8センチほど譲って欲しいっ」

そいつは笑いながら言ってくる。
 「ははっ…。政行は俺に抱かれてば良いんだよ。」
こんな風にね、と。

俺は、すっぽりとその腕と胸に抱きしめられてしまった。
く、悔しいー。

その後ランチを食べに出かけては、その足で買い物リストを見ながら買い物をしていく。
この近辺にはスイーツの店が無い事に気が付いた。
これって、パンケーキの店よりもスイーツ店の方が良いかもしれない?











☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。
そして、翌日。
政行は、嘉男の身長の高さを知り、思わず放った心からの言葉。
 「せめて8㎝欲しい」


あの、言って良いですか?
私も、せめて8㎝欲しい~!!




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最新作! R18!! 俺の気持ちはブレない (1) ~18歳未満&抵抗のある方はご遠慮ください~

※いきなりのRです。18歳未満&抵抗のある方はスルーして下さい※



大学も無事に卒業して、新しい環境に身を置くことになる。
年末年始のあの時、スポーツジムの所長と一緒に不動産屋で契約したのは2階の1DKや3階の1LDKではなく、1階にある二階建ての3DKだ。
4階の5DKだなんて冗談じゃない。
ちなみにスポーツジムの所長は最上階の6階で5LDKだ。

不動産屋の社長さんはアナログ派の人間で、間取図が手書きになっている。
だからと言って店が寂れてるわけでもない。
契約する時に、近い将来、お店を構えたいと言っての契約をした。
住む所も確保した俺は、あの日の夜、また抱かれた。
でも、抱かれるのに抵抗は無かった。
3DK



それから2ヶ月と3週間経った現在。
俺はやっと引っ越しが完了した。
お父ちゃんにしか言ってないが、お父ちゃんはあの女には言ってないみたいだ。邪魔されなかったからだ。
それに3月下旬から4月上旬に掛けての約2週間は里帰りと称して子供を連れて実家へ里帰りするのが毎年の恒例だ。その恒例は、今年もあった。
あの女と子供が家に居ないから家政婦も休みを貰えてるし、誰にも会わなくて済むからだ。
引っ越しをするのに、ぎゃんぎゃん言われる事無く出来たのが嬉しかった。

引っ越すまでに、間取り図を見ながら部屋割りを考えてた。
上の二部屋はウォーキングクローゼットと勉強部屋にしよう。
下は寝室にして、DKは店舗用にしようかな。
等と…。

カウンターテーブルとベッドと机は新調したし、ウォーキングクローゼット用にパイプを買う。
あ、そうそう。
各部屋にはカーペットを敷くので、それも買ってはエアコンも新調する。
そういった家具やカーペットにエアコンは業者の人がやってくれる。
引っ越しの運送の人は、俺の部屋から持ってきた家電や家具を置いてくれる。


彼等が帰った後、俺が真っ先にした事は……。
1階と2階への荷物分けに、クローゼットのパイプの組み立て。
玄関は2階でマンションの廊下へと続いてるけど…、たぶん使わないだろう。
なにしろ1階のDKには勝手口が付いてるので、そこからの出入りになるだろうな。
オープンキッチンになっており、対面式。
もう、これは見るからに「お店をやれ!」と言ってる様なものだ。
でも、お店をするのは今すぐでは無い。
俺が店舗用に考えてる、と言った時、上司になるスポーツジムの所長兼マンションのオーナーが複雑そうな表情をしていたのを覚えてる。


段ボールは部屋に割り入れたが………。
その他の荷解きや勉強部屋に置く本棚や収納棚は手付かずだ。
今は、ただ引っ越しの手続きが無事に終わったので一安心してベッドに寝そべっている。

このまま寝ても良い位だ。
あ、夕食を忘れようとしていた。
近くには本屋もスーパーもあるし、テイクアウト出来る店が近くに数件有る事を思い出した。
よし、今夜は寿司だ!

1人で乾杯していた。
でも寂しくはない。
あの家に居た方がもっと寂しかったからだ。

ふふ…。
あそこのスポーツジムは水曜日が定休日だからな。
週に二日は休みだし、もう一日は何曜日に休みを取ろうかな。
 「14時半から22時半までだから、夕食は仕事場で食べる事になりますからね」と、人事担当者が言ってくれたのを思い出す。
弁当作って持って行っても良いな。
まあ、取り敢えず新しい環境に慣れるまでは遅起きが出来る。
万歳!!


さて、食べて風呂にも入ったし、後は寝るだけだ。
大理石の風呂で自分家となんら変わり映えの無い風呂だけど、それでも気持ち的には違う。
それに、疲れたせいか眠たい。
数日後の金曜日からは仕事だから、寝れる時は寝だめしておこう。




何かを感じる………。
 「っ…、ん……」

なに、何なの?
 「ぅ………」

その何かが何なのかを知る為に目を開ける。
 「っ!や、やめ……」
 「ん?ああ、起きたか…」
 「ん、ん、んん...……」
 「ほら逃げるな。まあ二ヵ月ぶりだからな…」

俺の身体の中に入り込んでは我が物顔で動き回ってくれるモノ。
あれ以来なんだよね。
だから2ヶ月3週間ぶりという事になる。
 「ふ、ふ・・、ふ……」
 「まさ……、会いたかった……」

動き回っては突きまくってくれる。
その動きは激しい。
 「あ…、あ……」

そいつは俺の身体を舐めてはしゃぶってくる。
 「くぅ……、ぁ……、ん・・で……」
 「まさ………」
 「い・イク…」
 「まだだ」
 「ア……」

もう待てずにイってしまった。
 「っ…!アアアッ………」

そいつは直ぐに俺の中に放つと、俺の上に覆い被さって抱きしめてくる。
その人物は俺の耳元で囁く様に言ってくる。
 「明日は休みだから、ゆっくり抱いてやる」
だが、俺は気になる事の方を口にする。
 「な、なんで・・なんで居るんだよ?鍵閉めたはず…」
 「忘れたか?俺は、ここのオーナーだよ」
公私混同かよ…。
思ってた事が口に出てしまった。
 「来る日が決まったら連絡しろと言った筈だが…。そろそろ来るだろうなとは思っていたよ」
 「連絡先なんて」
 「知らないとは言わさない」

はい、iPhoneからは外しました。
なので、勤務先の番号しか載せてないのだ。

ああ、ケツが痛い……。
それでも快感だったのは黙っておこう。

 「まさ…」
 「眠い…」
 「引っ越しの片付け終わってないだろう」
 「すぐには終わりません」
 「手伝ってやる」
 「ありがとう、よろしく」

そうか、上の階段から入って来て荷解きがされてない二部屋を見たんだな。一人だと中々片付かないが二人だと片付きそうだ。そう思うと言っていた。
 「玄関入ってすぐのミニソファは自分の部屋から持ってきたんだ」
 「うん、見たよ。違和感なく一部屋出来てる」
 「あのカーペットは特注で作って貰ったから、ここに持ってこようと思ってたんだ」
 「それに写真が」
 「俺のお母ちゃん。今のでは無いよ、俺の本当の母親。あ、そうだ。勉強部屋の方は全然してないんだ。手伝ってくれると嬉しい」
 「手伝ってやる」
 「良かった。一人だと1年位かかりそうで不安だったんだ」

ふっと微笑んだのか、とても柔かい口調になった。
 「頼られるのは嬉しいな」
 「所長、よろしく」
頬を抓られたせいか、目が覚めた。
 「ってぇー………」
 「それは仕事での呼び方だ。こうやってプライベートでは名前で呼んで」
 「名前?」
 「忘れた?」
 「…かもしれない」
 「なら、思い出すまでこのままだな」
 「えっ………」
 「俺としてはこのままでも良いけど、なんか複雑だな……」


え、名前?
所長の名前って何だっけ?
直ぐ思い浮かんだ言葉を言ってやった。
 「お、重いっ」









☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。
そして、初っ端からのR18!です。
18歳未満&抵抗のある方はご遠慮ください。

政行は引っ越しを終えて、ぐっすりんこと就寝中。
その政行に、スポーツジムの所長である嘉男は夜這いを掛けに来る。


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俺の気持ちはブレない ~登場人物~

登場人物


新田嘉男(にった よしお)
23歳の社会人、株式会社『MEN'S スポーツジム』の社長であり日本本店の所長(ボス)。
東京都内にあるマンションと、ニューヨークにある『MEN'S スポーツジム』の建物のオーナーでもある。
父親は新田敏夫、東響大学経済学部の卒業生。


桑田政行(くわた まさゆき)
この3月に大学を卒業した22歳の新社会人。
スポーツジムに正社員として水泳コーチになる。
父親は桑田耕平、東響大学経済学部の卒業生。


清水朝巳(しみず あさみ)
スポーツジムの人事担当者兼水泳コーチの25歳。
Wワーク先は新聞屋の朝刊配り。


佐賀美耕司(さがみ こうじ)
政行の高校時代の後輩で、一学年下。
アルバイトでスポーツジムの水泳コーチをしている。


宮田輝(みやた ひかる)
スポーツジムの事務、経理兼マシンジムのコーチをしている25歳。
Wワーク先は自営で情報屋をしてる。
父親は宮田敦、東響大学経済学部の卒業生。


志水雄吾(しみず ゆうご)
スポーツジムでマシンジムのコーチをしている25歳。
Wワーク先は清水朝巳の兄が経営しているピザ屋。
ある事で政行の存在を知って、狙いを付ける。


鍬田衛(くわた まもる)
嘉男と同じ大学を卒業した後、朝巳と雄吾を含めた4人で『MEN'Sスポーツジム』を創立し、嘉男と朝巳と雄吾は日本の本店だが、衛はニューヨーク支所の所長(ボス)に。
嘉男大好きな23歳。
毎年7月下旬から8月に掛けて2週間は嘉男が来るので、それを唯一の楽しみにしている。


ボブ
衛にぞっこんなニューヨーカーであり、衛の為ならという思いで色々と手を染めてる。
『MEN'Sスポーツジム』ニューヨーク支所のコーチでもある。


デイブ・クローク(アメリカが誇る随一のスイマー)
クリス(カナダの王家の人間であり、カナダが誇る随一のスイマー)
ホーキンス(フランスが誇る随一のスイマー)
政行とは共に世界を目標に1位を目指している仲の良いスイマー達であり、好敵手でもある。


高瀬義昭(たかせ よしあき)
政行の父親である桑田CEOの第一秘書。
学生時代、ある事故で第一線から引いたが、それを機に政行に泳ぐ事を師事していた。
政行にとっては、師というより兄として慕っていた人物である。


松井弘毅(まつい こうき)
松井総帥の一人息子だが、ニューヨークで双子の弟が生まれて長男になる。
今回は夏休みを利用して、ニューヨークへ弟二人の顔では無く、両親の顔を見に来た。
父親は松井孝之、東響大学経済学部の卒業生。


元宗優(もとむね すぐる)
カナダで暮らしてるニート君。
父親は元宗裕二、東響大学経済学部の卒業生。


西條健志(さいじょう たけし)
カナダでフリードクターしてる日本人。




新作!! 俺の気持ちはブレない

年始年末のSSに登場しました、新田嘉男と桑田政行がメインの小説です。
参照⇒出会いは行きずり


~あらすじ~
年も押し迫った年末の暮れに会った人物、新田嘉男がボスをしている勤め先に就職が決まった桑田政行。
住む所も決まり、引っ越しも終えた。

政行は自分から言わなくても、その勤め先である『MEN'S スポーツジム』には、政行の事を知ってる人が数人ほどいた。
それは、政行は桑田耕平の息子だという事。
だが、政行は『水泳バカ』と呼ばれるほどの、オリンピック金メダル取得者としてのアスリートだという事は知らない。
両方ともを知ってるのは、桑田家の執事を含め、たったの数人だけ。
所長である嘉男も、政行がアスリートだとは知らなかったのだ。

そして、政行はスランプから脱して、再度アスリートの道を歩く。
自分の夢を叶えながら…。

登場人物
1(R18)10(R18)11(R18)12(R)13(R18)1415(R)
16171819(R)202122(R)2324(R)25(R)
262728(R)29303132(R)33343536(R)37(R)38(R)39404142(R)434445(最終話)




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桜前線に乗って、花見日本一周旅行 (3)~最終話~

案の定、博人さんは寛いでいる。
そりゃ、ここは屋敷が広く使用人も居れば上げ膳据え膳だからな。
そういう私も、この1週間はそれだったのだがら、文句は言えない…。

 「へえ、長崎に行ってたのか」
 「父の実家は長崎なんです」
 「そうか、それで長崎なんだね」
 「祖母の家にも寄ったのですが、今では違う人が住んでました」
 「すでに他界されてるの?」
 「生きてたら……、150歳位かな…」
 「あ、そういう年齢の方なんだね…」

友明は博人に声を掛けた。
 「博人先生、マンションにはいつ戻って来られるのですか?」
 
博人さんではなく、学長が先に応じてくる。
 「頼むから、博人を連れて帰って貰えないかな?」
 「どうされたのですか?」
 「この1週間、私に色んな事を教えたがってね…。歴史とかロシア語とか…。
挙句の果てには、理解度を知る為とか言ってテスト用紙まで用意してるんだ」

博人さんが、その言葉に割って入ってくる。
 「頭を使わないと禿げるぞ」
 「余計なお世話だっ」

そのやり取りで友明は納得した。
 「なるほど、だからずっとこちらに居られるのですね」
 「明日にはマンションに戻るよ」
 「分かりました。しっかり師事してあげて下さいね」
友明のその言葉に博人は嬉しそうに即答してきた。
 「うん、任せて」
だが、学長は焦っている。
 「えっ…!せ、せめて、食事を一緒に食べないか?」
 「私が一緒でも良いのですか?」
 「勿論だよ」
 「では、喜んで頂きます」


昼食だけでなく夕食も御馳走になった友明は、博人の様子を見て納得した。
博人が学長の部屋で一緒に寝起きしているから、余計に心労させてるのでは、と。
勿論、博人も知っていた。
だが、これは和田からの命ではなく、お願いだから。
それだからこそ、嬉しくて自分の識っている事を諒一に伝えたく、教えてるのだ。

友明は、そんな博人に声を掛ける。
 「博人さん」
そのニュアンスに何かを感づいたのだろう。博人は友明に応じる。
 「明日まで目を瞑ってて」
 「いーえ、夜はせめて違う部屋で寝て下さい」

学長が、自分を呼んでる声が聞こえてくる。
 「ボス、ボス」
 「何ですか?今は博人先生に」
 「いつもの部屋を用意したから使ってくれ」
 「ありがとうございます」


友明は博人を引きずり、学生時代に使わせてくれてた部屋へ連れて行く。
 「友、私は」
 「博人さん、私は1週間東京を離れてた」
 「長崎だろ。ったく事後承諾な奴だよな」
 「一人で行ってた」
 「弟と一緒では無かったのか?」
 「長崎に行き、そこから広島、大阪、京都、名古屋に泊まってたんだ」
 「はあっ?」
 「初めての一人旅だったんだ。博人さんと一緒だともっと楽しかっただろうな、と」
 「それなら、連絡してこい」
 「そうだね、御免なさい。でね、土産話もしたいから昨夜は待ってたんだ。
でも帰って来なくて…。今朝になって、学長の所かと思い当たって来たんだ。
博人さん、ただいまー」
そう言って、友明は博人に抱き付いた。

溜息を吐いたが、自分の欲してる温もりを感じて博人は安心している。
この温もりが欲しくて手離したくなくて博人は抱きしめ、友明の頭を撫でる。
友明は、その優しく触ってくる掌に目を瞑って身を任せている。
 「怪我はしなかったか?」
 「うん」
 「お帰り…」
 「ただいま」



いくら待っても、博人は来ない。
もしかして、成功か。成功したんだな。
ボス、協力してくれてありがとう。
 「やった…」
諒一は、思わずガッツポーズしていた。
少し人恋しい気がするが、この1週間ずっと博人がくっ付いていたんだ。
諒一はベッドに横たわり、博人の事を思っていた。
博人、私はお前が幸せなら応援するよ。矜持もそうだったから、私には抵抗というのは無い。
驚いたけど、相手がボスで良かったよ。
この事をマルクが知ったら青筋立てて怒鳴るだろうが、もう死んだしね。
それに、今はお爺様と結託して、ある事を進めている。博人には、まだ知られたくない。
楽しみにしててくれ。

 「あー…。久々に自由だ」

ベッドの上をゴロゴロとして一人で寝れるという感じを味わっていた。



その頃、博人は友明のベッドに潜り込んで、土産話を聞いていた。
スマホで撮った写真を見せながら話してくる。
 「でね、これは福山なんだ。」
 「これは何処?」
 「広島県の福山市の先っぽになるのかな。鞆の浦という所。この日は、新幹線で行って、福山駅近くのホテルに宿泊先を決めてから初日は街中を散策したんだ。翌日は、尾道市に行って、そこから自転車をレンタルして、しまなみ海道を走って、瀬戸内海を渡ったんだ。最終地点の四国、愛媛県の今治市に着いて、暫らく呆けっとしていた。
昼飯を今治市で食べたのだけど、量が多くて値段も安かったし美味しかった。
夕方18時には自転車を返さないといけないから、ぎりぎりまでゆっくりしていたんだ。
その日は疲れもあってぐっすりと眠れた。
で、次はこれね。」
 「お、グリコマークだ。大阪と言えば、道頓堀とグリコだな」 
 「でしょ。次は、これ」
 「清水寺だ」
 「正解!駅から市内観光バスがあって、その1本に乗って行ったんだ。
一人旅だったけど、こうやって知らない人達と一緒に行くのは、新鮮だったよ。で、次はこれ」
 「しゃちほこ、名古屋か」
 「うん、食べ物も美味しかったし、名古屋城を登ってみたんだ」
 「眺め良かっただろ?」
 「行った事あるの?」
 「車でね」
 「へー、あ、そっか。免許持ってるんだよね」
 「ああ」
 「私は免許持ってないからな。乗れるのは自転車だけ」
 「事故る元になるからな、免許取れとは言わないよ」
 「うん、取りたくないという気がある」

博人は微笑んでる。
 「もう一人で勝手に旅なんてするなよ」
 「博人さんは楽しかった?」
 「ああ、諒一は弄りがいがあってね」
 「今頃はのんびり感で幸せを感じてるでしょうね」
 「そうかもな」


博人は友明を抱きしめ、1週間ぶりに友明の温もりを感じている。
この温もりがあれば良い。
この息遣いがあれば、生きてるという温かさに気持ちが和む。

ふわぁ…、と友明は欠伸をしている。
その友明は完全に眠りに入る前に、博人に言う。
 「今度は、東日本を、二人旅したいな…」

その言葉を最後に、こてんと寝てしまった。

博人は、友明を抱きしめたまま呟く。
 「残り二日で東日本は無理だな。せめて五日間は欲しい…」


だが、友明と二人旅をするのも悪くないと思い立ち、自分なりに計画を練る。



西日本から桜は咲き、散っていく。
でも、思いは散らない。
この桜前線に乗せて、今度は東へ、東日本へ。
博人と友明を乗せた列車は、二人を乗せて東へ、北へと向かう。
秋田、金沢、青森。
そして新幹線を利用しての北海道行き。札幌と釧路に宿泊して、パースから乗ってきたヘリはドイツのジェットの格納庫に入れられ、そのジェットが釧路空港へ迎えに来る。

北海道の桜は開花されていて、とても綺麗だった。
釧路空港まではユウマが車で送ってくれた。
 「今度はサプライズ無しでよろしく」
 「流石に、北海道はでっかいな。お邪魔しました。皆さんにありがとうと伝えて」
 「ああ、今度はゆっくり北海道案内してやる」
 「その時はよろしく」


博人は、北海道の地を車で走らせたのが非常に嬉しかったみたいだ。
帰りのジェットで和田先生にも教えていたぐらいだ。
 「やっぱり、日本では北海道の道路が一番運転しやすいな」
 「本当に嬉しそうに運転してたのでしょうね」
 「ま、一番はドイツのアウトバーンだな。もし、日本で生活するなら北海道だな」
 「年寄りは運転しないようにしましょう」
 「他人の事言えるのか、このスピード狂の年寄りが」
 「ご自分も、スピード狂でしょ…」

この二人のやり取りを、周りの皆は仄々とした気分で聞いていた。


その釧路から、パースへと戻るのだ。
だが、友明は、もう一ヶ所付け足してくる。
 「沖縄の桜はどうだろう…」
 「さすがに散ってるだろ」
今度は和田が割って入る。
 「沖縄の海に浸かってみたいですね」
 「この時期は泳げないだろ」
だが、友明の、この言葉でジェットは沖縄に寄った。
 「チャンプルーが食べたい」
 「沖縄そばやタコライスも良いな」


博人は、1週間掛けて東日本と北海道を二人旅して満喫した。
友明は、2週間掛けて日本を制覇して、こちらも満喫している。




二人は、日本一周花見旅行を楽しんだのでした。





















~ Fin ~



桜前線に乗って、花見日本一周旅行 (2)

翌日。
龍三と和田は、諒一の屋敷へ向かった。
出てきたのは執事の源蔵だ。
 「龍三様、和田様、いらっしゃいませ」
 「諒一様は?」
 「今朝は、まだ食事を召し上がられてません」
 「起こしに行っても良いですか?」
 「よろしくお願いします」


コンコン…。
ノックをするが応答がない。
二人は顔を見合わせ頷く。

静かに部屋に入りベッドに近寄ると…、溜息を吐いてしまった。

先に和田が声を掛ける。
 「おはようございます、お坊ちゃま方。朝の勉強タイムですよ」

和田がカーテンを開け、龍三は布団を剥ぎ取る。
 「さあ、飲み助坊ちゃま。眠気覚ましに手合わせしましょうね」

だが、寝ている二人は何も動じない。
覗き込んでると、昔と変わらないあどけない表情で寝ている。
あの頃は、今の二言で6人が目を覚まし起きてきていたが、諒一と博人だけは中々起きてこなかったものだ。こんな年齢になっても、この二人は変わらない。
幸せそうに寝ているのを起こすのは可哀相だが、それでも起きて貰いますよ。

龍三は写メっている。
 「よし、これでOK!で、それは何だ?」
 「とっておきの目覚まし」
和田はそう応えると、二人の顔に水をぶち撒く。

ザバッ…。

先に博人が目をうっすらと開け、さむ…と呟き、布団を被る仕草をする。
気が付いたのだろう、上掛けが無い事に。腕を伸ばして上掛け布団を探している。だが、その内に両目ともパッチリと目が開き、ベッドの上を探し回っている。
そろそろかな、と思い龍三は博人に声を掛ける。
 「お探しの物はこれですか?」

声を掛けられ、そちらを向いた博人は頷く。
 「そう、それ。え…、和田?なんで、そんなものを持って」
 「中身は入ってませんよ。そう、博人様だけなんですね。それなら、もう一杯必要ですね」
と和田は言って、部屋に付いてるミニカウンターで水を入れてる。
それを見て思い当たったのか、博人は呟く。
 「まさか…」
素直にベッドから降りると、龍三から声を掛けられた。
 「おや、昔は諒一様を起こしてあげてたのに」
 「あの頃とは違う。お互い、大人だからな」
 
ぷぷっ…。
あははっ…。

和田と龍三が二人揃って笑い出した。
 「ああ、手元が狂った…」
そう言って、和田はバケツの中身を諒一に掛けた。
今度は、狙いは諒一だけだ。

ザバッ!!


 「ったく…、博人、何をし」

「何をしてくれるんだ?」と言いたかった諒一は、バケツを手にしてる和田と、上掛けを持っている龍三と、着替えてる博人を見て、思い当たった。
溜息付いて、諒一はボヤく。
 「ったく、もっと優しく起こしてくれないかな…」
 「やっと目が覚めましたね。それではラジオ体操を先にしますよ」と、龍三が。
 「は、ラジオ体操?」
キョトンとなった諒一に、今度は和田が言ってくる。
 「体操が終わると、家系史の勉強ですからね」
 「え?それって、私に言ってる?」
 「勿論です」

足音を忍ばせてドアに近付いてる博人に、和田は諒一に向かいながらの体勢で声を掛ける。
 「でも、実際に師事するのは博人様です」
その言葉に、博人の足が止まり振り向く。
 「え、私が?」
 「そうです。どの程度、理解されてるのか知りたいので」
 「ん、やる」
即答だった。
その言葉に驚いたのは、3人共だった。
 「博人の裏切り者っ!1対3だと逃げれないではないかっ」と、諒一が喚く。
 「思ってもみなかった言葉だな…」と、龍三が。
 「まさか、素直に言われるとは…」と、和田が。
その言葉に、博人は即答した。
 「だって、誰かに何かを教えると言うのはしてみたかったんだ」


博人があちら側に付いたので、諒一は逃げる事を諦め、家系史を再度叩き込まれる事になった。
一体、何十年ぶりに家系史を学ぶことだろう。
今度は博人に師事されてるし…。

その後、4人で昼食を共に取り、運よく電話が入った。
急遽、出かける事になった。
 「悪いな」
そう言って、諒一は逃れた気分になった。
だが、博人はこう返してきた。
 「さっきまでので、テスト作っておくからね」
 「いらんっ」


諒一が出掛け、和田と龍三も帰った後、博人は部屋でテスト用紙を作り出した。
友、何をしているのかな。
会いたい、触れたい、友の温もりが良い…。



その頃、友明は長崎に居た。
両親と妻の墓参りだ。
義弟の家には一泊の予定だったので、起きたら午前中の内に長崎に飛んだのだ。
あの時より、時間を掛けて拝んだ。

今回は一人なので気が楽だ。
墓参りをした後、祖母宅へ足を向ける。
この家しか知らないのだ。
今は別の人間が住んでるみたいだ。新しい表札になっている。
福山では無く、「中山」さんだ。
その家を見て、友明は呟く。
 「お婆ちゃん…。私の親戚は、お婆ちゃんだけだ…」

それだけでも、中学生だった私は嬉しかったものだ。


JR駅に向かい当日の宿泊先を決め、そこで泊まる。
一人旅だなんて、初めてだ。
少しだが、ウキウキ気分になってる。
長崎に一泊、広島の福山で二泊した。
お母ちゃんが福山出身だと言ってたのを覚えてたからだ。
大都会ではなく、地方都市だ。
それでも、自分と同じ福山という名なので、何かしら嬉しい気持ちがある。
それに、なにより海の幸が豊富で安くて美味いっ。

そして、大阪に一泊。
道頓堀に行って、グリコマークを見て自取りする。
さすが、西の玄関口と言われる場所だな。

その後、京都に一泊、名古屋で一泊。

1週間を一人で過ごし、東京に戻ってきた。
この1週間で感じた事は数点。
日本は治安が良過ぎる。
それに清潔だし、そこまでしなくても良いだろという気持ちだ。
物価も高ければ安い所もある。
これだと一番困るのは転勤族の人達だな。
いつかは日本に帰国して生活する日々が来るだろう。だけど、こんな高低の差があると、日本では生活できない。

北の方はどうなんだろう。
行ってみたいが、既に滞在期間の予定が三日しか残ってない。


東京の桜が散っているのを見てると、1週間前の花見を思い出す。
 「博人さん…」

マンションに行ってみよう。居なくても、今夜はマンションで寝よう。



最上階にある博人さんの部屋は、ひんやりとしている。
あれから戻って来てないみたいだ。
でも、食い物は買ってきたから、その点は大丈夫だ。

翌日、目覚めると思い出した。
学長の屋敷だ。
長崎土産を手に、学長の屋敷へ向かった。













桜前線に乗って、花見日本一周旅行 (1)

 「やっぱり日本と言えば、これだな」
 「ねえ、やっぱり桜ですよね」
友明は、卒業した大学の学長と一緒に夜桜を楽しんでる。


ここは昔、博人の父親が住んでた建物が建てられてあった場所だ。今は既に跡形もない土地のみになっている。その敷地内には桜の木が塀の代わりになる様に、外から敷地内が見えない程の等間隔に植えられている。
ちょっとした花見気分になる。だから、行き交う人達も見上げたり、私達と同じ様にシートを敷いて花見をしている人達も居る。

だから、あのクソ爺が居ても別になんの事は無い。
なにしろ血の繋がっている兄弟なのだから。
だが、つい最近とはいえフォン=パトリッシュの家系史を知った博人は心中複雑だ。
そのクソ爺は、ドイツから一緒に付いてきたフランツと、ずっと居る。
あくまでも『御』としての位置に拘っているみたいだ。

そんな博人の心中を知らない諒一と友明は、『御』と一緒に話している。
パースから一緒に付いてきた和田も、龍三と『御』に再会して嬉しそうだし。
どういう態度を取れば良いのか分からない博人は、一人で黙々と飲んでいる。
飲み食いしてると、無理に話をしなくても良いからだ。
宴会が始まり終わるまでの4時間、ずっと飲んだり食べたりしていた。


もう、本当にしょうがないな…、という苦笑顔で諒一は近付いてくる。
 「博人、食べてばかりいな」
だが、博人は遮ってやる。
諒一の口に大き目な鳥の唐揚げを押し込んでやる。
 「食べさせてくれたのかな?ありがとう。でも、博人の声が聞きたいな」
 「おやすみ」
 「博人、今、何て言ったの?」
喋りたくないので、後は寝るしかないのかと思ったので、言ったまでだ。
それをどう言えば良いのかと思ってたら友明の声が聞こえてくる。
 「博人先生は機嫌悪そうですね。体調悪そうでもないのに…。
学長、博人先生をお願いしますね」
 「何をお願いなの?」
 「博人先生のマンションか、学長の屋敷かのどちらかにです」
 「ああ、そういう意味ね。博人、私の所に来るかい?」

だが、博人は友明に聞いてる。
 「友はどうするんだ?」
 「この近くに弟が住んでるので、弟の家に泊まります」
 「なら、諒一の所に行く」
 「嬉しいな。ボスも来て良いんだよ?」
 「いえ、既に弟と約束してますので」
 「兄弟、仲が良いんだね」
 「普通だと思いますよ」


そんな時に龍三の声がする。
 「あ、迎えが来たみたいですね。それでは、御開きにしましょう。和田、1軒行くか?」
 「久しぶりに夜通し語り合いたいな」
 「それじゃ、帰るか」
 「ああ、ロゼでな」
 「わははっ…、飲み助になるか」


博人は諒一の車で。『御』とフランツと和田は、龍三の娘の運転する車で。
各々の場所へ向かう。
それを見送った友明は、徒歩で弟の家へ向かう。
誰にも知られず伏せてきた家。
その家で、弟は家族6人で暮らしている。
客間に通され、そこで義兄弟は語り合う。
たまには博人さんと離れて寝るのもありだな。

明け方近く、誰かが覗いてる気配がする。
 「うわっ、酒臭ぁ…」
 「二人とも呑み助だな」
ああ、優人の息子二人か。
だけど、起こしに来たのではないらしい。
襖は閉められ、二人ともリビングに向かったみたいだ。



こちらは、諒一の屋敷。
博人は諒一のベッドに寝転んでいる。
 「全く、昔もそうだったが…、今でも甘えん坊なんだな」
 「たまには一緒に寝ても良いだろ…」
 「ああ、もちろん良いよ」

いつもとは違う温もり。
昔は、諒一だけでなくマルクもよく抱きしめてくれたのを思い出す。
思わず笑っていた。
 「どした?」
 「ん、諒一は可愛いなと思ってね」
その言葉に、諒一は笑いながら言ってくる。
 「逆だろ。博人の方が可愛いよ」
 「諒一はエッチした事はあるのか?」
 「なんだよ、いきなり…」
 「抱く方?それとも抱かれる方?」

諒一は呆れかえった口調で言ってくる。
 「ったく、さっきまでは全然喋らなかったくせに、相手が私だけになると喋ってくるんだな」
 「どっち?」
 「そういうお前はどっちなんだ?まだ誰彼構わずか?」
 「私は一途だよ。遊びでは無い」
 「女遊びから卒業したのか。それは良かった、安心したよ」
 「で、諒一は?」
ニヤニヤしながら博人は聞いてくる。
溜息付いて、諒一は一言だけにした。
 「おやすみ」
そう言って横向いて寝たふりをする諒一を博人は揺さぶる。
 「こら、諒一、言うんだっ。私は知ってるぞ、婚約者はどうした?
そう…、言わないのなら、こうしてやるっ」

博人は諒一の脇の下や脇腹を擽っていく。
笑いを我慢していた諒一は、ついに声を立てて笑っていた。
 「あは、あはははっ…。
や、め、やめろ、博人っ…。くすぐったい…」
擽るのを止めない博人に苦笑しながらでも、諒一は嬉しかった。
 「ったく、本当に…」

目から涙を出しながら笑っている諒一に、博人はとどめを指す。
博人の顔が真面目になっているのを見て、諒一も真面目になる。
そんな諒一に、博人は口を開いた。
 「諒一、私は友明と暮らしている」
 「うん、その様だね」
 「私の恋人は、友明だ」

諒一は驚いて目を見開いてる。

博人は、クソ爺の方ではなく、恋人である友明の方をカミングアウトしたのだった。


そして、こちらは龍三の離れにある、部屋。
『御』とフランツが大人しくベッドを共にしている。
恐らく、今回が最後の日本滞在になるだろうと思い、エッチは控えて夜を過ごす。
まだ、幼かった頃の自分を思い出す。
年の離れた兄の結婚式に甥っ子の誕生。
だけど、兄を差し置いて自分がドイツに向かったのだ。
フランツに一目惚れして離れたくなかったからだ。

先代の『御』である、アダム=バーンズ・フォン・パトリッシュ。
貴方の血は途絶えるだろう。
マルクは死に、矜持は放浪してる。
恐らく、博人はドイツには来ない。そして諒一も日本での生活を楽しんでいるみたいだ。
残るはマルクの子と孫だが、彼等には向いてない。
アンソニーもポールと名を変え、博人とエドの側に居る。
儂の役目は、ここまでだ。
フォン=パトリッシュも、儂の代で終わりだ。
 「フランツ、起きてるか?」
 「はい、なんでしょう?」
 「アンソニーとエドに会いたい」
 「帰りに寄りましょう」
 「ああ、頼む」

フランツは言えないでいた。
博人が、フォン=パトリッシュの全てを知ってる事を。
でも『御』の、今の言葉を聞いて、新たに決意をした。
(御、ヒロト様は全てをご存知です。ですが、私はそれを貴方には申し上げません。
ご自分で終わらそうとされている。私は、貴方に付いて行くだけです…)



そして、こちらはジュニアを含め8人に師事していた元躾役兼文武の師匠二人。
武の龍三はご機嫌だ。
 「わははっ…、さすが和田だ」
文の和田もご機嫌だ。
 「アンソニー様はポールになって、こんな顔になってるのに、未だに私の睨み顔を目にすると俯いてしまうんですよ」
 「文の和田、復活だな」
 「アンソニー様は、元々スポーツ系の人ですからね」
その言葉に、龍三は遠い目をして応える。
 「アンソニー様の裏はアンソニー様しか使えないからな…。会いたいが、会わない方が良いだろう。まあ、近くに和田が居る事だしな」
 「データを差し上げますよ」
 「サンキュ。この顔を見てるだけで涙が出そうだが、それでも本人が、その顔を気に入ってると言ってるのだから、こっちは何も言えないな」
 「良い目くらましになってるみたいですしね」
 「あ、そっちか。なるほどね…」

瞬間だが、沈黙が落ちる。
和田が、その沈黙を破ってくる。
 「龍三。今、私はドイツに居た頃の気分になってるんだ。また、文武を師事するかい?
短期間になるけど…」
 「誰に?」
即答だった。
 「諒一様に」

あははははっ……。
 「博人様は入らないのか…」
 「パースでやってますからね」
 「そんなの必要ない、と言って逃げそうだな」
 「それを追い詰めるのも楽しいです」
 「乗った!」


 




桜前線に乗って、花見日本一周旅行

花見の季節になりましたね。

という事で、SSです。


~あらすじ~
ドイツにあるフォン・パトリッシュ家に居座ってる『御』が、執事のフランツを連れて日本に帰郷してきた。
そして、オーストラリアに居る博人は友明と和田を連れて、日本へ。
そして、『御』は、龍三をも呼んで花見をする。
何を目論んでいるのが分からない『御』の言動に、博人はもやもやとしている。
その理由とは……。


(1)
(2)
(3)最終話


~登場人物紹介~

 『御』
ドイツにあるフォン・パトリッシュのトップである人物。
博人の叔父に当たる。

フランツ
フォン・パトリッシュの『御』の執事。

諒一
フォン・パトリッシュの孫であり、博人の従兄に当たる。
博人のみならず、友明とユウマ達が卒業した東響大学の学長をしている。

博人
フォン・パトリッシュの孫であり、諒一の従弟に当たる。
つい最近、フォン・パトリッシュと『御』の詳細を知り悩んでいる、友明の恋人。

友明(ボス)
諒一が学長をしている東響大学医学部の卒業生。
博人とは学生時代に最悪な形で出会うが、現在は恋人同士。
現在は、パースにあるクリニックでボスをしている。

龍三
フォン・パトリッシュ家のジュニア達8人の躾役兼文武の武術を師事していた。
日本に帰国してからは、得意の武術で道場を開いてる。

和田
フォン・パトリッシュ家のジュニア達8人の躾役文武の文壇を師事していた。
脳外医としてパースで仕事をし乍ら、スポーツセンターの秘書としても仕事をしている。

ユウマ
友明がボスをしていた、同じ東響大学の医学部卒業生。
北海道に戻り、病院経営者でありながらドクターもしている。







二人のピエロ  ~あとがき~

いつも読みに来て頂きありがとうございます。


今作のタイトルはギリギリまで考え悩みました。
名付けたのが『二人のピエロ』ですね。
これに、誕生を付けるべきかどうか…、というのも悩みました。
それは、続くという意味にも取れるので。
次作に繋がるネタが、ほんの少ししか浮かんでないのです。(こっそり…)
という事で、『二人のピエロ』というタイトルにしました。


前半の部であるアメリカでの話は、タカとジョンの物語。
ジョンが、レンに改名した理由。

そして、後半の部ではパースでの物語。
ジョンからレンに改名をした事を知った母親、スーザンは男漁りの良い言い訳になると踏んだのでしょう。パースへ何度も来てます。

パースに、皆が集まる。
エドの言葉にもありましたが、「誰の為に、皆が集まるのだろうか…」という意味が、最後の辺りに出てきました。

アンソニーがポールと改名をして生きてる事を知った元側付の数人は、再びポールの元へと集まってきました。ポールをボスとして組織を作りあげたのは、和田。
この和田が曲者です。(笑)
なにしろ、ドイツでは文武の文壇をアンソニーを含めジュニア達に教え込んでいたのですから。
博人とエドは、とっ捕まって再度、この和田から家系史を叩きこまれてますが。
(*≧m≦*)ププッ


そして、ドイツの『御』の出自が、とうとう明らかになりました。
それを知ってるのは、博人だけ。
さあ、弱みを握られてる事を知らない『御』は、どうするのでしょうか?
フランツは『御』には内緒で、博人に教えたみたいですね。
当然ながら、博人は和田にも話を持ち掛けるでしょうねぇ…。


そして、宝石(いし)。
忘れてはならない存在感たっぷりの、この御方。
友明は、遂に宝石(いし)を自分の中に取り込むことにした。
それは、条件付きで。
この友明が何のリスクも無く取り入れる事は無い!断言できますっw
その条件とは、次で明らかになる?


大学時代に、サトルの父である『御』に気に入られ、直に帝王学を叩きこまれた友明。
幼少時代から、祖父である『御』に傅かってる爵位を持ってる人や、躾役兼文武の師をしていた和田や龍三から帝王学等を叩きこまれてきたアンソニー、いや、ポール。
この二人は、違うルートからピエロになる事を決めました。
友明は、宝石(いし)から。
ポールは、お爺様と呼んでる『御』からのメールで。


そして、この宝石(いし)は、なにやらとんでもない事を博人にしてくれたみたいですが…。
博人は、宝石(いし)に対して、どういう態度を取るのでしょうかね?


あ、なんかこう書いてるとネタが浮かびそうです。
また、次なる登場まで待って下さいね。



ありがとうございました。











   あさみより  2016/3/26












二人のピエロ (64) ~最終話~

もう一人、ピエロになろうとしている人物がいる。
ポールだ。

マックスを始め、ミハエル、ショーン、ジョージはポールの事をドン呼ばわりしてくれる。
溜息付きながら相手をしてやるが、内心は嫌がってる。
だが、その葛藤に気が付かない元側付達では無い。
以前とは違い、色々と外の世界を見ては経験してきてるからだ。
そんな時に、ドイツからメールが着た。
 『新しい門出にメッセージを贈る。
ポール、お前らしくすれば良い。殻に籠っても良い。
側付は、皆が皆、既にドイツを卒業しておる。顎で使う事を覚えろ。
シンガポールの病院でボスをしていた頃とは違う。その事だけは、しかと覚えておけ。
エドとヒロト、そしてオーストラリア・ドンと一緒に生きていけ。
パトリッシュは、儂の代で終わりだ。
息災でやれ。   【御】 』



お爺様らしい文面に、ポールは思い返していた。
お爺様。
私は、ドイツやお爺様が嫌で反発したわけではない。
何が嫌なのか。
それはマルクだ。
マルクが嫌で嫌で、だから反発したんだ。
ドイツに戻れるのは嫌では無かった。むしろ嬉しかった。
監視役が付くのは当然だろうなとも思っていた。
その監視役がマルクという事だけで、繋がりを絶とうとしたんだ。
監視役がマルクでなければ、今頃はドイツのどこかの病院でボスをしていただろう。
同時に、色眼鏡で私を見て蹴落とそうとする輩も大勢いただろう。
それを思えば、今の自分は恵まれている。
なにしろイタリア王子を含め、あの連中は色眼鏡で見てこないからだ。
エドとヒロは、昔から私に色々な事を教えてくれる。
それに、ワダも居る。
なにより、大好きなトモも居る。

お爺様。
殻に籠っても良いのですか?
それならば、私は籠ります。
殻に籠ってもエドとヒロが居るし、何より自分達に色々と師事してくれたワダとイタリア王子が相談相手になってくれるし、フォローもしてくれる。
そう思うと、メールを返した。
『お爺様。
メッセージ、しかと受け取りました。
お爺様も、フランツと共にお元気で。』




そして、二人のピエロが誕生した。
一人は、オーストラリア・ドンと呼ばれ、恋人と子持ちのシングルファーザー。
もう一人は、『ブラック・ドラゴン』のボスとなったポールだ。
ポールに恋人は居ないが、親戚が居る。
エドとヒロトだ。
なにより、今度はトモも居る。
昔の蟠りは解けて、トモは私に笑顔を見せてくれるようになった。
まだ、日本で一緒に働いていた頃の様に。

だが、二人は違う道を進んでいる。
ポールが再びトモの横に立って歩んでいくには、まだ先の事である。




 「っ……」
そして、今夜も魘されて目が覚める。
未だに、あの悪夢から解放されない。
それでも、週に1,2回になってきてるのがせめてもの救いだ。
あれから何年だ………。
33歳になる年の5月だったから、13年半ほどか。
ふいに博人さんの言葉が過る。
 「迷惑云々は考えるな。
私が居る事を忘れないで欲しい。
9年間苦しんできたんだ。あと9年間は同じように苦しみ悩むと思う。」

ボソッと呟く。
 「あと最低でも6年か…。もしくは、それ以上になるだろうな…」
その呟きが聞こえたのだろうか、2本の腕が自分の身体に触れる。
その温もりは、自分を抱きしめてベッドに横たえてくれる。

そうだ、私には博人さんがいる。
完全に一人ではないんだ。
そう思うと、安心しては抱かれたまま眠りについた。



だが、宝石(いし)は気が付いた。
魘されて起きる原因を。
これは、自分の力ではどうする事も出来ない。
本人の乗り越えようとする力しか対処法はない。
なるほど、だからこその、あの言葉か。
宝石(いし)は、主である友明の言葉を思い出していた。
 「人間にとって一番の敵は、自分の心だ。逃げたくなる時もあるのが人間だ。
迷う時、泣きたくなる時もある。」

あの時は、強い精神力だけだと返したが訂正しよう。
 『精神力も必要だが、周りのフォローも大事だ。
我が主よ、我はフォローに徹しよう。
我を使え。そして、我を求めよ。
音楽を愛でるという気持ちを忘れるな。
心を癒してくれるのは、心に響いてくる音であり、心を紡ぐ声だ。
お前の側に居るバイオリンは、心に響いてくる。
そいつのバイオリンは、我の心までも動かしてくれる。
それに、お前は帝王学を学んでおる。それを使え、出し惜しみするな。』


トモアキ・フクヤマ。
我にとって、最高の主だ。
お前を、我の最後の主にしよう。
お前が死ぬと同時に、我も霧散となろう。
もう、主は待たぬ。

ヒロト・フクヤマ。
いや、本名で言わせて貰う。
ヒロト=ヴィオリーネ・フォン・パトリッシュ=フクヤマ。
かの初代『御』であるアダム=バーンズの直系の孫。
つい最近、家系を知ったばかりみたいだが、お前には知らせておこう。



宝石(いし)は、ヒロトの五感だけではなく、脳にも語り継げるように自分の見聞きしたことを伝えていく。それは何億年もの昔から現在に至るまでの、自分の主が見聞きした事柄だ。
地球だけではなく、他の恒星、プラネット、果ては神話の世界まで。
それ等を勝手に自分の中に押し込まれてる博人は、知りたくなくても知る事を強制された。
それらは夢ではなく、全てが現実に起こった事だ。

明日、目が覚めるとお前は知るだろう。

それは、これからの人生にとってどんな影響を及ぼすのか。
それは我だけでなく、誰も知らない。
それに、だ。
我を、その身体から追い出す事は出来ぬ。
我は、お前達二人に掛けよう。
ああ、もう一人いたな。あの幼き子供。


ソレは、呟く様に祈るように言葉にする。
 『我が主を選ぶのは、我には行動に動かす為の器が無いからだ。
だが、その器の持ち主が誰でも良いという訳ではない。
音楽を愛で、心の痛みを知ってる者。
そして、それを自覚しては克服しようと努力している者だ。
トモアキ・フクヤマ。
お前は殻に籠ってピエロとなり、あの連中を動かせ。その為の助力は惜しまぬ。』


その言葉が通じてるのかどうかは分からないが、ピエロになろうとしている友明と、側に寄り添う様に抱きしめている博人の二人は、これからの運命がどうなるのかは知らない。
恐らく、逆らう事無く受け入れるであろう。






















‐ 完 ‐







☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。
最終話です。
読んで頂きありがとうございました<(_ _)>


そして、ピエロとなった友明とポール。
この二人は、これからどうなるのでしょうね?_?

この続きのネタが、ほんの少ししか出来てないので、未だ分からずです。。。



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