BL風味の小説

BL風味のオリジナル小説です。
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番外編 ~博人の巻~ (おまけ付き)

※番外編のおまけ※
あれから15,16年後。
アンソニーの父親であるシンガポールマフィアのドンとドイツに居る『御』の、内緒話です。



ある日。
シンガポールマフィアのドンはドイツに戻り、御に相談していた。

御は、一言だけだった。
 「あそこの前任者は小者だったから、アンソニーになら出来ると思ったんだ。」
少し沈黙があり、また付け加えてくれた。
 「あれを制することが出来なくて、一族を制する事は出来ない。」
とも、言われた。

 「本当に嫌なら、何か言ってくるもんだろう。違うか?」
しかも、断言してくれる。
 「それに…、あれは死なん。
そうだろ?シンガポールマフィアのドンと畏れられてる男の血を引いてるんだ。
自分の子供を信じるんだな。」

慈悲があるのか、無いのか…。
それでも、以前とは違う。
御は、ドンをしっかりと見据えて言ってくる。
 「一番の問題は、あれには他人を信じようという気持ちが無い事だ。
信頼関係が成り立っていれば、ジョンはあいつを見放すことはなかった。
たとえ、フィルが何処かに行っていてもだ。
ちやほやされるだけされておいて、自分からは何もしない。
ジョンは言っておったぞ。
 『アンソニーは、自分を頼りにしてくれた事は一度も無かった。
誰かを好きになったが、その人は振り向いてくれない。
だから卑怯な手を使い、その人を無理矢理身体ごと奪った。
手元に置いておきたくて、その人の事しか頭にない。
だから、その人に仕事のオファーが掛かっていても、アンソニーが断っていた。
当の本人には、何も知らせず言わずにだ。
でも、その人には想い人がおり、アンソニーはその場面を見ていたが…。
その場面を見て何をどう思ったのか。ジョンには分からない』と言っていた。」

 「なあ、ドン。アンソニーに、あれに、信頼できる相手が1人でも良い。
こいつになら背を預けても良い。
そういう思いがあれば、そういった行動とかは自然と出てくるものだ。
違うか?
ドン。儂は、自分が経験してきた事でしか物は言えない。もし、違うのなら教えて欲しい。」
この言葉を聞いて、ドンは確信した。
以前とは違う。
この人は、こんな事を言う人ではなかった、と。
少し考えて問うた。
 「御。しばらくお会いすることがなかった、この十数年。
どの様な事が起きたのですか?以前の貴方なら、そういう事は言わなかった。」


暫く黙っていた御は、何も言う気はないのかと思えるほどの時間が経った頃、静かに口を開いてきた。
 「儂は…、この『御』という地位を、どうやら一族以外の人間にしないといけない。」


え・・・?

ドンは、自分の耳を疑った。
御は、なおも言い続けてる。
 「子供も孫も、無理な事は最初から知っていた。唯一の有力候補も、儂から離れて行った。」
ドンは、静かに聞いた。
 「それは…、誰なのか、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

御は、息を吸っては吐き出すように言った。
 「ヒロだ。」
 「え…。ヒロって、ヒロト?」
 「そうだ。あいつはエントリーする前に、ここに来てはエントリーから外して欲しいと言った。
恋人は男だとも、言いおった。」

・・・・・・。
 「もう、何年経つかな…。
15年ほど前になるかな。
危篤だという事を知らせると、あいつはすぐに来た。
ある時、私が元気にピンピンしてるのを目にして、あいつは私に怒鳴ってきた。
 『どこが危篤だ!元気にピンピンしてるじゃないか!』ってね。
その時に、あいつは言って来たんだ。
 『今度呼ぶ時は、棺桶に入った時にしろ』って…。
ヒロが…、あいつが儂に怒鳴ってきたんだよ。
この『御』に…。
いつもクールで日和見主義で人見知りをしてはバイオリンしか興味がなく、他の事もと思っては柔道とかをさせたのだが…。
それが、人を好きになり、儂を怒鳴る。
まあ騙していたのだから怒鳴る気持ちも分かるが…。
さっき言っただろう。
アンソニーに…、あれに信頼する人間が1人でも良い。こいつなら…って。
その言葉は、ヒロが私に向かって言ってきた言葉だ。
あいつはここには3ヵ月ほど居たんだ。でも、2ヶ月程マルクと一緒に北欧に行ってたけどな」
そう言いながら、手首に付けてるブレスレットを弄っている。
そのブレスレットは…、北欧土産だ、と博人が投げ置いた物だった。


ドンは息を吐いて、御に言った。
 「お互い、色々とありますね。」
御は返事をしてくれた。
 「全くだ。」


そうか、ヒロにはそこまでの強い思いを持つ相手が居るのか。
相手が男だろうが女だろうが、それは構わない。
アンソニーは…。
執着はあっても、人を好きになっても、振り向かせ方に問題があるのか。
誰かを頼ることもなければ、頼られる事もない。
アンソニー、お前はどこで何をやってる?

私の思いが届くなら、届いてくれ。
 『アンソニー、生きていろ。生きて、再度這い上がってこい。
その時は、どのようになってるのか楽しみにしてるぞ。』



※※※

そして、そんなにも時を置かずに、ジョンがシンガポールに来ては、教えてくれた。
アンソニーは生きてる。
名前を変えて、顔も変えて。
顔写真を添えて、書類を貰った。

ドンは、その写真を見ては瞠目した。
あの頃の面影は、全くない。
ブサイクな男になっていた。
それでも生きている。

ジョンは、ある意味、自分に課せられた仕事を全うした。


翌年。
ドンは、御から知らされた。
ジョンは、ドイツを卒業した、と。







 ~おまけ (終)~


☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。

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番外編 ~博人の巻~ (終)

※博人VSお爺様※

フランツは、階段を駆け下りてきた。
 「ヒロト様、どうか無体な事はされませんように…」

博人は、目の前の老人しか見えてなかった。
目を細め、足を踏ん張り土を踏みしめた。

ドンッ…。

 「どこが危篤だ!元気にピンピンしてるじゃないか!
人を呼んでおいて、自分は姿を現さないとは、どういうつもりですか?
私は、暇では無い。あなたのゲームに乗っかる私ではない。」
博人のお爺様である『御』は、そんな博人を見ては、のほほんとしている。
 「何を、そんなに怒ってるのかな?」
 
博人は持っていた物を、お爺様のテーブルに投げ置いた。
 「それは、北欧土産だ。欲しくなければ、捨てても構わん。」

今度はフランツに向き直った。
 「フランツ、言っておく。」
 「はい、なんでしょう」
 「今度、私を呼ぶ時は、お爺様が死んだ時にしろっ」
 「え?」
 「棺桶に入って、これから焼くという時に、呼べ。それ以外の時は、絶対に連絡もしてくるなっ!
いいな、分かったかっ?」
 「ヒロト様、どういう事でしょうか?」
 「まだしらばっくれるつもりか。私は知ってる。さっき、病院に行ったからな」

その言葉で、フランツは気が付いた。
 「ヒロト様…。私は、騙そうという気は毛頭ございません。でも、騙したことに変わりはないので、申し訳ないと…、本当に心苦しかったです。
『御』も、素直に言えば良かったのです。ヒロト様の御顔が見たくて戻って来て欲しいんだ、と。
ヒロト様、本当に申し訳ありませんでした・・」
 「私は、二度と来る気は無い。さっきも言ったように、お爺様が死んだ時に呼べ。それ以外は連絡もしてくるな。」
 「御…」
フランツは主である『御』に、ご意向を聞こうと顔を向けた。
『御』は、フランツだと埒が明かないと思ったのか、自分で博人の返事をした。
 「それで、お前の気が済むのならな」
 「それと、もう一つ。私は継ぐつもりは無いから、エントリーから外して貰う」
 「それは出来ない」
 「なぜ?」
 「お前は、最有力候補だからな」
 「それはマルクだろ」
 「マルクには、無理だ」
 「その言葉をマルクが聞いたら憤慨するだろうな」
 「お前の、その断る理由を知りたいな」
 「継ぐ気が無い、と言ってる」
 「他には無いのか?」
 「………」
 「博人、そんな理由だと外すことは出来ない」

フランツは言ってくる。 
 「ヒロト様、この際だから言っておいた方が宜しいかと思います」
 「何を?」
 「マルク様との会話が、耳に入ってきました。別に聞こうと思ったわけではなかったのです…」

 「フランツ、何か知ってるのか?」
 「御…、一大事な事です。お耳に入れた方が宜しいかと」

 「ふむ…。博人、どんな事だ?」
 「…が、居る」
 「ん?」
 「私には、恋人が居る。それは」
 「おおっ。それは、どこのご令嬢だ?」
 「私の恋人は、男性だ。」
 「え・・・」

博人は、お爺様に言っていた。
それは、友明がまだ入院中、父親に言った言葉に似ていた。(参照
 「 私は、男である、あいつを好きになったわけではない。
ただ、一緒に居たいと思わされる人が…、好きになった人が男だった。それだけの事だ。」

その言葉を聞き、お爺様だけでなくフランツも目を見開いてる。
 「ああ、それと…。私には、信頼できる相手が1人居る。
それは、こいつになら背を預けても良い。とさえ思える相手だ。
それが、私の恋人だ。
このクソ爺。早く、くたばっちまえっ」
そう言い捨てると、博人は階段を駆け上っては屋敷の中へと向かった。


その後姿を見送っては、フランツは黙り込んでしまった。
お爺様である『御』は、溜息を吐いて感慨深く呟いていた。
 「クソ爺ね…。あいつはクールだったのに、感情のある人間になったな…。」



もう、ここには来ない。
クソ爺に、クソバトラー。二人とも、お似合いだよ。
帰りのチケットを確認した。
日付はオープンなので、今夜の便で帰ろう。
車置きの脇に置いておいた自分の荷物を持っては、使用人には封書を手渡し、これを自分の屋敷の門柱に張り付けて欲しいと言っては、車に乗り込んだ。運転手に空港まで送るよう言うと、運転手は送りだけでなく空港での手続きまでしてくれた。
シンガポール行きの便がタイミング良く待機中であり、ファーストの席が空いていた。
離陸まで、残り20分弱。

友明、会いたい。
友明の居る日本に一時間でも早く帰りたい。


フランツは、ヒロト様の事だ、拗ねては不貞寝してるだろうと思い、ランチを持ってヒロトの屋敷に行くと門柱に封書が貼り付けられてるのを見つけた。
開けてみると、自分宛てのだ。
 『Dear フランツ
フランツが悪いわけでは無いのは分かってる。だけど、もっと早くに言って欲しかった。
さようなら。今日、帰るから。元気でね  by ヒロト』


 「お・・・、御、御っー!」

ランチを載せてるカートをそのままにして、フランツは本宅へと走り戻った。
 「御、大変ですっ。御っ!」
 「煩いな…」
 「ヒロト様が・・、ヒロト様が、これを」
フランツから手渡されたメモを見て、『御』は呟いた。
 「そうか、帰るのか…」

行ってきます、と言ってはフランツは屋敷を飛び出そうとした、その時。
一台の車が表庭を通っては車置きに戻った。
まさか、あの車は…。

フランツは、車に駆け寄ると聞いていた。
その運転手から返ってきた言葉に何も言えなかった。
運転手は、ヒロト様を空港まで送っては、タイミング良くシンガポール行きがあったので、それに乗られることが出来ては、手続きもしてはゲートまで見送って戻って来た、と。
最後の見送りは、自分ではなく運転手だなんて…。
なぜ、自分では無いのか。

ヒロト様。
貴方は、さすが最有力候補の御方だ。
もう、二度と会えないのか…。
御身、お大事に。








 
 ~番外編 『博人の巻』 終~





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番外編 ~博人の巻~ (5)

※ヒロトVSフランツ※

その翌日、博人はドイツで誕生日を迎えた。
本音としては、友明と一緒に居たかった。
だけど、ここはドイツだ。そろそろ帰らないと、病院の主導権が違う人間に持って行かれる。
しかも、ビザは3ヶ月半しか取って無い。
でも、お爺様のドアに向かって声を掛けても、何の応えも無い。
そうか、病院か…。
その事を思い出し、病院に行く支度をしてフランツを探していた。
 「フランツ、何処だ?病院に行きたいのだが、居ないのか?勝手に行くぞ」

使用人に聞いても、今日は見てないとの事だったので、先に病院に行ったのかも…。と、思ってはヒロトは一人で病院に向かった。
病院先は知ってる。
あの頃、私が働いていた所だからだ。
運転手に病院まで乗せて貰った。
運転手は「お待ちしております」との事だったから、30分位だと伝えて病院内に入って行った。
お爺様専用のVIP病室の前に来ると、緊張の面持ちでノックをして入る。
 「お爺様、博人です。遅くなり申し訳ありませんでした…」
だが、ドアは開かない。
あれ…、なんで開かないんだ?
それよりも、一足違いで退院されたのかな…。
フランツの帰りを待ってれば良かった。
でも、懐かしいのでドクターステーションに足を向けた。


(懐かしい顔が、いくつか居るぞ。)そう思ったら、ヒロトは声を掛けた。
 「ハロー」
ステーションの向こうでは、何人かが顔を向けてくる。
 「ワオッ!」
 「ヒロだっ!久しぶり」
 「戻ってきたのか」

 「戻って来て3ヶ月経ってるよ」
 「そっかあ、元気そうだな」
3人共ハグしてくれるので、ヒロトもハグしていた。
 「そうだ。お爺様は何時退院されたのか、知ってるか?」
 「お爺様って、『御』?」
 「ああ、そうだ」
 「退院って、入院もされてないよ」
 「え…!お爺様が病院に罹る時は、ここの筈なのに」
 「違うとこに行ったのかな…」
 「危篤だって…」
 「誰が?」
 「お爺様・・、『御』が危篤だと」
 「まだ元気にされてるよ」
 
あまりもの驚きで、ヒロトは頭が真っ白になった。
ダンケ、と言い残して車に乗った。
ヒロトは運転手にも聞いてみた。
返って来た言葉はこれだった。
 「『御』は、お元気ですよ」

そういえば、空港に出迎えてくれたのはフランツだった。
それを聞くと、「フランツは、自分が行くから良い」と、運転手に休憩を与えたらしい。
ヒロトは、フランツの様子を思い出しては、その後の態度と行動を思い出していた。
私は、騙されていた?
お爺様に、フランツに…。
マルクも、それを知っていた・・・?


屋敷に着いたヒロトは、大股でお爺様の部屋に向かった。
ドンドンッと部屋を叩き、ドアを開ける。が、開かない。
 「お爺様っ!」

バンッ・・・!

お爺様のドアを蹴破り押し開けた。
でも、部屋内にはお爺様もフランツも居ない。

何処だ。
私を騙しておいて、何を思われてたのか?
この時間は、ビュッフェか…。
何を思ったのか、ヒロトは自分の屋敷に戻った。時間にして30分位経った後、スーツケースを持っては車寄せに置いておいた。

そして、ビュッフェに向かってると声を掛けられた。
 「あ、ヒロト様。どちらに居られたのですか?ランチの」
 「フランツは?」
何かを感じ取ったのだろう、使用人は指差してきた。
あちらに、と。


ヒロトは、怒鳴り声でフランツを呼んだ。
 「フランツッ!何処だっ?」
 
 「御、あれはヒロト様の…」
 「任せた」
 「全く、もう…」

 「フランツ、何処に居る?」
 「はい、ここに。どうなされましたか?」
 「今は、どこから来た?」
 「え…」
 「どこに居た?」
 「ヒロト様…?」

 「中庭か・・・」
ポツリと呟いたヒロトの声に、フランツは気が付いた。
だが、ヒロトは早かった。
 「ヒロト様、お待ちくださいっ。ヒロッ」
 「煩いっ!2人して、私を騙してっ。楽しかっただろうよっ」
 「ヒロ・・」


ヒロトは、2階から中庭に続くベランダの手摺りから中庭の花畑の縁に飛び降りた。
そこには、健康色な顔をした老人が椅子に座っていた。
そのテーブルにはランチが並べてあった。






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番外編 ~博人の巻~ (4)

※ヒロト、宝石(いし)と対面※

2ヶ月と少し経った、9月の下旬。
ヒロトは、マルクと共にドイツに戻ってきた。

 「ただいま、フランツ」
 「お帰りなさいませ。ヒロト様、マルク様は?」
 「マルクは、自分の勤務先の病院に行ったよ」
 「そうですか。何かお飲み物をお持ちしますね」
 「これを、フランツに」
 「え、なんですか?」
 「北欧土産だよ」
 「私にですか?」 
 「うん。いつもお爺様の面倒を見てくれてるからね。ありがとう」
 「嬉しゅうございます。ありがたく頂戴致します」

ヒロトは、自分の屋敷に向かってる。
その後姿に、フランツは声を掛けた。
 「ヒロト様、後でお飲み物をお持ちしますね」
 「ああ、よろしく」


はあっ……。
疲れた。
でもモーガンに会っては、オペもさせて貰い、ギャラも頂いた。
やっぱり、私にはフリーが向いてるのかもな。
そう思ってると、自然と瞼がくっ付いてくる。
少しだけ寝とこう。
ベッドに横たわった博人は、眠気に逆らわずに目を閉じた。


夢を見ていた。
バイオリンを演奏している夢を。
誰もが、自分の演奏を楽しんでくれてるのが分かった。
そして、何かが自分を呼んでるのも。
呼ばれた所に行くと、そこには綺麗な蒼色をした宝石が居る。
その宝石は、どこかで見かけたような気がするのだけど、どこだったかな…。
それでも、至福な夢を見ていたせいか、自分の変化に気が付いてなかった。

目が醒めると、心配そうな表情をしてるフランツが居た。
 「おはよう、フランツ。眠くなってね、少し寝てたんだ」
 「おはよう、ではないですよっ!一体、何日起きてこられなかったことか…」
 「え、そうなの?」
 「どこも、何とも無いのですか?」
 「全然、どこも。夢を見てたんだよ」
 「夢、ですか?」
 「バイオリンを色々な場所で演奏してる夢。本当に嬉しくて演奏しまくりだったけどね」
 「本当に、心配しましたよ」
 「ごめんね。で、何日寝てたって?」
 「8日間です」
 「ええっ・・!」

マルクの焦った声が聞こえてくる。
 「フランツ、フランツ。今日はどうだ?」
 「マルク様、お帰りなさいませ。ヒロト様は、やっと目を覚ませられましたよ」
 「ああ、良かった…。寝てるという事は分かってたけど、こんなにも起きてこないのは何故なんだろう、と思って心配だったんだ」
 「マルクも心配してくれてありがとう。私は大丈夫だよ」

 「ヒロト様、お食事は消化の良い物にしますね」
 「え、肉が食べたい…」
ヒロト様・・・、とフランツは睨んでくる。
マルクは苦笑している。
 「駄目だよ、ヒロ。8日間も寝てたんだ。いきなり肉のような固形は無理だよ。
フランツ、消化の良い物を用意して」
 「畏まりました」
でも、ヒロトも黙ってはいない。
 「フランツ、せめて果物だけでも」
 「…チョイスは私がさせて貰います。文句は言わせませんからねっ!」
 「仕方ないね…。よろしく」

暫らく待ってると、フランツはランチをヒロトの屋敷に持ってきた。
カートの蓋を開けると…。
沢山の苺に、バナナ、リンゴ、カカオが並んでる。
(量的には少ないが、嬉しい)と、ヒロトは思っていた。
そして、メインはトロトロの全粥。
なぜ、粥なのか…。
フランツはドヤ顔をして言ってくる。
 「8日間は点滴でしたので、流動食でしょ?それに、日本では粥を召し上がるものだと承知しております。文句は言わせませんので。はい、ヒロト様」
 「味付いてる?」
 「何言われてるのですかっ」
 「せめて、味を付けて欲しい」
塩があるのを見つけては、(せめて塩味の粥で…)そう思いながら塩を振りかけてると、フランツに塩の入ってる瓶を取られた。
 「フランツー・・・」
 「もう、振りかけられたでしょ」
仕方ない、果物で我慢しよう。
そう思って粥を掬ったスプーンを口に含んでると、フランツは果物をミキサーに掛けてる。
 「え・・・」
 「なにか?」
フランツの仕事を見てると、果物は段々と液状になっていっては、グラスに注がれる。その上からカカオを粉末にしては散りばめている。
くそぉ・・・・。

ヒロトは、スプーンを口に含ませては、フランツと果物ジュースを睨んでいた。


数日後、やっとフランツから食事を固形にすることを許されては、パクついていた。
その時、マルクから話を持ち掛けられた。
来週末に演奏会があるのでバイオリンを演奏して欲しいと。
ヒロトは、喜んで演奏会に向けて練習していた。
その日がやってきた。
場所は、懇意にしている某家のホールだ。
彼の演奏に心打たれた聴衆は感動しては、自分達のサロンでも演奏して欲しい、と話を持ち掛けられては、それを機に、ヒロトは毎日を忙しくしていた。

でも、そろそろ日本に帰らないといけない。
だけど、お爺様には会えてない、と焦っていた。

ドイツに来て3ヶ月経った10月の下旬。
マルクの屋敷で演奏する機会に恵まれた。
なにしろ、マルクの屋敷では名のある名士ばかりしか招待しないからだ。
演奏が終わり、息抜きをしようとホールを出てはベランダで夜風に当たっていた。
その時、蒼く光るモノがあった。それは、自分の手元で光っている。
でも、持っていたはずのバイオリンの弓が無い。
そう思うと、ソレはバイオリンの弓になっては、ヒロトを安心させては、今度は宝石になった。
それを見て、ヒロトは思い当たった。
(これは…。あの時の、夢に出てきた宝石だ)

ヒロトは、その宝石に呟いていた。
 「そう、君が弓に化けていたんだね。驚いたよ」
その宝石は光を放っては直ぐに消した。まるで自分の言葉に反応してるように。
その宝石に、ヒロトは言っていた。
 「私は、そろそろ日本に帰るつもりでいるんだ。君は、どうするの?」

すると、その宝石はバイオリンの弓になった。
 「私と一緒に来るかい?」
頷く様に、光を放っては消す。
 「出来れば、もっと短いものになれないかな。
そうだな、例えば…この時計の秒針とか。は、無理か」
だが、その宝石は時計の一部として、白い透明なガラス蓋を蒼く染めた。

その様子を見て、博人は呟いた。
お見事…。





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番外編 ~博人の巻~ (3)

ヒロトの口から衝撃な言葉を聞いて、マルクは驚きのあまり暫らくの間は、口がきけないでいた。
 「ヒロ…。お、お前・・、お前まで、キョージと同じにっ・・・」
 「マルク。私はね、本当に色々とあったんだよ。もう、あんな思いはしたくない。
あんなにも、誰かを助けたい、守りたい、と思ったのは初めての事だったんだ。自分は無力だ、と本気で思ったものだ。祈る事しか出来なかった…。
だから、私はエントリーから外して貰いたい。そういう事も言おうと思って来たんだ。」

 「ヒロ…。あの方は、お会いにはなられない。でも、そのエントリーの事は伝えておいてやる」
 「自分で言いたいんだ」
 「分かった。それよりも、付き合って欲しいな」
 「北欧以外なら」
苦笑しながらマルクは言ってくる。
 「ランチを付き合って欲しいんだけどな…」
 「ああ、それなら喜んで」


ヒロトは、日本では辛い事などもあったのか。
だから、この数年で、こんな風に変わったのか。あの冷淡で何事にも動じなかった奴が、好きな奴が出来ては、自分は無力だとまでも思えてしまうほどに…。
だが、これが女性なら寝取ってやろうか、とも思ったのだが…。
男性とはね。
だが、これで一人は減った。
親族内での殺し合いは避けたかったのだが、ヒロトは生かしといてやるよ。
オペ・ドクとしての腕は良いからな。
それに、あのお方の直系の孫の中では、私に一番懐いてくれてた。
私の最も大好きな、親愛なる大事な長姉さまの血を色濃く継いだヒロト。
ヒロトを女装させると、お姉さまに似るだろうな。
マドリーヌ姉さま。
貴方は、転生されたのだろうか。
出来ることなら、来世では夫婦として一緒に居たい。

貴方の子供はゲイになった。
もう、私の敵ではない。
他2人はゲイだし、残るはリョーイチ。
だが、リョーイチは『御』の椅子を欲している。
あいつは、日本の大学でボスをしていれば良いんだ。
縛り付けてやるよ。
これで、『御』の椅子は私のモノだ。
そして…。
後は、あの老いぼれだけだ。



ヒロトは、マルクの後を付いては一緒にランチビュッフェに向かった。
マルクは何も言ってこないので、ヒロトは考え事をしながら歩いていた。
 
フランツの声がする。
 「あ、マルク様、ヒロト様。呼びに行こうと思ってたところです」
 「ああ、そうか」と、マルクは返していたが。
 「丁度良かったね」と、私はフランツに返していた。


ツゥルルル…、ツゥルルル…。
 「ああ、電話だ」
 「それじゃ、マルク。先に席に着いとくね」
 「ああ」

 「ハロー。・・・・・」


ヒロトはビュッフェのテーブルに所狭しと置かれているのを見ては、友明が作ってくれた食事を思い出していた。
そういえば、あいつは料理を作るのが好きで、よく作ってくれたよな。
ヒロトは、シェフに声を掛けた。
 「オムライスが食べたい」
 「畏まりました」

シェフは、目の前でオムライスを作ってくれてる。
 「ソースは、どちらにされますか?」
 「ブイヤベースと、ケチャップで」
 「畏まりました」
そう言うと、ヒロトは野菜ブースに行っては、自分でチョイスしてる。
それを見た使用人は慌てて声を掛けてくる。
 「ヒロト様、そのような事は私共の仕事ですっ」
 「もう遅い。はい、これらを使ってのサラダね」
 「フレッシュサラダですか?」
 「このサラダに炙ったサーモンを散りばめて欲しい。ドレッシングはレモン味で」
 「畏まりました」


マルクが声を掛けてくる。
 「ヒロ、君に電話だよ」
 「え、私に?」
 「ああ。出てごらん」
 「お借りします」
 「どうぞ」

 「マルク様。メインがお決まりましたらお声を掛けて下さいませ」
 「ああ」


ヒロトは、マルクの携帯に耳を当てた。
 「ハロー…」
 『ハロー、ヒロ?ロウだよ』
 「ロウって、…モーガン?」
 『そうだよ、こっちに戻ってきたんだな。実は…』

ロウと話し終わったヒロトは、ビュッフェに入った。
オムライスとフレッシュサラダを食べ終わった後はドルチェタイムだ。
ヒロトはシフォンケーキ、チーズケーキ、イチゴケーキ、アップルパイとホットティを選んでは、ホクホク顔しながら食べている。
マルクはヒロトの前に並んでるケーキを見ては、苦笑しながらホットティを飲んでいる。
 「よく食べる奴だな…。で、結局来るんだろ?」
 「だって、モーガンから直に言われると断われない」
 「私が言うと、断るくせに…」
 「ごめん、ごめん」

マルクはフランツに向かって言いだした。
 「フランツ」
 「はい、なんでしょうか?」
 「ヒロは、私と一緒に北欧に行くことになった」
 「ヒロト様、よろしいのですか?」
 「ああ、良いよ。それに、お爺様には2ヶ月後に戻ってきた時に、お会いするから。
それまで、お爺様の事をよろしくね」
 「畏まりました。御二方共、無事に戻ってこられるのをお祈りします」



本当は、一目だけでもお会いしたい。
だが、ヒロトはドア越しに話しかけるだけで我慢した。
当の本人は病院に入院していても、お爺様の部屋に向かったのだ。
 「お爺様、ヒロトです。これからマルクと北欧に行ってきます。2ヶ月後には戻って参りますね。
その時には、話したい事があります。それまで、待っててくださいね。
それでは、行ってきます」
 「ほんとに、ヒロは律儀だねえ」
 「マルクは言わないの?」
 「代わりに、ヒロが言ってくれたからね」


一方、『御』の部屋では。
 「御、私はヒロト様を騙してるのが心苦しいです」
 「でも、北欧に行くって聞こえただろ?」
 「そうですが…、ヒロト様はお優し過ぎます。だけど、2ヶ月後にはどうなるか…」
 「フランツは考え過ぎだよ」
 「そうでしょうか?」
 「儂は、病人の振りをしなくて良いので助かったけどね」
フランツは、溜息を吐いて呟いていた。
 「御もヒロト様も似た者同士だ…。頑固者め…」と。







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