BL風味の小説

BL風味のオリジナル小説です。
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桜前線に乗って、花見日本一周旅行 (3)~最終話~

案の定、博人さんは寛いでいる。
そりゃ、ここは屋敷が広く使用人も居れば上げ膳据え膳だからな。
そういう私も、この1週間はそれだったのだがら、文句は言えない…。

 「へえ、長崎に行ってたのか」
 「父の実家は長崎なんです」
 「そうか、それで長崎なんだね」
 「祖母の家にも寄ったのですが、今では違う人が住んでました」
 「すでに他界されてるの?」
 「生きてたら……、150歳位かな…」
 「あ、そういう年齢の方なんだね…」

友明は博人に声を掛けた。
 「博人先生、マンションにはいつ戻って来られるのですか?」
 
博人さんではなく、学長が先に応じてくる。
 「頼むから、博人を連れて帰って貰えないかな?」
 「どうされたのですか?」
 「この1週間、私に色んな事を教えたがってね…。歴史とかロシア語とか…。
挙句の果てには、理解度を知る為とか言ってテスト用紙まで用意してるんだ」

博人さんが、その言葉に割って入ってくる。
 「頭を使わないと禿げるぞ」
 「余計なお世話だっ」

そのやり取りで友明は納得した。
 「なるほど、だからずっとこちらに居られるのですね」
 「明日にはマンションに戻るよ」
 「分かりました。しっかり師事してあげて下さいね」
友明のその言葉に博人は嬉しそうに即答してきた。
 「うん、任せて」
だが、学長は焦っている。
 「えっ…!せ、せめて、食事を一緒に食べないか?」
 「私が一緒でも良いのですか?」
 「勿論だよ」
 「では、喜んで頂きます」


昼食だけでなく夕食も御馳走になった友明は、博人の様子を見て納得した。
博人が学長の部屋で一緒に寝起きしているから、余計に心労させてるのでは、と。
勿論、博人も知っていた。
だが、これは和田からの命ではなく、お願いだから。
それだからこそ、嬉しくて自分の識っている事を諒一に伝えたく、教えてるのだ。

友明は、そんな博人に声を掛ける。
 「博人さん」
そのニュアンスに何かを感づいたのだろう。博人は友明に応じる。
 「明日まで目を瞑ってて」
 「いーえ、夜はせめて違う部屋で寝て下さい」

学長が、自分を呼んでる声が聞こえてくる。
 「ボス、ボス」
 「何ですか?今は博人先生に」
 「いつもの部屋を用意したから使ってくれ」
 「ありがとうございます」


友明は博人を引きずり、学生時代に使わせてくれてた部屋へ連れて行く。
 「友、私は」
 「博人さん、私は1週間東京を離れてた」
 「長崎だろ。ったく事後承諾な奴だよな」
 「一人で行ってた」
 「弟と一緒では無かったのか?」
 「長崎に行き、そこから広島、大阪、京都、名古屋に泊まってたんだ」
 「はあっ?」
 「初めての一人旅だったんだ。博人さんと一緒だともっと楽しかっただろうな、と」
 「それなら、連絡してこい」
 「そうだね、御免なさい。でね、土産話もしたいから昨夜は待ってたんだ。
でも帰って来なくて…。今朝になって、学長の所かと思い当たって来たんだ。
博人さん、ただいまー」
そう言って、友明は博人に抱き付いた。

溜息を吐いたが、自分の欲してる温もりを感じて博人は安心している。
この温もりが欲しくて手離したくなくて博人は抱きしめ、友明の頭を撫でる。
友明は、その優しく触ってくる掌に目を瞑って身を任せている。
 「怪我はしなかったか?」
 「うん」
 「お帰り…」
 「ただいま」



いくら待っても、博人は来ない。
もしかして、成功か。成功したんだな。
ボス、協力してくれてありがとう。
 「やった…」
諒一は、思わずガッツポーズしていた。
少し人恋しい気がするが、この1週間ずっと博人がくっ付いていたんだ。
諒一はベッドに横たわり、博人の事を思っていた。
博人、私はお前が幸せなら応援するよ。矜持もそうだったから、私には抵抗というのは無い。
驚いたけど、相手がボスで良かったよ。
この事をマルクが知ったら青筋立てて怒鳴るだろうが、もう死んだしね。
それに、今はお爺様と結託して、ある事を進めている。博人には、まだ知られたくない。
楽しみにしててくれ。

 「あー…。久々に自由だ」

ベッドの上をゴロゴロとして一人で寝れるという感じを味わっていた。



その頃、博人は友明のベッドに潜り込んで、土産話を聞いていた。
スマホで撮った写真を見せながら話してくる。
 「でね、これは福山なんだ。」
 「これは何処?」
 「広島県の福山市の先っぽになるのかな。鞆の浦という所。この日は、新幹線で行って、福山駅近くのホテルに宿泊先を決めてから初日は街中を散策したんだ。翌日は、尾道市に行って、そこから自転車をレンタルして、しまなみ海道を走って、瀬戸内海を渡ったんだ。最終地点の四国、愛媛県の今治市に着いて、暫らく呆けっとしていた。
昼飯を今治市で食べたのだけど、量が多くて値段も安かったし美味しかった。
夕方18時には自転車を返さないといけないから、ぎりぎりまでゆっくりしていたんだ。
その日は疲れもあってぐっすりと眠れた。
で、次はこれね。」
 「お、グリコマークだ。大阪と言えば、道頓堀とグリコだな」 
 「でしょ。次は、これ」
 「清水寺だ」
 「正解!駅から市内観光バスがあって、その1本に乗って行ったんだ。
一人旅だったけど、こうやって知らない人達と一緒に行くのは、新鮮だったよ。で、次はこれ」
 「しゃちほこ、名古屋か」
 「うん、食べ物も美味しかったし、名古屋城を登ってみたんだ」
 「眺め良かっただろ?」
 「行った事あるの?」
 「車でね」
 「へー、あ、そっか。免許持ってるんだよね」
 「ああ」
 「私は免許持ってないからな。乗れるのは自転車だけ」
 「事故る元になるからな、免許取れとは言わないよ」
 「うん、取りたくないという気がある」

博人は微笑んでる。
 「もう一人で勝手に旅なんてするなよ」
 「博人さんは楽しかった?」
 「ああ、諒一は弄りがいがあってね」
 「今頃はのんびり感で幸せを感じてるでしょうね」
 「そうかもな」


博人は友明を抱きしめ、1週間ぶりに友明の温もりを感じている。
この温もりがあれば良い。
この息遣いがあれば、生きてるという温かさに気持ちが和む。

ふわぁ…、と友明は欠伸をしている。
その友明は完全に眠りに入る前に、博人に言う。
 「今度は、東日本を、二人旅したいな…」

その言葉を最後に、こてんと寝てしまった。

博人は、友明を抱きしめたまま呟く。
 「残り二日で東日本は無理だな。せめて五日間は欲しい…」


だが、友明と二人旅をするのも悪くないと思い立ち、自分なりに計画を練る。



西日本から桜は咲き、散っていく。
でも、思いは散らない。
この桜前線に乗せて、今度は東へ、東日本へ。
博人と友明を乗せた列車は、二人を乗せて東へ、北へと向かう。
秋田、金沢、青森。
そして新幹線を利用しての北海道行き。札幌と釧路に宿泊して、パースから乗ってきたヘリはドイツのジェットの格納庫に入れられ、そのジェットが釧路空港へ迎えに来る。

北海道の桜は開花されていて、とても綺麗だった。
釧路空港まではユウマが車で送ってくれた。
 「今度はサプライズ無しでよろしく」
 「流石に、北海道はでっかいな。お邪魔しました。皆さんにありがとうと伝えて」
 「ああ、今度はゆっくり北海道案内してやる」
 「その時はよろしく」


博人は、北海道の地を車で走らせたのが非常に嬉しかったみたいだ。
帰りのジェットで和田先生にも教えていたぐらいだ。
 「やっぱり、日本では北海道の道路が一番運転しやすいな」
 「本当に嬉しそうに運転してたのでしょうね」
 「ま、一番はドイツのアウトバーンだな。もし、日本で生活するなら北海道だな」
 「年寄りは運転しないようにしましょう」
 「他人の事言えるのか、このスピード狂の年寄りが」
 「ご自分も、スピード狂でしょ…」

この二人のやり取りを、周りの皆は仄々とした気分で聞いていた。


その釧路から、パースへと戻るのだ。
だが、友明は、もう一ヶ所付け足してくる。
 「沖縄の桜はどうだろう…」
 「さすがに散ってるだろ」
今度は和田が割って入る。
 「沖縄の海に浸かってみたいですね」
 「この時期は泳げないだろ」
だが、友明の、この言葉でジェットは沖縄に寄った。
 「チャンプルーが食べたい」
 「沖縄そばやタコライスも良いな」


博人は、1週間掛けて東日本と北海道を二人旅して満喫した。
友明は、2週間掛けて日本を制覇して、こちらも満喫している。




二人は、日本一周花見旅行を楽しんだのでした。





















~ Fin ~



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桜前線に乗って、花見日本一周旅行 (2)

翌日。
龍三と和田は、諒一の屋敷へ向かった。
出てきたのは執事の源蔵だ。
 「龍三様、和田様、いらっしゃいませ」
 「諒一様は?」
 「今朝は、まだ食事を召し上がられてません」
 「起こしに行っても良いですか?」
 「よろしくお願いします」


コンコン…。
ノックをするが応答がない。
二人は顔を見合わせ頷く。

静かに部屋に入りベッドに近寄ると…、溜息を吐いてしまった。

先に和田が声を掛ける。
 「おはようございます、お坊ちゃま方。朝の勉強タイムですよ」

和田がカーテンを開け、龍三は布団を剥ぎ取る。
 「さあ、飲み助坊ちゃま。眠気覚ましに手合わせしましょうね」

だが、寝ている二人は何も動じない。
覗き込んでると、昔と変わらないあどけない表情で寝ている。
あの頃は、今の二言で6人が目を覚まし起きてきていたが、諒一と博人だけは中々起きてこなかったものだ。こんな年齢になっても、この二人は変わらない。
幸せそうに寝ているのを起こすのは可哀相だが、それでも起きて貰いますよ。

龍三は写メっている。
 「よし、これでOK!で、それは何だ?」
 「とっておきの目覚まし」
和田はそう応えると、二人の顔に水をぶち撒く。

ザバッ…。

先に博人が目をうっすらと開け、さむ…と呟き、布団を被る仕草をする。
気が付いたのだろう、上掛けが無い事に。腕を伸ばして上掛け布団を探している。だが、その内に両目ともパッチリと目が開き、ベッドの上を探し回っている。
そろそろかな、と思い龍三は博人に声を掛ける。
 「お探しの物はこれですか?」

声を掛けられ、そちらを向いた博人は頷く。
 「そう、それ。え…、和田?なんで、そんなものを持って」
 「中身は入ってませんよ。そう、博人様だけなんですね。それなら、もう一杯必要ですね」
と和田は言って、部屋に付いてるミニカウンターで水を入れてる。
それを見て思い当たったのか、博人は呟く。
 「まさか…」
素直にベッドから降りると、龍三から声を掛けられた。
 「おや、昔は諒一様を起こしてあげてたのに」
 「あの頃とは違う。お互い、大人だからな」
 
ぷぷっ…。
あははっ…。

和田と龍三が二人揃って笑い出した。
 「ああ、手元が狂った…」
そう言って、和田はバケツの中身を諒一に掛けた。
今度は、狙いは諒一だけだ。

ザバッ!!


 「ったく…、博人、何をし」

「何をしてくれるんだ?」と言いたかった諒一は、バケツを手にしてる和田と、上掛けを持っている龍三と、着替えてる博人を見て、思い当たった。
溜息付いて、諒一はボヤく。
 「ったく、もっと優しく起こしてくれないかな…」
 「やっと目が覚めましたね。それではラジオ体操を先にしますよ」と、龍三が。
 「は、ラジオ体操?」
キョトンとなった諒一に、今度は和田が言ってくる。
 「体操が終わると、家系史の勉強ですからね」
 「え?それって、私に言ってる?」
 「勿論です」

足音を忍ばせてドアに近付いてる博人に、和田は諒一に向かいながらの体勢で声を掛ける。
 「でも、実際に師事するのは博人様です」
その言葉に、博人の足が止まり振り向く。
 「え、私が?」
 「そうです。どの程度、理解されてるのか知りたいので」
 「ん、やる」
即答だった。
その言葉に驚いたのは、3人共だった。
 「博人の裏切り者っ!1対3だと逃げれないではないかっ」と、諒一が喚く。
 「思ってもみなかった言葉だな…」と、龍三が。
 「まさか、素直に言われるとは…」と、和田が。
その言葉に、博人は即答した。
 「だって、誰かに何かを教えると言うのはしてみたかったんだ」


博人があちら側に付いたので、諒一は逃げる事を諦め、家系史を再度叩き込まれる事になった。
一体、何十年ぶりに家系史を学ぶことだろう。
今度は博人に師事されてるし…。

その後、4人で昼食を共に取り、運よく電話が入った。
急遽、出かける事になった。
 「悪いな」
そう言って、諒一は逃れた気分になった。
だが、博人はこう返してきた。
 「さっきまでので、テスト作っておくからね」
 「いらんっ」


諒一が出掛け、和田と龍三も帰った後、博人は部屋でテスト用紙を作り出した。
友、何をしているのかな。
会いたい、触れたい、友の温もりが良い…。



その頃、友明は長崎に居た。
両親と妻の墓参りだ。
義弟の家には一泊の予定だったので、起きたら午前中の内に長崎に飛んだのだ。
あの時より、時間を掛けて拝んだ。

今回は一人なので気が楽だ。
墓参りをした後、祖母宅へ足を向ける。
この家しか知らないのだ。
今は別の人間が住んでるみたいだ。新しい表札になっている。
福山では無く、「中山」さんだ。
その家を見て、友明は呟く。
 「お婆ちゃん…。私の親戚は、お婆ちゃんだけだ…」

それだけでも、中学生だった私は嬉しかったものだ。


JR駅に向かい当日の宿泊先を決め、そこで泊まる。
一人旅だなんて、初めてだ。
少しだが、ウキウキ気分になってる。
長崎に一泊、広島の福山で二泊した。
お母ちゃんが福山出身だと言ってたのを覚えてたからだ。
大都会ではなく、地方都市だ。
それでも、自分と同じ福山という名なので、何かしら嬉しい気持ちがある。
それに、なにより海の幸が豊富で安くて美味いっ。

そして、大阪に一泊。
道頓堀に行って、グリコマークを見て自取りする。
さすが、西の玄関口と言われる場所だな。

その後、京都に一泊、名古屋で一泊。

1週間を一人で過ごし、東京に戻ってきた。
この1週間で感じた事は数点。
日本は治安が良過ぎる。
それに清潔だし、そこまでしなくても良いだろという気持ちだ。
物価も高ければ安い所もある。
これだと一番困るのは転勤族の人達だな。
いつかは日本に帰国して生活する日々が来るだろう。だけど、こんな高低の差があると、日本では生活できない。

北の方はどうなんだろう。
行ってみたいが、既に滞在期間の予定が三日しか残ってない。


東京の桜が散っているのを見てると、1週間前の花見を思い出す。
 「博人さん…」

マンションに行ってみよう。居なくても、今夜はマンションで寝よう。



最上階にある博人さんの部屋は、ひんやりとしている。
あれから戻って来てないみたいだ。
でも、食い物は買ってきたから、その点は大丈夫だ。

翌日、目覚めると思い出した。
学長の屋敷だ。
長崎土産を手に、学長の屋敷へ向かった。













桜前線に乗って、花見日本一周旅行 (1)

 「やっぱり日本と言えば、これだな」
 「ねえ、やっぱり桜ですよね」
友明は、卒業した大学の学長と一緒に夜桜を楽しんでる。


ここは昔、博人の父親が住んでた建物が建てられてあった場所だ。今は既に跡形もない土地のみになっている。その敷地内には桜の木が塀の代わりになる様に、外から敷地内が見えない程の等間隔に植えられている。
ちょっとした花見気分になる。だから、行き交う人達も見上げたり、私達と同じ様にシートを敷いて花見をしている人達も居る。

だから、あのクソ爺が居ても別になんの事は無い。
なにしろ血の繋がっている兄弟なのだから。
だが、つい最近とはいえフォン=パトリッシュの家系史を知った博人は心中複雑だ。
そのクソ爺は、ドイツから一緒に付いてきたフランツと、ずっと居る。
あくまでも『御』としての位置に拘っているみたいだ。

そんな博人の心中を知らない諒一と友明は、『御』と一緒に話している。
パースから一緒に付いてきた和田も、龍三と『御』に再会して嬉しそうだし。
どういう態度を取れば良いのか分からない博人は、一人で黙々と飲んでいる。
飲み食いしてると、無理に話をしなくても良いからだ。
宴会が始まり終わるまでの4時間、ずっと飲んだり食べたりしていた。


もう、本当にしょうがないな…、という苦笑顔で諒一は近付いてくる。
 「博人、食べてばかりいな」
だが、博人は遮ってやる。
諒一の口に大き目な鳥の唐揚げを押し込んでやる。
 「食べさせてくれたのかな?ありがとう。でも、博人の声が聞きたいな」
 「おやすみ」
 「博人、今、何て言ったの?」
喋りたくないので、後は寝るしかないのかと思ったので、言ったまでだ。
それをどう言えば良いのかと思ってたら友明の声が聞こえてくる。
 「博人先生は機嫌悪そうですね。体調悪そうでもないのに…。
学長、博人先生をお願いしますね」
 「何をお願いなの?」
 「博人先生のマンションか、学長の屋敷かのどちらかにです」
 「ああ、そういう意味ね。博人、私の所に来るかい?」

だが、博人は友明に聞いてる。
 「友はどうするんだ?」
 「この近くに弟が住んでるので、弟の家に泊まります」
 「なら、諒一の所に行く」
 「嬉しいな。ボスも来て良いんだよ?」
 「いえ、既に弟と約束してますので」
 「兄弟、仲が良いんだね」
 「普通だと思いますよ」


そんな時に龍三の声がする。
 「あ、迎えが来たみたいですね。それでは、御開きにしましょう。和田、1軒行くか?」
 「久しぶりに夜通し語り合いたいな」
 「それじゃ、帰るか」
 「ああ、ロゼでな」
 「わははっ…、飲み助になるか」


博人は諒一の車で。『御』とフランツと和田は、龍三の娘の運転する車で。
各々の場所へ向かう。
それを見送った友明は、徒歩で弟の家へ向かう。
誰にも知られず伏せてきた家。
その家で、弟は家族6人で暮らしている。
客間に通され、そこで義兄弟は語り合う。
たまには博人さんと離れて寝るのもありだな。

明け方近く、誰かが覗いてる気配がする。
 「うわっ、酒臭ぁ…」
 「二人とも呑み助だな」
ああ、優人の息子二人か。
だけど、起こしに来たのではないらしい。
襖は閉められ、二人ともリビングに向かったみたいだ。



こちらは、諒一の屋敷。
博人は諒一のベッドに寝転んでいる。
 「全く、昔もそうだったが…、今でも甘えん坊なんだな」
 「たまには一緒に寝ても良いだろ…」
 「ああ、もちろん良いよ」

いつもとは違う温もり。
昔は、諒一だけでなくマルクもよく抱きしめてくれたのを思い出す。
思わず笑っていた。
 「どした?」
 「ん、諒一は可愛いなと思ってね」
その言葉に、諒一は笑いながら言ってくる。
 「逆だろ。博人の方が可愛いよ」
 「諒一はエッチした事はあるのか?」
 「なんだよ、いきなり…」
 「抱く方?それとも抱かれる方?」

諒一は呆れかえった口調で言ってくる。
 「ったく、さっきまでは全然喋らなかったくせに、相手が私だけになると喋ってくるんだな」
 「どっち?」
 「そういうお前はどっちなんだ?まだ誰彼構わずか?」
 「私は一途だよ。遊びでは無い」
 「女遊びから卒業したのか。それは良かった、安心したよ」
 「で、諒一は?」
ニヤニヤしながら博人は聞いてくる。
溜息付いて、諒一は一言だけにした。
 「おやすみ」
そう言って横向いて寝たふりをする諒一を博人は揺さぶる。
 「こら、諒一、言うんだっ。私は知ってるぞ、婚約者はどうした?
そう…、言わないのなら、こうしてやるっ」

博人は諒一の脇の下や脇腹を擽っていく。
笑いを我慢していた諒一は、ついに声を立てて笑っていた。
 「あは、あはははっ…。
や、め、やめろ、博人っ…。くすぐったい…」
擽るのを止めない博人に苦笑しながらでも、諒一は嬉しかった。
 「ったく、本当に…」

目から涙を出しながら笑っている諒一に、博人はとどめを指す。
博人の顔が真面目になっているのを見て、諒一も真面目になる。
そんな諒一に、博人は口を開いた。
 「諒一、私は友明と暮らしている」
 「うん、その様だね」
 「私の恋人は、友明だ」

諒一は驚いて目を見開いてる。

博人は、クソ爺の方ではなく、恋人である友明の方をカミングアウトしたのだった。


そして、こちらは龍三の離れにある、部屋。
『御』とフランツが大人しくベッドを共にしている。
恐らく、今回が最後の日本滞在になるだろうと思い、エッチは控えて夜を過ごす。
まだ、幼かった頃の自分を思い出す。
年の離れた兄の結婚式に甥っ子の誕生。
だけど、兄を差し置いて自分がドイツに向かったのだ。
フランツに一目惚れして離れたくなかったからだ。

先代の『御』である、アダム=バーンズ・フォン・パトリッシュ。
貴方の血は途絶えるだろう。
マルクは死に、矜持は放浪してる。
恐らく、博人はドイツには来ない。そして諒一も日本での生活を楽しんでいるみたいだ。
残るはマルクの子と孫だが、彼等には向いてない。
アンソニーもポールと名を変え、博人とエドの側に居る。
儂の役目は、ここまでだ。
フォン=パトリッシュも、儂の代で終わりだ。
 「フランツ、起きてるか?」
 「はい、なんでしょう?」
 「アンソニーとエドに会いたい」
 「帰りに寄りましょう」
 「ああ、頼む」

フランツは言えないでいた。
博人が、フォン=パトリッシュの全てを知ってる事を。
でも『御』の、今の言葉を聞いて、新たに決意をした。
(御、ヒロト様は全てをご存知です。ですが、私はそれを貴方には申し上げません。
ご自分で終わらそうとされている。私は、貴方に付いて行くだけです…)



そして、こちらはジュニアを含め8人に師事していた元躾役兼文武の師匠二人。
武の龍三はご機嫌だ。
 「わははっ…、さすが和田だ」
文の和田もご機嫌だ。
 「アンソニー様はポールになって、こんな顔になってるのに、未だに私の睨み顔を目にすると俯いてしまうんですよ」
 「文の和田、復活だな」
 「アンソニー様は、元々スポーツ系の人ですからね」
その言葉に、龍三は遠い目をして応える。
 「アンソニー様の裏はアンソニー様しか使えないからな…。会いたいが、会わない方が良いだろう。まあ、近くに和田が居る事だしな」
 「データを差し上げますよ」
 「サンキュ。この顔を見てるだけで涙が出そうだが、それでも本人が、その顔を気に入ってると言ってるのだから、こっちは何も言えないな」
 「良い目くらましになってるみたいですしね」
 「あ、そっちか。なるほどね…」

瞬間だが、沈黙が落ちる。
和田が、その沈黙を破ってくる。
 「龍三。今、私はドイツに居た頃の気分になってるんだ。また、文武を師事するかい?
短期間になるけど…」
 「誰に?」
即答だった。
 「諒一様に」

あははははっ……。
 「博人様は入らないのか…」
 「パースでやってますからね」
 「そんなの必要ない、と言って逃げそうだな」
 「それを追い詰めるのも楽しいです」
 「乗った!」


 




桜前線に乗って、花見日本一周旅行

花見の季節になりましたね。

という事で、SSです。


~あらすじ~
ドイツにあるフォン・パトリッシュ家に居座ってる『御』が、執事のフランツを連れて日本に帰郷してきた。
そして、オーストラリアに居る博人は友明と和田を連れて、日本へ。
そして、『御』は、龍三をも呼んで花見をする。
何を目論んでいるのが分からない『御』の言動に、博人はもやもやとしている。
その理由とは……。


(1)
(2)
(3)最終話


~登場人物紹介~

 『御』
ドイツにあるフォン・パトリッシュのトップである人物。
博人の叔父に当たる。

フランツ
フォン・パトリッシュの『御』の執事。

諒一
フォン・パトリッシュの孫であり、博人の従兄に当たる。
博人のみならず、友明とユウマ達が卒業した東響大学の学長をしている。

博人
フォン・パトリッシュの孫であり、諒一の従弟に当たる。
つい最近、フォン・パトリッシュと『御』の詳細を知り悩んでいる、友明の恋人。

友明(ボス)
諒一が学長をしている東響大学医学部の卒業生。
博人とは学生時代に最悪な形で出会うが、現在は恋人同士。
現在は、パースにあるクリニックでボスをしている。

龍三
フォン・パトリッシュ家のジュニア達8人の躾役兼文武の武術を師事していた。
日本に帰国してからは、得意の武術で道場を開いてる。

和田
フォン・パトリッシュ家のジュニア達8人の躾役文武の文壇を師事していた。
脳外医としてパースで仕事をし乍ら、スポーツセンターの秘書としても仕事をしている。

ユウマ
友明がボスをしていた、同じ東響大学の医学部卒業生。
北海道に戻り、病院経営者でありながらドクターもしている。







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